『スネーク・アイズ』:1998、アメリカ

ハリケーンが近付く中、アトランティック・シティのアリーナでは14000人の観客を集めてボクシングのタイトルマッチが行われようとしていた。アリーナの中には、汚職に手を染める悪徳警官リック・サントロの姿もあった。
今回、リックは旧友であるケヴィン・ダン中佐に招待され、VIP席で観戦することになった。ケヴィンは観戦に来ている国防長官の警護の指揮を担当している。リックやケヴィンのすぐ後ろの席に、国防長官が座っている。
試合が始まった。リックはチャンピオンのリンカーン・テイラーに金を賭けているため、もちろんテイラーを熱烈に応援している。その頃、ケヴィンは不審な赤毛の女性を追って席を離れていた。そして空いたケヴィンの席に、白い服の女が座った。
白い服の女は国防長官に近付き、封筒を取り出して何やら話し掛けている。リックは掛かって来た電話に出る。リング上ではテイラーが挑戦者のパンチでダウンしている。その時、大歓声の中で国防長官が狙撃された。
アリーナはパニック状態に陥る中、白い服の女は現場から逃げ去り、ケヴィンは犯人を射殺した。持ち場を離れたことを悔やむケヴィンの様子を見て、リックはアリーナを封鎖し、ケヴィンを助けるために捜査を開始する。
リックは試合の録画をリプレイし、パンチが当たっていないのにテイラーが倒れていることを確認する。ニックはテイラーを問い詰め、多額の借金に苦しんでいた彼が、赤毛の女から八百長を持ち掛けられていたことを知る…。

監督&製作はブライアン・デ・パルマ、原案はブライアン・デ・パルマ&デヴィッド・コープ、脚本はデヴィッド・コープ、製作協力はジェフ・レヴィン、製作総指揮はルイス・A・ストローラー、撮影はスティーヴン・H・ブラム、編集はビル・パンコウ、美術はアン・プリチャード、衣装はオデット・ガドーリー、視覚効果監修はエリック・ブレヴィグ、音楽はリュウイチ・サカモト(坂本龍一)。
出演はニコラス・ケイジ、共演はゲイリー・シニーズ、ジョン・ハード、カーラ・グジーノ、スタン・ショウ、ケヴィン・ダン、マイケル・リスポーリ、ジョエル・ファビアーニ、ルイス・ガズマン、デヴィッド・アンソニー・ヒギンス、マイク・スター、タマラ・タニー、チップ・ジエン他。


巨大アリーナを舞台にした、ブライアン・デ・パルマ監督のサスペンス映画。音楽を坂本龍一が担当している。
リックをニコラス・ケイジ、ケヴィンをゲイリー・シニーズ、ミサイル防衛システム開発会社の社長パウエルをジョン・ハードが演じている。

長回しとか、人物の目線になってのカメラワークとか、カジノをゆっくりと見回すショットとか、2つの映像を同時に見せるシーンとか、とにかく映像には凝っている。
というか、「まず映像テクニックありき」の作品にも思える。

犯人が誰なのかはすぐに分かってしまう。
すぐ、というのは「序盤の内に」という意味ではなく、「その人物が登場した瞬間に」という意味だ。
基本的なストーリーは単純なのだが、事件の解明は御都合主義に頼っているにも関わらず、破綻している。

犯人サイドの連中は、事件の詳細や動機をクドクドとセリフで説明してくれる。
中継担当者の1人しか知らなかったカメラに犯人の姿が写っているなど、事件は素晴らしい(そしてバカバカしい)偶然の積み重ねによって解決に向かっていく。
一応、最後に映し出される赤い宝石が、「衝撃のラストシーン」ということらしい。
その意味を推測することは可能だが、あくまでも観客それぞれの推測に過ぎず、「意外なオチ」として成立させるには伏線が弱すぎる。

赤い宝石を見せることで映画としてはオチを語ったつもりなのかもしれないが、謎は残ったままになっている。
そこから隠されていた謎を読み取るのは非常に困難だし、かなり無理もあるからだ。
凝りすぎて芸に溺れたか。

個人的な推測に過ぎないが、たぶんポイントはパウエルだろう。
冒頭のシーンをしっかり見ていると、テレビ中継を担当しているのはパウエル・ペイ・プレヴュー・テレビだし、アリーナには「パウエル・ミレニアム&アトランティック・カジノ」と書かれている。

「スネークアイズ」とはカジノ用語でゾロ目の1が出ることで、親の総取りを意味している。
つまり、最後にパウエルだけが勝ちました、ということなのだろう。
ただし、それは私の推論でしかない。
オチがオチとして成立していないのだから、ダメでしょ。

 

*ポンコツ映画愛護協会