『シャークボーイ&マグマガール 3-D』:2005、アメリカ

シャークボーイは海洋生物学者である父親の助手として、サメの世話をしていた。彼はエサとして寿司を作り、サメに名前も付けていた。だが、ある日、巨大な謎の嵐が研究所を吹き飛ばしてしまった。救命ボートに乗ったシャークボーイは、父親とは別方向に流された。彼を見つけたサメたちが、安全な洞窟へ連れ帰った。何百匹のサメたちは、シャークボーイを子供として育てた。やがてシャークボーイにはエラが出来て爪がカギ型に変わり、歯は鋭く尖ってヒレも生えて来た。
それから数年後の夏、マックスは迷子になったシャークボースと出会った。マックスは両親が口喧嘩をしている最中に彼を家へ連れ込み、大きな水槽に入れた。シャークボーイはマックスに、父親を捜して宇宙を旅してきたこと、よだれ惑星に最近までいたことを語った。ある夜、まばゆい光と共にマグマガールが現れた。髪はパープルの炎で、体は燃えたぎる溶岩の少女だ。彼女はシャークボーイに、巨大惑星が危機に陥っていることを知らせた。2人から一緒に来るよう誘われたマックスは、学校があるので断った。
そんな話を、マックスは学校で「夏休みの体験」として発表した。しかし実際の出来事として信じたのは、エレクトリシダッド先生の娘であるマリッサだけだった。他のクラスメイトは全員が「嘘だ」と言い、いじめっ子のライナスはバカにした。マックスは「本当だ」と主張するが、先生に諌められた。先生はライナスに、マックスを苛めるのはやめるよう注意した。そしてマックスには、もう4年生なのだから夢物語に浸らず、現実の友達を作るよう説いた。
放課後、マックスはライナスの絵をバカにして、自分の見た夢を記録した夢日記を奪われそうになる。急いで逃げ出したマックスだが、ライナスに夢日記を奪われてしまった。その日の深夜4時、マックスは目を覚ました。台所へ行った彼は、シャークボーイとマグマガールが来ていた痕跡を発見した。しかし両親は息子の話を、まるで信じなかった。ただし作家志望で定職に就いていないパパは「夢見ることは大切」という考えで、それに対してママは「そろそろ大人にならないといけない」という主張を持っていた。
マックスは「つまらない学校には行きたくない。ずっと嵐が吹いていれば、よだれ惑星の夢を見続けられるのになあ」と思いながら、眠りに就いた。しかし残念ながら、それは正夢にならなかった。翌朝、登校したマックスは、夢日記の返却をライナスに要求した。先生に注意されたライナスは、仕方なく日記を渡した。しかし落書きだらけになっていたので、マックスは激怒して夢日記をライナスに投げ付けた。先生が叱責した直後、暴風と共に窓が割れてシャークボーイとマグマガールが教室へと飛び込んだ。
マグマガールはマックスを見つけると、「貴方が必要なの。一緒に、よだれ惑星まで来て」と誘う。「私の故郷よ。太陽系の、すぐ近くにある」と彼女は場所を説明するが、マックスは怖気付いて「一緒には行けない。君たちは、ただの夢だ」と口にする。シャークボーイは「俺たちの世界を邪悪なダークネスから守るためだ。来てくれ」と言い、先生もマックスに「行ってあげなさい」と促した。マックスはシャークボーイ&マグマガールと共に、サメ型ロケットでよだれ惑星へと向かった。
マックスたちがよだれ惑星に到着すると、とても暗かった。マグマガールは惑星の死が迫っていることを語り、シャークボーイは「あと45分でダークネスが星を滅ぼす」と告げる。彼はマックスに「ずっと向こうにある夢だまりで君の夢がおかしくなってる。あそこへ行って元に戻すんだ」と語り、マグマガールは夢だまりまでのルートを説明した。2人はマックスに、ほとんどの子供たちがエレキ魔王によってエンドレス山に捕らわれていることを教えた。
子供の楽園に足を踏み入れたマックスは、ジェットコースターに乗っている子供たちが降りられなくなっていることを知った。「まず彼らを助けない?」とマックスが言うと、シャークボーイ&マグマガールはコースターを停止させた。3人はコースターを使い、エレキ魔王の隠れ家に辿り着いた。戦闘態勢を取ったマグマガールは、エレキ魔王に「秘密兵器を連れて来たわ」と言う。彼女はマックスに「貴方のパワーを見せて。見た夢を思い出して」と告げる。するとマックスは、「起きたら半分は忘れてるよ」と漏らした。
エレキ魔王はマックスたちを捕まえ、「夢の墓場へ連れて行く」と告げて投げ落とした。3人が着地したのは、時空の回廊にあるレールの上だった。マグマガールはマックスに、「夢日記を声に出して読めば、全て元通りに出来るはず」と告げる。しかしマックスが夢日記を地球へ置いて来たと知り、シャークボーイは「君にはガッカリだ」と述べた。その直後、3人はレールから夢の墓場へと落下した。
悪の化身“マイナス”はエレキ魔王に、「夢は全て叩き潰し、子供は全て捕まえろと言ったはずだ」と告げる。彼はマックスについて、「そいつは宿敵のデイドリーマーだ。まだ本人は気付いていないが、起きたまま夢を見ることが出来る。パワーに気付く前に捕まえろ。さもないと我が王国は破滅だ」と語った。マックスは夢の墓場で、幼い頃に夢で見て実際に作ろうとした物知りロボット“トッポロ”の残骸を発見した。マックスが話し掛けると、トッポロは返事をした。
マックスが「どうすれば星を救えるの?」と尋ねると、トッポロは「その答えは君の夢の中にある」と答えた。さらに彼は、「ここでは悪夢しか見られない。お菓子の大地なら、いい夢を見ることが出来るだろう」と述べた。3人はトッポロの両眼と口の部分に乗せてもらい、夢の墓場から飛び去った。マックスたちは思考の列車に乗り移るが、コントロール不能になったので飛び降りた。3人はクッキーの小舟で川を下り、お菓子の大地に辿り着いた。
マックスのパパとママにそっくりのクッキー・ジャイアントたちが現れ、クッキーを持ち上げた。ジャイアントがクッキーを食べようとしたので、マックスたちは慌てて飛び降りた。マックスはシャークボーイ&マグマガールに促され、眠って夢を見ようとする。しかし彼が嫌な夢を見始めたので、マグマガールが起こした。エレキ魔王とコンセント犬の群れが襲って来たので、マグマガールはマックスに「夢で脱出させて」と頼む。マックスはバナナパフェのカヌーを出現させ、3人は意識の川を下って逃亡した。
マックスはシャークボーイ&マグマガールに、さっきの夢で見た物を描いた。するとシャークボーイは「クリスタル・ハートだ。氷の城にある宝物だ。時間さえ凍り付かせることが出来る。氷の城にはアイス・プリンセスがいるらしい」と話す。マックスたちは時間を止めて夢だまりへ行こうと考え、氷の城へ向かった。しかし城の前にエレキ魔王が立ちはだかり、3人を捕まえて夢だまりへ連行した。
夢だまりでマックスたちを待ち受けていたのは、ライナスが悪の化身になったマイナスだった。マイナスは夢日記を持っており、マックスに「元々はお前の夢だが、これを読んでクールに変えた。私がこの星の主になる」と言い放った。マイナスは夢を見るために眠りに就き、マックスたちは檻に監禁された。シャークボーイが檻を破り、マックスは夢日記を盗み出した。しかし自分のことが知りたいマグマガールが夢日記を手に取ると、一瞬にして消失してしまった。
シャークボーイに責められたマグマガールは、マックスに向かって「どうして、こんな体にしたの?私も人の役に立ちたいのに」と嘆いた。マックスは「ここまでは全て僕が夢に見た通りだ」と気付き、「マイナスが邪魔したのは、僕がクリスタル・ハートを手に入れるのを恐れたからだ」と口にする。マックスたちは氷の城に侵入してクリスタル・ハートを盗み出そうとするが、氷の兵隊に見つかった。
3人の前に現れたアイス・プリンセスは、マリッサにそっくりだった。プリンセスはマックスに、クリスタル・ハートが無ければ国が滅亡すること、自分でなければ本当の力は発揮できないことを語る。マックスは一緒に来てほしいと頼むが、側近はプリンセスが城を出ることを認めなかった。マックスたちが事情を説明して必死に訴えると、プリンセスは複数のクリスタル・ハートを並べ、本物を当てれば貸し出すと告げた。既に夢で見ていたマックスは、彼女の胸に飾られているのが本物だと言い当てた…。

監督はロバート・ロドリゲス、原案はレーサー・マックス・ロドリゲス、脚本はロバート・ロドリゲス&マルセル・ロドリゲス、製作はエリザベス・アヴェラン、製作総指揮はボブ・ワインスタイン&ハーヴェイ・ワインスタイン、撮影はロバート・ロドリゲス、編集はロバート・ロドリゲス、美術はジャネット・スコット&スティーヴ・ジョイナー、衣装はニーナ・プロクター、視覚効果監修はロバート・ロドリゲス、音楽はロバート・ロドリゲス&ジョン・デブニー&グレーム・レヴェル。
出演はテイラー・ロートナー、テイラー・ドゥーリー、ケイデン・ボイド、ジョージ・ロペス、デヴィッド・アークエット、クリスティン・デイヴィス、ジェイコブ・ダヴィッチ、サーシャ・ピーターズ、リコ・トーレス、マーク・ムッソ、シェーン・グレアム、タイガー・ダーロウ、ロケット・ロドリゲス、レーサー・ロドリゲス、レベル・ロドリゲス他。


「スパイキッズ」シリーズのロバート・ロドリゲスが監督&脚本&撮影&編集&音楽&視覚効果監修を務めた3D映画。
シャークボーイをテイラー・ロートナー、マグマガールをテイラー・ドゥーリー、マックスをケイデン・ボイド、エレクトリシダッド先生とエレキ魔王&トッポロ&プリンセスの側近の声をジョージ・ロペス、パパをデヴィッド・アークエット、ママをクリスティン・デイヴィス、ライナスをジェイコブ・ダヴィッチ、マリッサをサーシャ・ピーターズが担当している。
ちなみに「マグマガール」というのは日本語吹き替え版だけの役名で、本当は「Lavagirl(溶岩少女)」という名前だ。
「ラヴァガール」じゃ意味が分かりにくいし、そこの変更は賢明な判断だろう。トッポロも英語版だと「Tobor」というキャラクター名だ。

映画の冒頭、「a Robert Rodriguez Family Movie」と表示される。
当時7歳だったロバート・ロドリゲスの次男、レーサー・マックスのアイデアが原案で、脚本はロバートと弟のマルセル。
プロデューサーが当時のロバートの奥さん。
ロバートの3人の息子(ロケット、レーサー、レベル)が、揃って出演している。
ジャンルとしてファミリー映画に分類される作品だが、違う意味でもファミリー映画になっているわけだ。

7歳の息子が考えたアイデアを、そのまま映画にするってのは、考えようによっては単なる親バカだ。
自分のアイデアが映画化されたら、そりゃあ幼い息子は大喜びするだろうしね。
もちろん、「ホントに優れたアイデアだと感じたから映画化した」という可能性もゼロではないけど、完成した映画を見る限り、ただの親バカという疑いが濃厚だ。
もしもロバート・ロドリゲスが、これを本気で優れたアイデアだと感じていたのだとしたら、彼のセンスはヤバいことになっている。

映画が始まると、マックス(主人公の名前からして息子の名前をそのまま取っている)がシャークボーイについて語り出す。
そこではマックスが寿司を作ってサメに食べさせていることが説明されるが、それは全く必要性の無いヘンテコ設定だ。サメに寿司を食べさせているという設定には、特にこれといった意味は無い。
その手のヘンテコ設定に満ち溢れた世界観ってことならともかく、そうでもないので、無駄に浮いた設定になっている。
もっと根本的なことを言ってしまうと、シャークボーイの生い立ちに関する詳細な説明は、話の厚みや面白さに繋がっていないので、そこをバッサリと削り落としてしまった方がいいんじゃないかと。細かいことを言っちゃうと、マックスが迷子になったシャークボーイと初めて会ったのなら、彼の生い立ちを知っているのは辻褄が合わないんだし。
もちろん夢だから辻褄が合わないのは当然っちゃあ当然だが、本人は「実際の体験」として語っているんだから、そこに辻褄が合わない部分があるのはマズいんじゃないの。

マックスがシャークボーイと出会ったところで、「シャークボーイが住んでいたのは地球じゃなかったのかよ」「っていうか父親を捜索するのに、なぜ別の惑星へ行くのか」という引っ掛かりが生じる。
で、シャークボーイの背景が詳しく紹介される一方、マグマガールは外見しか設定が語られないので、そこはバランスが悪い。シャークボーイとマグマガールの関係性も全く分からないし、なぜ巨大惑星の危機を知った2人が出動するのかも分からない。いつの間にシャークボーイは、正義の味方チックなキャラになったのか。
ようするに、幼い息子が考えたデタラメで粗いアイデアを映画化する際に、ロバート・ロドリゲスはキレイに整えてマトモな形にするための作業をサボって、手抜き状態で作っているとしか思えないのだ。だから雑でグダグダな中身になってしまっているんじゃないのかと。
シャークボーイの生い立ちを細かく設定するよりも、「マックスは惑星の平和のために戦っているシャークボーイ&マグマガールと遭遇した」ということにでもしてしまった方が、ツッコミ所は一気に減少すると思うんだけどね。

マックスが単なる可哀想なイジメられっ子ではなく、こいつはこいつで生意気なので、あまり応援したくなるキャラじゃないってのは作品にとってマイナスになっている。
「現実社会でイジメを受けて孤独だから夢の世界に逃避している」というよりも、むしろ「夢物語ばかり喋っているからバカにされて友達が出来ない」という風に見える。
だから、「本人が夢の世界で暮らしたいのなら、勝手にすればいいんじゃねえの」と言いたくなってしまう。

マックスは夏休みの体験としてシャークボーイ&マグマガールのことを発表した後、みんなから嘘つき呼ばわりされると「本当のことだ」と強く主張する。ところがマックスは、それが夢日記に記した内容であることを自ら明かしている。
ってことは、やっぱりホントじゃなく夢の出来事なんじゃねえか。自分でも現実じゃないことを認識しているんじゃねえか。
だったら「本当のことだ」と主張しちゃダメでしょ。それだと単なる嘘つきだから、クラスメイトの言ってることは正しいじゃねえか。
そうじゃなくて、「本人は実際にあった出来事だと信じ込んでいる」という設定にでもしておかないと、「本当のことだ」と主張する態度と辻褄が合わなくなるでしょ。

マックスは「ずっと嵐なら好きな夢を見続けていられるのに」と願うぐらい夢の世界にハマっているのに、シャークボーイ&マグマガールが教室に現れて「一緒に来て」と誘うと腰が引けて「一緒には行けない。君たちは夢だ。目を開けたら消えている」と言い出し、両目を閉じる。
それはキャラの動かし方として、まるで乗れないわ。
そこは素直に「憧れていたよだれ惑星に行けるので喜ぶ」という態度にして、「いざ惑星に来たら危険なことも多いので怖気付く」という流れにでもしたらいいんじゃないのか。
っていうか、怖気付いていたはずなのに、エレクトリシダッド先生に「行ってあげなさい」と促されると、あっさりと行くことを決めた上に「こんなトコを早く脱出して、よだれ惑星に行きたいと思っていたんだ」とワクワクしている気持ちを表現するのは、どないやねんと。マックスのキャラがブレブレになってるじゃねえか。

よだれ惑星はダークネスのせいで暗くなっているが、そもそも以前の惑星がどうだったのかが描かれていないから、どう変化したのかが分からない。どういう場所なのかも、そこで初めて分かる。「子供の楽園」でマックスは「ここは子供たちがずっと遊べる場所のはず」と言うが、そういうことも、そのシーンまでは明らかになっていない。
よだれ惑星はマックスが夢で作り出した世界なのに、彼が知らない風景が広がり、彼が知らない邪悪なダークネスに襲われている。自分の夢なのに、マックスはシャークガールたちのように高く跳躍することも出来ない。
「なぜ本人の夢なのに知らないことが起きており、自分の思い通りに動かないのか」ということに関して、マックスはなかなか疑問を抱かない。
氷の城の手前にエレキ魔王が出現した時、「こんなのおかしい、誰かの夢が入り込んでる」と言うけど、気付くタイミングが遅すぎるだろ。それまでに違和感を覚えるタイミングは幾らでもあったはずだぞ。

よだれ惑星に到着してからは、「遊園地のアトラクション的なモノを飛び出す映像で見せたい」ということばかりが重視され、話の中身がスッカラカンになっているんだけど、それだけでも厳しいのに、スッカラカンのくせに変にゴチャゴチャしているという問題まで含んでいる。
せめてシンプルで分かりやすい進行にすべきだろうに、マトモに筋の通らないグチャグチャな中身になっちゃってる。
シャークボーイの説明で「夢だまりで夢がおかしくなっているので元に戻す」という目的が設定されたはずなのに、なぜか彼らはエレキ魔王の元へ行く。そもそも、「邪悪なダークネスによって危機が迫っている」という説明だったのに、いきなり「エレキ魔王が子供たちを閉じ込めている」という設定が出て来て、話が散らばってしまう。
で、なぜかエレキ魔王を倒そうとする展開になり、彼はマックスたちを捕まえて「夢の墓場へ連れて行く」と言うのだが、落とされたのは夢だまりへのルートである時空の回廊。メチャクチャだわ。

時空の回廊をレールで移動していたマックスは夢の墓場に落ちるので、エレキ魔王の言葉と展開が矛盾しているわけではない。
しかし、話の流れとしては、「夢だまりへのルートである時空の回廊を途中で挟む意味は何なのか」と言いたくなる。
しかも、夢だまりへ行くルートとしてマグマガールが「時空の回廊を通って云々」と説明していたのに、そこを通って行こうとしたら夢の墓場に落ちちゃうのかよ。
時空の回廊を通っても、夢だまりには行けないのかよ。

マックスたちは自力で夢の墓場から脱出することが出来ず、トッポロに手伝ってもらう。
だけどシャークボーイとマグマガールは子供の楽園でジェットコースターまで跳躍していたんだから、その気になればマックスを連れてレールまでジャンプできたんじゃないのか。これは氷の城へ向かう橋をマグマガールが渡ろうとするときにも感じた疑問で、「氷が溶けるから渡れない」とマグマガールは言い出すのだが、そこもジャンプして飛び越えられるでしょうに。
結果としては、トッポロに乗って夢の墓場を脱出したマックスたちが思考の列車に乗っているので、最初にマグマガールが説明した順番に従って移動していることになる。
だけど、最初に彼女が「夢だまりへ行くには時空の回廊を通り、思考の列車に乗り、意識の川を下り、混迷の海を滑る」と説明しているのなら、「時空の回廊に入ったら、普通に移動すれば必ず思考の列車に乗れる」でなければダメなんじゃないかと。「たまたまトッポロがいたから思考の列車に乗れた」ではマズいんじゃないかと。

列車のコントロールが不能になって飛び降りなきゃいけなくなるってのも、なぜ定められたルートに従って行動しているのに、そんなことになっちゃうのかと思ってしまう。
「予期せぬアクシデント」ってことではあるんだけど、列車に乗った直後にはコントロール不能の状態に陥るので、「最初からそういうモノ」に感じられてしまう。
それと、トッポロが「イメージした場所へ連れて行ってくれる」と説明していたのに、「マックスが夢だまりをイメージしようとしたが、失敗したからコントロール不能になった」という手順が無いし。
っていうか、イメージした場所へ行けるなら、夢だまりをイメージすればいいんじゃないのか。ディティールが色々と粗すぎるぞ。

列車がコントロール不能になったから飛び降りたのに、クッキーで川を下ったマックスたちはお菓子の大地に辿り着いている。
だったら、「コントロール不能になった」というトラブルを用意した意味が無いでしょうに。クッキー・ジャイアントの登場も、あっさりと退場してしまうから何のピンチにも繋がらないし。
それと、最初にマグマガールが説明したルートの中に、お菓子の大地が含まれていなかったのは、どういうことなんだよ。
他は「ピンチやトラブルがあってもルート通りの場所に辿り着く」という流れになっているのに、なぜお菓子の大地だけは別なんだよ。

シャークボーイが力尽きて倒れ、彼を助けるためにマグマガールが命を落とした時、なぜか現れたトッポロにマックスが「叶ってほしい夢は全て自分中心だった。もう自分中心の夢を見るのは卒業する」と言う。
それをマックスの精神的成長として見せたいんだろうけど、全く共感を誘わない。
そもそも夢なんだから、自分中心でも一向に構わないのよ。
マックスの問題は自分中心の夢ばかり見ていたことではなく、現実を見ようとしていないことにあるんじゃないのか。そこは「夢で見ていたことが現実になったのに、まだ現実逃避している」ということが問題なんじゃないのか。
なんかポイントがズレてないか。

マックスが「どうすればいい?」と問い掛けると、トッポロは「自分中心ではない夢、もっと良い夢を見ること」と助言する。
だが、その直後に死を恐れず、マグマガールを救うために火山へ行くのはシャークボーイ。
そりゃあ「僕の方が速い」という彼の主張は正しいけど、そこは流れからすると、マックスがマグマガールを救わなきゃダメでしょ。
そんでマグマガールが復活してパワーアップするとマックスが「君は光だ」と言い、なぜか急に彼がスーパーパワーを手に入れるんだから、もうメチャクチャだわ。

どうやらマックスはデイドリーマーとして目覚めたらしいんだけど、高揚感を全く喚起されない。
そうやってパワーを手に入れたマックスがマイナスと戦い始めても、ちっとも燃えない。
それまで全く役立たずで、ろくに成長物語が描かれていないのに唐突に強くなった奴のことなんて、応援する気にならんよ。
そもそも「眠らずに夢を見ることが出来る。夢の力でスーパーパワーを使うことが出来る」というデイドリーマーの設定自体、応援したいという気持ちを喚起してくれないし。

(観賞日:2014年9月18日)


第28回スティンカーズ最悪映画賞(2005年)

ノミネート:【最悪の助演男優】部門[ジョージ・ロペス]
ノミネート:【最悪の歌曲・歌唱】部門「Dream, Dream, Dream, Dream (Dream, Dream)」(テイラー・ロートナー)
ノミネート:【チンケな“特別の”特殊効果】部門
ノミネート:【ザ・スペンサー・ブレスリン・アワード(子役の最悪な芝居)】部門[ジェイコブ・ダヴィッチ]
ノミネート:【最悪な子供の集団】部門
ノミネート:【不愉快極まりないファミリー映画】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会