『スマーフ スマーフェットと秘密の大冒険』:2017、アメリカ
森の奥にある秘密の場所に、スマーフの村があった。パパ・スマーフが村長を務める村には、筋トレ好きのヘフティー、おっちょこちょいのクラムジー、インテリのブレイニーなど個性豊かな多くのスマーフが暮らしていた。そんな村で唯一の女の子が、金髪のスマーフェットだ。彼女は他のスマーフと違い、悪い魔法使いのガーガメルが闇の魔法で誕生させた存在だった。彼女はスマーフの村を見つけ出すために差し向けられたが、パパの魔法で救われたのだ。
しかしスマーフェットという名前の意味も、どんな個性の持ち主なのかも、村の誰もが分からずにいた。その答えを誰よりも知りたがっているのはスマーフェット本人で、ずっと彼女は悩み続けている。ひねくれ者であるグラウチーの真似をしてイチャモンを付けようとするスマーフェットだが、自分には向いていないことを認識させられた。ブレイニーの家を訪ねた彼女は、新しい発明品のテストを見せられる。それはスマーフの特徴を発見する機械で、実験台はヘフティーだった。
実験は成功し、ヘフティーの特徴は燃料として瓶に抽出された。スマーフェットは機械を被り、自分で試すようブレイニーに頼む。しかしスマーフェットは無意識の内にエネルギーを放出せず、自分の中に取り込んだ。ブレイニーは「それは君が本物のスマーフじゃないから」と口を滑らせてしまい、慌てて黙り込んだ。スマーフェットが「いいから言って」と促すと、ブレイニーは「つまり、この機械では君を鑑定できないってことだ」と告げた。ヘフティーは「楽しいことをしよう」とスマーフェットに提案し、ブレイニー&クラムジーも連れて遊びに出掛けることにした。
同じ頃、ガーガメルはスマーフを捕獲するための冷凍玉を作り、猫のアズレールに見せた。アズレールはスマーフェットたちが歩いている姿を発見し、ガーガメルに知らせた。ガーガメルはハゲワシのモンティーを呼び、スマーフを捕まえるよう命じた。一方、スマーフェットはヘフティーたちとボードで遊んでいたが、禁断の森へ飛ばされてしまう。落下したスマーフェットはスマーフを目撃するが、声を掛けると逃げられてしまった。
相手の落とした帽子をスマーフェットが拾い上げると、そこへヘフティーたちが来た。「スマーフを見たの」とスマーフェットが言った直後、モンティーが来て彼女を拉致した。ガーガメルは捕まえたのがスマーフェットだと知って残念がるが、スマーフの帽子を手に入れたので持ち主の家を調べることにした。彼が魔法を使って大釜に尋ねると、「そこは失われた村だ。誰も知らない場所にあるが、手掛かりがある」と3本の高い木を線描した。ガーガメルは禁断の森だと気付き、旅支度に取り掛かることにした。
ヘフティーたちはガーガメルの家へ侵入し、鳥籠からスマーフェットを救い出した。4人は地図を撮影し、ガーガメルの家から脱出する。モンティーとアズレールに追われたスマーフェットたちは、何とか逃げ切った。村に戻った4人は、決まりを破って村を抜け出したこと、禁断の森に入ったことをパパから厳しく叱責された。パパが外出禁止を命じるとヘフティーたちは抗議するが、スマーフェットは「当然よ。部屋で反省する」と告げた。それはパパを欺くための芝居で、彼女は深夜に村を抜け出した。
ヘフティ、ブレイニー、クラムジーはスマーフェットの動きを察知し、一緒に禁断の森へ向かう。新種の植物や飛行昆虫を発見し、4人は興奮した。しかしモンティー&アズレールを引き連れたガーガメルに見つかったので、慌てて逃げ出した。ガーガメルはクラムジーに飛行昆虫の卵を渡し、群れに追われるように仕向けた。スマーフェットたちは別々の穴に飛び込むが、飛行昆虫の群れが火を吐く様子を見たガーガメルは4人が死んだと思い込んだ。
スマーフェットたちはトンネルの中で互いに語り掛け、合流しようとする。クラムジーはスマーフェットたちの制止を無視し、出口を作るためにヘフティーの燃料を爆発させた。すると闇で光るウサギの群れが出現して疾走したので、スマーフェットたちは背中に飛び乗った。4人はウサギの背中で合流し、トンネルから抜け出すことが出来た。スマーフェットは自分たちが乗っているウサギにバッキーと名付け、そのまま3本の高い木へ向かった。
同じ頃、パパはスマーフェットたちの家へ行き、村から抜け出したことを知った。日が暮れるとスマーフェットたちは野宿し、火を起こす。スマーフェットが「私たちと同じスマーフが他にもいたなんて」と嬉しそうに話すと、他の3人は「まるで違う姿かもしれない」と言う。スマーフェットが「どんな姿でも、危険が迫っていることを知らせなきゃ」と語ると、ヘフティーたちは同意した。休憩を終えた4人は再び出発し、川岸に辿り着いた。バッキーが川に入ることを嫌がったので、スマーフェットたちは筏を作った。
4人はバッキーに別れを告げ、筏で川を下る。途中でガーガメルと遭遇し、急流を進みながら争いになった。しかしガーガメルは前方から飛んで来た石に激突し、川に転落した。ガーガメルが「溺れてしまう」と助けを求めると、ヘフティーは「助けてやろう」と仲間に言う。スマーフェットも「助けてあげましょう」と口にしたので、ブレイニーとグラウチーも仕方なく承知した。しかし救助されたガーガメルは4人を川に突き落とし、筏を奪い取った。
川を流された4人は陸地に上がるが、ブレイニーはスマーフェットとヘフティーに怒りをぶつけた。他の面々も苛立ちを見せる中、仮面の集団が現れて4人を捕獲した。仮面の集団はスマーフェットだけを連れ出し、興味深く観察した。仮面を外した集団は、女の子のスマーフたちだった。スマーフェットが禁断の森で遭遇したのは、その中のスマーフ・リリーだった。リリーやブロッサムたちがスマーフェットを歓迎する中で、ストームだけは冷淡な態度を取った。
ストームから用件を問われたスマーフェットは、ガーガメルのことを知らせる。しかし誰も危機感を示さず、4人を自分たちの暮らしているスマーフィー・グローブへ案内した。村長のウィローはスマーフェットたちに、村には女の子しかいないことを話す。スマーフェットは改めてガーガメルの危険性を訴えるが、ウィローは手掛かりの絵が木ではなく滝を意味していることを教える。高い木のある場所には入ったら生きて出られない沼があるのだとストームたちは余裕を見せるが、スマーフェットは「貴方たちはガーガメルを知らない」と警告する。ウィローはストームに、念のために偵察へ出向くよう指示した。
ストームはクラムジーをガイドに指名し、飛行昆虫のスピットファイヤーに乗って飛び立つ。スマーフェットの心配は的中し、ガーガメルは沼から脱出していた。ガーガメルはクラムジーを発見し、モンティーに攻撃を命じた。クラムジーとストームは協力し、モンティーを撃退した。ヘフティーはスマーフェットに、「もう目的は果たした。そろそろ帰ろう」と告げる。しかし村の女の子たちと仲良くなったスマーフェットは、困惑の表情を浮かべた。
そこへストームが戻り、ガーガメルが向かっていることをウィローに報告した。彼女はクラムジーからスマーフェットの出自を聞いており、「アンタがガーガメルを連れて来た。それが計画だったんでしょ」とストームが「スマーフェットは本物のスマーフじゃない」と糾弾するとヘフティーが「彼女は君たちを助けに来たんだ」と擁護するが、スマーフェットは悲しそうに「いいのよ」と言う。そこへバッキーに乗ったパパが駆け付け、スマーフェットは村の面々に紹介する。直後にガーガメルが現れ、スマーフたちに襲い掛かった…。監督はケリー・アズベリー、キャラクター創作はペヨ、脚本はステイシー・ハーマン&パメラ・リボン、製作はジョーダン・カーナー&メアリー・エレン・バウダー・アンドリューズ、製作総指揮はラジャ・ゴスネル&ベン・ウェイスブレン、共同製作はマンデー・キサート・タンケンソン&ヴィロニク・カリフォード&ベン・ハーバー、編集はブレット・マーネル、プロダクション・デザイナーはノエル・トリオルー、視覚効果監修はマイケル・フォード、アート・ディレクターはディーン・ゴードン&マルセロ・ヴィグナリ、キャラクター・デザイナーはパトリック・メイト、音楽はクリストファー・レナーツ。
声の出演はデミ・ロヴァート、レイン・ウィルソン、ジョー・マンガニエロ、ジャック・マクブレイヤー、ダニー・プディー、マンディー・パティンキン、ディー・ブラッドリー・ベイカー、フランク・ウェルカー、ミシェル・ロドリゲス、エリー・ケンパー、ジュリア・ロバーツ、アリエル・ウィンター、メーガン・トレイナー、ブレット・マーネル、ブランドン・ジェフォーズ、ケリー・アズベリー、ジェイク・ジョンソン、ガブリエル・イグレシアス、タイタス・バージェス、ジェフ・デンハム、パトリック・ボーリン他。
ベルギーの漫画家、ペヨによって連載されたバンド・デシネ(漫画)を基にしたシリーズ第3作。
監督は『スピリット』『シュレック2』のケリー・アズベリー。声優陣は前2作から一新されている。
スマーフェットをデミ・ロヴァート、ガーガメルをレイン・ウィルソン、ヘフティーをジョー・マンガニエロ、クラムジーをジャック・マクブレイヤー、ブレイニーをダニー・プディー、パパをマンディー・パティンキン、ストームをミシェル・ロドリゲス、ブロッサムをエリー・ケンパー、ウィローをジュリア・ロバーツ、リリーをアリエル・ウィンター、メロディーをメーガン・トレイナーが演じている。これまでの2作とは声優陣が一新されているだけでなく、もっと大きな違いがある。
これまでの2作は、3DCGアニメによるスマーフと実写を融合していた。実写として俳優たちが登場し、人間世界でスマーフたちが動き回る様子を描いていた。人間の夫婦とスマーフたちの交流を描いていた。
しかし今回は実写パートを除外し、アニメーションだけで構成されているのだ。
ひょっとすると製作陣は、「アニメと実写の融合はイマイチだった」「人間と絡ませたのは失敗だった」と思ったのかもしれない。実写パートが無くなったことを受けて、今回は人間キャラが1人も登場しない。人間社会が舞台になることはなく、ずっと森の中で物語が展開される。
これが吉と出たか凶と出たかだが、答えは後者だ。
「スマーフが人間社会に紛れ込む」という趣向が消えたことが、マイナスだと言わざるを得ない。その代わりになるようなプラス材料があれば何の問題も無いが、それが見当たらない。
結果としては、ただ凡庸さが際立つ羽目になっている。
言っておくけど、アニメと実写の融合も、スマーフと人間を絡ませたのも、決して間違っていたわけじゃないからね。前2作の問題はそこじゃなくて、演出と脚本にあったんだからね。シリーズの1作目で、スマーフェットは「自分はスマーフ村の仲間だ」という思いを強く抱いたはずだ。
それが2作目になると、「本当の私は誰なのか」「ここは本当に自分の居場所なのか」と悩む様子を序盤から見せた。
「前作は無かったことにしちゃうのか」と感じたが、ともかく2作目の最後になるとスマーフェットは「大事なのは生まれではない。
どういう自分になりたいか」というパパの言葉を理解して、ちゃんと悩みは解消されていた。ところが今回の冒頭で、スマーフェットが「自分は何者なのか分からない」と悩んでいる様子が描かれる。
おいおい、また同じことの繰り返しなのかと。
何度同じことを繰り返せば気が済むんだよ。スマーフェットって、学習能力がゼロなのか。それとも、極度の健忘症なのか。
あと、製作陣は1作目と2作目を無かったことにしているのか。今さらスマーフェットが「自分の名前の意味は何だろう、自分の個性は何だろう」と悩む話を描くって、まるで話が先に進んでいないじゃねえか。そもそも、「スマーフェットの名前の意味を誰も分からない」って、そんなの当たり前でしょ。だってガーガメルが作ったんだから、その意味なんて彼しか知らないでしょうに。
あと、スマーフェットは「村の紅一点」という時点で、充分に個性になっているでしょうに。
っていうかさ、2作目でパパから「大事なのは生まれではない。どういう自分になりたいか」と言われたんだから、スマーフェットがどういう自分になりたいかを考えて行動すればいいだけでしょ。それが結果として、個性になるんじゃないのかと。
ここから始めて見た人なら全く気にならないだろうけど、前2作を経て本作品に入ると「足踏み状態」にイラッとさせられるわ。ガーガメルがヴィランである以上、終盤に「スマーフたちが捕まってエネルギーを吸い取られてしまう」という展開が待っているのは仕方無いのかもしれない。
でも、これも前2作を経て本作品に入ると、「また同じことの繰り返しなのかよ」と感じてしまう。
これまで何度もスマーフたちはガーガメルに捕まっているのに、そこから何も学習していないようにも感じてしまう。
『トムとジェリー』のような「予定調和だけど楽しめる」というパターンが確立されているわけでもないしね。敵を配置した方が物語は作りやすいし、何かと便利なのは事実だ。
でも、実はガーガメルどころかヴィランを登場させずに物語を作った方がいいんじゃないかと思ったりするんだよね。せっかく新しいスマーフたちと出会ったのに、その描写も交流も薄味に終わっちゃうし。
あと、序盤で「スマーフェットは自分の個性も名前も意味も知らずに悩んでいる」ってことを示したんだから、その答えが分かって本人が納得する結末は絶対に必要でしょ。
でも、そこをボンヤリと片付けちゃってんのよね。「一言では言い表せない。色々と顔がある」ってことで済ませちゃうのよ。
上手く着地させたつもりだろうげと、それは逃げたようにしか思えないぞ。(観賞日:2019年11月30日)