『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』:2019、アメリカ

かつて銀河帝国皇帝だったパルパティーンが復活したという情報を得たレイア・オーガナ将軍は、特別隊を派遣した。ジェダイ最後の希望であるレイは、ファースト・オーダーとの最終決戦に備えていた。皇帝の幻影を追うカイロ・レンは、ウェイファインダーを手に入れた。彼は惑星エクセゴルへ赴き、パルパティーンを見つけて殺そうとする。パルパティーンはスノークが自分の作った幻に過ぎなかったことを明かし、願いを聞き入れれば新たな帝国を与えると告げる。彼はレイを殺してジェダイの終わりを実現し、新たな帝国として銀河を支配するようカイロに語り掛けた。
フィンとポー・ダメロンは、チューバッカやR2-D2と共にミレニアム・ファルコンで移動していた。レジスタンスのシンパであるブーリオはフィンたちに、ファースト・オーダー内のスパイから得た情報を引き渡した。タイ・ファイターの部隊に襲撃されたフィンたちは、連続ジャンプでレイやレイア、マズ・カナタやローズ・ティコの元へ戻った。ポーは仲間たちに、パルパティーンが生きていること、復讐のために巨大艦隊のファイナル・オーダーを完成させたこと、16時間後に攻撃を開始することを伝えた。パルバティーンが潜伏している場所は、星図に載っていないシスの星「エクセゴル」だった。
レイは改めてルークの日記を確認し、エクセゴルへ行くにはコンパスの役目を果たすシスのウェイファインダーが必要だと書いてあることを思い出した。彼女はレイアの反対を押し切り、ミレニアム・ファルコンで出撃することにした。フィンやポーたちは同行を決め、一行はパサーナの砂漠へ向かった。カイロはヘルメットを修理させ、それを被って会議に出席した。彼は切断したブーリオの生首をハックス将軍たちに見せ、「幹部の中にスパイがいる」と告げた。
レイたちがパサーナに着くと、42年に1度の祭りが開かれていた。カイロはフォースを使ってレイに語り掛け、「お前を捜し出して暗黒面に導いてやる」と告げた。彼はレイがパサーナにいることを知り、すぐに向かうことにした。ストームトルーパーに見つかったレイたちは、ランド・カルリジアンに救われた。ランドはシスのウェイファインダーが2つしか無いこと、ベストゥーンのオーチが手掛かりを持っていると知ってルークと共に追跡したこと、無人の船が砂漠に放置されていたことを語った。
ファースト・オーダーがパサーナに来たため、レンたちはスピーダーを盗んでラージ渓谷へ向かう。レイたちはトルーパーの攻撃を受け、シフティング・マイアに飲み込まれた。地下トンネルに落ちた一行は、オーチの遺骨と短剣を発見した。C-3POは短剣に刻まれているシスの古代文字を解読し、ウェイファインダーの場所を突き止めた。しかしシスの古代文字を通訳することは、プログラムによって禁じられていた。そこへヴェクシス・スネークが出現するが、深手を負っていると気付いたレイは治療して手懐けた。
地下トンネルを出た一行はオーチの宇宙船を見つけ、脱出するために修理を開始した。レイはフィンに「すぐに戻ってくる」と言い、その場を離れた。フィンはチューバッカに、レイを呼びに行くよう指示した。レイはカイロのタイ・ウィスパーを発見し、ライトセーバーを準備した。レイが変だと感じて彼女の元へ向かったフィンは、チューバッカがトルーパーに捕まる様子を目撃した。レイはカイロのタイ・ウィスパーに突っ込み、片翼を切り落とした。
フィンはレイの元に駆け付け、チューバッカが連れ去られたことを知らせた。レイは離脱しようとする輸送船に気付き、フォースで引き戻そうとする。タイ・ウィスパーから出て来たカイロもフォースを使い、2人は輸送船の引っ張り合いになった。誤って輸送船を爆破したレイは愕然とするが、敵が来たことをフィンたちが知らせたのでオーチの宇宙船で脱出した。彼女はフィンに、時分とカイロがシスの玉座に座る幻影を見たことを打ち明けた。
ハックスはプライド元帥に、輸送船の1隻が失われたこと、もう1隻でチューバッカが捕虜として連行されてきたことを伝えた。C-3POのメモリーにウェイファインダーの記録が残っていることを知ったポーは、キジーミにいる闇の修理屋に頼めば何とかなることをレイたちに告げた。キジーミに到着したレイたちは、ゾーリ・ブリスが率いるスパイス・ランナーズに見つかった。かつてポーはゾーリの仲間としてスパイスの運び屋をしていたが、裏切ってレジスタンスになっていた。
レイが手下たちを制圧すると、ゾーリは協力を承諾した。レイたちは修理屋のバブ・フリックと会い、C-3POのメモリーに記録されているシス語を翻訳してもらおうとする。それには記憶を完全に消去する必要があるが、C-3POはレイの説得で覚悟を決めた。ゾーリはコロニーへ逃げることをポーに話し、「ハイパーレーンは封鎖されてる」と言われるとファースト・オーダーのキャプテン・メダルを見せる。それがあれば、どこでも優先的に着陸することが出来るのだ。一緒に行かないかと誘われたポーは、戦い続ける考えを語った。
C-3POの作業を待っていたレイは、両親がいなくなる時にオーチの船に乗っていたことを思い出した。シス語の翻訳は完了し、エンドアの月にウェイファインダーがあることが判明した。カイロのデストロイヤーが飛来すると、レイはチューバッカが乗っていることを感じ取る。ポーがレイたちと共にチューバッカの救出へ向かおうとすると、ゾーリはメダルを渡して「これでデストロイヤーに乗れる」と教えた。レイたちはメダルを使い、デストロイヤーのハンガーに着艦した。
レイは短剣を手に入れる必要があると考え、フィン&ポーと別れた。フィンとポーはチューバッカを見つけて連れ出そうとするが、敵に包囲されて捕まった。レイは短剣を手に入れるが、そこへカイロが現れた。「お前の本当の正体を知っている。お前も覚えているはずだ」と彼が言うと、レイは感情的になって彼に襲い掛かる。カイロはレイの両親が娘を守るために売ったこと、パルパティーンに捕まって殺害されたことを語り、「皇帝がお前を殺したい理由は会って話す」と姿を消した。
プライドはハックスに、フィンたちの処刑を命じた。ハックスは処刑役のトルーパーを始末し、「私がスパイだ」とフィンたちに告げた。彼は疑われないよう、フィンに自分を撃たせた。レイはカイロと対面し、自分はパルパティーンの孫だと聞かされる。カイロは皇帝がレイの力を恐れて殺そうとしているのだと話し、「2人で皇帝を殺し、玉座に座ろう」と持ち掛けた。そこへファルコンで駆け付けたフィンが「早く」と呼び掛けると、レイは一緒に去った。
プライドはハックスを始末し、「最高指導者にスパイが見つかったと報告しろ」と部下に命じた。レイはパルパティーンを必ず殺すと誓い、エンドアへ向かった。着陸装置が壊れていたため、ファルコンはエンドアに不時着した。レイはデス・スターの残骸を見つけて短剣をかざし、ウェイファインダーの場所を突き止めた。レジスタンスのジャナと仲間がレイたちの元に現れ、フリックから報告を受けたことを告げる。レイが残骸までの案内を求めると、ジャナは「今は危険だから翌朝まで待って」と告げた。
フィンたちがファルコンを修理している間に、レイはデス・スターの残骸へ向かった。彼女はウェイファインダーを手に入れるが、カイロに奪われた。カイロはウェイファインダーを破壊し、「エクセゴルには俺と一緒に行くしかない」と告げる。レイは激怒し、カイロに襲い掛かった。フィンはファースト・オーダーの脱走兵だったジャナと共に残骸へ行き、戦うレイを見て呼び掛けた。レイは彼を吹き飛ばし、カイロとの戦いを続けた。
カイロはレイを追い詰めるが、自身に語り掛けるレイアの死を感じ取った。カイロの動きが止まり、レイは彼の腹を突き刺した。すぐに彼女はフォースでカイロを治療し、「貴方の手を取りたかった」と告げて去った。カイロの前にはハン・ソロの幻影が現れ、「俺の息子」と呼び掛けた。カイロが「息子は死んだ」と言うと、ハンは「カイロ・レンは死んだが、俺の息子は生きている」と語る。「さあ帰ろう」とハンが促すと、カイロは「もう遅い、母は死んだ」と口にする。ハンは「母さんは死んだが、その志は生きている」と告げ、カイロが「やるべきことは分かっているけど、やれる自信が無いんだ」と弱音を吐くと「やれるとも」と励ます。カイロがライトセーバーを荒海に投げ捨てると、ハンは姿を消した。
パルパティーンが送り込んだスター・デストロイヤーの攻撃で、惑星キジーミは一瞬にして破壊された。パロパティーンはレジスタンスに対し、銀河の征服を宣言した。亡きレイアから後継者に指名されたポーが不安を漏らすと、ランドが「彼女たちは強いきずながあったから勝てた」と告げた。フィンはポーに、オーチがレイをパルパティーンの元へ運ぼうとしていたという情報を教えた。ダークサイドに堕ちることを危惧したレイが姿を隠そうとしているとルークが現れ、「君がパルパティーンの娘なのはレイアも知っていた。君の魂を見通していたのだ」と告げた。
ルークはレイに「血よりも強い物がある。パルパティーンから逃げていたら、待っているのは敗北だ」と説き、レイアのライトセーバーが隠されている場所を教える。彼は「ジェダイの魂は君に引き継がれた。これは君の戦いだ」と言い、ウェイファインダーとXウイングを用意した。レイはXウイングに乗り込み、エクセゴルへ向かう。ポーたちはXウイングの信号をキャッチし、レイが乗っていると確信する。彼らはファイナル・オーダーを倒す計画を立て、行動を開始した…。

監督はJ・J・エイブラムス、キャラクター創作はジョージ・ルーカス、原案はデレク・コノリー&コリン・トレヴォロウ&J・J・エイブラムス&クリス・テリオ、脚本はクリス・テリオ&J・J・エイブラムス、製作はキャスリーン・ケネディー&J・J・エイブラムス&ミッチェル・レジワン、製作総指揮はカラム・グリーン&トミー・ゴームリー&ジェイソン・マクガトリン、共同製作はピッパ・アンダーソン&キャンディス・カンポス&クリス・フリア、製作協力はヌール・ダルダリ、撮影はダン・ミンデル、美術はリック・カーター&ケヴィン・ジェンキンズ、編集はメリーアン・ブランドン&ステファン・グルーベ、衣装はマイケル・キャプラン、視覚効果監修はロジャー・ガイエット、特殊クリーチャー効果はNeal Scanlanニール・スキャンロン、視覚効果プロデューサーはジャネット・レウィン&ステイシー・ビッセル&T・J・フォールズ、特殊効果監修はドミニク・テューイ、音楽はジョン・ウィリアムズ。
出演はキャリー・フィッシャー、マーク・ハミル、アダム・ドライバー、デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック、アンソニー・ダニエルズ、ビリー・ディー・ウィリアムズ、イアン・マクダーミド、ナオミ・アッキー、ドーナル・グリーソン、リチャード・E・グラント、ルピタ・ニョンゴ、ケリー・ラッセル、ヨーナス・スオタモ、ケリー・マリー・トラン、グレッグ・グランバーグ、ビリー・ラード、ドミニク・モナハン、ハッサン・タージ、リー・タワージー、ブライアン・ヘーリング、デイヴ・チャップマン、ロビン・ガイバー、リン・ロバートソン・ブルース、クレア・ロイ・ハーヴェイ、リチャード・クームス、マット・デントン他。
声の出演はシャーリー・ヘンダーソン他。


「スター・ウォーズ」シリーズのエピソード9となる作品で、「スカイウォーカー・サーガ」の完結編。
監督は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のJ・J・エイブラムス。
脚本は『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』『ジャスティス・リーグ』のクリス・テリオとJ・J・エイブラムス監督による共同。
続三部作のレギュラー陣は、ルーク役のマーク・ハミル、カイロ役のアダム・ドライバー、レイ役のデイジー・リドリー、フィン役のジョン・ボイエガ、ポー役のオスカー・アイザック、C-3PO役のアンソニー・ダニエルズ、チューバッカ役のヨーナス・スオタモ、コニックス役のビリー・ラード。

ハックス役のドーナル・グリーソン、マズ役のルピタ・ニョンゴ、ローズ役のケリー・マリー・トランは、前作に続いての出演。
ランド役のビリー・ディー・ウィリアムズとパルパティーン役のイアン・マクダーミドは、旧3部作からの復帰。
他に、ジャナをナオミ・アッキー、プライドをリチャード・E・グラント、ゾーリをケリー・ラッセル、ウェクスリーをグレッグ・グランバーグ、ボーモントをドミニク・モナハンが演じている。
レイア役のキャリー・フィッシャーは死去したため、今回の出演シーンは全てアーカイヴ・フッテージ。

いつものように下から出て来る文字による説明で映画は始まるが、ここでパルパティーンの復活に触れている。
この時点で、「おいおい」と言いたくなる。
なんでもかんでも旧3部作のキャラクターを登場させれば、シリーズ初期から見ている観客が手放しで喜んでくれるわけではないのよ。
パルバティーンに関しては、旧3部作で死んだはずで。そういうキャラを安易に復活させちゃうのは、「新シリーズで自分たちが誕生させたキャラに充分な魅力が備わっていない」と認めているようなモンだぞ。

どうやら当初の予定では、エピソード9にパルパティーンは登場しなかったようだ。
前作の結果を踏まえて、彼が登場する内容に脚本が変更されたらしい。
エピソード8の監督を務めたライアン・ジョンソンは、今までのシリーズからの脱却を図って「スクラップ」ばかりに意識を取られ、「ビルド」に失敗した。
そのせいで多くのファンから酷評を浴びてしまったため、ウォルト・ディズニー・カンパニーとJ・J・エイブラムスはライアン・ジョンソンが敷いた路線を引き継がないことに決めたのだ。

そこでウォルト・ディズニー・カンパニーとJ・J・エイブラムスが採用したのは、「ライアン・ジョンソンが前作で用意した設定を脇に追いやったり無かったことにしたりする」という方法だった。
「監督が交代した作品が酷評を浴び、戻って来た監督が無かったことにして次の作品を手掛ける」ってのは、どこかで聞いたようなケースだと思うかもしれない。
その既視感は正解で、『X-MEN』シリーズでブライアン・シンガーがやっていた。

ウォルト・ディズニー・カンパニーもJ・J・エイブラムスも、自分たちでライアン・ジョンソンをエピソード8の監督に起用し、完成した作品に納得していたからこそ公開したはずだ。
しかし酷評を浴びると全ての責任をライアン・ジョンソンに押し付け、掌返しに出た。そしてジョージ・ルーカスが旧3部作で生み出した財産に頼り、そこを食い潰すことに終始した。
彼らはジョージ・ルーカスをシリーズから追い出して、「自分たちの都合のいい『スター・ウォーズ』シリーズ」を生み出そうとした。
そのくせ、結局は彼が残した遺産に頼ることしか出来ていないのだ。

ライアン・ジョンソンのツケを支払わされている部分にも問題はあるが、そもそもエピソード7からダメだったからね。
何もかも破壊しただけで終わらせたライアン・ジョソンンが全て悪いのではなく、ただのファン・ムービーだったエピソード7の問題も大きいのよ。2作で抱え込んだ負債がデカすぎて、手に負えなくなっているのだ。
それは旧3部作の遺産だけで賄えるようなレベルじゃないのよ。
アクションシーンも旧シリーズの焼き直しばかりで、それなりのアップデートはあるけど、「どこかで見たような」というシーンばかり。新シリーズならではのアクションシーンは見当たらない。今までとは全く違うガジェットを使ったようなシーンも無い。

新3部作で魅力的なキャラクターを生み出すことが出来ていないから、旧3部作の登場人物ばかりが目立つ結果になっている。
前述したパルパティーンだけでなく、演者のキャリー・フィッシャーが亡くなっているレイアにまで頼らざるを得なくなっている。雑な扱いで殺害したハン・ソロも「カイロの記憶」という形で復活させ、そこにも頼っている。
前作で酷い扱いだったルークも幽霊として再登場させているが、まるで取り戻せていない。
その一方で、前作で不評だったローズの出番は大幅に減らされており、恋愛劇は無かったことにされている。
あと、話としても、今回はエピソード6をなぞっているんだよね。

冒頭でカイロはウェイファインダーを手に入れているんだけど、その時点ではそれが何なのかサッパリ分からない。
後でエクセゴルの場所を突き止めるためのコンパスってことが明らかになり、「だからカイロはウェイファインダーを手に入れてからパルパティーンの元を訪問していたのだ」ってことも理解できるようになる。
でも、理解は出来るけど、説明が下手だとは感じるぞ。
連続ジャンプで戻って来たポーはミレニアム・ファルコンを燃やしたことでレイに責められ、逆にBB-8を壊した彼女を責めて口論になる。この口喧嘩のシーンは、何のために用意したのかサッパリ分からない。
緩和の役目を果たしているわけでもなく、単に時間の浪費だ。

レイが修業を積むシーンでは、彼女が森を駆け回ったりライトセーバーを振り回したりする様子が描かれる。でも、ただ適当に動いているだけにしか見えない。
「こうすればフォースを使いこなせる」とか、「こういうことが起きれば課題をクリアしたことになる」という明確な目標が設定されていないので、ボンヤリしたシーンになっている。
そんなシーンはカイロが潰れたヘルメットを触る様子とカットバックになっているが、その演出の意図は不明だし、少なくとも明確な効果は得られていない。
最終的にレイは様々なフラッシュバックで気持ちが乱れて修業を取り止めるのだが、ここで彼女の焦りや苦悩を上手く表現できているとは言い難い。

カイロはダース・ベイダーのヘルメットに固執し、壊れても修理して使い続ける。でも、そこまでしてこだわっているくせに、やたらと脱いで素顔を見せたがる。
お前は『ジャッジ・ドレッド』のシルヴェスター・スタローンかよ。
そもそもベイダーのヘルメットに固執している時点で、シャア・アズナブルの真似をしているフル・フロンタルみたいなモンだからね。空っぽの人間だからね。
3作目になっても、彼は巨悪になることは出来ずに終わっている。まあ彼は暗黒面から脱却するのでラスボスじゃないんだけど、じゃあラスボスは誰なのかと言うとパルパティーンになっているわけで。 つまり、新3部作としての魅力的な「悪の華」を登場させられていないのよ。

この新シリーズに入ってから、フォースが「何でも出来るチート能力」になってしまっている。
今回も離れた場所の首飾りを奪い取ったり、ヴェクシス・スネークの傷を治療したり、輸送船を引き付けたり、ストーム・トルーパーに味方だと思わせたり、様々なことに使われる。
あまりにも万能すぎて、困ったことがあれば「フォースの力」ってことで都合良く処理するための道具になっている。
フォースってのは、そんな御都合主義の塊のような道具じゃなかったはずでしょうに。

チューバッカが連れ去られるのは、元はと言えばレイがフィンたちに目的も言わず勝手に行動したのが原因だ。だからフィンが呼びに行くようチューバッカに頼み、その結果として拉致される羽目になっている。
カイロが来たのに気付いても、単独行動を取る必要は無いでしょ。ちゃんと仲間に言えばいいでしょ。
あとカイロの方も、フォースト・オーダーという組織のトップなのに、なんで単独行動なんだよ。
こいつら、ホントに身勝手なんだよな。

レイとカイロが輸送船を引っ張り合う様子は「緊迫感のある対決シーン」として描かれているが、ただのバカバカしい力比べでしかない。
カイロの方は、輸送船じゃなくてレイに対してフォースを使ったり攻撃したりすればいいでしょ。レイが逃げる時、カイロが何もせず傍観しているのもバカにしか見えないし。
あと、そこで「チューバッカは死んだ」と見せ掛けているのに、直後のシーンで「別の輸送船で連行されていた」ってのを明かすのはアホすぎるだろ。
「輸送船は2つあった」という設定は卑怯な後出しジャンケンにしか思えないし、直後に明かすからレイが罪悪感を抱いたり「チューイのために」と決意を固めたりしているのがバカらしくなるし。

ハックスはフィンたちを助けてスパイだと明かした後、「疑われないように」ってことで自分を撃たせる。
ここで分かりやすく死のフラグを立てており、次に登場するとプライドに始末される。
彼はレジスタンスに共鳴して助けていたのではなく、「カイロが負けるのを見たいから」ってのが理由だ。その程度のキャラなので、簡単に使い捨てにされている。
フォースも都合良く利用されていたが、ハックスも同じぐらい都合良く使われている。

翌朝まで待つよう言われたレイが単独でデス・スターの残骸へ行くのも、ただの身勝手な暴走でしかない。こいつはシリーズを通して何も成長しておらず、むしろ退化しているんじゃないか。
そんなレイは錨に燃えてカイロと戦うのに、いざ腹を突き刺して彼が死にそうになると、慌てて治療する。そこでもフォースは都合良く使われているし、バカバカしいマッチポンプにも呆れてしまう。
そしてレイに救われたカイロはハンと出会い、改心する。
ダークサイドに堕ちたカイロが両親の良心によってジェダイの魂を取り戻すってのは、話の作り方としては間違っちゃいない。決して間違っちゃいないけど、陳腐なドラマになっている。

レイをパルパティーンの孫娘という設定にしたことで、「なぜ両親はパルパティーンに反旗を翻すようになったのか」など、色々な疑問が生じるようになっている。
あと、前作で「誰でもジェダイの騎士になれる」と匂わせておいて、それは無かったことにするのね。そして、「選ばれた者しかフォースを扱うジェダイの騎士になることは出来ない」という設定に戻しちゃうのね。
で、そんな選ばれし者であるレイは、映画の最後に名前を問われて「レイ・スカイウォーカー」と名乗る。でも「いや違うよ」と冷静に否定したくなるわ。
ルークから少しぐらい教わっただけで、勝手にスカイウォーカーを名乗るんじゃねえよ。アンタにそんな資格はねえよ。

(観賞日:2021年8月6日)

 

*ポンコツ映画愛護協会