『シャーク・ナイト』:2011、アメリカ

キースとジェスのカップルは、海辺へ遊びに来ていた。ジェスが車へ食べ物を取りに行っている間に、ジェスはサメに襲われて死んだ。テュレーン大学に通うニックはメディカル・スクールを受験するため、寮の部屋で真面目に勉強していた。ルームメイトのゴードンは留年して7年も大学にいるが、まるで気にせずネット対戦のゲームに興じていた。ゴードンが勝手にログインしたので、ニックは慌ててゲームに参加した。
そこへフットボール部のスターであるマリクが押し掛け、ニックに「落とし前を付けに来た。お前は校内で一番の家庭教師だろ。俺はC以上の成績を取らないと奨学金を打ち切られてボルチモアに帰らなきゃいけない。知ってたはずだ」と凄む。ニックが怯えると、マリクは笑顔になってB+だったことを打ち明けた。マリクがクロスビー湖での打ち上げに誘うと、ニックは勉強を理由に断ろうとする。しかしマリクがサラ・パルスキーの別荘に泊まると言うので、ニックは行くことにした。
マリクはニックとゴードンに、この打ち上げで恋人のマヤにプロポーズするつもりだと話す。他のメンバーはサラ、タトゥーを入れているベス、ヌードモデルをしているブレイクだ。サラは愛犬のシャーマンを連れて、仲間と合流した。車で出発した一行は、湖の近くにある雑貨店へ立ち寄った。トイレに入ったベスは、純情そうなニックを弄んで楽しむ考えをサラに話す。サラからブレイクと付き合っているのではないかと言われたベスは、「彼はアソコにも日焼けスプレーをしてるの」と語った。ニックはサラに片想いしているが、ゴードンから積極的に動くよう促されても尻込みするだけだった。
マリクとマヤが店の外にいると、レッドという男が車でやって来た。レッドがマヤを侮辱したため、マリクは腹を立てて詰め寄る。するとレッドの相棒のデニスが挑発し、喧嘩を吹っ掛けるような態度を取る。そこへリサが来ると、デニスは「ちょっと誤解があっただけさ」と誤魔化した。デニスはリサに「まだ大学生か。専攻は心理学だろ」と軽く笑い、レッドと共に車で去った。サラたちはボートに乗り、湖に浮かぶ島へ向かった。途中でリサは顔馴染みのセイデン保安官と遭遇し、逃走するフリをした。セイデンは「3年ぶりに戻って来てくれて良かった」と言い、その場を去った。
リサたちは別荘に入り、それぞれに遊ぶ準備を始める。ニックはマリクに「サラには付き合ってる男はいるの?」と尋ね、「知り合って3年になるけど、デートにもパーティーにも行かない。シャーマンと一緒にいるだけだ」と聞かされる。ゴードンはプールでベスとゲームをしながら口説くが、軽くあしらわれた。ニックはマヤとブレイクを乗せてボートを運転し、マリクのウェイクボードを引っ張る。マリクが見事な技を連発していると、一匹のサメが近付いた。ボードを突かれたマリクはサメを発見するが、ボートの3人は全く気付かない。マリクは「もっとスピードを上げろ」と叫ぶが、サメの攻撃を受けてボードから転落した。
マリクは泳いで岸に戻るが、サメに襲われて右腕を失っていた。彼は意識を失って倒れ、ニックたちは慌てて駆け寄った。別荘は携帯が通じない場所にあるため、医者を呼ぶことは出来ない。サラは救急箱を用意し、ニックはブレイクたちに応急処置の指示を出す。彼は右腕を回収するため、海に飛び込んだ。食い千切られた右腕を発見したニックはサメに追われ、慌てて岸に上がった。ニックは専門医にマリクを処置してもらうため、ボートで病院へ運ぶことにした。
サラはボートを運転し、マリクに付き添うニックとマヤを乗せて島を出発した。しかしマリクの血が海に垂れ、その匂いを嗅ぎ付けたサメがボートに体当たりを食らわせた。バランスを失ったマヤが海に転落し、サメに襲われて死んだ。ボートは制御不能になり、サラたちは海に飛び込んで脱出する。ボートは桟橋に乗り上げ、爆発を起こして大破した。リサとニックはマリクを連れて、別荘に戻った。ベスが「私は帰る」と言い出したので、サラは冷静になるよう諭す。ベスは「アンタのせいよ。アンタが連れて来た」と喚き、ニックが「2人とも落ち着くんだ」となだめた。
サラたちが救助を要請するための照明弾を上げると、夜になってデニスとレッドが船で現れた。ニックは事情を説明し、マリクが動かせる状態ではないことを伝える。デニスが「マリーナへ向かい、通話圏内に入ったら救急ヘリコプターを呼ぼう」と提案すると、一刻も早く島を出たいベスが同行を申し出た。ゴードンはデニスとレッドを信用できず、ベスに付いて行くことを決めた。レッドはサメを撃退する装置や銃を自慢し、ゴードンたちを乗せて島を出た。
ニックは意識を取り戻したマリクにマヤのことを問われ、死んだことを知らせた。サラはニックから3年も別荘へ来なかった理由を問われ、デニスとの関係について説明する。かつて夏になると、デニスのダイビング教室に大勢の若い女子が参加していた。デニスは皆が憧れる存在で、サラは2年間付き合った。進学を決めた彼女はデニスとの別れを決め、最後に好きなダイビングスポットへ連れて行ってもらった。潜って数分で呼吸が出来なくなったサラはゲージの故障だと思い、デニスにサインを出した。しかしデニスは無視して離れ、サラは必死で水面に浮上し、ボートによじ登った。ボートで帰ろうとしたサラは、誤ってスクリューでデニスの顔を切ってしまった。彼女はデニスを病院へ運び、それから島へは来ていなかった。
マリクはマヤを殺された怒りを燃やし、サメへの復讐を誓う。ニックは止めようとするが、マリクき聞き入れなかった。デニスが急に船を停止させたので、ゴードンは「故障か?」と尋ねる。デニスは「故障はしてない」と冷たく告げ、座るよう要求した。レッドは不敵な笑みを浮かべ、ゴードンとベスと「5分で準備できる。ショータイムだ」と言い放った。マリクは銛を持って浅瀬に入り、サメを待ち受けた。そこへシュモクザメが近付いて来たので、マリクは銛を振り上げて格闘した。
レッドはバソコンを操作し、ベスは不安を覚える。デニスはゴードンに手伝うよう指示し、水に入るよう要求して拳銃を向けた。デニスとレッドは、自分たちがサメを放流したことを匂わせた。デニスはゴードンに発砲し、船から転落させた。ゴードンは必死で泳ぐが、サメに襲われて死亡した。マリクはサメを倒すが、ニックは「僕が見たのは違う種類のサメだった」と言う。シュモクザメを調べた彼は、体内に仕込まれているビデオカメラを発見した。
マリクの容態は悪化し、ブレイクは水上バイクで運ぶと言い出した。ニックは「動かすのは無理だ」と反対するが、ブレイクは「ここで彼が死ぬのを待つのか」と反発した。ベスはデニスとレッドから、下着姿になるよう命じられた。ベスは隙を見て隠し持っていたナイフを取り出し、レッドに襲い掛かる。しかし簡単にナイフを奪い取られ、デニスとレッドはサメの種類について嬉々として話した。ブレイクはマリクを水上バイクに乗せ、島を出発した。デニスとレッドは餌を海に入れてダルマザメをおびき寄せ、ベスを突き落として殺害させた。彼らはサメがベスを襲う様子を撮影し、満足そうに笑った。
サラとニックの元にはセイビンが現れ、「焚き火を見て来た」と告げた。事情を聞かされた彼は電話を掛け、湖の監視を強化して重傷者の受け入れ態勢を整えるよう指示した。セイビンを持参したスープを飲んだニックは、意識を失って倒れた。セイビンはサラに「ソファーに寝かせよう」と言い、2人でニックを運ぶ。その間にシャーマンがキッチンへ現れ、床にこぼれたスープを舐めた。マリクはサメの接近に気付くと、わざと海に落ちてブレイクを逃がした。キッチンに戻ったベスは、シャーマンがスープを舐めて眠り込んでいる姿を発見した。レッドからの無線を聞いた彼女は、彼らがサメを放ったこと、セイビンも仲間であることを知った…。

監督はデヴィッド・R・エリス、脚本はウィル・ヘイズ&ジェシー・スチューデンバーグ、製作はマイク・フライス&リネット・ハウエル&クリス・ブリッグス、共同製作はケリー・マコーミック&タウニー・エリス・レーマン、製作総指揮はライアン・カヴァナー&タッカー・トゥーリー&ダグラス・カーティス&ニック・マイヤー&マーク・シャバーグ&マシュー・ローランド&クリント・キスカー、製作協力はクリスタル・パウエル、撮影はゲイリー・カポ、美術はジェームズ・ヒンクル、編集はデニス・ヴァークラー、衣装はマガリー・ギダッシ、視覚効果監修はグレゴール・ラクナー、アニメーション効果監修はウォルト・コンティー、音楽はグレーム・レヴェル、音楽監修はジョー・ラッジ。
出演はサラ・パクストン、ダスティン・ミリガン、クリス・カーマック、キャサリン・マクフィー、ジョエル・デヴィッド・ムーア、ドナル・ローグ、ジョシュア・レナード、シンカ・ウォールズ、クリス・ジルカ、アリッサ・ディアス、ジミー・リーJr.、デイモン・リパリ、クリスティン・クイン、ケリー・スライ、タイラー・ブライアン他。


『スネーク・フライト』『ファイナル・デッドサーキット 3D』のデヴィッド・R・エリスが監督を務めた作品。
脚本担当者の内、ウィル・ヘイズは初の映画作品で、ジェシー・スチューデンバーグは脚本家としてのデビュー作。
サラをサラ・パクストン、ニックをダスティン・ミリガン、デニスをクリス・カーマック、ベスをキャサリン・マクフィー、ゴードンをジョエル・デヴィッド・ムーア、セイビンをドナル・ローグ、レッドをジョシュア・レナード、マリクをシンカ・ウォールズ、ブレイクをクリス・ジルカ、マヤをアリッサ・ディアス、カールをジミー・リーJr.が演じている。

日本で公開された時、「その数、46種類」という惹句が使われていた。
しかし劇中に登場する鮫の種類は、どう見積もっても両手で足りる程度だ。
劇中で「46種類の鮫が飼育されている」という解説が入るわけではないので、日本での配給を担当したポニーキャニオンの人間が「数の多さで観客を呼び込もう」と考え、勝手に「46種類」という数字を用意したのかもしれない。
しかし、それは「46種類の鮫が人々に襲い掛かる」という絵を期待した観客を落胆させる結果に繋がるわけで、内容と大きく異なる言葉をキャッチコピーに使うのが得策とは思えないぞ。

ただし、実際に映画を見た感想としては、「46種類」という観客を落胆させる誇大広告を使ったことへの批判的な意見よりも、「ホントに46種類ぐらいの鮫を登場させれば良かったのに」と言いたくなった。
「5種類か6種類程度の鮫が人々を襲う」って、すんげえ中途半端でしょ。
それなら逆に、種類を1つだけに絞った方が潔いわ。
どうせ「種類によって攻撃方法が大きく異なる」とか、そういう見た目以外の描き分けなんて全く無いんだし。

そりゃあ、鮫の中で人を襲う可能性があるとされているのは、実際には数種類しかいないのよ。だから事実考証を正確に実践するなら、「5種類か6種類程度の鮫が人々を襲う」ってのは間違っちゃいない。
ただ、それ以外の部分で「リアリティーってつおい?」ってな感じの荒唐無稽な内容を撒き散らしているわけで、だったら「数十種類の鮫が人々を襲う」というバカバカしい話でも良かったんじゃないかと。
「その鮫が人を襲うなんて有り得ない」とか、そんなマジなツッコミを入れたがる人は、そもそも本作品が狙っている観客層から外れているでしょ。
そういう批判が嫌なら、エンドロールで「実際に人を襲う鮫は数種類に限られており、劇中の描写は全てフィクションです」とかキャプションを入れればいいのよ。

まず最初に引っ掛かるのは、「なぜサラは帰郷したのか」ってことだ。
彼女は地元にデニスが残っていることを知っているはずだ。だから、戻れば再会する可能性があるし、再会すると気まずい気持ちになることも分かっていたはずだ。それなのに、ノホホンと帰郷する感覚がサッパリ理解できない。
まるでデニスのことなんて完全に忘れていたかのようだが、それは無理があるし。
例えば「サラは帰郷に乗り気ではなかったが、仲間たちから半ば強引に誘われ、仕方なく同行する」とか、何か腑に落ちる理由を用意しておけば良かったのに、そのための作業なんて、そんなに難しくないはずでしょ。

「遊びに来た若い男女が襲われる」ってのは、スプラッター映画やモンスター・パニック映画では定番だ。
そして、若者たちが襲われるパターンを使う映画では、ボンクラな行動を取った奴や、いけ好かない奴が犠牲になるってのが鉄則だ。
その理由は簡単で、殺されても同情心が湧かないからだ。
殺された時に「可哀想」とか「痛々しい」と感じてしまったら、観客は「次々に若者たちが殺される」という内容をノホホンと楽しめなくなる。

しかし、この作品は、基本設定の部分で大きな過ちを犯している。それは、「鮫に襲われる若者たちが、みんな好感の持てる奴ら」ってことだ。
高飛車な奴も、身勝手な奴も、陰険な奴も出て来ない。仲間を見捨てて自分だけ助かろうとする奴も、軽い調子で不用意な行動を取る奴も出て来ない。
チャラ男のゴードンやビッチ系のベスなんて、この手の映画だと「軽率な行動を取って鮫に殺される」という結末を迎えそうだが、そうではない。
そういう「いい奴」ばかりだと、前述したようにノホホンと楽しめないのである。

殺される中に勇敢な奴や優しい奴が混じっていて、そいつが犠牲になるというケースも無いわけではない。
ただし、それは「グループの中の1人」という扱いであり、それ以外で「能天気にセックスを始めようとする奴」とか「警告を無視して行動する奴」を用意しておき、そういう奴らが犠牲になる様子を先に描くのが通常のパターンだ。
そういう「ボンクラが殺される」という手順を幾つか踏んでおけば、その後で「殺されて可哀想」と感じる人物が犠牲になっても、トータルでの印象は悪くならない。

「悪くならない」という表現をしたが、この手のスプラッター映画では、「好感の持てる奴が殺される」ってのは「悪いこと」なのだ。
こういう映画は、観客に「怖がらせる」ことよりも、「楽しませる」ことが重要だ。ぶっちゃけ、この手の映画を見て本気で怖がりたいと思う観客なんて、たぶん少数派なのよ。
そういうセオリーを逆手に取って、あえて善人ばかりを犠牲にすることで、観客を本気で怖がらせようと目論んだのだとすれば、それはそれで考え方としては理解できる。
しかし実際のところ、この映画に恐怖なんて微塵も感じないわけで。類似するサメ映画と同様で、「おバカな中身を楽しむ」というノリなのよ。
そうなると、犠牲者を全て善人にしたことは、やはり「大きな過ち」と断定せざるを得なくなるのよ。

冒頭でジェスがサメに襲われるが、「戻って来たキースはジェスがいないのに気付いて困惑する」とか「キースも襲われる」といった描写が無いので中途半端。
それと、そういうシーンを冒頭から用意しているので勿体付けずにサメが人を襲う様子を見せて行くのかと思いきや、変なトコで時間を浪費するんだよね。
これが「サメがいる予兆」や「何かに襲われて人が消える」という形で勿体ぶるなら、「今さら」ではあるが理解は出来る。
でも、「島へ向かう途中でリサがセイデンから逃走するように見せて遊ぶ」といった様子で時間を割くのは、ただ無意味にダラダラしているだけだよ。

別荘に到着した後、リサが棒を湖に投げてシャーマンに取って来るよう指示するシーンがある。この時、不安を煽るようなBGMが流れ、いかにもサメが出現しそうなカメラワークになる。
しかしシャーマンは棒をくわえてリサの元へ戻り、近くにサメがいる様子も描かれない。ようするに、分かりやすい肩透かしってことだ。
恐怖映画では良くあるパターンだから、そういうのが絶対にダメとは言わない。
でも、そこに関しては「絶対に要らない」と断言できるわ。

その後、ブレイクが日焼けスプレーを股間に噴射する様子や、ゴードンとベスがゲームをしている様子を挟み、マリクがウェイクボードを楽しむシーンになる。
ここで初めて、別荘に来た面々がサメに襲われる様子が描かれる。
でも、「そのタイミングが一発目なのかよ」と言いたくなる。
だったら、シャーマンのトコが一発目でも良くないか。シャーマンは襲われずに済むとしても、その段階で「近くにサメがいる」ってのを明示しても良くないか。

これまでバカみたいに何本も作られて来たサメ映画との違いとしては、「サメを放った悪党どもがいる」という設定だ。「サメが人間を襲う」ってのを描く話ではなく、「悪党がサメを使って人間を襲わせる」ってのを描いている。
なので、サメは言ってみりゃ殺人のための道具であり、そいつらを使って人間を殺すボスがいるわけだ。
ただ、そうなるとサメも都合良く利用されているだけなので、ちょっと可哀想ではあるのよね。
あとサメを放って人殺しを楽しむ連中の存在が明らかになると、不快感が強くなるし。

完全ネタバレを書くと、デニス&セイビン&レッドは塩水湖に生け簀を作って何匹ものサメを飼育し、人間を襲う様子を撮影してマニアの連中に売っている設定だ。
だけど、必要な経費や多くの手間を考えると、まるで割に合わない商売にしか思えないのよね。
そんな映像を見て喜ぶマニアの数なんて、たかが知れているはず。かなりの高額でも買ってもらえるかもしれないが、犠牲者が増えれば警察も捜査に乗り出すことは確実で、リスクがデカすぎるだろ。
あと最後に小さなネタに触れておくと、雑貨店の店主はトイレを盗撮してリサとベスの様子を密かに観察していたけど、これが後の展開に絡むことは全く無いのよね。いかにも怪しげな人物として描かれているけど、匂わせただけで終わりだ。
それは明らかに手落ちだと思うんだけどね。

(観賞日:2021年10月27日)

 

*ポンコツ映画愛護協会