『スマーフ』:2011、アメリカ
魅惑の森の奥深くには、リンゴ3つ分の背丈である青い肌の種族、スマーフたちが暮らす村があった。ブルームーン祭りの準備が進む中、クラムジーはショーのリハーサルに遅刻し、急いで駆け付ける。しかし会場に入ろうとした彼は制止され、ブレイニーから「君は参加禁止のリストに入ってる」と告げられる。城に住む悪い魔法使いのガーガメルは、スマーフたちを捕まえてハッピーブルーエキスを搾り取り、自らの魔法を完全無欠なものにして世界を征服しようと企んでいる。スマーフ薬草が生えている場所を示した魔法の地図を手に入れた彼は、飼い猫のアズレールを連れて魔法で瞬間移動した。
パパ・スマーフは魔法を使い、未来のヴィジョンを呼び出した。すると、そこにはクラムジーがドラゴンの杖に手を伸ばし、スマーフたちが檻に入れられる様子が予言として写し出された。不安を抱いたパパの元へ、クラムジーがやって来た。彼が「スマーフ薬草が残り少ないから、取りに行くよ」と口にしたので、パパは慌てて「よせ、ガーガメルの城に近い。ワシが行く」と告げた。クラムジーは「分かった」と返事をするが、勝手に森へ出掛けてしまった。
クラムジーはガーガメルとアズレールに見つかり、急いで逃げ出した。彼の行動により、ガーガメルはスマーフの村が見えない魔法の壁で消されていることを知った。ガーガメルが村に乗り込んで来たので、パパは森へ逃げるよう仲間たちに指示した。緊急用ベリージャムを詰めた袋を手に取ったパパも、ガーガメルから逃走する。他のスマーフたちが正しい森の道を進む中で、クラムジーだけは別の方向へと走った。だが、その行く手には禁断の滝があり、立て札には「行くな」と書かれていた。
パパ、ガッツィー、スマーフェット、ブレイニー、グラウチーはクラムジーを助けるため、すぐに後を追った。クラムジーは滝壺へ落下しそうになるが、間一髪でパパたちが駆け付けた。しかし滝の向こうに渦が出現し、彼らは吸い込まれそうになってしまう。誰かが杖を差し出したので、パパは必死で掴んだ。だが、それはガーガメルの杖だった。パパは手を離し、渦に吸い込まれることを選んだ。
渦を抜けたパパたちが辿り着いたのは、人間の住むニューヨークだった。すぐにガーガメルとアズレールが渦を抜けて追い掛けて来たので、パパたちは逃げ出した。その近くでは、化粧品メーカー「アンジェロウ」の広告マンであるパトリックが新商品のキャンペーン・パーティー会場で仕事をしていた。傲慢な女社長のオディールは、マーケティング部長を首にしてパトリックを後任に据えた。新商品の発売が2日後に迫る中、オディールはパトリックに「新しいキャンペーンを始めて」と命じた。
パパは仲間たちに「今夜はブルームーンが出るから穴も開くはず。夜になるまで、どこかに隠れよう」と告げた。アズレールが来たので、彼らは急いで木の上に避難する。スマーフェットはアズレールに髪を食われるが、何とか助かった。クラムジーだけが逃げ遅れてしまい、慌てて逃走した。彼はパトリックが運ぼうとしていた箱につまずき、その中に入ってしまった。パトリックは何も知らないまま、その箱をタクシーに積み込んだ。
パパたちはクラムジーを救うため、タクシーの屋根に乗った。パトリックはタクシーでアパートへ戻り、箱を部屋に運んだ。パトリックは妊娠中の妻グレースと暮らしていたが、彼女との会話を早く切り上げ、仕事に取り掛かった。ガーガメルはアズレールが吐き出した髪の束を見て、「これで魔法薬が作れる。スマーフ全員を捕まえられる」と歓喜した。近くにあった古城を見つけたガーガメルは、そこを実験室として使うことにした。
スマーフェットたちは月が青くないので不安になるが、パパが「きっと、また穴は開く」と元気付けた。彼らはアパートの外壁を登り、パトリックの部屋へ向かった。パトリックたちに気付かれないよう箱から出たクラムジーは、飼い犬のエルウェイに見つかる。エルウェイに追い掛けられたクラムジーは、慌ててバスルームに逃げ込んだ。パパたちはパトリックの家に侵入し、箱を調べるが、もちろん中にクラムジーはいなかった。
バスルームへ赴いたグレースはクラムジーを発見し、箱を開けたパトリックはパパたちを見つけた。クラムジーは「帰りたいだけなんだ」と必死で説明し、グレースの警戒心を解いた。グレースはクラムジーを抱いて、パトリックの元へ現れた。翌朝、ガーガメルは薬を完成させ、その一滴を指輪に入れた。一方、パトリックはスマーフたちを歓迎するグレースの姿を眺めながら、困惑の表情を浮かべた。彼はグーグルで検索し、スマーフのことを調べた。
パパに頼まれたパトリックはブルームーンについても検索し、「月が青くなるわけじゃない」と告げる。その言葉で不安を抱く仲間たちに、パパは「ブルームーンを引き起こす薬を手に入れれば、穴は開く」と告げる。だが、いつブルームーンが昇るのかは、スターゲイザーが無いと分からないのだという。スターゲイザーを貸してほしいと頼まれたパトリックは、「そんな物は持っていない」と答えた。
グレースは超音波検査で病院に出掛け、パトリックも仕事へ向かう時間になった。パトリックはスマーフたちに「外出しないように」と言い含め、部屋を後にした。だが、ブレイニーの「スターゲイザーは仕事場にあるはず」という言葉にパパは賛同し、パトリックの会社へ向かうことにした。パパはドジなクラムジーに「お前は留守番をしていてくれ」と告げ、彼以外のメンバーで行くことにした。
パパたちはパトリックが乗り込んだタクシーの屋根に着地し、会社に到着した。タクシーを降りたパトリックはパパたちに「仕事場を見せて欲しい」と声を掛けられ、仕方なくオフィスへ連れて行く。しかしスマーフたちが自由に歌ったり喋ったりするので一向に仕事がはかどらず、パトリックは辟易してしまう。病院から戻ったグレースは、クラムジーから仲間たちがスターゲイザーを探しに出掛けたことを聞かされた。スマーフを捜して町に出たガーガメルは、アンジェロウの本社にやって来た。
ガーガメルがアンジェロウの本社に入ると、オディールが母親をモデルにして化粧品のPRを行っていた。ガーガメルに仕事を邪魔されたオディールは、警備員を呼んで連行してもらおうとする。ガーガメルは「私は魔法使いだぞ、こんなことも出来る」と腹を立て、魔法の薬を使ってオディールの母親を若返らせた。その効果に驚いたオディールは、彼に「もう一度出来る?」と問い掛ける。「出来ないことも無い」とガーガメルが言うと、オディールは「私と組めば、貴方の名が世界中に響き渡るわ」と持ち掛けた。
オディールは部下のアンリを伴ってガーガメルをレストランへ連れて行き、食事を注文して接待する。オディールから薬の大量生産を要請されたガーガメルは、「まずはスマーフを捕まえないと始まらない」と口にした。パトリックはグレースに電話を掛け、スマーフたちを連れ戻しに来てほしいと頼んだ。グレスーは紙袋にスマーフたちを入れ、タクシーで帰宅しようとする。だが、デパートの窓に描かれたイラストを見たスマーフたちは「スターゲイザーだ」と興奮し、車から飛び出してしまった。
スマーフたちがデパートへ駆け込んだため、グレースは慌ててパトリックに連絡し、助けを求めた。会社を出て行くパトリックを目撃したガーガメルは、すぐに後を追った。スマーフは手分けしてスターゲイザーを探すが、子供たちに見つかって追い回される。デパートに到着したガーガメルは落ち葉バキュームを使ってスマーフたちを捕まえようとするが、パトリックに妨害されて失敗に終わった。ガーガメルは駆け付けた警備員に連行されそうになって抵抗し、スタンガンで気絶させられた。
その夜、パパはスターゲイザー(望遠鏡)を使って月を観察し、ブルームーンが昇る日を計算しようとする。パトリックはブルームーンの写真を使ったポスターの図案を考えるが、無難に別のプランで行くことに決めた。オディールにメールで図案を送ると、無事に承認された。しかしパトリックが目を離した隙に、クラムジーが滑ってパソコンのキーを幾つも踏んだため、ブルームーンの図案が広告看板業者へ送るメールに添付されてしまう。パトリックはそれに気付かず、送信ボタンを押してしまった。
翌朝、刑務所に収監されていたガーガメルは、ハエの群れに体を持ち上げさせて脱獄した。パパは仲間たちに、ブルームーンが昇る正確な時刻を突き止めたことを告げた。ただし、穴を開けるには呪文が必要だ。そのために彼らは、パトリックから教えてもらった近所の古書店へ行くことにした。窓の外に目をやったパトリックは、没にしたはずの図案が広告として大きく表示されているのに気付いた。オディールからの電話で早急な対処を命じられたパトリックは、顔面蒼白となった…。監督はラージャ・ゴスネル、キャラクター創作はペヨ、原案はJ・デヴィッド・ステム&デヴィッド・N・ワイス、脚本はJ・デヴィッド・ステム&デヴィッド・N・ワイス&ジェイ・シェリック&デヴィッド・ロン、製作はジョーダン・カーナー、共同製作はヴェロニク・カリフォード&ヘンドリク・コイスマン、製作総指揮はエズラ・スワードロウ&ベン・ハーバー&ポール・ニーサン、撮影はフィル・メヒュー、編集はサブリナ・プリスコ、美術はビル・ボース、衣装はリタ・ライアック、視覚効果監修はリチャード・R・フーヴァー、音楽はエイトール・ペレイラ。
出演はハンク・アザリア、ニール・パトリック・ハリス、ジェイマ・メイズ、ソフィア・べルガラ、ティム・ガン、マディソン・マッキンレー、メグ・フィリップス、ジュリー・チャン、ロジャー・クラーク、マーク・ドハーティー、ミングリー・チェン、ショーン・ケニン、ヴィクター・パガン他。
声の出演はジョナサン・ウィンタース、アラン・カミング、ケイティー・ペリー、フレッド・アーミセン、ジョージ・ロペス、アントン・イェルチン、キーナン・トンプソン、ジェフ・フォックスワーシー、ジョン・オリヴァー、ウォルフガング・パック、ゲイリー・バサラダ、ポール・ルーベンス、B・J・ノヴァク、トム・ケイン、ジョン・カーサー、ジョエル・マクラリー、フランク・ウェルカー他。
ベルギーの漫画家、ペヨによって連載されたバンド・デシネ(漫画)を基にした作品。
と言うより、ハンナ・バーベラ・プロダクションのTVアニメを基にした映画と表現した方が正確だろう。
3DCGアニメによるスマーフたちと、実写を融合して作られている。
監督は『スクービー・ドゥー』『ビバリーヒルズ・チワワ』のラージャ・ゴスネル。
ガーガメルをハンク・アザリア、パトリックをニール・パトリック・ハリス、グレースをジェイマ・メイズ、オディールをソフィア・べルガラが演じている。パパ・スマーフの声をジョナサン・ウィンタース、ガッツィーをアラン・カミング、スマーフェットをケイティー・ペリー、ブレイニーをフレッド・アーミセン、グラウチーをジョージ・ロペス、クラムジーをアントン・イェルチンが担当している。冒頭、「スマーフたちは一人一人違った個性を持っています。だから仲良く暮らせるんです」というナレーションが入るのだが、その直後、クラムジーがブレイニーから「みんな君と踊りたくないんだ。だって骨折は避けたいからな」と嫌味を言われ、祭りのリハーサルに参加させてもらえないというシーンが描かれる。
おいおい、ちっとも仲良く暮らしていないじゃねえか。
ただ、それ以降は、ブレイニーがクラムジーを嫌悪するような描写も無いんだよな。
それはそれで中途半端だぞ。「一人一人違った個性を持っています」と語られている通り、確かにスマーフたちはそれぞれの特徴が設定されており、それに応じた名前が付けられている。
例えば「ガッツィー(Gutsy)」はガッツがあり、「ブレイニー(Brainy)」はインテリで、「クラムジー(Clumsy)」はヘマが多いといった具合だ。
ただし、各人の個性は、それほど発揮されていない。
例えばガッツィーなんかは、パトリックの部屋に潜入して彼を縛り上げようとするシーンで、ようやく好戦的な性格がアピールされる。でも、その程度。
グラウチーは、デパートのシーンで人形に話し掛けるシーンがある程度。
お父さん役のパパ、トラブルメーカーのクラムジー、紅一点のスマーフェットはともかく、他の3人は数合わせに近い。「もう皆さんはスマーフのことを良くご存知でしょ」というスタンスで作られているのか、スマーフという種族や住んでいる世界の説明、各スマーフやガーガメルたちのキャラクター紹介といった作業は、皆無に等しい。
例えば序盤にガーガメルがスマーフェットの人形を睨んで「裏切り者」と呼んでいるけど、「そもそもスマーフェットはガーガメルが作り出した存在であり、それをパパ・スマーフが生まれ変わらせてスマーフ村の仲間になった」という設定を知らなければ、何のこっちゃ分からんよな。
後でスマーフェット自身が「パパに助けられた」とグレースに話すシーンはあるけど、セリフで軽く触れるだけで、そこに回想シーンが付いて来るわけでもないし、あくまでも「スマーフェットの設定を知っている人」に向けての描写だ。
っていうか、ストーリー展開に深く関与してくるわけでもないんだから、スマーフェットがガーガメルに作られた存在という設定について、わざわざ触れる必要性なんて全く無いんだよな。クラムジーは「ヘマばかりしている」というキャラクター設定なんだけど、それが好感の持てる形になっていない。
彼はパパから「薬草を取りに行くのはよせ」と言われて「分かった」と返答したのに、勝手に森へ行く。そしてガーガメルに見つかって追い掛けられ、村へ乗り込んで来るという結果を招く。
彼が森へ行ったのは、「仲間のために薬草を手に入れたい」ということではなく、自分が良く見られたい、褒められたいという気持ちから来る行動だ。そのせいで仲間を危機に追いやっている。
その時点で好意的には受け取れない。
おまけに、自分のせいで仲間を危険にさらしたのに、そのことを謝りもしない。
ますます不愉快だ。バスルームに逃げ込んだクラムジーが滑ったり転んだりトイレットペーパーを大量に巻き取って便器へ落としてしまったりする様子は、ドタバタ喜劇として楽しむべきなんだろう。
だけど、なんか愉快じゃないんだよな。
表情や動きの見せ方がカートゥーン的に誇張してあれば、少しは印象が変わったかもしれないが。今一つ可愛げが感じられないんだよな。
まあ前述のように、クラムジーには性格的に問題があるという部分も大きいけどね。好感が持てないのはクラムジーだけじゃなくて、他の連中も似たようなモンなんだよな。
パトリックが「外に出ないように」と指示しても、それを無視して外へ出る。それどころか、彼のオフィスに押し掛け、歌ったり喋ったりする。
「仕事をさせてほしい」とパトリックが頼んでも、歌やお喋りをやめようとはしない。ホントにウザい連中なのだ。
悪意は無くて、ただ無邪気なだけなんだけど、だから許されるってものでもない。
むしろ、余計にウザいわ。スマーフたちがタクシーを降りてデパートへ行き、パトリックとグレースを振り回すのも、やはりドタバタ喜劇になっておらず、迷惑なだけだ。
ちっとも人の言うことを聞かないんだよな、こいつら。すげえ迷惑な連中だよ。
だからパトリックとグレースに「放っておけよ」と言いたくなってしまう。
それでピンチに陥っても、子供たちに捕まっても、ガーガメルに捕獲されても、自業自得でしかないもんな。助けてやる義理も恩も無いんだし。
「助けてやりたい」とも感じさせない。たまに「家族や仲間の絆は大切」とか「自分らしく生きるべき」とか、そういったメッセージ的なことがセリフで語られるが、取って付けた感じしか無いし、説教がましい。
そのメッセージを伝えるためのドラマが足りていないので、薄っぺらいし、まるで心に響かない。っていうか、話そのものが薄っぺらいし。
パトリックが音楽ゲームでギター型コントローラーを操作し、スマーフたちが歌ったり踊ったりするシーンなんかも、「そんなことで時間を費やす暇があったら、もっとドラマに厚みを持たせるか、さっさと先に進めるか、どっちかにしろよ」と言いたくなる。
ミュージカル・シーンって好きなんだけど、パトリックのオフィスで歌うシーンにしろ、そのゲームのシーンにしろ、何の魅力も感じない。ただ疎ましいだけ。没にしたはずの図案が使われていることに気付いたパトリックが焦っていると、クラムジーが言いにくそうに「もしかすると僕のせいかもしれない」と告げる。で、パパたちは一応、パトリックに詫びを入れる。
ただし、じゃあパトリックを助けるために行動を起こすのかというと、すぐに古書店へ向かってしまう。自分たちのことしか考えていないのだ。
でも、後でパトリックがオディールに「あの図案を送信すべきだった」と主張したり、そのブルームーンの図案が好評を得たりという展開を用意することで、スマーフたちの行為を正当化してしまう。
だけどさ、結果的に吉とは出たけど、やったことに対する反省の色が無いのはダメだろ。
パトリックには世話になっているのに、自分たちのせいで彼が困っているにも関わらず、まるで手助けしないって、サイテーじゃねえか。(観賞日:2013年8月19日)