『シン・シティ 復讐の女神』:2014、アメリカ

[Just Another Saturday Night]
マーヴが意識を取り戻すと、そこは交通事故の現場だった。パトカーと車が潰れており、近くには若い男が倒れていた。マーヴの体には撃たれて間もない傷があったが、何があったのか全く思い出せなかった。マーヴは記憶の断片を繋ぎ合わせ、土曜の夜の出来事を回想する。彼は馴染みの酒場であるケイディーズへ行き、ストリッパーであるナンシーのステージを観賞した。外に出た彼は、ホームレスの男が金持ちの学生たちに狩られている現場を目撃した。
マーヴはホームレスを助けに入り、拳銃を持ち出した学生たちを威嚇した。学生たちが車で逃走したので、マーヴはパトカーを奪って後を追った。大学に戻られると捕まえることが出来ないので、マーヴは貧民街へ追い込むことにした。事故現場の車を爆破した後、マーヴは貧民街に赴いた。生き残った2人の学生は、建物の屋上からマーヴを狙っていた。しかしマーヴの合図で、ボウガンの矢が2人を襲った。マーヴは彼らを始末した後、自分が着用しているコートや手袋に見覚えが無いことに気付いた。
[The Long Bad Night (Part I)]
ギャンブラーのジョニーは自信満々で街に戻り、ケイディーズへ足を踏み入れた。大勝負に出ようと決めている彼は、従業員のマーシーに声を掛けられた。ジョニーがスロットで大当たりすると、マーシーは興奮した。ジョニーは従業員のリリアンが忠告しても聞き入れず、大勝負が行われている奥の部屋に向かった。その部屋でギャンブルを仕切っているのは、ロアーク上院議員だった。ジョニーはカードの勝負に参加し、ロアークを馬鹿にするような態度を取った。
楽屋に戻ったナンシーは拳銃を握り、ロアークへの復讐心を燃やしていた。ジョニーはロアークに「アンタを叩きのめす」と生意気な口調で言い放ち、リーボウィッツ警察署長が「相手を良く考えろ」と諌められても意に介さなかった。ギャンブルに勝って大金を稼いだ彼は、マーシーを連れて部屋を出て行く。リーボウィッツが「すぐに街を出ろ」と警告すると、ジョニーは余裕の笑みを浮かべて「明日も勝負するんでね」と口にした。
ジョニーがマーシーを車に乗せて去るのと入れ違いに、元刑事のハーティガンがケイディーズへ入って来た。ステージに上がったナンシーは、ジョニーたちを追い掛けようとするロアークに拳銃を向けた。しかしナンシーは発砲することが出来ず、ロアークは一瞥しただけで店を出た。その様子を見ていたハーティガンは、ナンシーが自分の仇討ちを諦めるよう望んだ。ジョニーはレストランでマーシーと食事を取ろうとするが、カードが使えなくなっていることを店員から聞かされた。
レストランを出たジョニーは、2人の男たちが尾行しているのに気付いた。男たちは武器を持っていたが、ジョニーは殴り倒した。近くにロアークの車が停まっているのを見つけた彼は、オールドタウンのホテルへ行くようマーシーに指示した。「カタを付けよう」と車に乗り込んだジョニーだが、ロアークの手下たちに捕まって指を折られた。「さっさと殺せ」と彼が強がると、ロアークは「ただ殺しては面白くない」と脚を撃ち抜いて道路に放置した。ロアークが去った後、ジョニーは「次に会う時は違う勝負になるぜ」とうそぶいた。
[A Dame to Kill For]
ドワイトは女から依頼を受け、その夫であるジョーイの不倫現場を張り込んだ。ジョーイはサリーという女を部屋へ連れ込み、情事に及ぶ。しかしジョーイがサリーを撃ち殺そうとしたので、ドワイトは部屋に飛び込んだ。彼はジョーイを殴り倒し、サリーをオールドタウンへ来るまで送り届けた。ドワイトが依頼人に写真を渡して事務所へ戻ると、元恋人のエヴァから電話が掛かって来た。彼女から「どうしても会いたい」と言われたドワイトは、ケイディーズへ赴いた。
ドワイトは4年ぶりにエヴァと会い、「愛した男を捨てるなんてバカだった」と許しを求められた。そこへマヌートという男が現れ、屋敷へ戻るようエヴァに告げた。エヴァはドワイトに「私を忘れないで」と言い、マヌートの車で店を去った。エヴァが気になったドワイトは屋敷に忍び込むが、マヌートと部下たちに見つかった。ドワイトはマヌートに暴行され、屋敷の外へ放り出された。事務所に戻るとエヴァが来ており、ドワイトは誘惑されて肌を重ねた。
エヴァはドワイトに、「マヌートが私を拷問し、それを夫のダミアンが見ている。どんどん酷くなっている」と語った。「俺と来るんだ」とドワイトが言うと、彼女は「無駄よ。どこへ逃げてもマヌートが見つけ出す」と告げる。そこへマヌートが現れ、ドワイトを殴り付けてエヴァを連れ去った。ドワイトはケイディーズへ行ってマーヴに助っ人を依頼し、2人で屋敷へ乗り込んだ。ドワイトは警備の連中を倒し、マーヴはマヌートをノックアウトして左目を抉り取った。
ドワイトはダミアンの元へ行くが、「妻から何を聞いたか知らんが、全てデタラメだ。君も騙されたか」と言われる。しかしドワイトはの説明を聞き入れず、ダミアンを暴行して始末した。そこへエヴァが姿を現し、「善良な市民を殺して、どんな気分?」と不敵な笑みを浮かべた。彼女はドワイトを嘲笑し、「寝た女のことは、すぐに信じる。貴方のおかげで大金持ちよ」と口にする。エヴァは拳銃を発砲し、ドワイトを始末しようとする。しかしマーヴが撃たれたドワイトを車に乗せ、屋敷から脱出した。
ドワイトはマーヴに頼み、オールドタウンへ車を走らせてもらう。エヴァは刑事のモートとボブが事情聴取に来ると、「ドワイトに暴行されていた」と嘘をついた。エヴァに誘惑されたモートは彼女の話を信じ込んだけでなく、電話を掛けて会いに行く。ドワイトは女親分のゲイルに助けを求め、手当てを受けた。双子のゴールディーとウェンディーはオールドタウンから出て行くようドワイトに要求し、殺し屋のミホに刀で背中を抉らせる。ゲイルはミホが15歳の時に命を救ったのはドワイトだと明かし、刀を収めさせた。
エヴァの色香に魅了されたモートはボブの忠告を聞き入れず、彼女の元へ通い詰めた。エヴァはモートに、ドワイトの抹殺を要請した。モートはドワイトを捕まえるため、オールドタウンへ乗り込もうとする。ボブが反対すると、モートは相棒を射殺して自害した。エヴァはマフィアのウォレンクイストに接近し、オールドタウンを支配するよう持ち掛けた。ドワイトの始末を依頼されたウォレンクイストは、テキサスから殺し屋を呼ぶことにした。
ドワイトは殺し屋に化けてエヴァの屋敷へ行くが、マヌートに見抜かれた。しかし待機していたゲイルやミホたちが屋敷へ乗り込み、警備の連中を次々に殺害した。ドワイトはマヌートに戦いを挑み、劣勢から形勢を逆転させた。エヴァはマヌートに銃弾を浴びせ、ドワイトに「貴方が全てなの。2人で自由になる。永遠に」と話し掛ける。彼女はドワイトに歩み寄り、熱烈なキスをする。ドワイトはエヴァの体に銃弾を撃ち込み、ゲイルたちと共に屋敷を去った。
[The Long Bad Night (Part II)]
ジョニーは闇医者のクローニグを訪ね、持っていた金に見合うだけの簡単な治療を受けた。彼がマーシーのアパートへ行くと、ロアークが待ち受けていた。マーシーはバラバラ死体になっており、ジョニーはアパートから逃亡した。ダイナーに入った彼は、従業員のバーサから金を恵んでもらった。ケイディーズに戻ったジョニーはスロットで元手を増やし、再びロアークとポーカーで対決する。勝利を収めた彼は、ロアークに「アンタを2回負かした。俺が上ってことだ。誰かが言いふらすから、世間に知れる。アンタが死んだ後も付いて回る」と不敵な笑みを漏らした。ロアークは「俺をコケにすると、こうなる」とジョニーを銃殺し、死体を片付けさせた。
[Nancy's Last Dance]
ナンシーはハーティガンの死から4年が経過しても、墓に花を手向け続けていた。その様子を盗撮したリーボウィッツは、ロアークに報告を入れた。リーボウィッツはナンシーがハーティガンの拳銃を入手したこと、射撃場に通っていることも知らせるが、ロアークは放置した。ナンシーは数週間前から酒浸りの暮らしを送るようになっており、幽霊のハーティガンは彼女のことを心配していた。やがてナンシーは髪を切り、自分の顔に傷を付け、マーヴに復讐への協力を要請した…。

監督はロバート・ロドリゲス&フランク・ミラー、原作はフランク・ミラー、脚本はフランク・ミラー、製作はロバート・ロドリゲス&アーロン・カウフマン&スティーヴン・リュロー&セルゲイ・ベスパロフ&アレクサンドル・ロドニャンスキー&マーク・マニュエル、共同製作はトム・プロッパー&ジョン・スワロー&レベッカ・ロドリゲス、製作総指揮はフランク・ミラー&ボブ・ワインスタイン&ハーヴェイ・ワインスタイン&ザンヌ・ディヴァイン&アダム・フィールズ&エリザベス・アヴェラン&マーシー・マディソン&ティム・スミス&アラステア・バーリンガム&オレグ・ボイコ&ウィリアム・D・ジョンソン&サム・エンゲルハート&キア・ジャム&キップ・ネルソン&セオドア・オニール&アリン・スチュワート&サミュエル・ハディダ&ヴィクター・ハディダ&マリナ・ベスパロフ&ボリス・テテレフ&ジョン・ポール・デジョリア&ジェリー・ハウスファター&ナミット・マルホトラ、製作協力はシレン・トーマス&アントン・クリモフ、撮影&編集はロバート・ロドリゲス、美術はスティーヴ・ジョイナー&ケイラ・エドルブラット、衣装はニーナ・プロクター、音楽はロバート・ロドリゲス&カール・シール、主題歌はスティーヴン・タイラー。
出演はミッキー・ローク、ジェシカ・アルバ、ジョシュ・ブローリン、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ロザリオ・ドーソン、ブルース・ウィリス、エヴァ・グリーン、パワーズ・ブース、デニス・ヘイスバート、レイ・リオッタ、ステイシー・キーチ、ジェイミー・キング、クリストファー・ロイド、ジェイミー・チャン、ジェレミー・ピヴェン、クリストファー・メローニ、ジュノー・テンプル、マートン・ソーカス、ジュード・チコレッラ、ジュリア・ガーナー、ジョニー・レノ、レディー・ガガ、アレクサ・ヴェガ、パトリシア・ヴォン、バート・フレッチャー、サミュエル・デイヴィス、マイク・デイヴィス他。


フランク・ミラーの同名グラフィック・ノヴェルを基にした2005年の映画『シン・シティ』の続編。
前作に引き続き、フランク・ミラーが監督と脚本、ロバート・ロドリゲスが監督を務めている。
マーヴ役のミッキー・ローク、ナンシー役のジェシカ・アルバ、ゲイル役のロザリオ・ドーソン、ハーティガン役のブルース・ウィリス、ロアーク役のパワーズ・ブース、ゴールディー&ウェンディー役のジェイミー・キング、リーボウィッツ役のジュード・チコレッラ、オールドタウンの住人であるダラス役のパトリシア・ヴォンは、前作からの続投。
前作と同じキャラクターで、配役が変更されている顔触れも何名か存在する。ドワイト役は前作のクライヴ・オーウェンからジョシュ・ブローリン、マヌート役はマイケル・クラーク・ダンカンからデニス・ヘイスバート、ミホ役はデヴォン・アオキからジェイミー・チャン、ボブ役はマイケル・マドセンからジェレミー・ピヴェン、ケイディーズの従業員ウィーヴィル役はトミー・ニックスからジョニー・レノ、警官のルイ役はジェフ・シューワンからビリー・ブレアに交代。
他に、ジョニーをジョセフ・ゴードン=レヴィット、エヴァをエヴァ・グリーン、ジョーイをレイ・リオッタ、ウォレンクイストをステイシー・キーチ、クローニグをクリストファー・ロイド、モートをクリストファー・メローニ、サリーをジュノー・テンプル、ダミアンをマートン・ソーカス、マーシーをジュリア・ガーナー、バーサをレディー・ガガ、ケイディーズの踊り子のギルダをアレクサ・ヴェガが演じている。

続編映画には、一見さんでは付いて行くのが難しいタイプと、一見さんでも分かりやすいタイプに分類される。
この映画は前者に当たる。
前作に登場していたキャラクターに関しては、何の紹介も用意されていない。相関関係や過去の事情についても、全く説明が無い。また、全てが1作目の後日談というわけではなく、中には1作目のエピソードより以前の話も含まれている。
そもそも前作から9年も経過しているわけで、もう内容を忘れちゃった人も少なくないはずだ。
それを考えると、かなり不親切な映画と言わざるを得ない。

最初に触れておくと、私は前作を全く評価していない。それどころか、ポンコツ映画愛護協会で扱おうかと思ったぐらいだ。
しかし巷の評価は上々でヒットしたので、その続編である本作品は、おのずと第1作で私が否定的に捉えたポイントを幾つも受け継いでいる。
まず、この映画の最も分かりやすい特徴は、フランク・ミラーのコミックをそのまま動かしたかのような映像表現だ。
モノクロを基調としつつ、場面ごとに目立たせたい箇所だけをカラーにしている。そして俳優には、コミック的に見えるような加工を施している。

そういった「他の映画には見られないような映像表現」は、最初は新鮮味や意外性を感じても、すぐに慣れてしまう。
そして慣れるってことは、同時に「新鮮味が薄れて飽きる」ということでもある。
しかも、前作は1本目だったから「ファースト・インパクト」ってのがあったわけだが、今回は続編なので、既にオープニングの段階で「前にも見たことがある映像」ってことになってしまう。
それにフランク・ミラーは、ピンで監督を務めた『ザ・スピリット』でも同じような映像表現を使っているしね。
そのため、「無駄に見づらい」という難点だけが残ってしまう。

「モノローグが洪水のように押し寄せる」という特徴も、当然のことながら前作から引き継がれている。
ハードボイルド・タッチの作品だから、一人称の語りでストーリーを進行するってのも、ある程度は理解できる。
しかし、「それにしてもゴチャゴチャとうるせえな」と言いたくなるぐらい、モノローグが過剰だ。
小説じゃないんだから、もう少し控えてくれないかと。
見ていれば分かることも多いし、見ていれば分かることを多くしてこそ映画である意味があるんじゃないかと。

モノローグの過剰さを具体的に挙げると、例えばエヴァの屋敷へ潜入したドワイトが捕まった時、「股間で爆弾が破裂した」という語りが入ると、マヌートが彼の股間を蹴る。「アゴに貨物列車が」という語りが入ると、マヌートのパンチが彼の顎に入る。マヌートに何発も殴られると、「こんな強烈なパンチは初めてだった」という語りが入る。
そんなの、見ていれば分かることなので、説明の必要は全く無い。
そこに限らず、とにかくモノローグの疎ましさは尋常じゃない。
そして疎ましいと感じるってことは、モノローグが魅力的ではないってことだ。
きっと惹き付ける力が強ければ、説明としては無駄であっても受け入れ態勢になるはずで。

ジェシカ・アルバがストリッパー役なのに全く脱がないのも、もちろん前作と同じだ。
この人は宗教的な理由でヌードや濡れ場をNGにしているので、今さら「なんで脱がないんだよ」とは言わない。
ただし、前作で「脱げないのならストリッパー役なんて引き受けるなよ」と思ったが、それは今回も同じだ。
ナンシー役だけは、配役の交代があっても歓迎できた。
ストリッパー役ではないエヴァ・グリーンが惜しみなく脱いでいるだけに、ジェシカ・アルバが脱いでいないってのは、余計に強い引っ掛かりになっている。

最初にマーヴのエピソードが用意されており、それが終わったトコでタイトルロールに入る。
だが、タイトルロールが始まった時、「まだ何もオチてないのに、そこでタイトルなのかよ」と言いたくなった。
そりゃあ学生たちは始末したから、一応は「カタが付いた」という解釈も出来る。
ただし、「バニーニのコートも手袋も、誰の物か全く覚えていない」とマーヴが言い出したトコでタイトルロールに突入するので、どうにも締まりが悪い。
もしかすると、「コートや手袋が誰の物か分からない」というトコで観客を引き付ける狙いがあったのかもしれないけど、だとしても全く力が無いし。

2つ目のエピソードでは、ナンシーがロアークを狙うシーンがある。
しかし、その前にもチャンスはあったのに(楽屋からロアークのいる部屋を眺め、拳銃を構える様子が描写されていた)、なぜステージに上がってから狙ったのか。しかも、拳銃を構えておいて、引き金を引かないのは何なのか。
そりゃあ「怯えた」ってことなんだろうけど、それは段取りとしては理解できても、「なんで撃たないんだよ」と言いたくなることは確かだ。
ロアークが自分を撃とうとするナンシーを見たのに、何もせずにスルーしているのも理解不能。
登場人物の行動は釈然としないことだらけだが、それは「ハードボイルド」としての意匠で全て納得させられるモノではないし、誤魔化し切れるモノでもないだろう。

ジョニーは「地元出身でロアークのことを良く知っている」という設定なのだが、だったらロアークの恐ろしさも分かっているはずなのに、なぜ生意気な態度を取って怒らせるのか。
で、そんだけ余裕の態度で馬鹿にするぐらいだから、襲われた場合の備えがあるのかと思っていたら、レストランでカードが使えなくなると困惑しているんだよな。そんで尾行の連中は叩きのめしているけど、「カタを付ける」と車に乗り込んで簡単に捕まり、右手の指と脚をやられている。
つまり、彼のエピソードは「チャラチャラして軽薄なバカが、バカな行動を取ったせいで、こっぴどく痛め付けられる」ということでしかないのよね。もちろんロアークは悪玉なんだけど、彼が卑劣だったり残忍だったりするってことよりも、「ジョニーは愚かしい」ということばかりが強く伝わる。
ダーク・コメディーならともかく、シリアスなハードボイルド作品で、そんなエピソードを面白く描くってのは難しいでしょ。
実際、「何をどう見ればいいのかサッパリ分からん」という仕上がりになっているし。

ロアークに痛め付けられたジョニーは「次に会う時は違う勝負になるぜ」と言い放つのだが、単なる負け犬の遠吠えにしか聞こえない。
それでも、このエピソードはパート2に続くので、そこでジョニーが報復するのかと思いきや、そうではないのよね。「マーシーが惨殺される」という出来事があるので、ますます「ロアークへの復讐心」を燃やす動機が強まるんだけど、なぜかジョニーは「またポーカーでロアークと対決する」という行動に出る。
1度目もポーカーでは勝っていたんだから、そこで勝利しても「やり返してやった」ってことにならないでしょうに。
で、またジョニーは勝つんだけど、やっぱりロアークを怒らせて、今度は銃殺される。
学習能力の無いバカな男がバカなことを繰り返すエピソードを見せられて、どう受け止めればいいのかと。

ドワイトがマーヴに助っ人を頼んでナンシーの屋敷へ乗り込む展開には、まるで高揚感が無い。
大きな原因は2つあって、1つは物語が過剰なモノローグによって進行されるってこと。
そのせいで、ドワイトのエヴァに対する愛の深さや「助けてやらなきゃ」という気持ちの高まりがイマイチ伝わらない。
モノローグではそれなりに説明しているのだが、こっちの感情を喚起させる力が足りないのだ。ドラマとしての盛り上がりに欠けているのだ。

もう1つの原因は、ドワイトとマーヴの関係性。
2人が強い絆で結ばれているわけでもないし、マーヴには屋敷へ乗り込む動機が乏しい。せいぜい「暴れたいから」という程度でしかないので、そんな奴を助っ人にするよりも、奇襲でも何でもいいからドワイトが1人で乗り込む方が遥かに燃える展開なんじゃないかと。
もちろん、1人では勝てないからマーヴに助っ人を頼んでいるわけだが、だったら彼が参加することで観客が興奮できるための土壌を作らないと。
「あのマーヴですよ」というキャラクターの強さだけに頼りまくっている意識が見え隠れするんだけど、だとしたら観客に高望みしすぎだし。

モートがエヴァの色香に惑わさせるのも、ボブの忠告に耳を貸さないのも、充分に納得できる展開だ。
ただ、そこまでズブズブに溺れてしまうのなら、エヴァからドワイトの抹殺を依頼された時には、「悩んだ末」でも構わないから承諾すべきじゃないかと。
それは承諾せず、でもドワイトを捕まえるためにオールドタウンへ向かうってのは、中途半端だなあと。
しかも、一人で行くならともかく、ボブを伴っているのも、なんか変だなあと。

当然の如くボブはオールドタウンへ行くことを反対して、カッとなったモートが彼を射殺して自害するんだけど、「なんだ、そりゃ」と言いたくなる。
自殺という形で簡単にモートを退場させてしまうぐらいなら、そもそも最初から登場させなくてもいいわ。
エヴァが男を虜にする魔性の女だってことは、ドワイトが利用されているトコで充分に伝わるから、改めてアピールする必要は無いし。
ボブが前作の登場人物なので、こいつを再登場させるためにモートという新キャラを用意したのかもしれないけど、まるで要らんわ。

モートがボブを始末して自殺した後、すぐにエヴァはウォレンクイストと接触してドワイトの殺害を依頼するので、ますますモートたちの存在意義は弱くなる。
ただしウォレンクイストにしても、オールドタウンを支配したりドワイトを殺したりするための行動を取るのかと思いきや、エヴァから頼みごとをされただけで出番は終わりなのよね。
一応は「ドワイトが殺し屋に化けて屋敷へ行く」というトコには繋がっているものの、そのためだけにウォレンクイストを登場させるってのは、なんちゅう使い方なのかと。
前作からの続投キャラならともかく、今回の新キャラなんだから、もっと重要な役回りを担うべきじゃないのかと。

ハーティガンは序盤から登場するが、ナンシーは彼の存在に気付いていない。最後のエピソードである[Nancy's Last Dance]になっても、その状況は全く変わらない。
だから、ハーティガンを登場させている意味が全く感じられない。
一応は「鏡に映るハーティガンを見たロアークが動揺し、その隙にナンシーが彼を撃ち殺す」という展開はあるものの、それだけなんだよな。だから、すんげえ存在意義が薄い。
で、そんな風に上手く使いこなせていないキャラや余計なキャラが大勢いる中で、マーヴの稼働率だけは無駄に高すぎるわ。
しかも、「マーヴがドワイトに加勢してエヴァの屋敷に乗り込む」「マーヴがナンシーに加勢してロアークの屋敷に乗り込む」という展開があって、ネタが被っちゃってるし。

(観賞日:2016年7月9日)

 

*ポンコツ映画愛護協会