『サイレントヒル:リベレーション3D』:2012、アメリカ&フランス&カナダ

深夜、ヘザー・メイソンは黒頭巾の不気味な集団に追われ、無人の遊園地へと逃げ込んだ。三角頭が動かす回転木馬でアレッサと遭遇したヘザーは、「お前に私は倒せない。サイレントヒルに行ってはならない」と言われる。ヘザーはアレッサの放った炎に包まれ、悲鳴を上げた。ヘザーはベッドで目を覚まし、絶叫を耳にして飛んで来た養父のハリーが抱き締めた。「ただの夢だ。引っ越す度に見るだろ」とハリーが告げると、彼女は「今回は違う。私を呼んでる」と口にした。「何があっても、あそこへは行かないと約束してくれ」とハリーが言うので、ヘザーは「分かった」と告げる。その直後、ハリーは背後から怪物に腹を突き刺された。だが、それもヘザーの見ていた悪夢だった。ようやく彼女は、本当に目を覚ました。
かつてシャロンだったヘザーは、名前を幾つも変更していた。現在のヘザーという変名は、祖母の名前だ。ハリーも偽名を使っており、本名はクリストファー・ダ・シルヴァだ。ハリーから18歳の誕生日を貰ったヘザーは、それが悪夢の中で自分の着ていた白いジャケットだったので当惑する。ハリーが悪夢の時と同じ言葉を語り始めたので、ヘザーは途中で遮った。転校初日を迎えたヘザーに、ハリーはルールを忘れないよう改めて忠告した。
ハリーはサイレントヒルに留まった妻のローズから、「見つけた封印は半分だけ。1人しか帰れないの」とヘザーを託されてから、娘をサイレントヒルの住人から守るために各地を転々と逃げ回っていた。ヘザーはサイレントヒルでの体験を何も覚えておらず、ハリーは彼女に「事故に遭ったんだ。ローズは死んだ」と嘘を教えていた。ヘザーは学校へ向かう途中、ホームレスが怪物に変身する幻覚を見た。探偵のダグラスが声を掛けて来るが、不審に思ったヘザーは逃げ出した。
学校で転校の挨拶を求められたヘザーは、クラスメイトと仲良くする気が無いことを生意気な態度で語った。廊下を歩いていた時、また彼女はサイレントヒルの幻覚に見舞われた。現実の景色に戻ると、もう一人の転校生であるヴィンセントがヘザーに声を掛けた。彼からコーヒーに誘われたヘザーが断って学校を出ると、ダグラスが張り込んでいた。校舎に戻ったヘザーはハリーに連絡し、尾行が付いていることを話す。ハリーは待ち合わせ場所を指定するが、出掛けようとしたところで拉致された。
ヘザーはショッピングモールでハリーが来るのを待つが、また幻覚を見た。ダグラスに気付いたヘザーは逃げ出すが、追い込まれて武器を構える。ダグラスは私立探偵だと自己紹介し、依頼人から捜索を頼まれたと説明した。彼はヘザーのことをシャロンと呼んだ。ダグラスはヘザーに、「当時は知らなかった依頼主が分かった。ヴァルティエル派というカルト教団だ。君を狙っている。すぐに逃げろ」と警告した。さらに彼は、「君の父親が話したことは全て嘘だ。子供の頃、サイレントヒルという場所に閉じ込められ、母親に救い出されたが、奴らは君を連れ戻したがっている」と述べた。そこへ怪物が現れてダグラスを襲い、彼を連れて姿を消した。
ヘザーがモールから脱出すると、そこは現実世界に戻っていた。警官隊が現場を封鎖しており、モールからダグラスの死体が運び出された。ヘザーがモールに残したジャケットにはダグラスの血が付着しており、刑事のサンティニとケーブルはポケットに入っていた身分証を発見した。ヘザーが野次馬に混じってその様子を見ていると、ヴィンセントが現れた。モールを離れたヘザーはバスに乗り、ヴィンセントと別れた。帰宅すると室内は荒らされており、壁には「サイレントヒルに来い」という血文字が残されていた。
ヘザーはハリーに電話を掛けるが、やはり繋がらなかった。そこへヴィンセントが来たので、ヘザーは血文字を見せた。ヘザーはハリーが保管していたサイレントヒル関連の資料を確認し、詳細が分からないまま持って行くことにした。彼女が隠しておいた拳銃を取り出した直後、刑事たちが玄関のドアをノックした。ヘザーはヴィンセントに協力を要請し、車の運転を頼んだ。2人が逃亡した後、家に乗り込んだ刑事たちは血文字を発見した。
車内でハリーの手紙を開いたヘザーは、父が強盗を殺して逃亡しているというのが嘘だったこと、その男が教団の一員だったことを知った。ハリーは教団がヘザーをサイレントヒルへ連れ戻そうとしていることを綴っており、何があっても行くなと指示していた。彼が残した資料には、サイレントヒルに関する詳細が記されていた。早く目的地へ向かおうとするヘザーに対し、ヴィンセントは「疲れた」と告げてモーテルでの休息を要求した。
ヴィンセントはモーテルに入ると、自分が教団の女司祭であるクローディア・ウルフの息子であること、ヘザーを連れ戻す使命を帯びていたことを打ち明けた。ヘザーも恐ろしい悪魔の一部だと聞かされていたヴィンセントは、それが間違いだと感じ、真実を告白したのだ。ヘザーに非難された彼は、「監視が付いていた」と釈明する。なぜ自分が必要なのかとヘザーが尋ねると、「アレッサがいる限り、教団は解放されない。君がいればアレッサを倒せるんだ」とヴィンセントは説明した。
クローディアが町の地下にいると知ったヘザーがモーテルを出ようとすると、ヴィンセントは彼女の家にあった護符を見せて「この残り半分が無いと、君のお父さんは救い出せない」と告げる。病院に収容されている祖父のレナードが残り半分を持っていることを教えた彼は、危険だから手伝わせてほしいと申し出た。その直後、周囲がサイレントヒルへと変貌し、ヴィンセントは「君が呼んだ。君はアレッサの一部だ。君が闇を呼び寄せた」と語った。ヴィンセントは背後から現れた怪物に襲われ、ヘザーも殴打されて気絶した。
ヘザーが目を覚ますと室内は元の状態に戻っていたが、ヴィンセントは消えていた。拳銃と護符を確認した彼女が部屋を出ると、空から灰が降っていた。「サイレントヒルへようこそ」という看板を見たヘザーは、そのまま歩みを進めた。するとアレッサの母でクローディアの妹のダリア・ギレスピーが現れ、「戻って来てはいけなかった。奴らに利用される。みんなが苦しむ」と告げた。娘を火あぶりにしたことをヘザーが責めると、彼女は騙されたのだと弁明した。
ダリアはヘザーに、「アレッサは火あぶりから生き残ったけど、痛みは尋常じゃなかった。それは怒りへと変わり、その力は途方もなく大きくなった。彼女は自分の一部が怒りと離れていると気付き、善の部分を親の無い赤ん坊に移した。それが貴方よ。貴方はアレッサの怒りを打ち消すことが出来るほどの愛を秘めている。でも貴方が戻ると、教団にはアレッサと貴方を倒せる絶好の機会が与えられる」と語った。ヘザーが父の居場所を尋ねると、彼女は「貴方が破滅しなければ救うことは出来ない」と述べた。
サイレンが鳴り響き、ダリアは「闇がやって来る。屋内の方が安全よ」と口にした。建物の中に逃げ込んだヘザーは、何体ものマネキンが置かれている部屋に足を踏み入れた。台に寝かされていた全裸の女性は助けを求めた直後、マネキンへと変貌してしまった。ヘザーは道を間違えてサイレントヒルに迷い込んだ少女が捕獲されているのを見つけ、助けてやった。しかし怪物に追われ、少女は餌食となった。同じ頃、ハリーを捕縛しているクローディアは、ヴィンセントを病院送りにするよう部下に命じた。
ヘザーは精神病院を見つけ、レナードを捜索しようとする。彼女は襲って来た怪物を射殺し、鎖で手足を繋がれているレナードを発見した。レナードはヘザーに、クローディアが自分を病院送りにしたことを語る。ヘザーは護符を取り出し、それが何か質問した。レナードは「ワシは目が見えん。手の上に置いてくれ」と告げる。ヘザーが護符を渡すと、レナードは「ワシは教団の指導者だった。ある女が娘を救うために、このメタトロンの封印を盗んだ」と語った。
ヘザーが「これで何が出来るの?」と質問すると、レナードは「これを使えば、あらゆる物の本質が見える」と述べた。「残りの半分が欲しい」とヘザーが言うと、レナードは封印を自分の胸に突き刺した。封印を体内に取り込んだレナードは、「お前の正体が分かった。お前は悪魔だ」とヘザーの首を絞めた。ヘザーが発砲すると、レナードは怪物に変身して鎖を引き千切る。ヘザーが体内で完全な形になっている封印に気付いて抜き取ると、怪物は崩れ落ちて消失した…。

脚本&監督はマイケル・J・バセット、製作はサミュエル・ハディダ&ドン・カーモディー、共同製作はローラン・ハディダ、製作総指揮はヴィクター・ハディダ、撮影はマキシム・アレクサンドル、編集はミシェル・コンロイ、美術はアリシア・キーワン、衣装はウェンディー・パートリッジ、クリーチャー・デザインはパトリック・タトポロス、特殊メイクアップ&クリーチャー効果はポール・ジョーンズ、歌は山岡晃、音楽はジェフ・ダナ。
出演はアデレイド・クレメンス、キット・ハリントン、ショーン・ビーン、キャリー=アン・モス、マルコム・マクダウェル、デボラ・カーラ・アンガー、マーティン・ドノヴァン、ラダ・ミッチェル、ロベルト・カンパネラ、エリン・ピット、ピーター・アウターブリッジ、ジェファーソン・ブラウン、ミルトン・バーンズ、ヘザー・マークス、レイチェル・セラン、マイケル・C・フーコー、アーリーン・ダンカン、ジェイソン・ベスト、チャド・カミレリ、セルゲイ・スパコフスキー、ローレンス・ディッキーソン、ジェームズ・キルヒナー他。


コナミから発売されたホラーゲームをベースにした2006年の映画『サイレントヒル』の続編。
脚本&監督は『デス・フロント』『ソロモン・ケーン』のマイケル・J・バセット。
前作からはハリー役のショーン・ビーンとダリア役のデボラ・カーラ・アンガー、ローズ役のラダ・ミッチェルが続投。
ヘザーをアデレイド・クレメンス、ヴィンセントをキット・ハリントン、クローディアをキャリー=アン・モス、レナードをマルコム・マクダウェル、ダグラスをマーティン・ドノヴァンが演じている。

冒頭、映画はヘザーが追われてカーニバル会場へ逃げ込む様子から始まる。そこにはサイレントヒルの住人たちが登場するが、ヘザーの夢であることはハッキリと分かる。
その夢から醒めた後、寝室にやって来たハリーが怪物に刺されるが、これまたヘザーの夢だと分かる。
つまり2つの夢オチを冒頭で重ねているわけだが、そういう導入部にしている時点で、ヤバい予感がプンプンと漂って来る。
ここで言う「ヤバい予感」ってのは、もちろん「ポンコツな映画なんじゃねえか」という予感のことだ。

そもそも、前作はヘザーとローズがサイレントヒルから戻って来られないまま終幕していた。
それなのに、なぜかヘザーだけがハリーの元へ帰還している。
その経緯について、この映画は「ローズがメタトロンの封印を半分だけ発見し、一人だけ戻れることになったのでヘザーを返し、鏡を通じてハリーに娘のことを託した」という設定にしてある。
それについて、「御都合主義」以外の表現を私は知らない。

そもそも、どうやってローズがメタトロンの封印を盗み出したのか、そんなに簡単に盗み出すことが出来たのか、その辺りからして無理を感じる。
ローズが「闇の世界から抜け出すにはメタトロンの封印が必要」ということを知っていた理由も良く分からんし。
あと、前作ではサイレントヒルについて全く情報を入手できていなかったハリーが、なぜか今回は専門家のような豊富な知識を持っている。
ローズが鏡に現れた時も、サイレントヒルに関する情報提供は皆無に等しかったのに、どうやってハリーは知識を得たんだろうか。

「教団の人間はサイレントヒルから出られない」というルールは、「少しの間なら出られるが、その代わりに苦痛が伴う。ヴィンセントは選ばれた人間」という御都合主義によって変更されている。
だけど、ハリーを拉致したのは教団の人間だよね。
そしてハリーが拉致された場所って、闇の世界じゃないはずでしょ。そこにヘザーはいないんだから、闇の世界に切り替わっていないよね。
ってことは、ハリーを拉致したのも教団に選ばれし人間ってことなのか。

あと、そもそもハリーは「家に侵入してきた教団の人間を殺して逃亡している」という設定なんだから、そいつもサイレントヒルから出ているってことだぞ。そいつも教団に選ばれし人間ってことなのか。
それと、ヘザーはヴィンセントが女司祭の息子だと知って「教団の人間はサイレントヒルから出られないはずよ」と言うけど、その前にハリーの手紙を読んで「父が殺したのは強盗じゃなくて教団の人間」と知ったはずでしょ。
ってことは、そいつはサイレントヒルの外に出ていたってことでしょうに。自分で読んだばかりの手紙の内容を、すぐに忘れてしまったのか。
「どうして教団はヘザーを拉致しないのか」という疑問については、「ヘザーが自らの意思でサイレントヒルに行かないと意味が無い。だからハリーを拉致しておびき寄せた」という設定になっているが、これまた都合がいいというか、あまり意味を感じないというか。
「ヘザーが自らの意思でサイレントヒルに行かないと意味が無い」ってのは、「教団の人間は外へ出られないから拉致するのは無理」ということなら腑に落ちるんだけど、そうじゃないだけにね。

まだヘザーがサイレントヒルに入っていない内から、彼女は闇の世界に入ったかのような幻覚を何度も見る。
「ヘザーがアレッサの一部なので闇を呼び寄せた」という風に、一応の説明は付けられる。どうやらゲーム版でも、まだサイレントヒルに入っていない内から闇の世界が入り込むという描写があるらしい。
しかし、それをやり出したら、もはや何でも有りじゃないかと思ってしまう。
やはり、現実世界とサイレントヒルはハッキリと境界線を隔てておいた方が、世界観としてはいいんじゃないかという気がするんだよなあ。

ぶっちゃけ、ヘザーの日常生活に闇の世界が入り込んで来るのなら、もはやサイレントヒルへ行かないまま物語を進めちゃってもいいんじゃないかと思ってしまうのよね。
そういう内容にしてもホラーとして成立してしまうし、そっちの方が面白くなるんじゃないかという予感さえしてしまうのだ。
「舞台はサイレントヒル」として進めるよりも、「現実世界のはずなのに、唐突に闇の世界へ切り替わったり、また現実に戻ったりして、境界線が分からなくなっていく」という形の方がさ。
まあ、そういう話にしたら「ゲームの内容と全く違う」というファンからの批判が出ることは確実だけど、映画としては面白くなる可能性があるんじゃないかなと。

ぶっちゃけ、原作はストーリー性の高い内容じゃないはずで、「映像はゲームを忠実に再現しました」というだけだと、映画としては厳しいんじゃないかと思うし。
しかもどうやら本作品は映像面でも「ゲームと全く違う」とファンから批判されているようだから、それなら開き直って、「ゲームの要素を借りた別物」に仕上げるのも1つの手だったんじゃないかなと。
ただし、この映画の場合は何しろシリーズ第2作であり、たぶん観客の大半は1作目を見た人、あるいはゲームのファンだろうと推測されるんだよね。
そうなると、「ゲームの要素を借りた別物」というアプローチを歓迎する人よりも、「ストーリーはクソだけど映像面ではゲームの再現レベルが高い」という1作目と同じアプローチの方が良かったのかもね。
ただし、それならクリストフ・ガンズの続投は必須条件だろうけどさ。

たくさんのクリーチャーが登場してヘザーを怖がらせるのだが、総じて弱い。
ホントは「ヘザーが怯えまくり、逃げ惑う」という形にすべきじゃないかと思うんだけど、弾丸一発で簡単に死んだり、メタトロンの封印を抜き取られて消滅したりする。
ヴィンセントを運んでいた奴らは、バブルヘッド・ナースに始末される。ラスボス的な存在だったはずのアレッサも、ヘザーの持つ善の心に負けたらしく、簡単に消滅する。
ヘザーが始末できない連中もいるけど、用心棒と化したレッド・ピラミッド大先生が全て引き受けてくれる。
ホラー風味があるにはあるが、3Dを意識したアトラクション映画の雰囲気が強い。

ヘザーがサイレントヒルに行ったのはハリーを救い出すためなのに、ハリーはローズを見つけるために留まることを選んでしまう。
だから、ヘザーの頑張りは「骨折り損のくたびれ儲け」ってことになってしまうのだ。それはダメだろ。
サイレントヒルに迷い込んでしまったのなら「そこからの脱出」が目的になるけど、本人の意思でサイレントヒルに突入したのに、その目的が達成されないまま外へ出ちゃうって、なんだよ、そりゃ。
どうやら続編を作る気が満々のようだから、そのためにもハリーを留まらせたんだろうけどさ。

(観賞日:2015年1月13日)

 

*ポンコツ映画愛護協会