『スター・トレック/叛乱』:1998、アメリカ

惑星連邦とソーナ人は、辺境にあるバクー星の村を共同で調査していた。彼らはホログラムで基地と隊員の姿を隠し、密かに観察を行っていた。だが、調査隊に参加していたデータ少佐が、急に発砲して暴れ出した。村人たちが逃げ惑う中、基地からの指令を受けた隊員たちはデータを制止しようとする。しかしデータは他の隊員を蹴散らしてホログラムを解除し、基地が見える状態にしてしまった。
エンタープライズEのピカード艦長は、テクノロジーの遅れた惑星のレセプションに参加して市長のキューザーと会うことになった。評議会が連邦の保護領にすることを決定したため、ピカードが外交担当として面会する司令を受けたのだ。そこへ転任した元戦術主任のウォーフが姿を見せたので、ピカードは再会を喜んだ。レセプション会場にいるピカードの元へ慌てた様子のラフォージ機関部長が現れ、セクター441でソーナ人の艦に同乗しているドハティー提督から緊急通信が入ったことを報告する。ドハテイーはデータ少佐の設計図を送るよう要求して来たが、その目的は教えてもらえなかったという。
ドハティーと通信を繋いだピカードは、原因不明の誤作動を起こしたデータが人質を取り、呼び掛けに全く応じないことを説明した。ピカードが「2日後に、そちらへ到着します」と言うと、ドハティーは「いや、それは良くないだろう。君の顔は、この地域特有の環境に合わないかもしれない」と述べた。ドハティーは「分析は済んでいないが、茨の草原と呼ばれる放射能域があって、通信できる場所への移動に1日費やした。とにかく設計図を送ってくれ」と語り、通信を終わらせた。
ソーナ人のリーダーであるルアフォは、ドハティーに「村人に気付かれずに調査するなどと連邦が言うからだ」と文句を言う。「住民への影響を考慮しているものですから」とドハティーが言うと、彼は「住民と言っても、たかが600人だ」と口にした。ソーナ星が近付く中、艦はフェーズ攻撃を受けた。ドハティーたちが映像で確認すると、攻撃を仕掛けて来た偵察艇を操縦しているのはデータだった。
ピカードはウォーフをDS9から借り受け、エンタープライズEでバクー星へ向かっていた。ピカードはライカー副長と医療主任士官のビヴァリーに、ソーナ人の共同調査のファイルを読んでおくよう指示した。ファイルによると、ソーナ人は50年前に2つの原始種族を征服し、労働者階級として統合した。ソーナ人は麻酔薬を大量に生産し、使用することで知られている。条約で禁じられた兵器を持っているという噂もあるという危険な種族だったが、なぜか連邦は協力体制を取っていた。
通信が回復したため、ピカードはソーナ人の艦に連絡を取った。ドハティーは彼にデータが攻撃して来たことを語り、「攻撃チームを送ることでルアフォ提督と合意した」と述べた。ビカードがデータの捕獲作戦を立てていることを訴えると、ドハティーは12時間だけ猶予を与えた。ピカードはウォーフと共に小型艇に乗り、あらゆる通信チャンネルを使ってデータと連絡を取ろうとする。データの攻撃を受けたピカードは彼に呼び掛けるが、応答は無かった。
ピカードは出発前にデータが練習していたオペレッタの曲を思い出し、それを歌った。すると、その声を聴いたデータは一緒に歌い出した。ピカードはウォーフに指示し、小型艇を偵察艇にドッキングさせた。ウォーフがデータの機能を停止させて捕獲した後、ピカードはクルーを連れて村に降り立つ。そこにはソーナ人の司令官であるガラティンや、ドハティーの部下であるカーティス大尉たちの姿があった。ピカードはドハティーから隊員たちが村で人質になっていると聞かされていたが、手厚い歓待を受けているという。
村長のソジェフがピカードたちに挨拶し、武器を降ろすよう穏便な態度で申し入れた。人質になっていると思っていたことをピカードが釈明すると、ソジェフは「あの人口生命体が帰還を許さなかった。彼らは私の敵で、もっと来ると言っていた」と話す。ピカードが「我々は他の文化圏に干渉しないのが大原則なんだ」と語ると、ソジェフと一緒にやって来たバクー人女性のアニージュは「その大原則では他の文化圏をスパイすることは禁じていないの?」と皮肉っぽく述べた。
ピカードはバクー人がデータの修理を試みたことを知り、驚いた表情を見せた。進んだテクノロジーを持つ種族には見えなかったからだ。ソジェフは「私たちは、そういう技術を生活に持ち込まない生き方を選んだんです。人の仕事をさせるために機械を作れば、人の能力は奪われる」と話し、アニージはワープ航法の技術も持っていることを口にした。ピカードから報告を受けたドハティーは、「では準備を整えて元の任務に就きたまえ。我々もそちらに戻るから、ランデヴー・ポイントを設定する。そこでクルーと機材を引き取る」と語った。「まだ調査を?」とピカードが困惑すると、ドハティーは「最後の詰めだけだ」と述べた。
ジョーディーはデータのチップを分析し、ソーナ人の攻撃による損傷が誤作動の原因だと断定した。ピカードは「しかし報告によれば、データが誤作動を起こしたから撃ったことになっているが」と尋ねると、ジョーディーは「そうは思いませんね。撃たれたことでデータの安全システムが作動したんです。倫理判断が全ての機能を支配するんです。善悪が全てです。メモリー損失を利用しようとする行為に対抗するためのものです」と述べた。
メモリーチップを取り外して正常な状態に戻ったデータに、ピカードは「任務に関して最後に覚えていることは?」と問い掛ける。するとデータは、偽装スーツでバクーの地質調査をしていたこと、子供を追って丘に入ったことを話す。ピカードはソジェフたちと共に、その時のアーティムという少年に会った。一行は彼に案内してもらい、丘へ向かう。エンタープライズに通信を入れたドハティーはピカードが上陸していることを知り、ライカーに「約束の12時間は過ぎたぞ」と苛立ったように言う。肉体再生を何度も繰り返していたルアフォは「そろそろ限界ですね」と部下に告げられ、「もう必要は無くなる。連邦の友人が計画を成功させてくれたらな」と述べた。
丘の近くにあるダム湖に来た時、データは水中からニュートリノの放射反応があることを知った。彼は不思議に感じながら、水中へ潜った。陸に戻ったデータは「ニュートリノを放射している原因が分かりました」と言い、放水作業を行う。水位の下がった湖から一隻の船が姿を現し、データは「あれは宇宙艦隊の船です」と告げた。ピカードとデータが船に近付こうとすると、アニージュが同行を求めた。
ピカードたちがイカダで船に近付くと、不完全なホログラムの映像が使われていた。それはバクーの村をコピーした映像だった。ピカードは「誰かが作ったとすれば、それはバクーを騙すためだ。星から退去させ、目を覚ますと知らない内にホロシップへ転送され、宇宙を飛行する。何日か経過して似たような星に降ろされれば、気付くことも無い」と口にする。しかし連邦とソーナがバクーの民族移動を目論んだ理由については、ピカードには理解不能だった。
ガラティンが攻撃して来たので、ピカードとデータが反撃して捕まえた。エンタープライズEに戻ったピカードは、上陸していたクルーの代謝が活性化して筋力も付いていることをビヴァリーから聞かされる。自分も以前より若くなっていることに気付いたピカードは、バクーの村へ戻った。ソジェフは彼に、「我々のいた星系は自滅寸前だった。あらゆる技術を駆使した武器が、全ての命を脅かしていた。そこで我々は新しい故郷を探し、309年前に旅立った」と語った。
ソジェフによると、村の住民たちは来た時から全く年を取っていない。それどころか、以前より元気になっているという。この星は特殊な超フェーズの放射線を放出しており、それが体の組織を再生し続けているのだとアニージュは説明した。ただし、成長途中の体には影響を及ぼさないため、アーティムは見た目通りの12歳だった。ピカードは「この星で受ける恩恵は、外から来た者にとっては何よりの宝だ。もしデータがいなければ、今頃は全員、他の星に移住させられていた」と語った。
ソジェフが「もし武器を取れば、我々も相手と同じだ」と言うと、ピカードは「その心配は無い。今回の計画は貴方たちだけではなく、我々にも秘密にしたほどの違法行為だ。私が許さない」と述べた。ジョーディーはピカードに、視神経の周囲の細胞が再生して目が見えるようになったことを話す。彼は嬉しそうに、「一時的な現象でも、この星を出る前に朝日を見ることが出来て良かった」と述べた。
ピカードが艦長室にいると、ルアフォがドハティーを伴って怒鳴り込んで来た。「私の部下を解放しないとは、どういうことだ」という質問に、ピカードは「ホロシップを見つけました」と述べた。ルアフォは「部下を返さないと船を破壊し、同盟を破棄する」と通告して立ち去った。ドハティーはピカードに「本件は連邦評議会に連絡します」と言われ、「私は評議会の命令で動いている」と告げた。
「なぜ大原則に違反する命令が出るんです?」とピカードが訊くと、ドハティーは「違反などしていない。バクーはそもそも移住民だし、不老不死も偶然の結果に過ぎない。彼らの進化過程を元に戻すだけだ」と話す。「なぜ評議会が彼らの進化過程を決定できるんです?」とピカードが憤りを口にすると、ドハティーは「バクーはたったの600人だ。我々がこの放射線を使えば、何千億の民を救うことが出来る。ソーナはこの星のリングから放射線を集める技術を開発したんだ」と述べた。
ドハティーが「この放射線で寿命は何倍も延びる。新しい医療技術も開発される」と言うと、ピカードは「茨の草原全てが放射線の領域なのに、あの星にこだわる理由は何です?」と尋ねる。ドハティーが「あの星のリングが最も都合がいいらしい」と話すと、ピカードは「計画を延期して、技術を部下に分析させて下さい」と要求する。ドハティーの「既に連邦最高のチームが分析した。何をどう見ても分からん」という答えに、ピカードは「では、ソーナは分かるまで、あの星に住まわせてもらえばいい」と告げた。
ドハティーは「地上で放射線を浴びるだけでは、元気になるまで10年は掛かるそうだ。その前に死ぬ者もいるだろう。それに、誰が茨の草原の真ん中に住むかね」と説得するが、ピカードは「これはバクーの文化を滅ぼす行為です。歴史上、強制移住させられた民族がどんな辛酸を舐めたか、御存じですか」と反対する。「たった600人だ」というドハティーの言葉に、ピカードは「だったら何人であれば動かすことが出来ないんですか。何人なら悪いんですか」と反発した。
ドハティーは「今すぐ次の任務に出発しろ。ソーナのクルーは解放しろ。評議会への抗議は、後で幾らでもするがいい。しかし今の時点では、私が上官だ」と強硬な態度で言い、その場を去った。ピカードはガラティンを解放するが、ドハティーの命令に応じるつもりは全く無かった。彼は単独でバクーを助けに行こうとするが、それを知ったライカーやデータたちも同行を申し入れた。ピカードは「向こうも星に人がいる間は何も出来ない。そこで出来るだけ地上に人を留まらせておく」と考えを述べた。
ピカードはライカーとジョーディーに、「戻って評議会に、バクーが苦しむ様子を映像で見せ付けてやれ。顔も知らない人々の苦しみは、なかなか伝わりにくい」と告げた。ルアフォはガラティンに、「朝までに全員を退去させろ。ピカードたちが邪魔したら殺せ」と命じた。村に到着したピカードは、住民たちに避難の準備をさせた。データが転送妨害装置をセットし、ピカードがソジェフとアニージュに計画を説明していると、ソーナ人の戦闘機が飛んで来た。ピカードは住民たちを引き連れ、カルボライトの山にある洞窟へ向かう…。

監督はジョナサン・フレイクス、TVシリーズ創作はジーン・ロッデンベリー、原案はリック・バーマン&マイケル・ピラー、脚本はマイケル・ピラー、製作はリック・バーマン、共同製作はピーター・ローリットソン&マイケル・ピラー、製作協力はパトリック・スチュワート、製作総指揮はマーティン・ホーンスタイン、撮影はマシュー・F・レオネッティー、編集はピーター・バーガー、美術はハーマン・ジマーマン、衣装はサーニャ・ミルコヴィック・ヘイズ、音楽はジェリー・ゴールドスミス。
出演はパトリック・スチュワート、ジョナサン・フレイクス、ブレント・スピナー、レヴァー・バートン、マイケル・ドーン、ゲイツ・マクファーデン、マリナ・サーティス、F・マーレイ・エイブラハム、ドナ・マーフィー、アンソニー・ザーブ、グレッグ・ヘンリー、ダニエル・ヒュー・ケリー、マイケル・ウェルチ、マーク・ディーキンス、ステファニー・ニズニク、マイケル・ホートン、ブルース・フレンチ、ブレオン・ゴーマン、ジョン・ホステッター、リック・ワーシー、ラリー・アンダーソン、D・エリオット・ウッズ、ジェニファー・タン、レイ・バーク、ペギー・マイリー他。


スター・トレックの2番目のシリーズ「The Next Generation(新スタートレック)」の劇場版第3作。
『スタートレック』の劇場版としては9作目。
ピカード役のパトリック・スチュワート、ライカー役のジョナサン・フレイクス、データ役のブレント・スピナー、ジョーディー役のレヴァー・バートン、ウォーフ役のマイケル・ドーン、ビヴァリー役のゲイツ・マクファーデン、トロイ役のマリナ・サーティスはTVシリーズのレギュラー。ルアフォをF・マーレイ・エイブラハム、アニージュをドナ・マーフィー、ドハティーをアンソニー・ザーブが演じている。
監督は前作に引き続き、ライカー役のジョナサン・フレイクスが務めている。

今さら言うまでも無いが、TVシリーズを全く見ておらず、何の予備知識も無い人は、まず物語に付いて行くことは無理だろう。
劇中で交わされる「タキオン砲を撃てばシールドを調整する必要が出て来ます。その時に転送できます」「ポジトロニック・マトリックスにフェーズの変動があって修理できなかった」「丘に多量のカルボライトがあって、トリコーダーの障害になっています」といった台詞も、なんのこっちゃ分からないだろう(それらはトリコーダーを除けば、TVシリーズ云々という問題ではなくて、科学的な知識や専門用語を知っているかどうかの問題だけど)。
ともかく、トレッキーだけを客層とするマニアックな映画であることは確かだ。
そして、この批評を読む人には、私がトレッキーでないことをあらかじめ断っておく。

邦題のサブタイトルに「叛乱」とあるが、原題でも同じ意味の「Insurrection」という言葉が使われている。
そのタイトルが示す通り、劇中ではデータの連邦&ソーナ人に対する叛乱や、ピカードの連邦に対する叛乱など、複数の叛乱が盛り込まれている。
だけど、それが今一つ物語を盛り上げるために機能していないんだよな。
例えばデータの叛乱に関しては、それが彼の本意ではない単なる誤作動であることも、すぐにピカードたちが元に戻しちゃうことも容易に推測できるから、そんなに危機感は感じない。実際、ピカードも全く慌てておらず、冷静に対処しているし。

ピカードの叛乱に関しても、敵側に評議会の命令を受けたドハティー提督がいるから「連邦への叛乱」のように見えるけど、実際に「敵」として見えている連邦の人間はドハティーだけだ。その背後にある「連邦」という巨大組織は見えて来ないので、スケールの大きさは感じられない。
それに、ピカードたちが連邦に対して叛乱を起こすという風に見せているにもかかわらず、ちっとも緊迫感が高まらないし。
前半からエンタープライズの面々のノンビリした様子が何度も描かれているけど、本来は危機感を抱いたり緊迫感が漂ったりすべき箇所でも、なんかユルいんだよな。
ピカードとアニージュの恋愛劇とか、「何を悠長にやってんのよ」と言いたくなる。

「ピカード艦長たちが牧歌的生活をしている人々と出会い、勝手に別の場所へ移住させようとしている連中から守ろうとする」というのが、今回のプロットである。
テクノロジーを拒否して原始的な生活を送っているバクーの人々は、アーミッシュみたいなモンだ。
ただしアーミッシュと大きく異なるのは、バクー人は単に「テクノロジーを放棄した原始的な人々」というだけでなく、「年を取らない」という恩恵を受けているってことだ。

バクー人が「年を知らない」という恩恵を受けていることが、この映画の評価に大きな影響を与えている。
それも悪い意味で。
というのも、不老不死ってのは多くの人々が夢見ることであり、その夢を手に入れられている時点で、かなりの「勝ち組」と言える。
だから、そんな連中が「被害者」としてピカードたちに守護されるという構図を、どうにも素直に受け入れ難い。
そもそも彼らは最初から不老不死だったわけじゃなくて、その星に移住してから不老不死になったのだ。だから別の星に移住したとしても、元に戻るだけだ。

もちろん、騙し討ちで自分たちの星を奪われ、勝手に他の場所へ移住させられるってのは、怒って当然だ。
だけど、そもそも彼らだって、そこが故郷だったわけではない。最初に見つけただけのことだ。
そりゃ最初に見つけた奴が権利を主張するのは当然だから、彼らが被害者であることは間違いないんだけど、でも他の星に移住したとしても、普通の人間のように年を取るだけのことだ。
年を取ったら死ぬってのは、当たり前でしょ。
彼らが「故郷を奪われる」ということに対して怒りや悲しみを抱くということなら素直に共感できるんだけど、「不老不死の権利を奪われる」ということに対する抵抗にしか見えなくて、だから納得しかねるんだよなあ。

それと、そんなバクー人を追い出そうとするソーナ人が、悪人として弱いってのも問題だ。
ソーナ人が極悪で冷酷で残虐な連中であれば、そういう連中に迫害されるバクー人に対する同情心は高まったかもしれない。
だけどソーナ人が不老不死の力を手に入れるための方法って、「バクー人を騙して別の星に移住させる」というものなんだよね。「邪魔だから始末しよう」ってことではないのよ。
もちろん非道な連中ではあるんだけど、悪党にとしては、かなり穏便な手口なんだよね。
後半には戦闘機が村に来るけど、攻撃目標は転送妨害装置であり、逃げ出す住民を殺そうとするわけじゃない。山を移動中にも飛んで来るけど、目的は転送させることであって殺害じゃない。
残り20分ほどになってルアフォは地上に残った連中を犠牲にしようとするけど、大半は既に星から移動した後だし。

そんなわけだから、「ピカードたちがバクー人に味方してソーナ人と戦う」というのは、分かるっちゃあ分かるんだけど、応援したい気持ちはそんなに高まらないのよね。
善悪の色分けをハッキリさせて、誰にでも分かりやすいシンプルな勧善懲悪の構図にしているはずなんだから、もっと善は善、悪は悪としてのアピールを強めるべきなんじゃないかと。
なんで、どっちもヌルくしているのかと。
ルアフォなんて、ヨボヨボになりながら必死で生き長らえようとしているので、ちょっと哀れだし。

終盤、バクーとソーナが同じ民族であること、1世紀ほど前にバクーの若い集団が訪問者に付いて出て行ったこと、村の乗っ取りに失敗して追放されたことが明らかになる。
ピカードが言うように、今回の一件は「親に追い出された子供たちが、親を追い出そうとしただけ」であり、彼らは親子喧嘩に首を突っ込んだだけだ。
宇宙規模の親子喧嘩って、『伝説巨神イデオン』かよ。
それはさておき、ピカードの説得でガラティンが同じ民族としての意識を取り戻し、ルアフォを裏切る。ルアフォだけが悪人として命を落とし、他の連中は停戦して親と和解する。
そして、連邦がバクー人を勝手に移住させようとした行為の是非に関する問題提起は、完全に忘れ去られる。

中盤、ピカードから「どうやってそんなに精神力を鍛えたんだ?」と問われたアニージは、「死の恐怖が無いと、人は変わるの。過ぎたことにはクヨクヨと悩まなくなるし、明日の計画も立てない。宇宙の本質は一瞬に凝縮されている。それを私たちは知ったわ。ほとんどの人は、それを知らずに過ぎて行く」と語る。
「不老不死って素晴らしいことよ」と賛美しているわけだが、この考え方にピカードは反論せず、映画が終わるまで誰にも否定されない。
つまり映画として「不老不死の方は素晴らしい」という答えで終わっているわけだが、それでホントにいいのか。少なくとも「普通に年を取ることで得られるモノもある」とか「不老不死にも虚しいことはある」とかいう意見を用意した方がいいんじゃないのか。
全面的に不老不死を肯定して終わるってのは、納得しかねるなあ。

(観賞日:2013年10月5日)

 

*ポンコツ映画愛護協会