『スペースハンター』:1983、アメリカ&カナダ

観光宇宙船が濃縮ガスの影響を受け、大爆発を起こした。1基の避難用シャトルが爆発直前に発射され、近くのテラ第11惑星に不時着した。シャトルに乗っていたメーガン、リーナ、ノヴァの3人は、辺り一面に広がる荒野を見回した。すると不気味な集団が現れ、3人を捕獲しようと襲い掛かった。別れた妻に支払う慰謝料や家賃を滞納している船長のウルフは、宇宙船の通信機が故障したので腹を立てる。彼は助手を務める女性アンドロイドのチャルマースを起こし、「また通信機が壊れた」と告げる。チャルマースは「幾ら直しても無駄よ」と新しい物に取り替えるよう勧めるが、ウルフは「そんな金は無い」と一蹴した。
シャトルから脱出した女性たちを救助すれば3千メガクレジットの報酬が入ることを知ったウルフは、テラ第11惑星についてチャルマースに調べさせる。戦前のテラ第11惑星は植民地だったが、疫病が発生したため調査団が制圧に向かった。調査団のオーヴァードッグは隊長のパターソン大尉と対立し、独裁を開始した。調査団は消滅し、現在のテラ第11惑星は立ち入り禁止区域になっている。ウルフは宇宙船でテラ第11惑星に降り立ち、車で調査に向かった。
ウルフが車を走らせていると、線路の上を列車がゆっくりと移動して来た。そこへ盗賊が現れて襲撃するのを見たウルフは、列車の一団に加勢する。盗賊は列車の一団を率いるパターソンに大怪我を負わせ、メーガンたちを連れ去った。盗賊はゾーンと呼ばれる集団で、率いる頭目はオーヴァードッグだった。パターソンの部下であるジャレットとダスターは、必ずオーヴァードッグを倒すと誓う。彼らは余所者のウルフに強い敵対心を示し、パターソンを列車に乗せて去った。
ウルフが車に戻ると、チャルマースが撃たれて機能を停止していた。彼が車で移動していると、ドーム型の建物を発見した。彼が中に入るとミイラがあり、室内には蜘蛛の巣が張っていた。ニキという少女が車を盗もうとしたので、ウルフは銃を突き付けて阻止した。ニキは生意気な態度で、「私の家に盗みに入ったらタダじゃおかないよ。父さんや兄さんもいるんだから」と言い放った。ウルフが建物には誰もおらずミイラがあったことを指摘すると、ニキは「いいから、黙って消えな」と鋭く告げた。
ウルフが車で去ろうとすると、ニキは「食べ物をくれるなら手伝う。この辺りのことなら何でも知ってる」と持ち掛ける。ウルフが「遠慮しとくよ」と去ろうとすると、ニキは必死で興味を引こうとする。地球の女性3人について彼女が口にしたので、ウルフは取引を承諾して車に同乗させた。ゾーンの科学者であるケミストは、「若くて柔らかい娘たちがいい。傷が無ければ、なお良い。オーヴァードッグ様は傷が嫌いだ」と手下たちに告げた。
寝袋で眠ろうとしたウルフだが、ニキの悪臭で目を覚ます。彼はニキを近くの水場に突き落とし、強引に体を洗った。そこに大きな装甲車が来たのでウルフは警戒し、ニキに隠れるよう指示した。運転していたのは旧知のワシントンで、政府軍のセクター・チーフに出世していた。ウルフは彼を欺き、ライフルを奪い取った。ワシントンは3人の女性を捜していると明かし、手を組めば分け前は渡すと約束する。しかしウルフは報酬の安さから拒否し、ライフルを水場に投げ込んでニキと共に去った。
ウルフの車がゾーンのアジトに近付くと、ニキが「すぐに暗くなる。安全な場所を見つけないと」と言う。巨大な廃墟を見つけたウルフは、そこで就寝しようとする。奇妙な音がしたので様子を見に行くと、未知の生物が群れで現れた。群れに襲われたウルフとニキは、車で逃げ出した。ケミストはオーヴァードッグの部屋にメーガンたちを連行し、「新たな命の源が到着しました」と報告した。ウルフとニキは水中に潜む女だけの部族に襲われ、網で吊るされた。そこに水竜が現れると、部族は逃げ出した。
ウルフは水竜を射殺し、ニキを連れて部族から逃走した。車を失った2人は荒野を歩き続けるが、ニキが気を失って倒れ込んだ。ウルフがニキを抱えて歩いていると、ワシントンが車で通り掛かった。ウルフは水を分けてくれと頼み、ワシントンの出した「女の捜索と脱出への協力」という条件を承諾した。ニキは今後も相棒として同行したいと希望しており、ウルフが冷たく「そのつもりはない」と拒絶すると泣き出した。ウルフは自分の態度を反省し、「救出の後、どこか他の星に行きたければ送ってやる」とニキに告げた。
バイクの2人組が現れたのでワシントンは警戒するが、それはジャレットとダスターだった。彼らはオーヴァードッグを倒すため、ゾーンへ向かう途中だった。ウルフはワシントンから「あんな奴らがいたら迷惑だ。始末しよう」と言われるが、「協力しあえる」となだめた。ゾーンの改造人間たちが周囲を包囲し、攻撃を仕掛けて来た。ジャレットとダスターはバイクで逃走するが、ワシントンは車が故障して立ち往生する。ウルフたちは車の修理が終わってから出発し、ゾーンのアジトへ向かう…。

監督はラモント・ジョンソン、原案はスチュアート・ハーディング&ジーン・ラフラー、脚本はデヴィッド・プレストン&エディス・レイ&ダン・ゴールドバーグ&レン・ブラム、製作はドン・カーモディー&アンドレ・リンク&ジョン・ダニング、製作総指揮はアイヴァン・ライトマン、製作協力はスチュワート・ハーディング、撮影はフランク・タイディー、美術はジャクソン・デ・ゴヴィア、編集はスコット・コンラッド、衣装はジュリー・ワイズ、特殊メイクアップ効果はトーマス・R・バーマン、音楽はエルマー・バーンスタイン。
出演はピーター・ストラウス、モリー・リングウォルド、アーニー・ハドソン、アンドレア・マルコヴィッチ、マイケル・アイアンサイド、ビーソン・キャロル、ラント・アリアナック、デボラ・プラット、アレイサ・シャーリー、カリ・ティミンズ、ポール・ボレツキー、パトリック・ロウ、レジー・ベネット他。


『リップスティック』『シャレード'79』のラモント・ジョンソンが監督を務めた作品。
製作国のアメリカとカナダでは3D映画として上映されたが、日本では2D上映のみだった。
ウルフをピーター・ストラウス、ニキをモリー・リングウォルド、ワシントンをアーニー・ハドソン、チャルマースをアンドレア・マルコヴィッチ、オーヴァードッグをマイケル・アイアンサイドが演じている。
この翌年にモリー・リングウォルドは『すてきな片想い』のヒロインに起用され、ブラット・パックの一員として人気者になっていく。

1981年に『マッドマックス2』が公開されると、そのヒットに便乗しようと目論んだ亜流作品が世界各国で製作された。
この映画も、その波に乗ろうとした作品だろう。その世界観や登場する乗り物など、色んなトコロに『マッドマックス2』の雰囲気が感じられる。
で、そこに寺沢武一の漫画『コブラ』の影響が入っているんじゃないかなあ。最初は『スター・ウォーズ』&『マッドマックス2』なのかという気もしたんだけど、『スター・ウォーズ』よりも『コブラ』っぽさの方が強いんだよなあ。
その当時、『コブラ』の漫画やアニメが北米で見られる環境だったのかどうかは良く分からないんだけどさ。

粗筋ではチャルマースを「アンドロイド」と表記しているし、実際にそういう設定だが、見た目は人間と何の変わりも無い。喋り方が独特とか、動きが人間っぽくないとか、そういう要素も無い。
何かに何まで人間と全く同じで、「じゃあ人間で良くねえか?」と言いたくなる。
しかも、始まってから15分ぐらいで撃たれて機能停止し、そこで出番が終わっちゃうんだよね。何のために出て来たのか分からんキャラになってるぞ。
「女性アンドロイド」という設定を何も活かさないままって退場するって、どういうつもりだよ。『コブラ』におけるアーマロイド・レディみたいに、主人公の頼りになるパートナーとして最後まで一緒に冒険を続けろよ。

ウルフたちがテラ第11惑星に降り立った直後に発見する乗り物を、粗筋では「列車」と書いた。でも線路の上を走っているから「列車」と表記したけど、列車っぽさは薄い。
先頭にはクレーンが付いているし、軍艦のような設備があるし、だから「線路の上を走る戦艦」みたいな感じかな。あと、大きな帆を張っているのも船っぽいしね。
ただ、その帆で風を受けて走っているわけではないけどね。
全く風は受けていないのに走っているので、「その帆は単なる飾りかよ。だとしたら邪魔だな」と言いたくなるけどね。

かなり分かりにくいのだが、実はパターソンの列車をウルフが目撃した時、そこにはメーガンたちが乗っている。
ただ、シャトルが不時着した時にメーガンたちを包囲した一団がいたのも事実で、「どうなってんのか」と言いたくなる。
で、これまた分かりにくいのだが、実はメーガンたちが謎の集団に襲われた時、そこに一台の乗り物が来ている。
これが盗賊の仲間かと思ったのだが、どうやらパターソンたちということらしい。で、たぶん「そこでパターソンの一団が女性たちを助けた」ってことなんだろう。
必要な説明や場面が足りていないから、無駄に分かりにくくなっちゃってんのよね。

ウルフが早い段階でパターソンの率いる集団と出会うのだから、そこの絡みで話を展開させるのかと思いきや、さっさと別れてしまう。
パターソンがウルフに「こういう事情でオーヴァードッグが独裁者になって、現在の星はこんなことになっている」ってな説明をすることも無い。手を組んで行動するわけでもない。
残り20分ぐらいになって、申し訳程度にジャレット&ダスターが共闘する程度だ。
だったら、もはやパターソンなんて既に死んでいる設定でもいいだろ。
生かしておいて、その雑な扱いは何なのかと。

ニキはウルフの車に乗せてもらった時、「人を食べる連中」の存在を口にしている。
わざわざゾーンとは別の恐ろしい連中がいることに言及するんだから、そいつらがストーリー展開に関わって来ることを予想するのは何も変じゃないだろう。
しかし、そんな奴らは最後まで1度も姿を見せないのである。
だったら、なぜ無駄に登場を匂わせたんだよ。
もしも「撮影したシーンをカットした」ってことであっても、ニキの台詞もカットすべきだし。っていうか、たぶん最初から撮影していないだろうし。

ウルフはニキを車に乗せた後、途中でホットドッグを焼く。だから食事休憩を取るのかと思いきや、そのまま寝袋を出して眠る。
だけど、まだ充分すぎるほど明るいんだよね。日暮れまでには、相当の時間がありそうなんだよね。
なので、そこで「寝る」という行動を取る意味がサッパリ分からない。
しかも、ニキの体を洗い、ワシントンと遭遇した後は、さっさと移動しているし。
ってことは、眠る必要なんて無かったんじゃねえか。

そもそも作劇の都合を考えても、、そこで「ウルフが寝る」という手順を入れなきゃいけない理由は何も無いぞ。「食事を取っていたら、ニキの悪臭が気になって体を洗う」という展開にしておけば済むでしょ。
いや、もっと言っちゃうと、実は「ウルフがニキの体を洗う」という手順からして、必要不可欠ってわけでもないのよね。
「体を綺麗にしたら見違える」という、「ニキの華麗な変身」を描くための手順になっているわけでもないんだし。
最初から悪臭の無い状態で登場しても、まるで支障は無いのよ。

終盤にウルフたちを包囲するゾーンの連中は、「子供たち」という設定だ。そしてニキは彼らについて、「改造人間」と説明する。
でも、そいつらが改造人間としての特徴を示すことは、ほとんど無い。攻撃の方法は、ただ爆弾を投げるだけ。特殊な攻撃能力は無いし、驚異的なスピードで追い掛けてくるわけでもない。相手の居場所を特定する能力とか、強靭な防御力とか、そういうのは何も無い。
なので、普通の兵士たちであっても全く変わりは無い。「見た目が子供なのに攻撃してくる」というトコの面白味も無いしね。
あとさ、ウルフたちは逃亡できずに立ち往生しているのに、なんで改造人間たちは攻撃してこないんだよ。

ウルフたちがアジトに乗り込むと、ゾーンの連中は「死の障害物ケーム」みたいな遊びで盛り上がっている。そしてオーヴァードッグはメーガンたちを檻に閉じ込め、そのゲームを見ている。
だけど生命力を吸収するためにメーガンたちを拉致したのに、なぜ未だに捕まえたままで済ませているのか。
あと、他にも大勢の人間を拉致しているのかと思いきや、その3人だけなのね。
だからオーヴァードッグって「人間の生命力を吸収して生き永らえている」という設定なんだけど、彼が人間を殺して生命力を奪うシーンは皆無なのよね。

ウルフたちがアジトで仕事を遂行している間に、ニキはゾーンに捕まってしまう。そしてメーガンたちに逃げられた代わりとして、なぜかニキは障害物ゲームに挑戦させられる。
そうなると、もちろん「ウルフがニキを救う」という展開が予想される。
でも、ウルフは車に発砲して爆破する動きこそ見せるものの、ニキは障害物の大半を自力で突破しているんだよね。
それはどうなのよ。
っていうか、そもそも物語も佳境に来ているのに「ニキが死のゲームに挑む」という展開を用意し、ウルフじゃなくてニキにスポットを当てていること自体、構成としてはいかがなものかと。

(観賞日:2020年10月7日)

 

*ポンコツ映画愛護協会