『シャザム!』:2019、アメリカ&カナダ

1974年、ニューヨーク州北部。幼いサデウス・シヴァナは父が運転する車の後部座席に乗れ、占い玉で遊んでいた。「オモチャは禁止だ」と父は叱責し、サデウスが「クリスマスだよ」と反論しても承知しなかった。助手席に乗っていた兄のシドが占い玉を奪い取ったので、サデウスは父に訴える。しかし父は「他人に頼るな。男なら自分の力で戦え」と、サデウスを説教する。シドがサデウスを馬鹿にしてから占い玉を投げ返すと、父は彼に同調して笑った。
不意に父と兄の姿が車内から消え、サデウスは「永遠の岩」と呼ばれる不思議な宮殿に迷い込んだ。そこでは男が待ち受けており、魔術師評議会の最後の1人だと言う。魔術師は「七つの大罪から王国を守ると誓った。だが月日が流れ、力が弱った。後を継ぐ勇者が必要だ」と語り、杖を掲げて「これで魔力の全てを伝える」とサデウスに告げる。しかし彼は、「その前に純粋な心を示さねばならぬ」と通告した。サデウスは封印されていた七つの大罪の魔物に誘惑され、簡単に負けてしまった。
魔術師は「お前は全く値しない」と述べ、サデウスを元の世界に戻した。サデウスが「僕はふさわしい、戻して」と喚いて車の外に出ようとするので、シドが慌てて制止する。サデウスの行動に気を取られた父は対向車線の大型トラックと衝突しそうになり、慌ててハンドルを切った。スリップして車を停止させた彼は、サデウスを厳しく叱り付けた。そこへ向こうから車が突っ込み、父は外に投げ出された。シドから「お前のせい」と責められたサデウスは、占い玉から「我らを見つけろ」というメッセージを受け取った。
現在。15歳のビリー・バットソンは偽の通報で警官2人を質屋に閉じ込め、パトカーのパソコンを使ってレイチェル・バットソンという女性の住所を突き止めた。ビリーは幼い頃、母親のレイチェルと出掛けた遊園地ではぐれていた。警察が動くが、母親は迎えに来なかった。ビリーは調べた家へ出向くが、そこに住んでいたレイチェルは別人だった。そこへパトカーが駆け付け、ビリーはケースワーカーのE・B・グローヴァーの元へ連行された。
ビリーはピッツバーグの里親の元から、2週間前に逃げ出していた。グローヴァーはビリーに、里親が連れ戻しを望んでいないことを話す。これまでビリーは何度も家出を繰り返し、里親の元を転々としていた。「問題児も親切な里親ばかりなのに」とグローヴァーが言うと、ビリーは「親のフリした人はウンザリだ。本物のママがいる」と反発する。これまで彼は78人のレイチェル・バットソンを見つけ出したが、いずれも母親ではなかった。
グループホームを経営するヴィクターとローザのヴァスケス夫妻が来ていることをグローヴァーが明かすと、ビリーは「一人で生きる」と拒否する。グローヴァーは「18歳になったらね。それまではホームレスにさせない。2人にチャンスをあげて」と述べ、ビリーを夫妻に紹介した。ヴァスケス夫妻は自宅へビリーを連れ帰り、養子の面々に紹介した。夫妻の家では、左足が悪くて変な話ばかりするフレディー、ハグ癖のあるダーラ、カリフォルニア工科大学に進学するメアリー、ゲームオタクのユージーン、無口で筋トレ好きなペドロという面々が養子として暮らしていた。フレディーはアメコミのヒーローが大好きで、グッズを集めていた。
翌日、ビリーは他の養子たちと共に、新しい学校へ赴いた。学校でもダーラが「お兄ちゃん」と抱き付いて来たので、彼は困惑して引き離す。彼が「ここではやめて。本当の兄妹じゃないんだから」と言うと、ダーラは悲しそうな表情を浮かべた。一方、サデウスは研究所のスポンサーとなり、自分と同じように魔術師に召喚された体験を持つ人々の情報を集めていた。クワンという女性の証言を聞いたサデウスは、目の色を変えた。召喚される際に撮影していた映像で、時計に記号が表示されていたからだ。
サデウスは研究所のリン・クロスビー博士に、「誘拐されたのは56人。やっと掴んだ。これまでは順序を間違えたか、記号が間違っていたと思っていた。だが、7つの記号を7回繰り返せば良かったんだ」と話す。彼は用意しておいたドアに、記号を記した。リンは体験談を集団ヒステリーとして研究していたため、実際の出来事として話すサデウスに困惑する。リンがドアに手を触れると、体が崩れて消滅した。サデウスがドアを開けると、その向こうには永遠の岩が出現していた。
サデウスは魔術師と再会し、「自分を否定された少年の心が分かるか。純粋な心など存在しない」と言い放ち、七つの大罪を解き放った。ビリーたちが下校しようとすると、フレディーがブレットとバークのブライヤー兄弟に因縁を付けられた。フレディーが殴られるのを見たビリーは、無視して去ろうとする。しかしブライヤー兄弟が母親のことでフレディーを馬鹿にすると、ビリーは彼らに殴り掛かった。反撃を受けたビリーは逃亡し、地下鉄に乗り込んだ。
ビリーは魔術師に召喚され、永遠の岩に迷い込んだ。魔術師は彼に、「遠い昔、ある勇者を安易に選んだ。その者は魔力を復讐に使い、七つの大罪を解き放って大勢の命が失われた、それゆえ、ワシは誓った。真の善人が現れるまで、魔術は決して渡さぬと」と話す。ビリーが困惑していると、魔術師は杖を握って自らの名である「シャザム」と唱えるよう促した。「そうすれば力が移る」と説明されたビリーは、仕方なく指示に従った。その途端、彼の姿は大人のスーパーヒーローに変貌した。魔術師は「正しい心で力を解放するのだ」と言い残し、肉体が崩れ落ちて消滅した。
ビリーはシャザムの姿で地下鉄に戻され、乗客に嘲笑された。彼はフレディーを呼び出し、事情を説明して相談する。フレディーは彼のスーパーパワーを確かめ、指先から出る稲妻ビームとワープ、怪力の3つを知った。近くで女性がひったくり男に襲われていたので、彼はビリーに助けるよう告げる。しかし女性は男を撃退し、鞄を守っていた。ビリーのスーパーパワーを見た女性は怯え、「何も見てないわ」とフレディーに金を渡して逃げ出した。
ビリーは大人の姿なのでビールが購入できると気付き、コンビニへ赴いた。拳銃強盗が押し入り、ビリーは弾丸を弾く肉体になっていると知った。フレディーは興奮し、携帯電話でビリーを撮影した。ビリーは強盗を店の外へ投げ飛ばし、フレディーと一緒にビールを飲んだ。彼はヴァスケス夫妻に見られないよう、密かに家へ戻った。ダーラに気付かれたビリーは慌てて口を塞ぎ、事情を説明しようとする。その際にシャザムという名前を口にすると、元の姿に戻った。彼はダーラに、誰にも口外しないよう頼んだ。
サデウスはシヴァナ社の役員会議に乗り込み、怪力で兄を始末した。彼は七つの大罪を出現させ、役員たちを皆殺しにさせた。彼は怯える父に、「これこそが力だ」と勝ち誇る。大罪たちが「魔術師が勇者を見つけた。奴が真の力に目覚める前に殺さないと倒されるぞ」と言うと、サデウスは「勇者を見つけろ」と命じた。彼は会議室を立ち去る際、強欲に父を殺害させた。ビリーはシャザムの力を気付かれないように使い、ブライヤー兄弟の車を破壊した。彼とフレディーは警備員を騙して学校を抜け出し、シャザムのスーパーパワーをアピールする動画を撮影してネットにアップした。
ビリーはシャザムの姿でフレディーと街に出て、人々にスーパーパワーを披露する。さらに彼はストリップクラブに入ったり、ATMを破壊して紙幣を出したりする。それから2人は不動産屋に入り、隠れ家を契約しようとする。翌朝、2人が学校に行くと、シャザムの存在は「ヒューマン・パワー・ストーム」など様々な名前で呼ばれて有名になっていた。ブライヤー兄弟に難癖を付けられたフレディーは、「親友が叩きのめす」とシャザムの存在に触れる。ブライヤー兄弟から馬鹿にされた彼は、「いつも一緒だ。明日のランチに来る」と約束した。しかしビリーは「悪目立ちはよせ。1人でやれ」と突き放し、協力を拒否した。
次の日、ビリーは学校をサボり、シャザムの姿で街へ繰り出した。人々の写真撮影に応じて金を稼いでいた彼は、メアリーが何かの通知を見ながら道路を渡ろうとする様子を目撃した。彼女が余所見して車にひかれそうになったので、ビリーは慌てて助けた。メアリーが持っていたのは大学の合格通知で、「合格は嬉しいけど、家族を思うと辛い」と吐露する。ビリーは「大事なのは自分のために生きることだ。家族は面倒を見てくれない」と述べ、その場を後にした。
ビリーはシャザムの格好のまま、稲妻ビームを放って人々の注目を集める。彼が調子に乗っているとフレディーが現れ、ブライヤー兄弟に辱めを受けたことを話す。非難されたビリーは全く悪びれず、得意げになってビームを放つ。するとビームはバスに命中し、高架下に落下しそうになる。しかしビリーはクッションを用意するだけで、スーパーパワーを使って助けようとはしなかった。バスが墜落して来たので、彼は慌てて受け止めた。それは成り行きの行為に過ぎなかったが、ビリーは乗客から「命の恩人だ」と感謝される。テレビ局の取材まで受けて、ビリーはすっかり調子に乗った。
フレディーが「何もしていない。セルフィーで金を儲けただけだ」と非難すると、ビリーは「羨ましいか」と言う。するとフレディーは、「羨ましいさ。その力が手に入るなら何でもする。僕だって注目されたいさ。今の君はいじめっ子と同じだ。力を見せびらかして、いい気になっているだけだ」と語って立ち去った。その直後、サデウスがビリーの前に現れ、「その力を渡せ」と要求して襲い掛かる。ビリーは慌てて逃亡するが、サデウスは執拗に追い掛ける。ビリーは元の姿に戻り、何とか逃走した。するとサデウスはビリーが話し掛けていたフレディーを捕まえ、シャザムの居場所を教えるよう詰め寄った…。

監督はデヴィッド・F・サンドバーグ、シャザム創作はビル・パーカー&C・C・ベック、原案はヘンリー・ガイデン&ダーレン・レムケ、脚本はヘンリー・ガイデン、製作はピーター・サフラン、製作総指揮はジェフリー・チャーノフ&クリストファー・ゴドシック&ウォルター・ハマダ&ジェフ・ジョンズ&アダム・シュラグマン&リチャード・ブレナー&デイヴ・ノイスタッター&ダニー・ガルシア&ハイラム・ガルシア&ドウェイン・ジョンソン、共同製作はデヴィッド・ウィッツ、撮影はマキシム・アレクサンドル、美術はジェニファー・スペンス、編集はミシェル・オーラー、衣装はレア・バトラー、視覚効果監修はマイク・ワッセル、音楽はベンジャミン・ウォールフィッシュ、音楽監修はシーズン・ケント。
出演はザッカリー・リーヴァイ、マーク・ストロング、アッシャー・エンジェル、ジャイモン・フンスー、ジャック・ディラン・グレイザー、アダム・ブロディー、フェイス・ハーマン、ミーガン・グッド、グレイス・フルトン、ミシェル・ボース、イアン・チェン、ロス・バトラー、ジョヴァン・アルマンド、D.J.コトローナ、マルタ・ミランズ、クーパー・アンドリュース、イーサン・プギオット、ジョン・グローヴァー、ランドン・ドーク、ウェイン・ワード、ポール・ブラウンスタイン、ナディーン・ローデン、デヴィッド・コールスミス、キャロライン・パーマー他。


DCコミックスに登場するヒーローを主人公に据えた作品で、「DCエクステンディッド・ユニバース」第7作。
監督は『ライト/オフ』『アナベル 死霊人形の誕生』のデヴィッド・F・サンドバーグ。
脚本は『アース・トゥ・エコー』のヘンリー・ガイデン。
シャザムをザッカリー・リーヴァイ、ドクターをマーク・ストロング、ビリーをアッシャー・エンジェル、魔術師をジャイモン・フンスー、フレディーをジャック・ディラン・グレイザー、ダーラをフェイス・ハーマン、メアリーをグレイス・フルトン、ユージーンをイアン・チェン、ペドロをジョヴァン・アルマンドが演じている。

サデウスが父から叱責されたり兄から馬鹿にされたりする様子が描かれると、可哀想だと感じる。
しかし、魔術師の試練で簡単に誘惑に負けたり、喚き散らして車から飛び出そうとしたりする様子が描かれると、同情心は一気に薄れる。
父が死んで兄から「お前のせいだ」と責められた時、即座に「違う」と否定する行動によって、さらに同情心は薄れる。
そこは罪悪感を抱けよ。
サデウスをどういうキャラとして見せたいのか、冒頭シーンでは良く分からない。

なぜ魔術師は、サデウスを後継者の候補として召喚したのか。彼のどこに後継者としての資質を感じたのか、それが全く分からない。
召喚されるまでのシーンでサデウスに関して分かるのは、せいぜい「父から叱られて兄から馬鹿にされている少年」ってことぐらいでしょ。
ただランダムに選んでいるだけなのか。そうとしか思えないぐらい、何の根拠も見当たらない。
なのでサデウスが誘惑に負けても、「最初から資質に期待できないようなガキを選んだだけでしょ」としか思えないのよ。

ビリーが不愉快なクソガキにしか思えない。警官を騙して質屋に閉じ込める行為を「可愛い悪戯」として描いているけど、立派な犯罪だぞ。
「実母を見つけるための行動」という言い訳は用意されているが、「そのためなら何をやっても構わない」とは思わない。
「まだ未熟な少年なので、分別が付いていない」ってことではあるんだろうけど、「だから全面的に許してあげよう」とは全く思えない。
理由は簡単で、ビリーに可愛げが無いからだ。

ビリーが家出を繰り返して幾つもの里親を転々としているのは、里親が酷い連中だったからではない。
問題児に対しても優しい里親ばかりなのに、そこにビリーが馴染もうとせずに反発しているだけだ。
そりゃあ「実母を捜し続ける」ってのは分からんでないが、里親がビリーの連れ戻しを望まないってのは、そこを理由にして同情できるようなガキじゃないってことだ。
ヴァスケス夫妻以外の里親は登場しないし、ビリーとの関係も描かれていないけど、「全面的にビリーが悪い」ってのは映画を見ているだけでも伝わってくる。

大人になったサデウスは記号について調べているが、なぜなのかと思ってしまった。
確かに彼が召喚される直前、占い玉に記号が出るのがチラッと写っているのよ。でも、そんなに「それが召喚のための記号」ってことを分かりやすくアピールしているわけじゃないし、たぶん見落とす人も結構いるんじゃないか。少なくとも、それが魔術師の元へ行くための鍵になっているとは思わないんじゃないか。
っていうか、それは魔術師が召喚する際に使う方法であって、こっちが書いたら移動できるってのも良く分からんけどね。
あと、わざわざドアを用意する必要はないよね。どこにいても、その記号を書けば瞬間的に移動できるはずなんだからさ。

サデウスは魔術師の元へ戻るために、大金を投じて何年も費やし、ずっと調査と研究を続けていたという設定だ。
でも、「何のために?」と言いたくなる。
本人の言葉を借りるなら、魔術師への復讐が目的らしい。でも七つの大罪を解き放っても、魔術師を殺せるわけじゃないからね。
そしてサデウスは、魔術師を殺そうとはしていないんだよね。七つの大罪の封印が解かれて地球や人類が危機に陥っても、それは魔術師への復讐になってないでしょ。

ビリーはブライヤー兄弟の言葉にカッとなって殴り掛かるが、すぐに反撃を受ける。するとブライヤー兄弟がユージーンに気を取られた隙に、ビリーは逃げ出している。
でも、それは行動として違和感があるわ。
一度は殴り掛かったのなら、ブライヤー兄弟が隙を見せた時には、また攻撃を仕掛ける方が自然な流れじゃないかな。
「カッとなって殴り掛かったけど、冷静になって逃亡を選んだ」ってことなのか。なんか腑に落ちないんだよね。
そこは「地下室に乗り込んだビリーが召喚される」という手順を消化するために、強引な方法を取っているように感じるのよね。

魔術師はビリーを召喚した時、後継者の条件として「強い精神力と純粋な心の持ち主」ってことを挙げている。
だが、その条件で今までの候補者を選んでいたとは到底思えないぞ。ちゃんと資質を確かめていたら、56人も呼ばずに済んだだろうし。
ビリーにしても、明らかに失格でしょ。しかも彼の場合はサデウスの時と違って、もはや最終試験も課していないからね。
「ワシは誓った。真の善人が現れるまで、魔術は決して渡さぬと」と話すけど、ビリーが後継者に値するかどうかなんて全く分かってないでしょうに。

ビリーは魔術師から力を引き継ぐと、大人のスーパーヒーローの姿に変身する。
でも、なぜビリーの姿のままじゃないのか。変身するにしても、なぜ魔術師と同じ姿じゃないのか。そこで初めて登場する男の姿に変身するのは、どういう理屈なのか。
設定が何かに付けてデタラメすぎるし、それを受け入れさせるだけの勢いとパワーも足りていないし。
アメコミのヒーローって適当な設定も少なくないけど、「それにしても」と感じるぞ。

自動車事故が起きた時、サデウスの父は激しい衝撃で外へ投げ出されている。倒れて血を流す父に駆け寄ったシドは、サデウスに「お前のせいだ」と怒りをぶつけている。
この流れからすると「父は事故で命を落とした」ってことになりそうなモノだが、生きているのよね。
そこは殺して良くないか。後で「サデウスが父と兄を殺す」という展開があるので、そこへ繋げるために生かしておいたんだろうけどさ、別に兄だけでもいいし。
あとサデウスが復讐心を抱く相手が魔術師と父兄の2人に分かれているのも、上手くないし。

っていうか、サデウスは復讐心に燃えて七つの大罪を解き放つために、ずっと研究と調査を続けていたんだよね。でも、その目的は早々と達成されちゃうよね。
魔術師を殺さないってことは、そっちの復讐心は七つの大罪を解き放つことで満たされたんでしょ。そして父と兄は、役員会議で殺している。
そうなると、それ以降のサデウスの目的は何なのか。
あと、まるで関係の無い役員たちを惨殺する意味って何よ。こいつの行動が意味不明で、デタラメにしか思えないのよ。力を行使する対象も目的もブレブレじゃねえか。

七つの大罪は怪物として表現されているのだが、お世辞にも個性に富んでいて魅力的とは言い難い。形状は異なるが色合いは似ているし、能力や性格の違いも全く伝わって来ない。
さらに言うと、サデウスがヴィランとして自分で行動するようになるので、七つの大罪の必要性が乏しいんだよね。シャザムになったビリーを襲うのもサデウスなら、フレディーを捕まえるのもサデウスなわけで。
サデウスが七つの大罪を使うシーンもあるけど、存在意義は乏しいのよね。
極端に言っちゃうと、後述する終盤の展開で、メアリーたちにも個々でヒーローとして活躍させるためだけに存在しているようなモンだよ。

ビリーは初めてシャザムに変身した時に焦りまくり、フレディーに連絡して相談する。彼はフレディーと一緒にスーパーパワーを調べたり、パワーを使って楽しんだりする。ネットにシャザムの動画をアップして、人気者になろうとしたりする。
しかしフレディーが「シャザムは友達」と言ってブライヤー兄弟に会わせようとすると、ビリーは「悪目立ちはよせ」と協力を拒む。
その際に彼は「正体不明なら仲間は狙われない」と説明するが、ちょっと意味が分からない。
たぶん「シャザムとして注目を集めるのはいいけど、自分たちとの関係が明るみに出るのは嫌」ってことなんだろうけど、そういうビリーの感覚を理解させるための表現が足りていない。

ただ、そこで協力を拒むビリーはフレディーが批判するように自己中心的だけど、フレディーはフレディーで自分のためにシャザムの力を利用しようと考えているわけだから、どっちもどっちなんだよね。
こんな2人がつるんでいるので、ビリーがスーパーパワーを手に入れた後も、ずっと「パワーで有名になろうとする」とか「パワーで金で稼ぐ」とか、浮かれて調子にのった行動が続くのよね。
「もしも14歳の少年がスーパーパワーを手に入れたら」と考えたら、そりゃあ「正しい心で力を解放するのだ」という魔術師の言葉なんて無視して、自分が楽しむためだけに使うだろうとは思うのよ。
でも、こっちは「ヒーロー映画」として見ているわけで。
なので最初は穏やかに見ていても、途中でイライラが生じちゃうのよね。

ビリーが自分の愚かしい行為で、バスの転落事故を起こしそうになるシーンがある。そのまま放置すれば大勢の死者が出るような事態だし、ここでビリーが「人助けのためにスーパーパワーを使い、ヒーローとしての使命感に目覚める」という展開になるのかと思った。
しかし実際には何の役にも立たないクッションを用意するだけで、スーパーパワーで助けようとはしない。
成り行きでバスを受け止めるが、それで感謝されたり取材を受けたりしても、ただ調子に乗るだけで、「力の使い方」を見つめ直すようなことは全く無い。
こいつの「気付き」や「目覚め」があまりにも遅すぎるので、「これはダメだな」と思っちゃうのよね。

ビリーはサデウスに襲われると元の姿になって里親の家に戻るが、まだフレディーは戻っていない。しかしビリーはフレディーを心配することも無く、メアリーたちから「実母が2駅先に住んでいる」と聞いて飛び出していく。
もちろん、ずっと実母を捜していたんだから、居場所を聞いたら即座に会いに行くのは分からんでもない。
ただ、「今じゃないわ」と言いたくなる。
それはビリーに対してじゃなくて、そういうシナリオを用意した製作サイドに対する言葉だ。

ビリーを実母に会わせてキッパリと諦めさせることで、「ビリーがメアリーたちのために行動する」という流れに持って行こうとしているようだ。
ただ、ビリーがメアリーたちに「実の兄弟姉妹」のような絆を感じるほどのドラマなんて、まるで描かれていなかったでしょうに。
しかも、それなら「ビリーがメアリーたちを守るためにサデウスと戦う」という展開になるのかと思いきや、すぐにメアリーたちが助けに駆け付け、ビリーは彼女たちを連れて逃げ出すんだよね。なんだ、そりゃ。
その後にはビリーがシャザムとしてサデウスと戦う展開になるけど、だったら「メアリーたちが助けに来て、ビリーが一緒に逃げて」という手順は要らないだろ。

あと、ビリーは「家族を救えなければスーパーヒーローじゃない」と言うけど、メアリーたちを家族だと思えるほど、そこの関係描写は充実していないんだよね。家族としての絆が深まっていくドラマが足りないので、そこへの流れが上手く作り出せていない。
で、ともかくビリーはシャザムとなってサデウスに立ち向かうのかと思いきや、唐突に「メアリーたちもスーパーヒーローに変身して一緒に戦う」という展開が訪れるんだよね。
でも、まだビリーがシャザムとして活躍するシーンを充分にアピールできていない中で、新ヒーローを何人も追加するって、どういうセンスだよ。
そういうのって、1作目がヒットしたら次回以降にやるようなことじゃないのか。

あとさ、そんなに簡単に、みんながスーパーヒーローに変身できちゃうのかよ。メアリーたちに関しては、資質を確かめるためのテストなんて皆無だったじゃねえか。
そうやって簡単に変身させちゃうと、ますます魔術師の適当っぷりが気になっちゃうよなあ。
こいつが事前の調査を充分に行わないままサデウスを呼び寄せておいて非情に切り捨てたり、一方でビリーには簡単に力を与えたりという判断基準のブレブレな行動を取ったりしているから、問題が起きているわけで。
全ての元凶って、実は魔術師なのよね。

(観賞日:2021年3月19日)

 

*ポンコツ映画愛護協会