『ショート・サーキット』:1986、アメリカ

ロボット開発会社“ノヴァ・ロボティックス”のクロスビー博士は、仲間のベン達と共に軍事用のロボット部隊を完成させた。だが、落雷で動力スイッチが作動し、ロボットのNo.5が回路不良になって動き出してしまう。No.5はゴミ廃棄トラックに乗り、外に出た。マーナー社長は警備主任のスクルーダーに、No.5の破壊を命じた。
No.5は橋の上から、移動レストランを経営するステファニーのバンに落下した。その夜、ステファニーはNo.5を発見した。No.5は厚い辞書を読破したり、テレビ番組を見たりして知識を得る。No.5は、自分は機械ではなく生きているのだと告げた。
ステファニーは駆け付けたクロスビーに、No.5が人間のように振る舞ったと話した。しかしクロスビーは本気にせず、作動スイッチを切って車に運び込んだ。だが、会社へ護送する途中、No.5は自分でスイッチを入れてステファニーの元へ戻る。
ステファニーはクロスビーに連絡を取るが、待ち伏せしていたスクルーダー達に捕まってしまう。軍事用ロボット部隊に襲われたNo.5は、撃退してステファニーとクロスビーを救出した。クロスビーはNo.5へのテストを繰り返した結果、彼が生きていることを認めた。だが、彼らはスクルーダーの率いる破壊部隊に包囲されてしまう…。

監督はジョン・バダム、脚本はS・S・ウィルソン&ブレント・マドック、製作はデヴィッド・フォスター&ローレンス・ターマン、共同製作はデニス・ジョーンズ、製作協力はゲイリー・フォスター&ダナ・サトラー、製作総指揮はマーク・デイモン&ジョン・ハイド、製作監修はグレッグ・チャンピオン、撮影はニック・マクリーン、編集はフランク・モーリス、美術はダイアン・ウェイジャー、ロボット・デザインはシド・ミード、音楽はデヴィッド・シャイア。
出演はアリー・シーディー、スティーヴ・グッテンバーグ、フィッシャー・スティーヴンス、オースティン・ペンドルトン、G・W・ベイリー、マーヴィン・マッキンタイアー、ブライアン・マクナマラ、ジョン・ガーバー、カール・ジョンソン、ロバート・クランツ、トム・ローレンス、ビリー・レイ・シャーキー、フレッド・スライター、ジャン・スペック、ペニー・スタントン、バーバラ・ターバック、リコ・トパジオ、トニー・アーバノ、ヴァーノン・ウェドル他。


S・S・ウィルソン&ブレント・マドックが初めて脚本を手掛けた作品。ステファニーをアリー・シーディー、クロスビーをスティーヴ・グッテンバーグ、ベンをフィッシャー・スティーヴンス、マーナーをオースティン・ペンドルトン、スクローダーをG・W・ベイリーが演じている。No.5の声を担当しているのは、ティム・ブレイニー。

人間ではない生命体が主人公と出会い、交流を深める。生命体は武装した一味に追われるが、ピンチを切り抜ける。
似たような作品を、どこかで見たような記憶がある。
そう、ぶっちゃけて言ってしまえば、これは『E.T.』のロボット版だ。
別にパロディー映画ではないが、No.5が『サタデー・ナイト・フィーバー』のトラヴォルタのダンスをマネしたり(あれもジョン・バダム監督だ)、西部劇のマネをしたり、他の軍事用ロボットが三ばか大将のモノマネをしたりと、映画ネタが幾つか入っている。

感情回路みたいなモノさえ付いていないのに、ロボットが人間みたいに喋ったり動いたりするというのはムチャな設定だが、そこには目をつぶってくれということなのだろう。
で、そこに目をつぶってしまえば、後は「何でもあり」の世界なのよね。
そもそも、軍事用として作るなら、ガンタンクみたいな形状にすることがどうなのかって気もするからね。

No.5は軍事用に開発されたロボットだが、それにしては妙に可愛らしさをアピールしたがっているような大きさ&デザインだ。愛されるキャラとしてはいいのかもしれないが、眉毛みたいに動く板とか、軍事兵器としては邪魔なだけだもんね。
つまり、デザインを見て分かるように、最初から媚びを売りまくってるってコトよね。

No.5と似たようなデザインのロボットが、序盤で飲み物を作ったり食べ物を運んだりしている。
最初に似たデザインの家事用ロボットを出して、愛敬を見せたらダメじゃん。愛敬のカケラも無いロボットばかりを見せておくことで、No.5だけは違うのだというギャップが生きるはずでしょうが。
差別化を図ってこそ、そこが生きるのに。

No.5以外の軍事用ロボットが、攻撃の際に簡単にターゲットを外しすぎ。
お前ら、最初のデモンストレーションでは見事に的中させていただろうに。
性能はNo.5と同じなんだから、もっと正確な射撃が出来るはずでしょ。
急に性能が落ちたのかよ。

マーナーは「人間を無差別攻撃するかもしれないのでNo.5を破壊しろ」と言うけど、その言葉が空々しく響く。最初にデモンストレーションを行った後、似たようなロボットが家事手伝いをしている様子を見せちゃってるから、「No.5は兵器」という印象が、その段階で既に薄いモノになってしまっているのよね。
それを考えると、No.5が最初から怖くないロボットだということをアピールするのも、失敗だろう。最初は恐ろしい兵器のように見せて、ヒロインも彼を見つけた時には怖がる。で、そこで初めてNo.5が怖くないことを示すという流れの方がいい。

No.5を見て、異星人と勘違いするステファニー。
相当にオツムがイカれているんだろう。
で、異星人だと思い込んで大喜びで歓迎して、ロボットだと知ると態度が一変って、どういう神経なんだろ。というか、どこからどう見たってロボットでしょうが。
まあ、バンの中にヘンなロボットがいても全く怖がらないんだから、やっぱり変わってるんだな。

No.5はステファニーの家で物を散らかしまくり、大切な食器まで破壊するという無作法っぷりを見せる。勝手に彼女のバンを盗んで逃亡を図り、車を破壊したり、他の連中に交通事故を起こさせたり、人をひき殺そうとしたりと、迷惑極まりない。
そういう一連の行動を見ていると、それだけで、ある意味では凶悪な兵器だ。

No.5は「デストロイ」のプログラムには従えないと言ってるけど、敵を当たり前のようにビームで攻撃してるじゃん。それって立派なデストロイじゃないのかね。
勝手気ままに暴れまくるだけで可愛げが無い上に、やっぱり兵器じゃねえか。

No.5は「自分は機械じゃなくて生きている」と告げ、ステファニーも同調するが、いやいや、アンタは機械なのよ。いくら人間のように振る舞っても、機械は機械。本当に人間のような感情があるわけじゃなくて、機械として人間っぽくなっただけだから。「彼を殺さないで」と言われても、死にませんから。
機械なので、修理すれば直りますし。

ステファニーは頭のイカれた女性だから、No.5が自由に暴れまくっても彼に好意を抱いた。
しかし、普通の人間は、こう思うんじゃないだろうか。
傍迷惑に暴れまくるぐらいなら、人間らしさなど持たない従順なロボットのままでいいと。

 

*ポンコツ映画愛護協会