『スカイライン-征服-』:2010、アメリカ

深夜、幾つもの大きな光が上空から飛来した。ブラインド越しに差し込む光で、エレインは朝かと思って目を覚ました。エレインは吐き気 を催し、トイレに駆け込んだ。彼女の隣で寝ていたジャロッドも、地面の揺れを感じて目を覚ました。直後、隣のリビングから「レイ!」 と叫ぶ声がした。ジャロッドが駆け込むと、デニースが「レイが消えた」と怯えた表情で告げた。ジャロッドが窓の外に目を向けると、 まばゆい光が差し込んだ。それを見つめるジャロッドの体に、痣が浮き上がった。
15時間前、ジャロッドは親友であるテリーの誕生日を祝うため、恋人のエレインと共に飛行機でロサンゼルスへ赴いた。テリーはビジネス で成功し、高級アパートメントのペントハウスで暮らしていた。ジャロッドたちがペントハウスへ行くと、テリー、秘書のデニース、 テリーの恋人キャンディスがいた。夜になって誕生日パーティーが始まり、ジャロッドはテリーから仕事仲間のレイを紹介された。テリー から「ロスへ引っ越せ。一緒に仕事しよう」と持ち掛けられ、ジャロッドは戸惑った。
ジャロッドが席を外したエレインの元へ行くと、彼女は生理が遅れていることを引きつった表情で打ち明けた。「なぜ言わなかった」と 尋ねるジャロッドに、彼女は「旅行を台無しにしたくなかったから」と答える。ジャロッドは「クソッ」と漏らし、「まだ心の準備が」と 困った表情になった。エレインは「だったら私はどうなるの」と彼を責めた。夜中まで大勢の客が騒いでいたので、管理人のオリヴァーが 部屋にやって来た。応対に出たキャンディスに、彼は騒音の苦情が来ていることを伝えた。
1日目、午前4時27分。上空から幾つもの光が飛来した。目を覚ましたレイがブラインドを開けると、まばゆい光が差し込んだ。気付いた デニースの眼前で、レイは窓を開けてバルコニーに出る。そして閃光と共に、レイは姿を消した。そこへ来たジャロッドも、やはり閃光に 吸い込まれそうになった。しかし駆け付けたテリーが彼を捕まえて必死に押し留めていると、光は消えた。ジャロッドは白目をむいて失神 した。幾つかの光が、上空へ飛び去った。
我に返ったジャロッドは、「光の方へ引っ張られた」と呟いた。大きな物音がして外を見たテリーは、「何かが居る」と口にした。彼は 近くのビルの屋上に人がいるのを見つけた。テリーはジャロッドを誘い、何が起きているのか調べに行くことにした。廊下に出たところで 、犬を抱いた住人のウォルトが「何が起きてる?」と尋ねて来た。テリーは「それを調べに行く。部屋に戻ってろ」と彼に告げた。
キャンディスは携帯でニュースをチェックするが、光に関する情報は何も報じられていなかった。デニースがテレビを付けると、スタジオ には誰もいなかった。他のチャンネルに切り替えると、放送そのものが止まっていた。夜が明ける中、ジャロッドとテリーは屋上へ行く。 エレインは母のジャッキーに連絡しようとするが、留守電になっていた。ジャロッドとテリーは、空から幾つもの大きな光が次々に飛来 してくるのを目撃した。その直後、超巨大飛行物体が幾つも上空に出現し、無数の人々を吸い上げた。
ジャロッドとテリーは部屋に戻り、屋上で撮影した写真を他の面々に見せた。テリーは銃を手に取り、「いい考えがある」と一人で部屋を 出た。彼はウォルトの部屋へ行くが、ノックしても返事が無いので勝手に上がり込んだ。するとウォルトは、部屋の隅で怯えていた。彼が 「見たんだ、人が空に吸い込まれるのを。どうなるんだ?」と尋ねるので、テリーは「アンタの車で脱出するんだ」と告げる。しかし ウォルトは「私は動かないぞ」と拒んだ。
巨大な飛行生物が窓の外に出現したため、テリーとウォルトは身を隠した。その生物は触手のような物を伸ばし、部屋を調べる。飼い犬を 助けようとウォルトが飛び出したため、テリーは飛行生物に発砲して部屋から逃げ出した。彼は自宅に戻り、「ウォルトが連れ去られた。 ここから逃げるぞ」とジャロッドたちに告げる。エレインは「どこに逃げても奴らは居るわ」と反対するが、ジャロッドは「水の上には 居ない」と告げる。しかしエレインは「どうせ長くは持たない。行っても生き残る方法は無い」と脱出に同意しなかった。
テリーが「時間が無い」と声を荒げ、エレインと言い争っていると、タイマーで全てのブラインドが開いた。ジャロッドたちは慌てて身を 隠す。触手生物が去ってから、テリーはスイッチを押してブラインドを閉じた。エレインは「私は動かない。ここは発見されてない。静か にしていればいい」と主張するが、テリーは「いつまで?奴らは人を連れ去るんだ。街から離れた方が安全だ」と反論した。ジャロッドも 賛同し、ボートのあるマリーナへ全員で移動することになった。
ジャロッドたちは地下駐車場へ行き、車に乗り込もうとする。しかしテリーとデニースの浮気を知ったキャンディスは、その2人だけが別 の車で先に行くよう促した。テリーの車が外へ出た途端、巨大な陸上歩行型生物が出現した。その生物は車を踏み潰し、テリーを連れ去る。 地下駐車場にいたコリンという男は、触手生物に吸い込まれた。ジャロッドたちは、コリンの恋人ジェンと共に触手生物から逃走する。 ジャロッドが吸い込まれそうになるが、駆け付けたオリヴァーが触手生物に車を激突させて救った。
コリンが触手生物から吐き出されるたので、ジェンはオリヴァーに手伝ってもらって助けようとする。しかし生物は触手を伸ばしてコリン の肉体を潰し、脳を吸い込んだ。ジャロッドたちは必死に逃げるが、ジェンが陸上歩行型生物に捕まってしまった。残りの面々は、何とか アパートメントの中へ戻った。オリヴァーの提案を受け、ジャロッドたちは外を見張りながらアパートで待機することになった。
2日目。ジャロッドたちは無事に朝を迎えた。最初に光を見た時から、ジャロッドの体には痣が残っていた。そのことにエレインは不安を 抱いていた。ジャロッドは焦りから「ボートへ行くべきだ」と主張するが、誰も賛同しなかった。外で大きな物音が響き、ジャロッドたち は様子を窺う。それは戦闘機が超巨大飛行物体に向けて出撃する音だった。全機が破壊されたものの、核爆弾によって超巨大飛行物体は 墜落する。ジャロッドたちは喜ぶが、超巨大飛行物体は活動を停止しておらず、モンスターを解き放って何かを起こそうとする。
ジャロッドはエレインたちに、「水も電力も無い。モンスターに放射能、ここにいても死ぬ。行動すべきだ」と訴えた。その直後、軍の ヘリコプターが向かいのビル屋上に飛来し、特殊部隊が降り立った。ジャロッドが助けを求めに行こうとすると、オリヴァーは「救助ヘリ に見えるのか」と制止する。その間にヘリは飛び立った。ジャロッドは「兵を収容するために戻って来る」と言い、エレインを連れて屋上 へ行こうとする。しかしエレインは「無謀だわ」と反対した。
オリバーはジャロッドに「今の君に正常な判断は出来ない。どっちの味方かも分からない」と言い、エレインとキャンディスに「こいつの 顔を見ろ。病気だ」と告げる。ジャロッドの目は異様にギラつき、その周囲には光を見た時と同じ痣が浮き出ていた。オリヴァーは殴って 止めようとするが、ジャロッドは光の影響で人間離れしたパワーを持つようになっていた。彼はオリヴァーの首を絞め、片手で持ち上げる 。そして「アンタに俺は止められん」と言い放った。
エレインは不安を感じながらも、ジャロッドに付いて行くことにした。2人は屋上へ行き、向かいのビルにいる兵士に叫んで助けを求める 。一方、エレインの体には痣が浮き上がり、彼女は窓を開けて触手モンスターに吸い込まれた。軍のヘリが飛来し、ジャロッドたちは手を 振った。しかしヘリは陸上歩行型モンスターの攻撃を受け、墜落してしまった。ジャロッドとエレインは敵の攻撃を受けて必死に抵抗する ものの、ついに超巨大飛行物体へと吸い上げられてしまった…。

製作&監督はザ・ブラザーズ・ストラウス、脚本はジョシュア・コーズ&リアム・オドネル、製作はクリスチャン・ジェームズ・ アンドリーセン&リアム・オドネル、共同製作はポール・バリー、製作協力はリズ・ディーン、製作総指揮はブライアン・タイラー& ブレット・ラトナー&ブライアン・カヴァナー・ジョーンズ、撮影はマイケル・ワトソン、編集はニコラス・ウェイマン・ハリス、美術は ドリュー・ダルトン、衣装はボビー・マニックス、クリーチャー・デザインはアレック・ギリス&トム・ウッドラフ・Jr.、音楽は マシュー・マージェソン。
出演はエリック・バルフォー、スコッティー・トンプソン、ドナルド・フェイソン、デヴィッド・ザヤス、ブリタニー・ダニエル、 クリスタル・リード、ニール・ホプキンス、 ロビン・ガンメル、ターニャ・ニューボウルド、J・ポール・ボーマー、フェット・マハソンギー・オドネル、バイロン・マッキンタイア 、ジャッキー・マリン、トニー・ブラック、エリザ・ティル、ジェームズ・ホアン、エリック・ロンデル、ジョニー・デビーア、ローレン ・マリン、マット・フレルス、パム・レヴィン他。


『AVP2 エイリアンズVS. プレデター』のザ・ブラザーズ・ストラウス(グレッグ&コリンのストラウス兄弟)が製作、監督、 視覚効果監修を務めた作品。
ジャロッドをエリック・バルフォー、エレインをスコッティー・トンプソン、テリーをドナルド・フェイソン 、オリヴァーをデヴィッド・ザヤス、キャンディスをブリタニー・ダニエル、デニースをクリスタル・リード、レイをニール・ホプキンス 、ウォルトをロビン・ガンメルが演じている。

異星人が侵略してくるSF映画だが、大まかな構造はパニック映画や災害映画と同じだ。
で、この手の映画の場合、宇宙人襲来、あるいは火事や地震といった大きな出来事が起きる前に、しばらくは「平穏な様子」を描写する のがセオリーだ。そして、まだ何も起きてない間に、平穏な時間を利用して主要人物の紹介や人間関係の説明を済ませて、それから パニックへ突入していくというのがセオリーだ。
それは使い古されたパターンとも言えるが、しかし絶対に外しちゃいけないパターンと言ってもいい。
そこを外して成功するのかと考えた時に、かなり難しい作業になるんじゃないかと。

そこのセオリーは、余程の自信が無い限りは使っていくべきだろう。
もしも「今までとは違うことをやりたい、変化を加えたい」という意欲があるのなら、セオリーを守った上で、その中で変化を考えた方が 得策だろう。
ってなわけだから、この映画がセオリーを使って序盤を構築しているのはOKだ。
ただし、そのセオリーを使う上で重要なのは、「そこで説明したキャラクター設定や人間関係を、後の展開に上手く活用していく」という ことだ。
そこを全く活用しないのであれば、登場する面々は、スラッシャー映画における「ただ惨殺されるために出て来た殺人ショー要員」と同じ ような存在になってしまうのだ。

そして本作品の場合、何も起きていない間の描写が、その後の展開には全く活用されていない。
エレインが妊娠しており、それについてジャロッドが戸惑いを示し、エレインが腹を立てて2人が険悪な雰囲気になるが、飛行物体が襲来 してからは、そんな不和など無かったかのようになっている。
キャンディスがテリーの浮気を知るシーンもあるが、それも後の展開には全く影響しない。テリーとデニースはあっさり死ぬし、 キャンディスがテリーを先に行かせたことで後悔することも無い。
それと、もっと問題なのは、ジャロッドに感情移入できるようなキャラ描写が出来ていないってことだ。
そんなこともあって、単なる「安い『宇宙戦争』」になっている。

自然災害を扱ったパニック映画であれば、何も起きていない平穏な時間の間にも、「これから何かが起きるのでは」という予兆を示すこと は出来る。例えば小さな揺れが起きるとか、動物が異様に騒ぐとかね。
しかし本作品の場合、「これから宇宙人が攻めてくる」という予兆を示すことが出来ない。
いや、出来ないと言い切っちゃうと語弊があって、やろうと思えば出来ないことは無い。事前に偵察部隊が来ているとか、宇宙から電波が 発信されているとか、そういう設定であれば、飛行物体が来る前に予兆を示すことは出来る。
ただ、この映画は、いきなり飛行物体が出現するという形なので、そこに予兆は無い。
で、何の予兆も無いまま平穏なシーンだけを描くと観客が退屈すると思ったのか、あるいは最初にキャッチーな描写で観客を掴みたいと いうことなのか、時系列を入れ替えて、最初に1日目の深夜のシーンを配置している。

超巨大飛行物体は、あれだけ大勢の人を一気に吸い上げることが出来ているのに、わざわざ触手生物を放ってアパートメントを1部屋ずつ 探索している意味があるのか。
「狙った建物にいる奴らは一人残らず吸い上げないと気が済まない」とか、そういう神経質な性格なのか。
あと、「光を見た者は魅了され、自ら捕まる」ということをジャロッドやエレインは語っているけど、超巨大飛行物体が吸い上げている 様子を見る限り、ありゃ自ら捕まっているんじゃなくて、明らかに超巨大飛行物体が吸い上げてるぞ。

ジャロッドたちが屋上から見た光景だと、地上から大きな煙が立ち上り、無数の人間が超巨大飛行物体に吸い上げられている。
そんな風に大勢を強いパワーで吸い上げることが出来るんだから、その光に「人間を魅了して自ら引っ張られることを望む」という力が 備わっている必要性は皆無じゃないのか。
ただ、建物の中にいる奴を吸い上げるほどのパワーは無いのね。あれだけのパワーがあれば、出来そうなものだが。
っていうか、そもそも、そこまでして、建物の中の人間まで連れ去る必要があるのかとも思うが。

「強いパワーで人間を連れ去るが、建物の中にいる人間には力が及ばない」という設定で、私は伊藤潤二の漫画『首吊り気球』を連想した 。
あれの場合は「家の中に居れば安全だが、そのままだと食料が尽きてしまう。餓死を防ぐためには外出しなければならない。そこで覚悟 を決めて外へ出ると、待ってましたとばかりに殺される」という描写があった。
でも、この映画の場合は、そんなに時間を掛けることは無い。その日の内に、すぐにジャロッドたちは外へ出ることを決めている。
エレインだけが「留まっていれば安全」と主張するが、他の連中は外へ出ることに賛同する。
テリーたちが外へ出ることを決めた時に、「ここにいてもいずれ水や食料が無くなる。その時はどうするつもりなんだ」と意見する者は いない。
だからエレインが「それまでに宇宙船がいなくなるかもしれない。とりあえず、しばらくは留まるべき」と反論することも無い。

建物の中にいて窓とブラインドを締め切っていれば触手生物は入って来られないのだから、外に出るよりも遥かに安全だと思うのだが、 なぜか外へ出る意見が優勢を占めている。
ただ、ジャロッドは「水の上には居ない」と言うが、水上へ辿り着くまでに、マリーナまで2分とはいえ移動しなきゃいけないわけで、 すげえリスクの高い作戦だと思うぞ。
それに、水上まで辿り着いたとして、それからどうするのかと。そこに水や食料がたくさん置いてあるわけでもないでしょ。
ジャロッドたちを「ここにいたら危険だ。脱出しなきゃ」というところへ追い詰めるための状況作りが無いので、その選択にまるで納得 できないんだよな。

ラリーの車が地下駐車場から出た時に、デニースは車ごと踏み潰されて死んでいるよね。
ってことは、敵は全員を捕まえようとしているわけでもないのね。多少は殺しても構わないってことなのね。
だったら、ますます「部屋を慎重に探索して全て捕まえようとする」という作業がバカバカしく思えるぞ。
陸上に現れた巨大生物には一撃で車を踏み潰すほどのパワーもあるんだし、それこそ建物を壊せばいいんじゃないの。
少なくとも窓を割ることぐらいは出来るはずで、そこから触手生物を侵入させればいいんじゃないの。

低予算でSF映画を作るのに、場所を限定したり、登場する人数を少なくしたりするのは、悪くない考え方だ。『エイリアン』だって、 『ターミネーター』だって、そういうやり方で作られ、低予算にも関わらず大ヒットした。
ただし、低予算SFで重要なのは、どれだけ魅力的なシナリオを構築できるのかってことだ。
ところが本作品の場合、そこへの意識が薄い。もしくは、最初からあまり興味が無かったのかも。
いずれにせよ、とにかくVFXを見せたいということしか伝わって来ない。
ストラウス兄弟はVFX製作会社ハイドラックスの創設者なのだが、なんか会社のプロモーション用フィルムみたいな感じなのよね。
しかも、そのVFXの部分にも、そんなに魅力を感じることが無いという始末なのであった。

(観賞日:2012年11月22日)


2011年度 HIHOはくさいアワード:9位

 

*ポンコツ映画愛護協会