『スリーパーズ』:1996、アメリカ

1968年、シェイクス、マイケル、トミー、ジョンはイタズラ盛りの少年4人組だった。ある時、彼らはホットドッグの屋台を移動させるというイタズラをやらかした。ほんの遊びのつもりだったが、地下鉄の階段から屋台を落としてしまい、下にいた男性に重傷を負わせてしまった。
4人は殺人未遂の罪でウィルキンソン少年院に入れられる。彼らの階を担当する看守はノークス、ファーガソン、スタイラー、アディソンの4人だ。シェイクス達は彼らから幾度にも渡る性的虐待を受け、心に深い傷を負った。シェイクス達は性的虐待のことを秘密にすることを誓った。
1981年、ギャングの一員となっていたトミーとジョンは、偶然にもノークスと出会った。2人はノークスを射殺して逮捕されるが、無罪を主張する。新聞記者になっていたシェイクスと検事補になっていたマイケルは、トミーとジョンの裁判を利用して看守達への復讐を遂げようと考える…。

監督&脚本はバリー・レヴィンソン、原作&共同製作はロレンゾ・カルカテラ、製作はバリー・レヴィンソン&スティーヴ・ゴリン、製作総指揮はピーター・ギリアーノ、撮影はミヒャエル・バルハウス、編集はスチュ・リンダー、美術はクリスティ・ジア、衣装はグロリア・グレシャム、音楽はジョン・ウィリアムズ。
出演はジェイソン・パトリック、ブラッド・ピット、ロバート・デ・ニーロ、ダスティン・ホフマン、ロン・エルダード、ビリー・クラダップ、ミニー・ドライバー、ケヴィン・ベーコン、ヴィットーリオ・ガスマン、ジョセフ・ペリーノ、ブラッド・レンフロ、ジェフリー・ウィグダー、ジョナサン・タッカー、テリー・キニー、レニー・ロフティン、ジェフリー・ドノヴァン、ブルーノ・カービー、フランク・メドラーノ他。


実話を基にしたロレンゾ・カルカテラの原作を映画化した作品。
シェイクスをジェイソン・パトリック、マイケルをブラッド・ピット、ノークスをケヴィン・ベーコン、シェイクス達の味方となるボビー神父にロバート・デ・ニーロ、スナイダー弁護士にダスティン・ホフマンという、なかなか豪華な配役である。

しかし、この脚本は彼らを生かし切れていない。
ひょっとすると、冒頭でノークス殺しを見せた方が良かったかもしれない。
あまりにナレーションがたくさん入ることは、大きくマイナスに働いている。
ナレーションが饒舌であればあるほど、提示される物語は軽いものになっている。

少年時代のシーンは1966年から始まり、1967年、そして少年院に入ってからの1968年と、わざわざテロップが入って3年間に渡っている。
しかし、事件を起こすのが1967年なのだから、1966年は要らないだろう。
そもそも少年時代の年月の経過は明確にせず、“ひとまとめ”にしておいた方がいい。

少年時代の様子で前半のかなり長い時間を割いているのに、シェイクス達の友情は全く見えてこない。大人になってからも、彼らの心の描写は薄い。
他にも、例えばボビー神父が偽証するというのは非常に勇気の要る行動であろうと思うが、彼の苦悩は、それほど見えてこなかったりする。

過失とはいえ、シェイクス達は殺人未遂の犯罪者だ。
そこに至った原因も、遊びと称してはいるが完全に犯罪行為だ。
そのような面々の復讐劇を観客に共感できるように仕向けるためには、よほど少年院での扱いが酷かったのだと示す必要がある。

しかし、少年院での性的暴行のシーンは、完全にボカして通り過ぎてしまう。
ここではノークス達がどれほど残酷な人間かを観客に強く意識させておかないと、後半で復讐に至るシェイクス達の姿に観客が感情移入することが、非常に困難になってしまうのだ。そりゃあヘイズ・コードの問題もあるだろうが、それにしてもボカしすぎ。

後半の展開にしても、まずノークスという悪党の親玉が消えてしまうので、後の復讐劇はどうしても尻すぼみになっている印象を受ける。
しかも法廷を舞台にした息詰まる心理ドラマが待ち受けているのかと思いきや、全く無関係の場所で展開するエピソードがたっぷり。ダメだコリャ。

 

*ポンコツ映画愛護協会