『スネーク・フライト』:2006、アメリカ&カナダ&ドイツ

ハワイのオアフ島。オフロードバイクを走らせていたショーン・ジョーンズは、密林で休息を取った。逆さ吊りにされている男を目撃した彼が慌てて駆け寄ると、「早く逃げろ」と警告される。その男はダニエル・ヘイズという検事だった。ショーンが近くに隠れて様子を見ていると、車でやって来たギャングのエディー・キムと手下たちが検事を殺害した。ショーンがバイクで逃走したので、エディーは手下たちに「今の男を捜せ」と命じた。
ホテルに戻ったショーンは、エディーの手下たちが部屋に乗り込もうとするのを目撃した。そこへFBI特別捜査官のネヴィル・フリンが駆け付け、ショーンを車に乗せて逃走した。フリンはホノルルの捜査局へショーンを連れて行き、相棒のサンダースと共に、ロサンゼルス大陪審での証言を求める。尻込みするショーンに、フリンは「証言しないとエディーが口封じで殺しに来るぞ」と脅しを掛けた。
ショーンが証言を承諾したので、フリンはプライベートジェットを囮として飛ばし、サウス・パシフィック121便で彼を移送することにした。その121便には、最後の勤務に赴く客室乗務員のクレア・ミラー、後輩のティファニー、大先輩のグレース、男性乗務員のケン、機長のマッケオン、副機長のリックといった面々が乗り込んだ。乗客の中には、人気歌手のスリー・Gズと警護役のトロイ&ルロイ、飼い犬を連れているメルセデス、赤ん坊連れの母親マリア、幼い兄弟のカーティスとトミー、プレミアム会員のポール、キックボクサーのチェン、新婚夫婦のアシュレイとタイラー、若いカップルのケリーとカイルなどがいる。
組織と通じていた空港職員の男が、ショーンが乗る飛行機をエディーに知らせた。別の職員は指示に従い、乗客に配られるレイに特殊なフェロモンを噴射した。クレアはFBIがファースト・クラスを押さえたことをマッケオンから知らされ、乗客への事情説明を頼まれる。ポールはファーストクラスからエコノミーへの変更を説明され、露骨に嫌味な態度を取った。フリンはロサンゼルスにいる同僚のハリスに連絡を取る。デスクワークに異動したハリスは、退屈を持て余していた。ハリスはエディーのことを問われ、「3つのチームに見張らせているから身動きが取れない」と自信を見せた。
飛行機が離陸した後、ショーンはティファニーから質問され、エディーの殺人を目撃してFBIに協力していることを明かした。高度が350フィートに達した時、機内に持ち込まれていたカーゴのタイマーが起動した。そのボックスには、大量の蛇が詰め込まれていた。Gズはメルセデスに声を掛けて隣に呼ぶ。最初からGズに気付いていたメルセデスは笑顔で応じ、2人は楽しく会話を交わした。
タイマーが0になり、カーゴが開いて蛇が飛び出した。ケリーとカイルは洗面所に入り、ドラッグをキメながらセックスを始める。天井から洗面所に潜入した一匹の蛇は、2人に噛み付いた。2人は悲鳴を上げるが、外にいたグレースとケンは、激しいセックスで発した声だと思い込んで放置した。別の蛇は配線をショートさせ、システムがダウンする。リックはロサンゼルスに連絡を入れ、緊急事態であることを知らせる。小便をしようとトイレに入った男は、便器から現れた蛇に股間を噛まれて死亡した。
悪天候による乱気流で飛行機の揺れが続く中、マッケオンに状況を聞くため操縦席に赴いたクレアは、システム障害が起きていることを知る。マッケオンはブレーカーをリセットしてシステムを回復させるが、蛇に襲われて死亡した。だが、倒れたマッケオンしか見ていないクレアとリックは、心臓発作だと思い込む。クレアはフリンとサンダースを呼び、機長の死を知らせる。操縦席に蛇が現れ、リックが退治しようと叩いたために計器がトラブルを起こす。その影響で客席の酸素マスクが一斉に落下し、それと共に何匹もの蛇が出現した。
蛇が人々を襲い、機内はパニックに陥った。フリンはスタンガンで蛇を退治しながら、「前に移動しろ」と乗客に叫ぶ。そして移動した乗客に向かい、「蛇が入って来られないように荷物で壁を作れ」と指示した。気を失ってエコノミー席に取り残されていたメルセデスは、蛇に包囲される。チェンが彼女を助け、背負って前方に向かった。トミーが腕を蛇に噛まれ、カーティスが「守れなかった」と涙ぐんでいるので、クレアは「お兄ちゃんがしっかりしなきゃ」と声を掛けた。
取り残されたマリアの赤ん坊を助けに戻ったグレースは、蛇に噛まれてしまう。サンダースも蛇に噛まれ、命を落とした。乗客名簿をチェックしたクレアたちは医者がいることを知るが、蛇に襲われて死んでいた。フリンはハリスに連絡を入れ、「エディー・キムが飛行機を毒蛇で満杯にした」と告げる。「そんなことをしてもショーンを殺せるかどうか分からないぞ」と言うハリスに、彼は「でも飛行機を墜落させれば確実に殺せる」と述べた。ハリスは部下に、毒蛇の専門家を見つけ出すよう指示した。
トミーとリロイは、蛇に噛まれた箇所が腫れ上がっていた。マリアがトミーの患部を切断し、毒を吸い出した。壁の隙間から蛇が侵入してきたので、ケンたちは消火器を使って追い払おうとする。ハリスはスティーヴン・プライスという毒蛇の専門家がいることを知り、彼を呼びに行く。プライスはフリンと連絡を取り、「蛇は無闇に人を襲わない。興奮させる原因がある」と話す。状況を聞かされたプライスは、レイに攻撃性を高めるフェロモンが含まれているのではないかという推論を述べた。
プライスはフリンに、「蛇には様々な種類がいるし、毒にも様々な種類がある。確かなことは、間違った血清を与えれば一瞬で命は無い」と語る。フリンは非難に来たGズやポールたちに、「助かりたければ協力しろ。手分けして死んだ蛇を集めろ。ロスにいる専門家が血清を割り出す」と強い口調で告げる。フリンたちは捕まえた蛇を携帯で撮影し、メールでプライスに送信した。その頃、リックは蛇に襲われて操縦席から転がり落ちた。操縦席の様子を見に行ったクレアは、飛び出してきた蛇に襲われるが、斧で退治する。そこへやって来たフリンは、クレアと共に操縦桿を握って機体を立て直そうとする。
ショーンが乗客たちをファースト・クラスへ移している最中、巨大なアナコンダが出現する。ポールはメルセデスの犬を投げて餌にした直後、アナコンダに襲われて死亡した。送信された写真を見たプライスは、「これは北米以外の蛇ばかりだ。国内で血清を置いている病院は、ごくわずか。血清を手に入れるには、1日か2日は掛かる」とハリスに語った。空調が壊れて酸素が薄くなり、機内の気温は上昇する。エンジンにもトラブルが発生したため、飛行機は減速を余儀なくされる…。

監督はデヴィッド・R・エリス、原案はデヴィッド・ダレッサンドロ&ジョン・ヘファーナン、脚本はジョン・ヘファーナン&セバスチャン・グティエレス、製作はゲイリー・レヴィンソン&ドン・グレンジャー&クレイグ・ベレンソン、製作協力はジェフ・カッツ&タウニー・エリス&ヘザー・ミーハン、製作総指揮はジャスティス・グリーン&サンドラ・ラビンス&ペニー・フィンケルマン・コックス&ストークリー・チャフィン&トビー・エメリッヒ&ジョージ・ワウド、撮影はアダム・グリーンバーグ、編集はハワード・E・スミス、美術はジェームズ・ヒンクル、衣装はカレン・マシューズ、視覚効果監修はエリック・ヘンリー、音楽はトレヴァー・ラビン。 出演はサミュエル・L・ジャクソン、ジュリアナ・マルグリーズ、ネイサン・フィリップス、ボビー・カナヴェイル、フレックス・アレクサンダー、トッド・ルイーソ、サニー・メイブリー、キーナン・トンプソン、レイチェル・ブランチャード、リン・シェイ、デヴィッド・ケックナー、エルサ・パタキー、キース・[ブラックマン]・ダラス、ブルース・ジェームズ、ケイシー・デュボワ、ダニエル・ホガース、ジェラード・プランケット、テリー・チェン、エミリー・ホームズ他。


『デッドコースター』『セルラー』のデヴィッド・R・エリスが監督を務めた作品。
フリンをサミュエル・L・ジャクソン、クレアをジュリアナ・マルグリーズ、ショーンをネイサン・フィリップス、ハリスをボビー・カナヴェイル、Gズをフレックス・アレクサンダー、プライスをトッド・ルイーソ、ティファニーをサニー・メイブリー、トロイをキーナン・トンプソン、メルセデスをレイチェル・ブランチャード、グレースをリン・シェイ、リックをデヴィッド・ケックナー、マリアをエルサ・パタキーが演じている。

おバカなノリを狙って作られている映画だから、「なんで邪魔者を消すのに、爆弾や殺し屋を使わずに大量の毒蛇を使うんだよ」というところについては、ツッコミを入れてはいけないのだろう。
そこをマジに指摘するのは、野暮というものだ。
それは分かっていているが、それでも、やはりツッコミを入れざるを得ないのだ。
なぜなら、「敵が大量の蛇を使う理由」が用意されていないからだ。

ショーンを消すために蛇を使うってのは、どう考えたってギャンブル性が高すぎる。
しかも、色んな種類の蛇がいて、全てが即効性の高い猛毒を持っているわけでもないのだ。
「大量の蛇の中で、即効性があって致死力の強い毒を持つ蛇がショーンを噛む」「蛇が飛行機の計器 を故障させて操縦不能に陥らせる」「猛毒の蛇が機長と副機長の両方を襲って死亡させる」「猛毒の蛇が機長と副機長の両方を襲って操縦不能にさせ、しかも他に操縦できる人間がいない」ということになれば、目的は達成できるわけだ。
しかし、もっと確実性の高い方法が他に幾らでもある中で、「なぜ大量の蛇なのか」という理由が全く分からない。

敵が大量の蛇を使う理由については、そこがデタラメでも、バカバカしくても、そんなことは一向に構わない。とにかく、何でもいいから理由を用意すべきなのだ。
面白いバカ映画として仕上がるか、チープな映画になってしまうかを決める上で、そこは大きなポイントの1つと言えよう。
「どうやってエディーがショーンのいるホテルを知ったのか」「どうやって大量の蛇が入ったカーゴを持ち込んだのか」といった辺りについてはスルーしてもいいが、蛇を使う理由については、用意しておく必要がある。
劇中で荒唐無稽な出来事が起きるのは、おバカなテイストを目指している映画だから別にいいんだけど、「そのバカバカしい出来事が、なぜ起きたのか」という部分については、何かしらの説明を用意しておくべきだと思うのだ。

「くっだらねえ」「バッカでえ」という感じで笑えるポイントがたくさんあるのは、おバカな映画としてはマイナスじゃない。
それを上手く使えば、映画の魅力に繋がるものだ。
だけど、「動機」や「理由」が何も用意されておらず、登場人物が整合性の取れない行動を取ったり、ストーリー展開がデタラメだったりするのは、「荒唐無稽な面白さ」として捉える事が出来ない。
理由を用意しないのであれば、バカバカしい行動を取らせず、説明が無くても納得できるような形にしておいた方がいい。

っていうか、途中で思ったんだけど、この映画にエディーなんて要らないよな。
ようするに「フライト中の飛行機で大量の蛇が暴れ出して人々がパニックに陥る」という話が欲しいわけで、だったら「何かの手違いで貨物室に積み込まれていた蛇が逃げ出す」ということでも成立しちゃうんだよな。
むしろエディーという黒幕を配置してしまったせいで、「そこの決着をキレイに付けることが出来ていない」という問題が生じている。
どう考えたって、最後は「キムが蛇に噛まれて死ぬ」というオチを用意すべきでしょうに。
だけどキムは蛇から遠く離れた場所にいるから、そういう決着を付けられなくなっているんだよね。

ハリスが部下に電話を掛けてエディーの逮捕を命じているので、たぶんエディーは逮捕されたんだろうと思う。
だけど、その逮捕シーンも描かれないんだよね。
エディーは前半で退場して、そのままなのだ。まあショーンを大陪審に立たせるためにフリンが彼を移送しているわけで、前述したセオリーに従ってエディーが蛇に殺されちゃったら、ショーンをロスへ移送した意味が無くなっちゃうんだけどさ。
でも、そういうことも含めて、やっぱりエディーの存在価値って皆無に等しいよな。

終盤、「機長も副機長も死亡して素人が飛行機を着陸させなきゃいけなくなる」「操縦桿を握るのはゲームで操縦を学んだ男」という、航空パニック映画で良く見るようなパターンが用意されている。
別に良くあるパターンを使っているのは構わないが、操縦を担当することになったトロイにスポットが当たってから、やたらとコミカルなテイストになってしまい、緊張感が無くなってしまうのはアウト。
そこに軽快なお喋りとか、ジョークとか、そんなの要らないのよ。饒舌に喋りたければ、着陸してからにしろよ。
バカバカしくて笑えるのと、軽口で笑わせようとするのは、まるで別物だぞ。しかも、すげえ場違いだし。

(観賞日:2013年3月20日)

 

*ポンコツ映画愛護協会