『ジャングル・ブック/少年モーグリの大冒険』:1997、アメリカ

1890年、インド。狼に拾われた少年モーグリは、ジャングルで動物の仲間として育てられた。灰色狼や黒ヒョウのバギーラ、熊のバルーなど、ほとんどの動物達はモーグリのだが、猿の都の王様から命令を受けた猿達は、モーグリを連れ去ろうとする。また、モーグリの父を殺した虎のシア・カーンは、今はモーグリを狙っている。
獲物を探して洞窟を後にしたモーグリは線路に辿り着き、走って来た列車を停止させる。乗っていたハンターのハリソン達に捕まったモーグリだが、猿回しのチュチュンドラが飼っていた猿のティモを連れてジャングルへと逃げ込んだ。
ハリソンは大農園を所有するモーグリの叔父ブルデオに会い、ガイド役のカライトやチュチュンドラと共にモーグリの捜索を開始する。ハリソンはモーグリをサーカスに出演させようと考え、遺産を奪われることを恐れるブルデオは殺害を企んでいる。
猿のティモを連れ帰るという掟破りをしたモーグリは、狼の群れから追い出される。ジャングルの猿達にティモを連れ去られたモーグリは、猿の都に辿り着く。そこでモーグリは捕らわれているティモを発見するが、奪還することが出来ない。
そこへハリソンやブルデオ達が現れ、カライトの大蛇を利用してモーグリを捕まえる。バルーに救出されたモーグリは、ティモを助け出すために再び猿の都へと向かった。そこでモーグリは、都の王となっていたマーフィーという老人に出会う…。

監督はダンカン・マクラクラン、原作はルドヤード・キプリング、脚本はベイヤード・ジョンソン&マシュー・ホートン、製作はラジュー・パテル、共同製作はピーター・シェパード、製作協力はチャンドラン・ラットナム&アンドレア・バック、製作総指揮はシャラド・パテル&マーク・ダモン、共同製作総指揮はモハメッド・ユセフ&スティーヴン・モナス&クリス・クリサフィス&ヴィジュ・パテル、撮影はアドルフォ・バルトーリ、編集はマーカス・マントン、美術はエロル・ケリー、衣装はアン・ホロウッド、アニマル・コーディネイターはブライアン・マクミラン、音楽はジョン・スコット。
出演はビル・キャンベル、ロディ・マクドウォール、ジェイミー・ウィリアムズ、デヴィッド・ポール・フランシス、グルシャン・グローヴァー、ダーク・アシュトン、エイミー・ロビンス、アルバート・モーゼス、コーネリア・ヘイズ・オハーリー、B・J・ホッグ、ハル・ファウラー、サイモン・バーカー他。


キプリングの小説を基にした実写映画。
『ジャングル・ブック』で描かれなかったモーグリの少年時代が描かれている。
だから形としては続編だが、中身は『ジャングル・ブック』の続きではない。
モーグリをジェイミー・ウィリアムズ、ハリソンをビル・キャンベル、キチガイっぷりを披露するだけのマーフィーをロディ・マクドウォールが演じている。

序盤、バレバレの合成映像の中でモーグリが木に登り、サルがウキキと鳴く。
直後にはモーグリがウガッと叫び、サルがウキキと鳴き、熊やオオカミや黒ヒョウが現れる。
それは「サルに襲われそうになったモーグリを動物達が助けに来た」というシーンであって、決して遊んでいるわけはない。
そう見えたとしても、そうではない。

モーグリと動物達がジャングルで暮らしている様子には、ドラマ性はほとんど見当たらない。
それは当たり前だ。
日常の風景に、そんなに簡単に面白いエピソードや起伏に富んだ展開など転がっているはずが無いからだ。
そして、そんなドラマ性の無いシーンに、かなり多くの時間が割かれている。
当然、全体を見た時に物語は薄くなっている。

とりあえずガキと動物さえ出しておけば、ターゲット層である子供達は喜ぶだろうと製作サイドは考えたのかもしれない。
というわけで、ジャングルでガキと動物のお遊戯会が繰り広げられる。
なんだか、ゆる〜い偽ドキュメンタリーを見ているような感覚になる。
何しろモーグリは人間の言葉が話せないので、彼が何をやりたいのか、何を考えているのかは分からない。
動物達も、もちろん同じだ。
そして、それを心情を動きや表情で示すほどの演技能力は、彼らには無い。
というわけで、詳しい説明は全てナレーションに任されている。
ますます、ゆる〜い偽ドキュメンタリーなのである。

モーグリが主人公のはずだが、彼が主役としての存在意義を全く示していない場面もかなり多い。大体、サブタイトルに“モーグリ&バルー”とあるのに、ちっともモーグリとバルーの物語になってないのは、「タイトルに偽り有り」ということになるぞ。
猿、シア・カーン、ブルデオと3種類の敵が登場するが、単にまとまりが無くてボンヤリしているだけだ。シア・カーンなど、登場させる必要性さえほとんと無い。
ブルデオの悪巧みやマーフィーの存在、ハリソンとモーグリの関係など色々な要素があるが、どれも大きなドラマを形成せず、軽く触れただけで消化不良になっている。
登場人物が唐突に意味不明な行動を取ったり、知らない内に話が進んでいたり、物語は場面ごとにバラバラ(場面の中でもバラバラ)だ。
シナリオは完全に崩れまくっているが、そもそも今作品においてシナリオのクオリティーなど意味が無いのだ。

狼、熊、猿、虎、象など、登場する全ての動物達は本物だ。
本物の動物達が演技を披露しているのだ。
結局のところ、これは映画などではなく、動物達とアニマル・トレーナーをアピールするための、プロパガンダ・フィルムだったのかもしれない。


第20回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の助演男優】部門[ロディ・マクドウォール]

 

*ポンコツ映画愛護協会