『スター・トレック BEYOND』:2016、アメリカ

惑星連邦所属のカーク艦長はフィボナン最高評議会に委託され、停戦調停のためにティーナックス代表団と対面する。評議会からの贈り物として、彼は古代武器の一部であるアブロナスを見せた。フィボナンの文化では、武器を差し出すのが和平の印だった。ティーナックス代表団は「盗んだのだな。我々を皆殺しにするつもりだ」とヒステリックな反応を示し、カークに襲い掛かった。カークはスコッティーに指示し、エンタープライズ号へ転送してもらった。
5年間の任務の3年目に入ったカークは、宇宙探査に行き詰まりを感じるようになっていた。エンタープライズ号の乗組員は、最新鋭で地球から最も遠いヨークタウン基地で休息を取ることになった。スポックはバルカン人の使者から、老スポックの死を知らされた。ポッドで脱出したカラーラという女性がヨークタウンに辿り着き、科学調査で星雲の中にいたら船が危機的なダメージを受けたこと、近くの惑星に不時着したことを惑星連邦の面々に説明した。
星雲を飛んで救助に向かうよう要請するカラーラの言葉を聞いたカークは、エンタープライズ号から星雲を飛べるとパリス提督に告げる。カークは副提督へ昇格してヨークタウン基地で勤務することを希望し、エンタープライズ号の艦長にスポックを推薦した。アルタミッド星へ向かったエンタープライズ号は、艦隊との連絡が取れない状況下で小型宇宙艇の軍団に攻撃される。ワープエンジンを破壊されて乗組員は脱出不能となり、クラールというリーダーが部隊を率いてエンタープライズ号へ突入した。
クラールは倉庫からアブロナスのケースを盗み出し、カークは損傷の激しいエンタープライズ号を放棄しようと決断した。彼はシル少尉に指示を出し、円盤部の切り離し作業に向かう。クラールに襲われたカークは、ウフーラの機転に救われた。カークはスールーの元へ辿り着き、円盤部にいた乗組員が敵に拉致されたことを知る。カークはチェコフたちにポッドへ乗るよう指示し、墜落するエンタープライズ号から脱出した。
カークから「敵の攻撃を知っていたな」と詰め寄られたカラーラは、仲間が人質になっているから嘘をついたのだと釈明した。カークはチェコフを引き連れ、スキャン能力の高い円盤部を探すことにした。彼らとは別の場所に不時着したマッコイは、一緒に来たスポックが大怪我を負っていると知って応急手当てを施した。山中に不時着したスコッティーは盗賊に囲まれるが、ジェイラという女戦士に救われた。スコッティーが惑星連邦の技術者だと知った彼女は、手を貸してくれたら仲間の捜索に協力すると持ち掛けた。
スポックとマッコイは洞窟に辿り着き、そこでアブロナスと同じ文様を発見した。ジェイラは隠れ家へスコッティーを案内し、脱出するために宇宙船を修理してほしいと要請した。それが遥か昔に墜落した惑星連邦のフランクリン号だと知り、スコッティーは驚いた。カークたちは円盤部を発見し、コンソールが無事だと知った。敵の基地から脱出を図ったウフーラとスールーは、救難信号を送信した。2人は敵が自分たちを見張っていたことを知るが、包囲されて連れ戻された。
カラーラはカークが円盤部にアブロナスの一部を隠していたことを明かすと、いきなり襲い掛かった。しかし、それはカークの罠であり、そこにアブロナスは無かった。駆け付けたチェコフがカラーラに銃を突き付けると、クラールの手下たちが現れて攻撃する。カークとチェコフは逃走し、爆発する円盤部から脱出した。クラールはウフーラたちに、座標を変更してあるので救援部隊が来ないことを告げる。彼はウフーラたちの前で、逆さ吊りにした乗組員2名から精気を吸い取った。
スポックはマッコイに、バルカン人の種を残すためウフーラと別れたこと、老スポックの遺志をを引き継ぐため艦隊を去ると決めたことを話した。カークとチャコフはジェイラの罠に捕まるが、スコッティーが仲間だと説明した。カークはジェイラがシステムを復旧させたフランクリン号に案内され、チェコフに入手した座標で乗組員を捜索するよう指示した。ジェイラはフランクリン号が敵に発見されないよう、ホログラムでカモフラージュしていた。
チェコフは通信用シグナルを捉え、カークに報告した。スポックとマッコイは敵の戦闘艇に囲まれるが、フランクリン号に転送された。クラールはアブロナスの一部を手に入れるため、スールーを拷問しようとする。シルは慌てて止めに入り、隠し持っていた武器の一部を渡した。スポックはチェコフに、バルカンの放射性鉱石を調査するよう告げる。それは彼がウフーラに贈ったペンダントに使われている石だった。カークたちは敵の基地にウフーラたちがいると知るが、途中に転送信号をブロックする地形があった。
ジェイラは「そこに行くと全員が殺される。私の家族と同じ」と言い、案内役を断った。スコッティーが頼むと、彼女は仲間のために戦った父がクラールの手下であるマナスに殺されたと告げる。しかしカークとスコッティーの説得を受け、ジェイラは協力を承知した。怪我を負っているスポックはチェコフを残すべきだと提言し、自分が同行することを志願した。カークは難色を示すが、マッコイが「俺が面倒を見る」と告げたので受け入れた。
クラールはアブロナスを起動させ、シルを抹殺した。カークはバイクで敵の基地へ向かい、敵と戦う。その間に、隠れていたスポックたちは基地へ侵入した。マナスはカークたちの相手を引き受け、クラールをヨークタウンへ向かわせた。スポックたちに解放されたスールーは、ウフーラが敵に連行されたことを教えた。スポックは乗組員を脱出させるようスールーに告げ、ウフーラの救出に向かう。スコッティーとチェコフはフランクリン号の装置を使い、20人ずつ転送する。全員が回収された後、残っていたカークとジェイラもフランクリン号に転送された。カークはヨークタウンを滅ぼそうとするクラールの野望を阻止するため、フランクリン号で後を追う…。

監督はジャスティン・リン、原案はジーン・ロッデンベリー、脚本はサイモン・ペッグ&ダグ・ユング、製作はJ・J・エイブラムス&ロベルト・オーチー&リンジー・ウェバー&ジャスティン・リン、製作総指揮はジェフリー・チャーノフ&デヴィッド・エリソン&デイナ・ゴールドバーグ&トミー・ハーパー、製作協力はヘレン・ポラック&ロン・エイムス&ジョシュア・ヘンソン、撮影はスティーヴン・F・ウィンドン、美術はトム・サンダース、編集はケリー・マツモト&ディラン・ハイスミス&グレッグ・ダウリア&スティーヴン・スプラング、衣装はサーニャ・ヘイズ、視覚効果監修はピーター・チャン、視覚効果プロデューサーはロン・エイムス、特殊メイクアップ効果はジョエル・ハーロウ、音楽はマイケル・ジアッキノ。
出演はクリス・パイン、ザカリー・クイント、カール・アーバン、ゾーイ・サルダナ、サイモン・ペッグ、ジョン・チョー、アントン・イェルチン、イドリス・エルバ、ソフィア・ブテラ、リディア・ウィルソン、ジョー・タスリム、ディープ・ロイ、メリッサ・ロクスバーグ、アニタ・ブラウン、ダグ・ユング、ダニー・プディー、キム・コルド、フレイザー・エイチェソン、マシュー・マッコール、エイミー・アネケ、ショーレ・アグダシュルー、グレッグ・グランバーグ、ジェニファー・チェオン、ジャロッド・ジョセフ、ジェレミー・レイモンド他。


シリーズ第3作。
前2作の監督を務めたJ・J・エイブラムスは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の仕事でスケジュールの都合が付かなくなったため製作に専念し、『ワイルド・スピード』シリーズのジャスティン・リンがメガホンを引き継いでいる。
脚本は『宇宙人ポール』『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』のサイモン・ペッグと『コンフィデンス』のダグ・ユング。カーク役のクリス・パイン、スポック役のザカリー・クイント、マッコイ役のカール・アーバン、ウフーラ役のゾーイ・サルダナ、スコッティー役のサイモン・ペッグ、スールー役のジョン・チョー、チェコフ役のアントン・イェルチン、役のディープ・ロイ、技術士官のキーンザー役のディープ・ロイが、シリーズのレギュラー。
他に、クラールをイドリス・エルバ、ジェイラをソフィア・ブテラ、カラーラをリディア・ウィルソンが演じている。

J・J・エイブラムスは今までの2作で、「俺たちの『スター・ウォーズ』」を作って来た。しかし本家の方に起用されたことによって、こっちのシリーズで自分の欲求を満たす必要は無くなった。
とは言え、監督のバトンを渡したのがジャスティン・リンなので、前2作から「SFアクション」としての方向性を引き継ごうとする考えは明らかだ。
そして本作品でも、「惑星連邦への反逆を目論む悪党によって1つの惑星がピンチに陥り、そこへ出向いたエンタープライズ号のクルーが戦って勝利する」というパターンが使われる。シンプルで分かりやすい勧善懲悪のパターンが、シリーズを通して使用されているわけだ。
シリーズ作品なので、何かを踏襲することは必要だ。その中にストーリー展開のパターンやフォーマットがあるのもいいだろう。
しかし、このシリーズの場合、前述した展開を「いつものパターン」として固定化するのが正しい方針だとは思えない。それはダメなマンネリズムを生み出すだけであり、何のメリットも見出せない。

物語が始まると、すぐに「敵の宇宙船に襲われて激しい戦闘が勃発し、エンタープライズ号は危機に陥る」という展開が訪れる。
早い段階で戦闘シーンを用意し、アクションで盛り上げようとするってのが、いかにも本シリーズらしい手口である。
別に戦闘シーンが悪いというわけではないが、この映画の場合は「安易で雑な考え方だなあ」という印象が強い。
しかも監督は交代したが、相変わらず慌ただしくてゴチャゴチャしており、何がどう動いているのかが分かりにくい。
こういうのが、今のハリウッドにおける主流なのか。

その戦闘において、クラールの一味はあっという間にエンタープライズ号の面々を追い込む。カークたちは全く歯が立たず、大半の乗組員が連行され、エンタープライズ号は墜落する。
それだけ圧倒的な戦闘力を持っているのなら、手間と時間を掛けてアブロナスを起動させる必要なんて無いでしょ。
現有の戦力だけでも、充分にヨークタウンを滅ぼすことが出来るでしょ。
あと、エンタープライズ号の乗組員を拉致監禁する必要性も全く分からないし。

カークはカラーラに「武器の一部を隠しておいた」と明かすが、それは彼女の本性を見破るための罠だ。で、後でチェコフに「いつから彼女の真意に気付いてました?」と問われると、彼は「その時には手遅れだった」と言う。
それは質問の答えになっていない。
で、その後に「危険には生まれ付き敏感なんだ」と告げる。つまり、「カラーラの正体に気付いたのは、危険には生まれ付き敏感だから」ってことだ。
見事なぐらい、ちゃんとした答えを放棄している。

敵の基地へ乗り込むと決めたカークだが、ジェイラが「見張りが大勢いるから、すぐ見つかりそう」と言い、スポックが「陽動作戦が必要です」と告げる。するとカークが自信ありげに「俺に考えがある」と口にして、フランクリン号に積んであったバイクにジェイラを乗せて基地へ向かう。
どんな考えなのかと思ったら、カークが正面からバイクで突っ込んで敵と戦い、その間に他の面々が行動する。
マッコイが呆れたように「確かに、いい陽動作戦だ」と言うけど、何の知恵も無い奴でも簡単に思い付きそうな案だ。
意識的かどうかは分からないけど、そういうトコだけは旧シリーズのカークを踏襲しているのね。

悪党の主義主張が浅薄であること、チンピラみたいなボンクラ脳しか持ち合わせていない単純な奴であることも、3作の共通項だ。
だから当然のことながら、悪の華としての魅力は全く感じさせない。
終盤に入ると、「クラールの正体はフランクリン号の船長であり、救助が来なかったので惑星連邦に恨みを抱いた」という事実が明らかになるが、それによってクラールのキャラに厚みが出たり、ドラマに深みが生じたりすることは無い。
さらに言えば、「そんなことを今さら明かされても、どうでもいいわ」としか思えない。

また、「クラールがフランクリン号の船長だった」という設定が示されることによって、そこまでの展開に幾つかの疑問が生じてしまう。
まず、自分が乗って来た船なら墜落した場所を知っているはずなので、ジェイラがホログラムで隠しても無駄でしょ。そもそも、それをクラールが放置していること自体が理解できない。空は飛べなくても、住居として使ったりできるでしょ。
っていうか、あれだけの基地や宇宙船があるのなら、フランクリン号だって修理できたでしょ。
あと、フランクリン号で生き延びたのが3人だけなら、大勢の手下はどうやって集めたのか。

カークもクラールに負けず劣らず、オツムの悪さを露呈している。
これまでの2作と比べれば、表面上は「艦長として成長した姿」が描写されている。たぶん製作サイドも、そういうつもりで彼を動かしているんだろう。
しかし冷静に観察してみると、調子に乗っているだけで実はボンクラであることは明らかだ。
多くの乗組員が敵の攻撃で命を落としたり、シルが殺されたりするのは、どう考えても前半におけるカークの判断が原因だ。

それは結果論かもしれないが、フィクションなんだから、どうにでも細工は出来るわけで。
結果として「カークの致命的な判断ミス」と感じさせるようでは、その動かし方は間違いだったと言わざるを得ない。
一応、最後のパーティーでは「全て解決して大団円」とせず、カークに乾杯の言葉で「ここにいない友に」と言わせているけど、それで簡単に済ませていいのかと。
戦闘での死者については彼だけの責任じゃないけど、シルに関しては「自分が武器を隠すよう頼んだせいで殺された」という罪の意識を感じなきゃダメだろ。

そもそも、『スター・トレック』の創始者であるジーン・ロッデンベリーが提唱していたはずの「開拓精神」や「未知の文明との遭遇」というテーマは、どこへ行ってしまったのかと言いたくなる。
冒頭で「我々の任務は引き続き新たな生命体を探し、友好の絆を結ぶこと」というカークの語りが入るが、そんな出来事は劇中で全く描写されていない。あえて言うならジェイラとは親しくなっているが、それでOKにしちゃうのはハードルが低すぎるだろう。
リ・イマジネーション作品としてスタートした企画だから、何から何まで旧シリーズの真似をしなきゃいけないとは言わない。
だけど、未知の文明を発見しようとする開拓精神を完全に捨て去ってしまったら、もはや『スター・トレック』としての意味が無くなるんじゃないか。

(観賞日:2018年2月21日)

 

*ポンコツ映画愛護協会