『ステップ・アップ4:レボリューション』:2012、アメリカ

マイアミ。ショーンがリーダーを務める“The MOB”というチームはゲリラ的にダンス・パフォーマンスを行い、警察が駆け付ける前に逃亡する。彼らはダンスの様子を撮影し、動画サイトにアップすることを繰り返している。その日はオーシャン・ドライブに出没し、車を使ったパフォーマンスを繰り広げた。警察に捕まらないように、もちろん正体は内緒にしたまま活動を続けている。普段のショーンは、仲間のエディー、ジェイソンと共にディモント・ホテルでウェイターとして働いている。
ビーチ・クラブに繰り出したショーンはエミリーという美女をナンパし、一緒に踊る。しかしエミリーは何かに気付き、慌てて逃げ出した。夜、ショーンはエディーと共にリッキーの営むクラブ・ハバネロへ出向き、仲間のペネロペやジェイソンたちと合流する。動画は5時間で2万回も再生されており、ショーンはリッキーに「1000万回の再生で10万ドル貰えるコンテストがある」と話す。「10万ドルじゃ一生は暮らせないぞ」とリッキーが言うと、彼は「注目を集めたい。有名になれば食っていけるようになる」と告げた。
次の朝、テレビのニュースでは実業家のビル・アンダーソンがダウンタウンの開発計画を発表したことが報じられている。ショーンは姉のクレアと同居しており、その幼い娘であるサラとも仲良しだ。ダンス・フラッシュ・モブの活動を自慢するショーンに、クレアは「あの子にモブの話はしないで。昨日もニュースに出てた。そろそろ逮捕されるわ」と言う。「されないよ」とショーンが軽く告げると、クレアは「コンテストに受かるわけがない。学校に行って、就職して」と述べた。
ショーンが「姉さんは人生を変えたくない?」と問い掛けると、クレアは「ジェシカの勤め先に管理者訓練プログラムがあって、夜学の授業料も出るの」と勧める。ショーンは「必要ない。コンテストで勝つ」と告げて、仕事に行く。ディモント・ホテルのオーナーでもあるアンダーソンは従業員を集め、総支配人であるトリップを称賛する。遅刻したエディーが呑気に現れると、アンダーソンはクビを通告した。彼は従業員たちに、「忠誠心には報いるが、無責任な者には容赦しない。客には完璧なサービスを提供しろ」と告げた。
アンダーソンはホテルのオープンカフェで、娘のエミリーから大学を中退したいと告げられる。「パパが無理に行かせた大学よ。私はウィンウッドのダンス・カンパニーへ行きたい」と彼女は訴える。給仕に来たショーンは、エミリーがいたので驚いた。ショーンが去った後、アンダーソンは頑なに主張を曲げない娘に「夏の間にプロになれなかったらパパの会社で働け」と要求した。エミリーは反発する態度を示し、「私は自分の夢をパパに応援してもらいたいだけ」と告げた。
エミリーが1人で練習していると、ショーンがやって来て声を掛ける。エミリーはウィンウッドを受けることを話し、「まだ不充分なの。どうせ受からないわ」と自信の無い言葉を口にする。ショーンはクラブでやった振り付けを取り入れるよう提案するが、彼女は「無理よ。ルール違反になる」と断る。ショーンは「金曜の夜、見せたい物がある。この住所へ8時に来てほしい」と言い、メモを渡した。
ショーンと仲間たちは次の計画を立て、準備を進めた。標的として選んだ場所は、マイアミ・ミュージアムだ。警備責任者はギブゴッド館長で、ペネロペが一時的にスタッフとして潜入した。一方、エミリーはウィンウッドのオーディションを受け、実習生5名の内の1人に選ばれた。実習生は夏の終わりまでに自分の振り付けを完成させ、テストを経て男女1名ずつが正式採用となる。エミリーはカンパニー主催者のオリヴィアから、「技術は素晴らしいけど、オリジナリティーを見つけた方がいい」とアドバイスされた。
金曜日、エミリーがミュージアムへ行くと、スーツ姿のショーンが現れた。「ただのデートだったの?」とエミリーが言うと、ショーンは「デートじゃない。君のダンスの、ヒントにしてくれ」と言い、ダンス・パフォーマンスがスタートした。アート作品をモチーフとしたパフォーマンスに、入場者は感嘆した。警備員がチームを捕まえようとすると、ギブゴッドが制止した。ショーンは「時にはルールを破ることもいい」と書いたメモをエミリーに渡し、仲間と共に逃亡した。
翌日、エミリーはショーンが働いている厨房へ行き、自分もチームに入りたいと申し入れた。ショーンは「振り付けを考えるのは手伝うが、君にザ・モブは似合わない。もしも警察に捕まったら、お父さんになんて言うんだ?」と困惑する。「ウィンウッドに入るために自分を変えたいの」とエミリーが言うと、ショーンは「君の正体を知ったら、仲間は認めない」と告げる。「正体を明かす必要がある?」というエミリーの言葉を受け、ショーンは彼女の素性を隠したまま仲間に入れることにした。
ショーンはエミリーをチームの溜まり場へ案内し、コンピュータ担当のエディーやDJのペネロペ、特殊効果担当のジェイソン、アート担当のマーキュリー、カメラ担当のアイリス、スタント担当のスライとエイドリアンを紹介する。彼はエミリーに、世界中から多くのダンサーが集まっていることを告げた。次の計画でエミリーはリード・ダンサーに指名され、仮面を付けて高級レストランで踊った。最初はエミリーの参加に難色を示していたエディーも、その踊りを見て受け入れた。
その夜、ショーンはエミリーと2人きりになり、「いつからモブを?」と訊かれる。ショーンが「エディーの発案で始めた。生まれた時から一緒で、兄弟も同然だ。親父が蒸発し、お袋は男を作り、味方はエディーだけ」と言うと、エミリーは「私と似てる。ママが家を出て、パパと私は無二の親友になった」と話す。「今は?」とショーンが尋ねると、彼女は「自分がどう生きたいか、ようやく分かった。でもパパは受け入れてくれない」と告げる。「自分を通すべきだ」とショーンが言うと、エミリーは「そう簡単じゃないわ。やりたいことを出来る貴方が羨ましい」と述べた。
ショーンは「エディーや俺みたいな人間は、存在しないも同然だ。だからモブを始めた。俺たちもこの街で生きてると訴えてるんだ」が語ると、エミリーは彼にキスをする。そのまま2人は、ボートの上で朝を迎えた。2人がクラブ・ハバネロへ行くと、リッキーが浮かない顔をしていた。彼はショーンたちに、「アンダーソン社の開発計画で、この周辺が買収される。この店も消える」と言う。拒否するようショーンが促すと、彼は「俺たちは賃貸で商売してる。拒否する権利は無い」と述べた。
いたたまれなくなったエミリーは自分の素性をチームに明かしたいと考えるが、ショーンが「今はマズい」と止めた。エミリーは父と会い、スプリング・ガーデンの開発計画について問い質す。「あそこには友達のショーンが住んでる。あの人たちの故郷を壊すなんて」と彼女が批判すると、アンダーソンは「土地開発とは、そういうものだ。犠牲の上に繁栄がある。トリップが木曜に市議会と話す予定だ。承認されれば工事に取り掛かる。ダンスのことは好きにしろ。仕事には口を出すな」と述べた。
エミリーはザ・モブの面々に「賞金が手に入っても、何も変わらない。今は抗議のためのアートに切り替えるべきよ」と告げ、市議会でのモブを提案した。木曜日、トリップはマーケティング会社のボブ・クーパーを伴って市庁舎を訪れ、市議会議員たちと会った。ザ・モブは火災警報器を鳴らして市議会の人々をロビーへ集め、そこでパフォーマンスを行った。彼らは市庁舎の前に巨大オブジェを作り、「俺たちは売り物じゃない」というメッセージを掲げて立ち去った。
ザ・モブのパフォーマンスはマスコミに大きく取り上げられ、社会現象となった。自分たちの土地を開発計画から守ろうとする彼らの主張は、大勢の賛同を得た。それと同時に動画サイトでの再生回数も上昇し、ザ・モブはトップの座を奪った。そんな中、エミリーがショーンと練習する風景を盗撮したエディーは、彼女の正体を知って仲間たちに教える。「ショーンに説明させよう」とジェイソンが告げると、エディーは「名案がある」と述べた。
アンダーソンの主催する市議会パーティーに、エミリーは娘として出席した。ショーンもウェイターとして会場に入っていた。エディーはショーンにも内緒で仲間を集め、破壊的で攻撃的なパフォーマンスを会場で披露した。彼は会場のスクリーンをジャックし、エミリーがザ・モブの仲間であることを暴露した。ショーンに詰め寄られたエディーは、「お前に出来ないことをやってやったんだ」と告げた。ザ・モブの面々は逮捕され、警察署に連行された。すぐに釈放されたものの、コンテストは失格になってしまった…。

監督はスコット・スピアー、キャラクター創作はデュエイン・アドラー、脚本はアマンダ・ブロディー、製作はアダム・シャンクマン&ジェニファー・ギブゴット&パトリック・ワックスバーガー&エリック・フェイグ、製作総指揮はボブ・ヘイワード&デヴィッド・ギャレット&メレディス・ミルトン&ジョン・M・チュウ&マシュー・スミス&ナン・モラレス、撮影はクラッシュ、編集はマシュー・フリードマン&アヴィ・ユーアビアン、美術はカルロス・A・メネンデス、衣装はレベッカ・ホファー、振付はジャマール・シムズ、音楽はアーロン・ジグマン、音楽監修はバック・デイモン。
出演はライアン・グスマン、キャスリン・マコーミック、ミシャ・ゲイブリエル、クレオパトラ・コールマン、スティーヴン・“トゥイッチ”・ボス、トミー・デューイ、ピーター・ギャラガー、ミア・マイケルズ、メーガン・ブーン、チャド・スミス、甲田真理、アダム・セヴァーニ、マイケル・“ゼノ”・ラングベック、マリオ・エルネスト・サンチェス、クラウディオ・ピント、ドミニク・ベル、サビーナ・V・ゴメス、ケヴィン・アンソニー・ウォルトン、クラウディア・ロカフォート、エミリアーノ・ディエス、スティーヴ・ザーク他。


2006年から続いているダンス映画『ステップ・アップ』シリーズの第4作。
日本ではチャニング・テイタム主演の第1作のみが劇場公開で、それ以降は全てDVDスルーとなっている。
脚本のアマンダ・ブロディーは、これがデビュー作。監督のスコット・スピアーは、2011年にウェブシリーズの劇場版であるダンス映画『The LXD: The Secrets of the Ra』でデビューしている。
ただし、その時はジョン・M・チュウ&ライアン・ランデルスと共同監督であり、単独でのメガホンは本作品が初めてだ。

出演者は脇役のダンサー数名を除き、作品ごとに入れ替えとなっている。
ショーン役のライアン・グスマンはモデルが本業で、本作品が役者デビュー。エミリー役のキャスリン・マコーミックは、ダンス・オーディション番組『アメリカン・ダンスアイドル』で優勝は出来なかったが高い評価を受けたダンサー。エディー役のミシャ・ゲイブリエルは、マイケル・ジャクソンの『This Is It』ツアーに選ばれていたダンサー。
他に、ペネロペをクレオパトラ・コールマン、トリップをトミー・デューイ、アンダーソンをピーター・ギャラガー、オリヴィアをミア・マイケルズ、クレアをメーガン・ブーンが演じている。
ジェイソン役のスティーヴン・“トゥイッチ”・ボスは第3作から、ヴラッド役のチャド・スミスは第3作から、キド役のマリ・コーダ(甲田真理)とムース役のアダム・セヴァーニは第2作からの続投。
まあ続投と言っても主要キャストはジェイソンだけで、他の3人は最後のモブに呼ばれるダンサーとしてゲスト参加するだけだが。

オーシャン・ドライブのパフォーマンス翌日、ショーンとエディーは厨房で仕事をせず、そのニュースが報じられているテレビを見ている。
トリップに注意されても生意気な態度を取り、ヘラヘラとしている。
「お客様を待たせるな」というトリップの注意は当然のことなのに、見下すような態度を取る。「従業員はビーチ・クラブへの立ち入りを禁止する」という張り紙を破り捨て、構わずにビーチ・クラブへ行く。
勤務態度が不真面目すぎるだろ。
「賃金は安いし、客は偉そうだ」とショーンはエミリーに言ってるけど、お前の方がよっぽど偉そうな態度だぞ。

アンダーソンを憎まれ役に据えているけど、彼がエディーを解雇するのは当然のことだ。エディーは集合時間に20分も遅刻したのに全く慌てず、ユニフォームを着崩した状態で現れ、呑気な態度を示すんだから。
後でショーンが「遅刻したぐらいでクビなんて」と言っているけど、その前に見せていたエディーの不真面目な勤務態度からしても、何の迷いも無くアンダーソンを支持するわ。
じゃあショーンは遅刻せずに集合しているからOKかというと、別の部分で好感度を下げている。
エミリーがアンダーソンと真剣な話をしているのに全く空気を読まずに軽い調子で話し掛け、彼女の足を拭いてニヤニヤと笑うのだ。
すんげえチャラいし、まるで共感を誘わないわ。

冒頭、ショーンたちは道路を封鎖し、交通を麻痺させて落書きまで残している。パトカーが来ると逃げ出しているが、ようするに無許可でやっているゲリラ活動なのだ。
その時点で、ものすごく感情移入が難しい連中ってことになる。
大勢の人々に迷惑を掛けて、自分たちのパフォーマンスを押し売りするってのは、果たしてダンス・フラッシュ・モブとして、いかがなものかと。
っていうか、それってダンス・フラッシュ・モブじゃないと思うんだよな。単なるゲリラ・パフォーマンスでしょ。
でもチーム名は「The MOB」だし、ショーンたちはフラッシュ・モブをやっているという認識なんだよな。

それと、「それはホントにフラッシュ・モブなのか」という疑問だけでなく、「それはストリート・ダンスと呼べるのか」という部分にも引っ掛かるモノがある。
このシリーズは「主人公がストリート・ダンスによって成り上がる」というサクセス・ストーリーのフォーマットになっているので、ショーンはストリート・ダンサーでなきゃいけない。そこは必須だ。
しかし冒頭シーン、確かに道路の上ではあるけど、改造車を何台も使い、その上で踊ったりするんだよな。
そういうのって、ストリート・ダンスなのかねえ。

美術館やレストランのパフォーマンスに至っては、もはや「まるでストリート・ダンスではない」と断言できる。
美術館のパフォーマンスなんて、絵画や彫刻の一部に紛れたダンサーが踊り出したり、芸術作品とコラボレーションする形で踊ったりするんだから、ストリートとは程遠いでしょ。バレエ・ダンサーの創作ダンスみたいになっている。
そして、そうやって洗練されたパフォーマンスを披露することによって、「貧しい若者がストリート・ダンスによって成り上がる」というサクセス・ストーリーの色が完全に消えてしまう。
既に完成された、優秀な芸術家にしか見えないからだ。

ショーンはエディーと一緒にホテルのウェイターとして働き、決して裕福な生活は送っていない。それなのに、冒頭のパフォーマンスでは 何台もの改造車を使っているし、美術館でも衣装や道具に凝っている。市議会のパフォーマンスなんて札束を撒いているし、巨大オブジェも作っている。
1回のパフォーマンスで、かなりの金額を使っているはずなのだ。下手すりゃ1回のパフォーマンスで10万ドルぐらい使っているんじゃないかと思える。
そんな大金、どこから捻出しているのかと。
そして、それだけ予算を掛けられるチームであれば、10万ドルの賞金なんて、どうだっていいだろうに。
っていうか、ショーンは「俺たちは存在しないも同然だ。だからモブを始めた」と言っているけど、そんだけ金を掛けた派手なパフォーマンスが出来る奴が「存在しないも同然」と言っても、説得力が無いわ。

冒頭のパフォーマンス・シーンからして、ザ・モブのメンバーたちの個性は全く見えて来ない。
それは当然と言えば当然で、フラッシュ・モブってのは「集団でのパフォーマンス」ってことに意味があるわけで、ダンサーそれぞれが個性を発揮する場ではないからだ。
ソロで踊る箇所もチラッとあるけど、それが個人のアピールに繋がっているわけではない。
本来なら序盤で主要キャストを紹介しておきたいところだが、その冒頭シーンでは誰一人として「個人」が見えないまま終わる。

映画開始から20分が経過した段階で、名前が分かるチームのメンバーはショーン、ジェイソン、マーキュリーの3人しかいない。その上、それなりにキャラを勃たせようとしているのはショーンだけ。
チームのメンバーよりもサラの方が、出番は少ないけど遥かに個人としての存在感を示している。
映画開始から35分ぐらい経過し、ショーンがエミリーを溜まり場へ案内した時にメンバー紹介をしているけど、それはタイミングが遅すぎるだろ。
そこまで引っ張る意味もメリットも全く無いぞ。

しかも、そこで紹介されるアイリス、スライ、エイドリアンに関しては、名前と役職の説明はあるのに、出演者のクレジットに名前が無い。
カメオ出演という扱いではなくて、単純に「出演者に入れるまでもないメンツ」という扱いになっているのだ。
実際、その紹介シーン以外で3人が存在感を示すことは全く無いけど、それにしても扱いが酷いわ。
そもそも、ちゃんと名前と役割を紹介しているのに、それ以外のシーンで存在感が無い扱いにしていること自体が問題でしょうに。

おまけに、ショーンがエミリーに紹介するのは、ダンス以外の担当ポジションばかりなのよ。
その中にはダンサーを兼ねているジェイソンも含まれているけど、他のダンサーに関しては「世界中から集まっている」と説明するだけで終わりなのだ。
完全に「その他大勢」という扱いなのだ。
ダンス映画なのに、ショーン以外は「ダンスとは他の仕事を受け持っている」というメンツがチームの主要メンバーになっているのは、どう考えたってマズいだろ。

マスコミはザ・モブを取り上げる際、「正体不明、謎の集団」と説明している。実際、正体はバレていない設定だ。
だけど、それは無理があるわ。
冒頭のオーシャン・ドライブでのパフォーマンスと、市議会でのパフォーマンスは、素顔をそのまんま見せて踊っているのだ。その様子を動画サイトにアップしているんだし、野次馬の中に撮影している奴もいる。
だったら、地元の連中でメンバーを知っている人もいるだろうし。すぐにバレるだろ。
むしろ、エディーがバカをやらかすまで全くバレなかったことが不思議だわ。

そんなエディーのバカな行動に関しては、情状酌量の余地が無い。天下御免の大うつけである。
「エミリーがアンダーソンの娘だった」と判明したからって、「ショーンに内緒で市議会パーティーをブチ壊すパフォーマンスをやらかし、エミリーの正体も暴露する」ってのは、底抜けのバカだ。
そのせいで「土地を守るためのパフォーマンス」ということで得ていた賛同の声も一気に減るだろうし、警察沙汰になることでコンテストも失格になっているし、テメエの身勝手な行動のせいで周囲にも多大な迷惑を掛けている。
あと、エディーが身勝手な計画を立てるのはともかく、なんで他の仲間が協力するのか理解に苦しむ。そんなことをしたら、どうなるのか想像できなかったのか。
ジェイソンなんかは「ショーンに説明させるべきだ」と考えていたはずなのに、その計画に乗った理由は何なのか。

エディーがバカをやらかしてショーンと仲違いする展開は、強引極まりない。
まず、「仲間の中でも特にショーンとエディーだけに存在する強い絆」のアピールが不足している。
「ショーンがエミリーと仲良くなり、自分より彼女を優先するようになったとエディーが感じる」という描写も全く足りていない。
「エミリーに親友を奪われた」という寂しさや嫉妬心がエディーを愚かしい行動に走らせるはずなのに、そういう感情を観客に伝えるための描写が弱すぎるのだ。

そもそも、エディーは練習風景を盗撮しており、ショーンとエミリーの会話を聞いている。だから、エミリーがアンダーソンの娘ではあるものの、開発計画に反対し、土地を守ろうとする自分たちの味方になってくれていることは理解しているはずなのよ。
だから、もちろん嘘をつかれていたことに対する怒りはあるかもしれないけど、「アンダーソン側の人間だ」という誤解は無いのよね。
それを考えると、「嘘をついていた」ということだけで暴走しちゃうのは、ちょっと筋書きとして苦しいモノがあるなあと。
そこを「親友を奪われたと感じた」という気持ちの部分で乗り切ろうとしているんだけど、前述した理由によって、それも上手く行っていない。

娯楽映画における当然の帰結として、最終的にショーンとエディーは和解するのだが、そこも薄っぺらいドラマになっている。
一方でエミリーはオーディションに落ちているんだけど、そこはサラッと処理されているので、「そこまで引っ張っていたのは何だったのか」と思ってしまう。
で、最後は「原点に戻ろう」とショーンが言い出してパフォーマンスをやるんだけど、そこに向けた流れが出来上がっていない。
なので、そのダンスにはカタルシスも高揚感も全く感じられないのであった。

(観賞日:2015年4月12日)

 

*ポンコツ映画愛護協会