『6デイズ/7ナイツ』:1998、アメリカ

ロビン・モンローはニューヨークでファッション誌の副編集長をしている。多忙な毎日を送る彼女に、恋人のフランク・マーティンが7泊6日の旅行をプレゼントしてくれた。フランクと共に南の楽園マカテア島へ向かったロビンは、そこで彼からプロポーズされる。
幸せに浸るロビンの元に、編集長から電話が掛かってくる。次号の表紙の撮影に立ち会うため、タヒチに飛んで欲しいと言うのだ。恋人のアンジェリカとイチャついていたパイロットのクイン・ハリスに頼んで、ロビンはタヒチへ飛行機を飛ばしてもらうことになった。
クインの運転するオンボロの飛行機でタヒチへ向かったロビンだが、その途中で天候が悪化する。大嵐の中で何とか不時着したものの、そこは誰もいない無人島。サバイバルを続ける中で、最初はウマの合わなかったクインとロビンは次第に惹かれ合うようになっていく…。

監督はアイヴァン・ライトマン、脚本はマイケル・ブラウニング、製作はアイヴァン・ライトマン&ウォリス・ニシタ&ロジャー・バーンバウム、共同製作はゴードン・ウェブ&シェルドン・カーン、製作協力はテリー・ノートン&マイケル・パルミエリ、製作総指揮はジョー・メジャック&ダニエル・ゴールドバーグ&ジュリー・バーグマン・センダー、撮影はマイケル・チャップマン、編集はシェルドン・カーン&ウェンディ・グリーン・ブリックモント、美術はJ・マイケル・リーヴァ、衣装はグロリア・グレシャム、音楽はランディ・エデルマン。
主演はハリソン・フォード、共演はアン・ヘッシュ、デヴィッド・シュワイマー、ジャクリーン・オブラドース、テムエラ・モリソン、アリソン・ジャーニー、ダグラス・ウェストン、クリフ・カーティス、ダニー・トレホ、ベン・ボード、デレク・バスコ、エイミー・セダリス、ロン・ニューエン、ジェイク・フィーガイ、ジョン・コヤマ、イェン・サン・アウターブリッジ、マイケル・チャップマン、E・カラニ・フローレス、ピン・ウー他。


そもそも、レズビアンであることをカミング・アウトしていたアン・ヘッシュ(後に男性と結婚したが)に男と恋愛する役を演じさせる時点で、観客に苦笑されるような気もしないではない。が、そこは「あくまでも映画の中の話」ということで、良しとしておこう。
そんなことを差し引いたとしても、この映画は魅力の薄い作品だ。

公開時には冒険アクションのような売り方をしていたように思うが、これはラブ・コメディーである。それも、クラシックなスタイルのラブコメだ。だから、アクションの醍醐味は全く味わえないし、脚本や演出もそれをアピールしようとはしていない。

ただし、問題なのは、状況設定、舞台設定が全く生きていないということだ。
クインとロビンが無人島に着いたということや、そこでサバイバルをしているという特異な状況が、笑いを生み出すことが全く無いのである。
つまり、ラブ・コメディーの内、コメディーの部分に関しては完全に失格である。

他にも問題はある。
それは、観客の先入観を早めに消せなかったということだ。
ハリソン・フォードが主演し、飛行機が無人島に墜落する物語だと聞けば、ハリソンがインディ・ジョーンズの如く活躍する冒険映画だと考える観客が多くても仕方が無い。しかし、この作品はそういった作品ではない。
だから、観客の先入観を早い段階で払拭する必要があった。
そのためには、序盤で「この映画はコメディだ」ということを明確に示すため、最初から飛ばし過ぎと思えるぐらいに笑いを取りにいくべきだったのだ。

この映画は、あまりにクラシックな手法を取りすぎた。
あまりにノンビリしすぎているのだ。
行動の中でギャグを織り交ぜるということもほとんど無く、クインとロビンの軽妙な掛け合いだけで笑わせようとしているようだ。
残念ながら、私はクスッとも笑えなかったが。

さすがにクインとロビンの2人だけでは間が持たないと考えたのか、後半に入ると新しいキャラクターとして海賊が登場する。
しかし、海賊にはキャラクターの面白さは無く、登場時間も非常に短い。
物語を引っ張る助っ人としては不充分だ。
もっとエキセントリックなキャラクターにした方が良かったのに。

で、海賊を登場させてもそれを充分に生かさず、代わりにフランクやアンジェリカの様子を描写する。そして散漫な印象を作り出す。
結局、ラブコメではなく大味で気の抜けたアドベンチャー映画にしかなっていない。
ま、監督がアイヴァン・ライトマンだし、この程度なのも仕方ないのかな。


第21回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の主演女優、あるいは演技の真似事をする英国の歌手グループ】部門[アン・ヘッシュ]
<*『6デイズ/7ナイツ』『サイコ』の2作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会