『シュレック3』:2007、アメリカ

チャーミング王子はフィオナ姫と結婚して「遠い遠い国」の王になる夢を奪われ、安酒場で芝居をやっても客からバカにされる始末だった 。そんな中、ハロルド国王が危篤状態になり、新聞は「シュレックとフィオナが継承者」という記事を書いた。チャーミングは母の言葉を 思い出し、「僕が国王の権威を取り戻してみせる。あのシュレックに王位を継がせてなるものか」と野心を燃やした。
シュレックとフィオナは、国王と女王の代理として公務をこなしていた。シュレックは慣れない仕事にウンザリするが、フィオナから 「王が良くなるまでよ。あと少しで家に帰れるわ」と言われて我慢した。シュレックとフィオナは、そのハロルドに呼ばれた。ハロルドが 「次の王位継承者はシュレックとフィオナだ」と言うので、シュレックは「こんな怪物より、もっとマトモな人物がいるでしょ」と告げる 。するとハロルドは「他の継承者は1人だけだ。名前はアーサー」と言い残して息を引き取った。
チャーミングがバー「毒リンゴ」へ行くと、ママのドリスは留守で妹メイベルがカウンターにいた。バーにはフック船長や悪い魔女など、 御伽噺の悪役や脇役たちが揃っていた。チャーミングは彼らに向かって「みんなで立ち上がって幸せを掴もう」と持ち掛けた。一方、 シュレックはアーサーを捜すため、ドンキーと長ぐつをはいた猫を伴って旅に出ようとしていた。船が出港した直後、見送りに来ていた フィオナが妊娠を告げたため、シュレックは激しく動揺した。
船室で眠っていたシュレックは、無数のベビーが暴れる夢にうなされて目を覚ました。自分の子供が怪物として誕生することに溜め息を つくシュレックを、ドンキーと長ぐつをはいた猫が励ました。船は陸地に着き、シュレックたちはアーサーが通うウォースターシャー高校 へ向かった。シュレックは馬上槍試合で勇ましく勝利した男をアーサーだと思い込むが、それはランスロットという生徒だった。アーサー はランスロットに吹き飛ばされた情けないイジメられっ子で、生徒たちからバカにされていた。
シュレックから王位継承者であることを聞かされたアーサーは、調子に乗って生徒たちに偉そうな態度を取った。同じ頃、フィオナは リリアン王妃やドリス、プリンセス仲間である白雪姫、眠れる森の美女、髪長姫、シンデレラ、それにピノキオやジンジャーブレッド・ マン、3匹の子豚たちから妊娠祝いのプレゼントを貰っていた。白雪姫たちは「子供が産まれたら、なりふり構わなくなって百年の恋も 冷める」と言うが、プリンセスは誰一人として子育て経験が無かった。
チャーミング王子が悪役たちを引き連れて城に乗り込んできたため、慌ててフィオナたちは退避した。城に残っていたピノキオたちに、 チャーミングはフィオナとシュレックの居場所を尋ねた。ピノキオは答えをはぐらかすが、一匹の子豚が「シュレックは世継ぎを連れて くる」と明かしてしまう。チャーミングはフック船長に「世継ぎを始末してシュレックを連れて来い」と命じた。
シュレックの船に乗り込んだアーサーは浮かれていたが、ドンキーや長ぐつをはいた猫が公務の大変さを語ってしまったため、「帰る」と 言い出した。彼が勝手に船の舵を切ったので、慌ててシュレックは航路を元に戻そうとする。だが、揉み合う内に舵が壊れてしまい、船は 島に漂着した。島の奥へ進んだ一行は、かつてウォースターシャー高校で魔法を教えていたマーリンと遭遇した。マーリンは精神疲労に なったため、教職を辞めて引退していた。
マーリンが行った魂のセラピーによって、シュレックたちはアーサーが父に捨てられたことを気にしていると知った。アーサーは「父親に 厄介払いされたんだ。そんな僕は、王様には向いていない」と寂しそうに漏らす。そんな彼を見て、シュレックは「俺の親父は怪物で、俺 を食べようとした。俺も昔は化け物呼ばわりされて、自分でもそう思ってたけど、だんだん他人の言うことなんて関係ない、自分を 信じればいいと思うようになった」と語り、元気付けた。
フィオナたちは地下通路を移動し、城の外へと脱出した。だが、密かにチャーミングと結託していた髪長姫の裏切りにより、フィオナたち は捕まってしまう。シュレックたちはフックの率いる一味に襲われるが、返り討ちに遭わせた。アーサーはマーリンに、魔法で遠い遠い国 まで移動させてほしいと頼んだ。ドンキーと長ぐつをはいた猫の中身を入れ替わるという副作用はあったものの、シュレックたちは瞬時に 遠い遠い国へと到着した。すると街は荒らされ、ピノキオは見世物にされていた。
シュレックはピノキオから、フィオナが捕まったことを知らされた。シュレックは芝居の稽古をチャーミングの元へ乗り込むが、捕まって しまった。シュレックはアーサーを救うため、わざと酷いことを言って追い払った。チャーミングはシュレックに手錠を掛け、大勢の観客 が見物する芝居の中で始末しようと企む。一方、フィオナたちが監禁されている場所には、ドンキーと猫が移送されてきた。リリアンの 頭突きで壁を破壊して脱出したフィオナたちは、反撃を開始した…。

監督はクリス・ミラー、共同監督はラマン・ヒュイ、原作はウィリアム・スタイグ、原案はアンドリュー・アダムソン、脚本はジェフリー ・プライス&ピーター・S・シーマン&クリス・ミラー&アーロン・ワーナー、製作はアーロン・ワーナー、共同製作はデニース・ ノーラン・カシーノ、製作総指揮はアンドリュー・アダムソン&ジョン・H・ウィリアムズ、編集はマイケル・アンドリュース 、プロダクション・デザイナーはギローム・アレトス、視覚効果監修はフィリップ・クラックマン&ケン・ビーレンバーグ、音楽はハリー ・グレッグソン=ウィリアムズ。
声の出演はマイク・マイヤーズ、エディー・マーフィー、キャメロン・ディアス、アントニオ・バンデラス、ジュリー・アンドリュース、 ジョン・クリーズ、ルパート・エヴェレット、エリック・アイドル、ジャスティン・ティンバーレイク、スザンヌ・ブレイクスリー、 コーディー・キャメロン、ラリー・キング、クリストファー・ナイツ、ジョン・クラシンスキー、イアン・マクシェーン、チェリ・オテリ 、レジス・フィルビン、エイミー・ポーラー、セス・ローゲン、マーヤ・ルドルフ、エイミー・セダリス他。


ドリームワークスの長編アニメーション映画シリーズの第3作。
シュレック役のマイク・マイヤーズ、ドンキー役のエディー・マーフィー 、フィオナ役のキャメロン・ディアスという声優陣は、1作目からの続投。長ぐつをはいた猫のアントニオ・バンデラス、王妃のジュリー ・アンドリュース、国王のジョン・クリーズ、チャーミングのルパート・エヴェレット、ドリスのラリー・キングは2作目からの 続投。
今回の新顔はマーリン役のエリック・アイドル、アーサーのジャスティン・ティンバーレイクなど。

今回は最初から最後までフィオナが怪物の姿のままなのだが、これはツラいものがあるなあ。
やっぱりシュレックとフィオナは1作目のような「美女と野獣」という見た目でいてくれた方がいい。
そこはベタなパターンでいいよ。
「美女と野獣」というアンバランスなカップルだから面白いのであって、「怪物同士のカップル」ってのは普通だからね。怪物コンビが 主役というところに面白さは無いし。
美女のプリンセスと怪物のシュレックという関係が面白かったはずなのに、それって1作目だけなんだよな。

シリーズ1作目は「御伽噺のパロディー化」という明確な味付けがあり、そこには「ジェフリー・カッツェンバーグが追い出された ディズニーのアニメを徹底的にコケにする」という意識が強くあった。
2作目では御伽噺のパロディー化の意識は弱くなり、様々な映画やCMをパロディーにした小ネタが幾つも盛り込まれた。1作目に比べる と、毒や皮肉というテイストはかなり薄くなった。
で、この3作目だが、レッド・ツェッペリンの『移民の歌』に乗せてプリンセスたちが暴れるとか、そのように「典型的なファミリー向け アニメ」から逸脱したシーンや楽曲の使い方はあるものの、全体的には、おとなしい作品といった印象を受ける。
公務をこなすシュレックがドジを繰り返すドタバタ劇とか、そんなのはディズニー・アニメや別の会社のカートゥーンでも良くあるような パターンだし。

もう製作サイドは1作目でディズニーへの復讐を終えてスッキリしてしまい、2作目は出涸らしに他の映画やCMなどのパロディーを 付け加えて作品を仕上げたが、3作目になると、もはや何も残っていなかったようだ。
ディズニー的なモノのパロディー化が無くなったことに関して、ジェフリー・カッツェンバーグは「意図的に作風を変えた」とコメント しているが、1作目でやり切っただけじゃないのか。
正直、このシリーズからディズニーへの攻撃的姿勢とパロディーを除外したら、ほとんど何も残らないぞ。

1作目はドンキー、2作目では長ぐつをはいたネコと、このシリーズでは個性的でアクの強いキャラクターが脇に配置されていた。
しかし今回は、彼らに匹敵するようなニューキャラが登場しない。
今回はアーサーという若者が登場しているが、まるで魅力の無いキャラクターだ。
しかも彼がメインとして進められるのは「ダメな若者が成長して一人前になる」という、ごく平凡な物語だ。

シュレックには「フィオナの妊娠を知って不安になる」というストーリーがあるのだが、これってディズニー・アニメや御伽噺の フォーマットからは外れているんだよね。
茶化すための原型が無いのだから、そりゃあパロディーにならないのも当然だ。
っていうか、そのストーリー、すげえ薄っぺらい。
だから今回のシュレックはねホントに主人公なのかと疑いたくなるような状態だ。
そりゃあ、そこを厚くしてもパロディーにならず凡庸な内容になったとは思うが、だから薄くても構わないってことではない。
そもそも、そういう大枠を用意したこと自体がどうなのかってことよ。

いっそのこと、もう前半の内にシュレックのベビーが誕生する展開にしちゃえば良かったんじゃないかなあ。
そんで「シュレックは子供が怪物として産まれて来ることに不安を抱いていたが、いざ誕生すると人間の姿だった」という展開にする とか。
あるいは「誕生した子供に魔女が呪いを掛ける」という話にするとか(これなら御伽噺のフォーマットが使える)。
ともかく、もうちょっと上手い方法があったと思うんだよなあ。

(観賞日:2010年12月12日)

 

*ポンコツ映画愛護協会