『シャッター』:2008、アメリカ

ニューヨークのブルックリンに住むカメラマンのベンとジェーンは、友人たちに祝福されて結婚式を挙げた。2人はベンの仕事と新婚旅行を兼ねて、日本へ向かった。夜、ジェーンは眠り込んだベンを助手席に乗せて、車を走らせていた。山道で迷ったジェーンはベンを起こし、地図を見るよう頼んだ。ジェーンがベンの質問に答えて地図に目をやった直後、日本人女性が車の前に現れた。女性をひいてしまったジェーンは慌ててブレーキを掛けるが、車はスピンして土手か落下した。
ベンは苦悶の声を発して気絶し、ジェーンは日本人女性がゆっくり起き上がろうとするのを目にした直後に意識を失った。やがて意識を取り戻した2人は、車を降りて女性を捜す。だが、どこにも見当たらず、ベンは警察に連絡を入れて事情を説明する。しかし警察が捜索しても、女性は発見されなかった。警察は事件性が無いものとして引き上げ、ベンはジェーンを連れて宿泊先のロッジへ赴いた。ベンは痛めた首を気にしながら、「仕事が始まるまで2、3日しか無いんだ。楽しまなきゃ」と沈んでいるジェーンに告げた。
次の日、ベンは写真を撮影して楽しく過ごそうとするが、ジェーンは「あんな薄着で雪の中にいて、何をしていたんだろう」と消えた女性のことを気にする。ベンが「本当に誰かいたのなら、誰かが助けて、どこかへ運んだに違いないよ。頼むから大げさに考えないでくれ」と言い、ジェーンに元気を取り戻してもらおうとする。ベンはジェーンと一緒にバルコニーへ出て、ツーショット写真を撮影した。
ベンはジェーンを連れて、仕事先である東京グローバル広告の本社を訪れた。ベンは顔見知りの社員であるヨーコの出迎えを受け、友人であるブルーノと久々に再会した。ブルーノはベンとジェーンを車に乗せ、2人が暮らすことになるビルへ案内する。ビルには撮影スタジオも設けられており、ブルーノはベンに撮影助手を務めるセイコを紹介した。ビルに入居するのは、ベンとジェーンの2人だけだ。広い部屋に入ると調度品が揃えられており、ジェーンはすっかり気に入った。
その夜、ベンはジェーンを連れて日本料理店へ出掛け、ブルーノ、友人のアダム、その恋人のエミと会う。ベンは仲居にデジカメを渡し、集合写真を撮ってもらおうとする。だが、シャッターを押そうとした仲居は、悲鳴を上げてカメラを落とした。仲居は「すみません」と謝罪し、カメラを拾い上げる。ベンは「大丈夫だよ」と軽く言って食事に戻るが、ジェーンは怯えた様子の仲居が気になった。
翌朝、ベンはジェーンに「ちょっとしたサプライズだ。ブルーノに現像を頼んだんだ」と言い、ハネムーンの写真が入った封筒を差し出す。ジェーンが写真を見ると、白いモヤが写っている物が何枚もあった。ベンは「フィルムを入れ損なったかな」と軽く告げた。ベンは仕事に行くが、撮影の最中も肩や首の痛みが気になった。ジェーンは東京観光に出るが、通り掛かった人に道を尋ねても教えてもらえなかった。屋外で昼食を取っていると、突然の雨に見舞われた。
ジェーンがビルに戻って来ると、ベンはスタジオで仕事中だった。ベンがオフィスからの電話を受けている間に、ジェーンはセイコに頼まれて撮って来た写真を見せる。セイコがデジカメを操作すると、白いモヤの入った写真ばかりだった。セイコは「心霊写真?この光」と口にする。「この光、知ってるの?」とジェーンが訊くと、彼女は「ええ、元カレが心霊写真の雑誌を出してるから」と告げた。
次の日、セイコは元カレのリツオが勤務する編集部のオフィスにジェーンを連れて行く。ジェーンが「雑誌に掲載する写真は、どうやって決めてるの?」と言うと、セイコは心霊写真が作り物であることを暴露し、リツオもそれを認めた。ただし彼は、中には本物の心霊写真もあることを告げる。彼は3年前の創刊号に掲載した写真をジェーンに見せる。それは幼少時代の彼を撮影した物で、死んだばかりの母親が心霊として写っていた。
「一枚だけでしょ?」とジェーンが言うと、リツオは本物の心霊写真を保管してある部屋に案内した。世界中で撮影された大量の心霊写真が、部屋の壁一面に貼られていた。リツオは「俺は、心霊写真は何かを訴え掛けていると思う。その人への愛とか、写っている人と一緒に何かをしたかったとか、写っている人の身内とか。心霊写真の中には、生き霊が写った物もある。どうしても伝えたいことが無ければ、霊は出て来ない」とジェーンに語った。
リツオは「興味があるなら、霊媒師を紹介しようか。彼は本物の霊能力者だ」とジェーンに告げ、雑誌に載っているムラセという男の記事を見せた。一方、撮影した写真を現像していたベンは、あの日本人女性が写り込んでいるのに気付く。その女性が写真の中で動き、ベンは現像液を浴びせられた。現像室から飛び出したベンが鏡を見ると、顔に浴びせられたのは血だった。しかしスタジオにセイコが来たので「何でもない」と告げ、ベンが改めて鏡を確認すると、血の痕跡は消えていた。
地下鉄に乗ったジェーンは、あの日本人女性が駅に立っているのを目撃する。走り出した列車の中で、窓に張り付いている女性を目にしたジェーンは、パニックに陥った。ビルに戻ると、ベンが荒れていた。撮影したフィルムに傷が入っていたのだと彼は説明する。ジェーンが写真を見ると、例の白い光が入っていた。「車が衝突したせいだろう。中にヒビが入ったか」と言うベンに、ジェーンは「あの女の子を電車で見たの。東京へ付いて来たのよ。きっと死んだのよ」と話す。
ベンが「慣れない外国での暮らしでストレスが溜まってるんだよ」と告げると、ジェーンは「おかしなことを言ってると思うでしょうけど、貴方も最近、奇妙な物を見たことは無い?」と尋ねる。ベンが「幽霊なんか見てない。出来れば、ずっと一緒にいてあげたいけど、仕事は辞められない」と少し苛立ったように言うと、ジェーンは「一緒にいてくれなんて頼んでない」と反発する。彼女が話を続けようとすると、ベンは「今日はそういう話を聞く気分じゃないんだ。勘弁してくれ。僕は君の父親じゃないんだ」と遮った。
首の痛みが消えないベンは、病院で診察を受けた。レントゲン写真を見た医師は、「骨には異常がありませんし、痛み止めの薬を出します。しばらく様子を見ましょう」と告げた。ベンが現像室にいると、後ろから鼻歌を歌う女性が触れて来た。ベンは相手がジェーンだと思い、振り返らずに話し掛けた。だが、そのジェーンからスタジオに電話が掛かって来た。現像室に戻ると、あの女性が座っていた。顔の中で何かが動き、その目から虫が飛び出した。
ベンの悲鳴を受話器越しに聞いたジェーンは、急いでビルへ戻る。酷く怯えているベンに、彼女は「あの子を見たのね?」と問い掛けた。2人はムラセの元を訪れ、光の正体を知りたいのだと話す。ムラセが「私たちは霊魂によって生かされている。それはエネルギーだ。我々はいつか死ぬが、エネルギーは残る。光はエネルギーで、カメラはそれを捉える」と語ると、ベンは光の正体が霊魂だと悟った。
写真に手を当てたムラセは、「貴方たちのために何も出来ない。なぜ彼女を捨てた?」と声を荒らげた。腹を立てたベンは、詳しく話を聞こうとするジェーンを連れてムラセの元を立ち去った。ベンは「インチキ霊媒師だ。時間の無駄だった」と口にした。ビルに戻ったベンは、スタジオでの撮影に入る。改めて写真を確認したジェーンは、全ての光がTGK本社ビルの前に入っていることに気付いた。
ジェーンはセイコからポラロイドカメラを借り、TGK本社へ赴いた。光が入っている場所は、ビルの17階だった。国際部のオフィスに入った彼女は、そこで何枚かの写真を撮影した。すると、その中の1枚に、あの女性が写っていた。慌てて外へ出ようとすると、ドアが締められた。壁に飾られていた写真が、床に落ちた。それは国際部が社長賞を獲得した時の集合写真で、メンバーの中には、その女性の姿もあった。彼女は田中めぐみというTGKの社員だった。そして、その写真を撮ったのはベンだった。
ベンは撮影を終え、スタッフとモデルを送り出した。ベンが休憩していると停電になり、フラッシュが連続で焚かれた。メグミの姿を目撃した彼は、慌てて逃げ出そうとする。そこへジェーンが戻り、電気も復旧した。メグミの姿は消えていた。ジェーンは持ち帰った写真をベンに見せ、メグミとの関係を問い質す。ベンは、メグミと交際していたこと、彼女の父から交際を反対されていたことを語った。
メグミは父親が病死して以来、独占欲が強くなった。メグミは家を捨てる決心で付き合っており、ベンに対して異常な執着を見せた。ベンや自分を傷付けようとした。ベンは距離を置こうとするが、メグミは彼に付きまとった。そこでブルーノとアダムは、彼女に付きまといをやめるよう告げた。メグミは付きまとわなくなり、それ以来、ベンは彼女と会っていないという。「一方的に捨てたのね」とジェーンが言うと、ベンは「別れ方がマズかったのは認めるよ」と告げた。
「でも、なぜ彼女があんな場所に?」とジェーンが疑問を口にすると、ベンは「分からない。たぶん僕を尾行して来たんだろう」と述べた。「どうして言ってくれなかったの?」というジェーンの問い掛けに、彼は「過去に交際していた女に付きまとわれているなんて、言えるわけがない」と答えた。「すぐにニューヨークへ戻ろう。もう撮影なんか、どうでもいい。仕事は幾らでもある」とベンは告げた。
深夜、ベンはアダムに電話を掛けてメグミのことを尋ねる。するとアダムは「この前、彼女に会ったよ。道の反対側に立って、何も言わず、俺を指差してた。だから俺は反対へ行った。なんか気味が悪かったよ」と話した。電話を切った後、アダムは部屋へ連れ込んでいたモデル志望のナターシャを下着姿にさせて写真撮影を始める。だが、ファインダーを覗くと、白い光が入り込んだ。光は人の形になり、それはレンズを割ってアダムに襲い掛かった。アダムは右目を抉られ、その場に倒れた。
次の朝、ブルーノからアダムの事故を知らされたベンは、ジェーンを連れて病院へ出向いた。アダムは助からず、ベンは病院へ来ないブルーノの携帯に連絡する。留守電にメッセージが録音されるのを聞いたブルーノは、剃刀で写真を細かく刻んでいた。ベンとジェーンは、ブルーノのマンションへ出向いた。するとパンツ一枚の姿で現れた彼は、窓から飛び降りて自害した。アメリカ送られて来た結婚式の写真を見たジェーンは、そこにもメグミが写っていることに気付く。メグミが現れたのは、事故が原因ではなかったのだ。ベンとジェーンはメグミのことを詳しく知るため、彼女の実家へ向かう。すると母親のアキコは、「メグミは具合が悪くて休んでるの」と言う…。

監督は落合正幸、脚本はルーク・ドーソン、製作は一瀬隆重&ロイ・リー&ダグ・デイヴィソン、共同製作はパイブーン・ダムロンチャイタム&ブッサバー・ダオルアン&ウィズート・プーンウォララック&ヨートペット・スットサワット、製作協力はリチャード・ゲイ、製作総指揮はアーノン・ミルチャン&ソニー・マリー&グロリア・ファン、撮影は柳島克己、編集はマイケル・N・クヌー&ティム・アルヴァーソン、美術は安宅紀史、音楽はネイサン・バー、音楽監修はデイヴ・ジョーダン&ジョジョ・ビジャヌエバ。
出演はジョシュア・ジャクソン、レイチェル・テイラー、奥菜恵、デヴィッド・デンマン、ジョン・ヘンズリー、マヤ・ヘイゼン、ジェームズ・カイソン・リー、宮崎美子、山本圭、デイジー・ベッツ、エイドリアン・ピッカーリング、パスカル・マリノー、大田正樹、ヘイデル龍生、乙黒えり、松木里菜、神崎智孝、薬師寺順、田村笑美、ポリーナ・コノノワ、ユリア・リジョワ、紀瀬美香、長倉正和、古川真司、高樹マリア、安藤明彦、アレッサンドラ、カトリーナ・B、ターニャ、タカオ・トージ、藤本静、三島ゆたか、浅野麻衣子ら。


2004年にタイで製作された映画『心霊写真』をハリウッドでリメイクした作品。
監督は『催眠』『感染』の落合正幸。
脚本担当のルーク・ドーソンは、これが初めての長編映画。
ベンをジョシュア・ジャクソン、ジェーンをレイチェル・テイラー、メグミを奥菜恵、ブルーノをデヴィッド・デンマン、アダムをジョン・ヘンズリー、セイコをマヤ・ヘイゼン、リツコをジェームズ・カイソン・リー、アキコを宮崎美子、ムラセを山本圭、ナターシャをデイジー・ベッツ、ミーガンをエイドリアン・ピッカーリングが演じている。

冒頭の結婚式のシーンから、映像やBGMによって、観客の不安を煽ろうとする演出が施されている。
だけど、そこはベンとジェーンが結婚して幸せ一杯の状況なんだから、普通に「ハッピーな結婚式」ってことでいいでしょ。
結婚式の最中や直後に何か不気味な現象が発生するのであればともかく、そうではないんだから、その段階で「これから怖いことが起きますよ」と感じさせるのは、先走っているように感じる。
もちろん、この作品を見る人は、最初からホラー映画だと分かっているだろうけど、それでも「幸せムードで新婚旅行に出掛けて、そこから恐ろしい出来事に見舞われる」という風に落差を付けた方がいいんじゃないかと思うんだが。

序盤の段階で、もうベンに対する拒否反応が生じる。
と言うのも、はねた女性を気にするジェーンに対して、彼は「本当にいたとしたら、誰かが助けて、どこかへ運んだに違いないよ。僕が保証するよ。その女の子は今頃、ベッドの中で包帯を巻かれてアイスを食べてるよ」と告げるのだ。
いや、もちろんジェーンを元気付けようという意識もあるんだろうけど、「仮にはねたとしたら」という前提で喋る内容が、それなのかと。
車ではねたと仮定するのであれば、相手に「ベッドで包帯を巻かれる」ほどの怪我を負わせているんだから、軽く考えちゃダメだろ。ジェーンを励ます文言としては、不適切じゃないかと。
それに、そこでの彼の態度は、ジェーンを元気付けようってことよりも、「せっかくの新婚旅行だから、自分が楽しみたい」という意識が圧倒的に勝っているように感じられる。

っていうか、そもそも「なぜ舞台が日本?」ってトコで引っ掛かる。
落合正幸が監督を務めることになったのは、『THE JUON/呪怨』にも携わった本作品のプロデューサー、一瀬隆重のオファーによるものだ。アジアのホラー映画のリメイクだから、Jホラーの感覚が欲しいということもあったのかもしれない。
ぶっちゃけ、この映画にわざわざ日本から監督を招聘する必要性は感じないが、それはひとまず置いておくとしよう。
ただ、「日本が舞台である意味が全く無い」という部分に関しては、ちょっと甘受し難いなあ。

そもそも、これってオリジナル版はタイ映画なわけだから、そこを重視するのであれば、タイを舞台にすべきなんだよね。
タイでもなく、北米でもなく、日本を舞台にしているのは、その方が監督が仕事をしやすいだろうってことだったのか。
どうやらスタッフの大半は日本人だったらしいから、確かに仕事はやりやすかっただろう。でも、映画の中身だけで考えると、日本である必要性は皆無に等しい。
むしろ、北米を舞台にして作った方がいいと思うぞ。それこそニューヨークでもいいし。

ベンたちを怖がらせる悪霊は日本人のメグミだけど、アメリカってのは多国籍社会だから、アジア系の女性が悪霊として登場しても、別に構わないだろう。
っていうか、根本的なことを言っちゃうと、悪霊が日本人である必要性すら無いんだよな。
そこが金髪女性だろうが、赤毛の女性だろうが、そんなに支障は無いよ。
「良く知らない異国の地」という舞台設定を、恐怖を煽る上で有効に活用していこうとする意識が、そんなに強いわけでもないし。

TGK本社のシーンでは、ヨーコがベンに気のある素振りを示すのをジェーンが見ていたり、クライアントに会うためにベンがジェーンをロビーに残してオフィスへ向かったりという様子が描かれる。
他にも、「ジェーンが道を尋ねても教えてもらえない」とか、「ファストフードで昼食を済ませていたら突然の雨に見舞われる」とか、『ロスト・イン・トランスレーション』的な描写も無くは無い。
だけど、それはホラー映画としての本筋と上手く絡んでいない。

ブルーノはベンとジェーンをビルに案内するのだが、そこが2人の住居になるという説明に違和感を抱く。
この夫婦、ずっと日本で生活するわけじゃないよね。新婚旅行と仕事を兼ねて、一時的に来ているだけなんだよね。
だったら、ホテルでも用意すれば済むことでしょ。
なんで一時的な日本滞在のために、わざわざビルを改装し、1フロアを住居スペースにして、家具や調度品を全て揃えているのかと。
「どんだけセレブな扱いなんだよ」と思ったけど、セレブだったら高級ホテルを用意するよな。
ホテル以外の住居を用意するにしても、なぜ他に入居者のいない、改築中のビルの一室なのかと。

セイコはジェーンをリツオの勤務する編集部へ案内するが、イチャイチャしているだけで、心霊写真について彼に説明させようともしない。ジェーンが質問して、ようやくリツオは話し出す。
リツオは入り口に盛り塩がしてある部屋へジェーンを案内し、「全て本物だ」と言う。そこは心霊写真が保管されている部屋なのだが、なぜか壁一面にビッシリと心霊写真が貼り付けられている。
いやいや、そんな保管の方法、おかしいだろ。なんで展示スタイルなんだよ。
っていうか、供養するとか、そういうことをやらなくていいのか。全ての心霊が悪霊とは限らないだろうけど。

一言で言えば、ちっとも怖くないホラー映画である。
落合監督のインタビューによれば、アメリカ人を怖がらせるために、ただ幽霊が立っているというだけでなく、行動させたり、ポルターガイスト現象を起こしたりという描写にしたらしい。
まず「立っているだけだと怖がらない」ってのは、そうかもしれないけど、この映画の場合、日本人が見ても、「そこに幽霊がいる」というだけでは何の怖さも無いよ。
メグミが椅子に座っていても、「ただ女性が座っている」というだけにしか見えない。それが恐怖の対象として存在していない。『呪怨』で尾関優哉が演じた白塗り俊雄君のような、見た目の不気味さは無い。
意外な場所に出現したり、急に出現したりという描写も無くはないけど、まるで物足りないし、恐怖演出も冴えない。

また、「動かすことで怖がらせようとする」という方法に関しても、中途半端に終わっている印象を受ける。
幽霊を動かすことで観客を怖がらせるという方針で行くのなら、もっと徹底的に動かしまくった方がいいんじゃないか。
どうせ、「そこにいる」というだけでは恐怖なんて皆無なんだし。
カメラの中の人影がアダムを襲うシーンなんかも、もうメグミの姿をハッキリと見せて、彼女がアダムを襲う形にしてもいいんじゃないか。
どうせ心霊写真という仕掛けは、大して機能していないんだし。

ブルーノのケースでは、写真を細かく切り刻んだ彼が窓から飛び降りて自殺するけど、「なんでやねん」と言いたくなる。
そこはメグミに殺される形にすべきじゃないのか。なんで自殺してるんだよ。
写真を細かく切り刻んでいる理由も良く分からないし。
そこもそうだし、その後に用意されているメグミの登場シーンもそうなんだけど、どうせ「ジワジワと忍び寄る恐怖」とか、「心理的恐怖」なんてのは薄いわけだから、もっと開き直って、メグミが人間離れした動きで襲い掛かるとか、首が捻じ曲がったり腕が伸びたりという風に異形へ変貌したり、そういう方向で考えても良かったんじゃないかなあ。

終盤、結婚式で撮影した写真にもメグミが写っていることが分かり、事故が原因ではなく、その前から彼女がベン&ジェーンと一緒にいたことが判明する。
もちろん、ベンに対する恨みがあるってことなんだろうけど、「なぜ今になって?」という疑問は拭えない。
彼が他の女と結婚することを知ったから、行動を起こしたってことなのか。
だけど、それならブルーノとアダムを殺す理由が無いんだよな。ベンが黙認する中でメグミは2人に強姦されているわけで、だったら自殺した直後に化けて出るべきじゃないのかと。

(観賞日:2013年10月24日)

 

*ポンコツ映画愛護協会