『スターシップ・トゥルーパーズ』:1997、アメリカ

未来の地球、地球連邦軍に入れば市民権が保障されるという世界。アルゼンチンのブエノスアイレスに住む高校生ジョニー・リコは、恋人のカルメン・イバネスやジョニーに好意を持つディジー・フローレス達と共に、学生生活を送っている。
カルメンが地球連邦軍の艦隊アカデミーに入ることを決めたため、ジョニーは歩兵隊に入ることにした。そんな彼を追って、ディジーも歩兵隊に入ってきた。ジョニーは分隊長になるが、カルメンからは別れを告げられてしまった。
実弾訓練中、ジョニーは判断ミスから仲間を死なせてしまう。除隊を考えるジョニーだが、故郷がバグと呼ばれる巨大昆虫の攻撃を受けて両親が死亡したことを知り、戦うことを決意する。だが、クレンダス星への総攻撃は10万人の死者を出して失敗に終わった。
ジョニーやディジーは新しい隊に所属することになるが、その隊長は高校時代の教師ラズチャックだった。戦闘で活躍を見せたジョニーは、ラズチャックから伍長に任命された。やがて彼らは、オーウェン将軍救出のために惑星Pに向かった。
バグとの戦いの中で、ラズチャックやディジーが犠牲となった。新隊長となったジョニーは、部下を引き連れてバグとの戦いに向かう。カルメンがバグの襲撃を受けていると知ったジョニーは、命令に背いて彼女の救出に向かった…。

監督はポール・ヴァーホーヴェン、原作はロバート・A・ハインライン、脚本はエド・ニューマイヤー、製作はアラン・マーシャル&ジョン・デイヴィソン、共同製作はフランシス・ドゥエル&エドワード・ニューマイヤー&フィル・ティペット、撮影はヨスト・ヴァカーノ、編集はマーク・ゴールドブラット&キャロライン・ロス、美術はアラン・キャメロン、衣装はエレン・ミロジニック、クリーチャー視覚効果監修はフィル・ティペット、宇宙船視覚効果監修はスコット・E・アンダーソン、特殊効果はジョン・リチャードソン、視覚効果監修はケン・ラルストン&アーネスト・D・ファリーノ、音楽はベイジル・ボールドゥリス。
出演はキャスパー・ヴァン・ディーン、ディナ・メイヤー、デニース・リチャーズ、ジェイク・ビジー、マイケル・アイアンサイド、ニール・パトリック・ハリス、パトリック・マルドゥーン、クランシー・ブラウン、マーシャル・ベル、セス・ジリアム、ルー・マクラナハン、エリック・ブラスコッター、マット・レヴィン、ブレイク・リンズレー他。


ロバート・A・ハインラインの小説『宇宙の戦士』を映画化した作品。
監督のポール・ヴァーホーヴェンや脚本のエド・ニューマイヤー、撮影のヨスト・ヴァカーノなど、『ロボコップ』を作ったスタッフが再結集している。

ゴールデン・ラズベリー賞は最低の作品や役者を決める賞だから、普通は対象者が授賞式に参加することは無い。
だが、『ショーガール』が最低作品賞や最低監督賞を受賞した第16回の授賞式、監督のポール・ヴァーホーヴェンは参加してトロフィーを受け取った。
その話を知った時、ポール・ヴァーホーヴェンという人は“分かっているバカ”なのだと私は思った。
そして、この作品は私の認識を再確認させてくれるような内容になっている。
そう、この作品はバカである。
とてつもなくバカなのである。

オツムの中身がアッパラパーな連中の、お気楽ご気楽な青春ドラマが展開される。
進路に関する親子の対立や、男女の恋愛、まさにライトな青春ドラマである。仲間で同じタトゥーを彫って喜んだり、戦いが一段落した後に全員でダンスを始めたりする。
そしてアッパラパーな連中の中でも、特に能無しの男を主人公に据える。女のために軍に入るという時点でバカである。これから敵と戦うという時に、恋人を奪った奴に悪口を言われてケンカを始めたりするのもバカである。

軍隊に入ると、男女は一緒にシャワーを浴びる。
互いにスッポンポンなのに特に何も言わない辺りがバカっぽい。
仲間を死なせたジョニーは処分を受けることになるが、それは公衆の面前での鞭打ち10回。この辺りもかなりバカっぽい。
戦闘シーンが大量に登場する戦争映画を作るとなれば、普通はシリアスでヘビーなテイストになって然るべきだ。
だが、この映画はバカ満開なのである。
戦争を徹底的にコケにしている、あざけ笑っているのである。

いきなりマヌケな軍隊勧誘CMから始まり、「あ、この作品はマジじゃないんだな」と思わせる。勧誘CMは何度か挿入されるが、特にガキどもが小さな虫を踏み潰している映像に「君も地球連邦に参加しよう」とコメントを入れるCMはバカ度数が高い。
エンディングも「戦いに勝利してハッピーエンド」ではなく、「だから君も軍隊に入ろう」という終わり方。最後まで戦争をコケにしている。
とはいえ、知的なシニカルさがあるわけではなくて、低俗で悪趣味な感覚で最初から最後まで突っ走るのである。

好戦的な内容になっているとか、逆に反戦のメッセージが込められているとか、そういうことは全く考える必要が無い。
この映画は、ただ人間と巨大昆虫が戦う、それだけのことである。
そこにメッセージなんて何も無いのである。

さすが鬼畜変態監督ポール・ヴァーホーヴェン、巨大昆虫はゲショゲショと死にまくり、人間もグチョグチョと殺されまくる。
愉快痛快スプラッター。
特に必要があるわけでもないのに、授業で昆虫を解剖するというグロステクなシーンを入れたりもする。

登場人物は総じて魅力が無いし、ストーリーは恐ろしく薄っぺらい。
だが、それは狙い通りである。
キャラクターに感情移入したり、戦いの意味について考えさせたり、そういうことで観客をウェットな気持ちにさせることを拒否しているのだ。
戦闘シーンでは容赦無く人が死んでいく。
だが、登場人物への感情移入が無いこともあって、全く悲壮感は漂ってこない。
むしろ、バカバカしくて笑えてしまう。
人がどんどん殺されていく様子を笑いながら見ることが出来るなんて、素晴らしいじゃないか。


第20回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の作品】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会