『スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション』:2011、アメリカ

シャーリーとトルーディーはSNSのストーカーらしき男から脅し文句の電話を受けた直後、2人のゴーストフェイスに殺された。そんな映画『スタブ6』のシーンを見ていたレイチェルは酷評するが、親友のクロエは「私は好きよ」と告げた。それでもレイチェルが酷評を続けると、クロエは彼女を殺害した。そんな映画『スタブ7』のシーンを見ていたジェニー・ランダルは、シリーズ3作目までがシドニーの実体験であること、それを彼女が嫌がって4作目からは完全創作に変更されたことを友人のマーニー・クーパーに説明した。そんな2人の前にゴーストフェイスが現れ、次々に殺害した。
最初の事件から15周年が近付く中、シドニー・プレスコットは新作本の宣伝活動のため、エージェントのレベッカ・ウォルターズを伴ってウッズボローへ戻って来た。保安官になったデューイ・ライリーは出勤しようとするが、車を猛スピードで走らせる女子高生のカービーを目撃して注意した。カービーは友人のジルを迎えに行き、「貴方が無視するからトレヴァーから電話があったわ」と言う。もう1人の友人であるオリヴィアが来て、やはりトレヴァーから電話があったことを告げた。
ジルの携帯にジェニーの番号から電話が入るが、相手が男の声で「好きなホラー映画は?」と尋ねたので、無視して切った。オリヴィアは、自分にも同じ電話が来たことを明かした。保安官代理のジュディーと合流したデューイはランダル家の事件について連絡を受け、すぐに向かった。デューイの妻であるゲイルは小説を書こうとしているが、まるでアイデアが浮かばなかった。ジルたちが登校すると、シネマ部の部長を務めるチャーリーと副部長のロビーがいた。ロビーがカメラを回しながら「好きなホラー映画は?」と尋ねるので、ジルたちは軽く受け流して立ち去った。
オリヴィアはジルから「チャーリーは駄目?」と問われ、「好きよ。イジメがいがあるから」と笑った。トレヴァーが来てジルにヨリを戻そうと持ち掛けるが、冷たく拒否された。シドニーが書店でサイン会を開いていると、ゲイルがやって来た。2人が話していると、そこへデューイやジュディーたちがやって来た。デューイは2人に、事件現場の携帯を追跡して書店まで来たことを説明した。着信音を辿ると、シドニーが借りた車のトランクだった。トランクを開けると、血の付着したナイフやゴーストフェイスのマスクが入っていた。
デューイが事務所でシドニーから話を聞いていると、ゲイルがやって来た。彼女が取調室に入ろうとすると、デューイに好意を寄せているジュディーが立ち塞がって「入れません」と告げた。デューイはゲイルから「今までのように捜査に参加したい」と言われ、「駄目だ」と却下した。するとゲイルは、「だったら勝手にやるわ」と告げた。ジルたちは事務所へ赴き、電話が来たことを話した。シドニーは従妹のジルと再会した後、町を出ようと考える。しかしデューイは、「犯人が分かるまで出られない」と監視が付くことを告げた。
レベッカは上司のヘンリーに電話を入れ、「女子学生2人が殺されたわ。絶好のタイミングよ。これで一気に盛り上がる」と嬉しそうに告げた。ジルが自室に入るとトレヴァーが忍び込んでおり、ヨリを戻そうとする。ジルは「ウチに来ないで」と告げ、シドニーが来たのでトレヴァーは窓から去った。シドニーは見回りのジュディーから「覚えてない?同じ高校で、演劇部でも一緒だった」と言われるが、全く覚えていなかった。
ジルはカービーを部屋に呼び、一緒にDVDを観賞する。オリヴィアも誘われていたが、シドニーがいることを知ると怖がって隣の自宅へ戻った。両親が外出中で彼女は1人だったが、保安官代理のパーキンスとホスが外で張り込んでいた。ジルの携帯にトレヴァーの番号から電話が入ったので、カービーが出た。相手はトレヴァーとは別人の声で「ジルに代われ」と告げ、脅しの言葉を口にした。しかしカービーはトレヴァーの悪戯だと思い込み、笑って対応した。
電話の男が「クローゼットにいる」と言うのでカービーはクローゼットを開けるが、誰もいなかった。「別のクローゼットだ」と男は言い、オリヴィアの部屋のクローゼットからゴーストフェイスが飛び出した。ジルとカービーは、オリヴィアが襲われるのを窓から目撃した。騒ぐ声を聞いたシドニーがジルの部屋へ駆け付けて状況を知り、すぐに飛び出した。パーキンスとホスがパトカーを離れていたため、彼女は隣の家に乗り込んだ。
オリヴィアの部屋に入ったシドニーは、彼女の死体を発見した。犯人はシドニーに電話を入れ、「これは予告編だ。お前をいつ殺すかは、こちらの気分次第だ」と告げた。ジルが来たので、シドニーは部屋の前に立って「見ては駄目よ」と制止した。そこへゴーストフェイスが現れて襲い掛かったので、シドニーは抵抗して階段の下に蹴り落とした。パーキンスとホスが駆け付けたので、シドニーは犯人の存在を教えようとする。だが、目を離した隙に犯人は裏口から姿を消していた。
ゲイルは事件をネット中継しているチャーリーとロビーを見つけ、一緒に犯人を捜さないかと提案した。「学校のホラー映画オタクの情報が欲しい。見返りは有名人の訪問。私とか」と言うと、チャーリーはシドニーの訪問を求めた。病院で傷の手当てを受けたシドニーに、レベッカは嬉しそうな様子で本の出版やテレビ出演のオファーが届いていることを話した。シドニーが「もうPRは終わりよ」と断ると、彼女は「犠牲者としての人生を利用しなきゃ」と言う。シドニーはレベッカを軽蔑し、クビを宣告した。
地下駐車場へ赴いたレベッカは脅しの電話を受けた後、ゴーストフェイスに殺害された。デューイが記者会見を開いていると、建物の屋上からレベッカの死体が降って来た。デューイは部下たちを屋上へ向かわせるが、誰もいなかった。ゲイルはシドニーを連れて、シネマ部の部室を訪れた。チャーリーとロビーは事件について、「犯人はスタブ信者で、リメイク殺人だ。犯人はホラーのルールを守る。スタブと同じ展開になっている」と話した。
チャーリーとロビーは次の殺人について、「パーティー会場で主要人物が殺される」と指摘した。その夜には、『スタブ』シリーズを連続で観賞する「スタブラソン」という毎年恒例のイベントが予定されていた。しかしチャーリーたちが「アングラなイベントだから」と場所を教えなかったので、ゲイルはシドニーを連れて部室を去った。夜、ゲイルは密かに会場である廃屋へ潜入し、カメラを取り付けた。車に戻ったゲイルが映像を確かめると、カメラは全て消されてしまった。
ゲイルはデューイに電話を入れて廃屋の場所を教え、「犯人が動いたみたい。貴方は来るべきよ」と言う。デューイが信じなかったので、彼女は「勝手にやるわ」と電話を切った。ゲイルはゴーストフェイスに襲われるが、そこへデューイが駆け付けて発砲する。犯人はナイフでゲイルに重傷を負わせ、その場から逃走した。ゲイルはデューイに「犯人のウェブカメラが私を追ってた。殺人犯が殺しを撮影してる」と話し、病院へ搬送された。
シドニーの監視を担当していたパーキンスとホスは、ゴーストフェイスに殺された。シドニーは犯人からの電話で、「テレビを付けろ」と指示される。ゲイルが襲われたことを報じるニュースをシドニーが見ると、犯人は「友達は大切だが、身内はもっと大切だろ。お前は救えない。ただ見ているだけだ」と述べて電話を切った。ジルが外出していることを知ったシドニーは、彼女の母であるケイトに「ジルを呼びもどして」と告げる。そこへゴーストフェイスが現れ、ケイトを殺害して姿を消した…。

監督はウェス・クレイヴン、脚本はケヴィン・ウィリアムソン、製作はケヴィン・ウィリアムソン&イヤ・ラブンカ&ウェス・クレイヴン、共同製作はカーリー・フェインゴールド、製作総指揮はボブ・ワインスタイン&ハーヴェイ・ワインスタイン&ロン・シュミット&アーレン・クルーガー&マシュー・スタイン&キャシー・コンラッド&マリアンヌ・マッダレーナ、撮影はピーター・デミング、美術はアダム・ストックハウゼン、編集はピーター・マクナルティー、衣装はデブラ・マクガイア、音楽はマルコ・ベルトラミ、音楽監修はライザ・リチャードソン。
出演はデヴィッド・アークエット、ネーヴ・キャンベル、コートニー・コックス、エマ・ロバーツ、ヘイデン・パネッティーア、アンソニー・アンダーソン、アダム・ブロディー、ロリー・カルキン、メアリー・マクドネル、マーリー・シェルトン、アリソン・ブリー、マリエル・ジャフィー、ニコ・トルトレッラ、エリック・ヌードセン、アンナ・パキン、クリスティン・ベル、ルーシー・ヘイル、シェネイ・グライムス、ブリタニー・ロバートソン、エイミー・ティーガーデン他。


11年ぶりに復活したシリーズ第4作。
監督は前3作と同じくウェス・クレイヴン。脚本は第1作&第2作のケヴィン・ウィリアムソンが復帰。
デューイ役のデヴィッド・アークエット、シドニー役のネーヴ・キャンベル、ゲイル役のコートニー・コックスは、シリーズのレギュラー陣。
ジルをエマ・ロバーツ、カービーをヘイデン・パネッティーア、パーキンスをアンソニー・アンダーソン、ホスをアダム・ブロディー、チャーリーをロリー・カルキン、ケイトをメアリー・マクドネル、ジュディーをマーリー・シェルトンが演じている。
冒頭で死ぬ役回りに有名女優を起用するのが、このシリーズのお約束になっている。
今回はシェリー役でルーシー・ヘイル(TVドラマ『プリティ・リトル・ライアーズ』でブレイク)、トルーディー役でシェネイ・グライムス(TVドラマ『新ビバリーヒルズ青春白書』のアニー役)、レイチェル役でアンナ・パキン(TVドラマ『トゥルーブラッド』でゴールデングローブ賞主演女優賞)、クロエ役でクリスティン・ベル(TVドラマ『ヴェロニカ・マーズ』でブレイク)が出演している。

冒頭のシェリー&トルーディーが殺されるシーンは、このシリーズを見ている人なら「たぶん『スタブ』シリーズの1シーンだろうな」ってことは何となく予想できるだろう。だから、そんなに緊迫感は高まらないけど、シリーズのお約束をやっているだけだから、マイナス要素ではない。
で、今回は「実は映画の1シーンでした」というのを1度で終わらせず、『スタブ6』を観賞した女性たちが殺されるのは『スタブ7』の1シーンという風に2つ重ねてあるんだけど、その仕掛けはあまり効果的ではない。むしろ、ちょっとダレる。
重ねるのであれば、ジェニーとマーニーがゴーストフェイスに殺されるシーンは、もっと短く処理した方がいい。
どうせゴーストフェイスが登場した時点で2人が殺されることは分かり切っているし、このシリーズの面白さは殺し方のケレン味にあるわけじゃないんだから(っていうか殺し方のケレン味なんて全く無い)。

それと、冒頭の『スタブ6』のシーンで、2人のゴーストフェイスが女性たちを殺害する様子を見せるのって、ほぼネタバレみたいなモンじゃないのかと。
そりゃあ、このシリーズを見ている人なら「犯人は複数犯」ってのは、容易に予想できることではあるのよ。
だけど、前3作を見ていない人、ホラーやミステリーの定番だけが頭にある人からすると、複数犯ってのは意外性を持つ要素になるはずで。
そこを最初から提示しちゃうってのは、ある意味では潔いけど、雑なんじゃねえかと思っちゃうぞ。

冒頭、トルーデイーが『ソウ4』について、「殺し方がエグいし、怖い以上に気持ち悪い。登場人物が薄っぺらで血と肉が飛び散るだけ」と酷評する。一方、ジルとカービーが『ショーン・オブ・ザ・デッド』を楽しく観賞するシーンがある。
その辺りは、もちろんケヴィン・ウィリアムソンの個人的な評価が表れているシーンだ。
で、実は本作品の面白味って、そういう部分にある。
ある意味では内輪受けということになるのかもしれないが、ホラー映画関連の小ネタを散りばめるってのが、このシリーズの最も大きな特色だ。

シリーズ第1作が面白かったのは、過去のホラー映画のパターンをマニア設定の登場人物に解説させて、それを利用して裏切る展開を用意するような部分にあった。つまり本気でホラー映画として怖がるというよりは、「マニアックなネタをニヤニヤしながら楽しむ」というスタンスで観賞するような類の映画だった。
しかし1作目でネタを使い尽くしたのか、既に2作目の段階でマニアックな楽しみは薄くなっていた。3作目になると、ますます映画に絡めたネタは減ってしまい、しかも映画マニアの登場人物による解説まで無くなった。
そんな風にネタ切れを起こしていたシリーズだが、前作から11年が経過し、2作目までを担当していたケヴィン・ウィリアムソンが脚本に復帰した。
ってなわけで、また新たなネタを投入しているが、あまり多くないし、上手く機能させているとも言えない。

レイチェルは映画『スタブ』シリーズについて、「殺すパターンも全て同じで、最初に出て来た女の子は必ず殺される。お約束すぎて先が読める」と酷評する。
クロエが彼女を刺して「これは読めなかったでしょ」と言うけど、レイチェルの言葉は、ある意味では本シリーズに対する批評になっている。
ゲイルはチャーリーから捜査協力の見返りとして自分じゃなくシドニーの訪問を求められ、「気を悪くしないでくれ。でもシドニーはスターだから」と言われると、「ハリー・ポッターを演じるダニエル・ラドクリフみたいなものね」と口にする。
それに対してチャーリーは「原作も映画も格が違う」と言うが、それは「ハリー・ポッター」シリーズと「スタブ」シリーズの比較ということだけじゃなく、このシリーズと重ね合わせたネタになっている。
そういう自虐的なネタは、それなりに面白い。

チャーリーとロビーはシドニー&ゲイルが部室に来ると、「今やリメイクばかり。ホラーのルールも変わった。意外性が入って来た。派手な演出をオープニングで使い、より残忍な殺し方にする」「オリジナルの展開を裏切るのが新ルールだ」「今のホラーはゲイのキャラが必ず生き残る」などと語る。
だが、今回の殺人がリメイクのルールを巧みに利用しているのかというと、そうでもないんだよね。
もう「ゴーストフェイスが人を殺す」というパターンは変えられないし、そこにリメイク映画関連のネタを上手く絡めるのが難しかったのかな。
「リメイクのルールはあるけど、それはそれとして連続殺人は粛々とやりまっせ」という感じなのよね。

ホスとパーキンスは殺される直前、パトカーの中で「ブルース・ウィリス以外の警官は、やられ役だ。退職前の設定だと、かなり危険だ。新人で妻が妊娠中なのも。2人の内、イケメンじゃない方も」「すぐ戻るってのも危険な台詞かな」「最近だと待ってる方が殺されるな」などと会話を交わす。
ただ、それってホラー映画に限定したネタじゃないし、リメイク作品のルールってわけでもない。
2人が殺されても、そこにパターンを裏切る面白さがあるわけじゃない。「たぶん2人とも殺されるんだろう」と思っていたら、その通りになるわけで。
それと、映画のウンチクを語る役割を警官にまで広げることで、ちょっと散らばっている印象も受ける。
映画関連のネタがイマイチになっている一方で、レベッカが結婚10年目を迎えたゲイルに向かって告げる「映画と違って、現実の恋愛は長続きしないものなのに」という皮肉めいたセリフの方が、面白く思えてしまう(デヴィッド・アークエットとコートニー・コックスは1999年に結婚したが、この映画が公開される前の2010年から別居していた。ちなみに2013年になって離婚が成立している)。
だけど、そういうことじゃダメなわけで。

次々に人が殺される中で、ゲイルはデューイに「貴方は犯人逮捕、私は小説完成よ」と言うなど、小説のネタにすることしか考えていない。
まあ彼女からすれば殺された連中とは何の関係も無いわけだが、それにしてもネタのためだけに嗅ぎ回るってのは、かなり不快なキャラになっている。
その旦那であるデューイは、何の役にも立たないボンクラだ。
じゃあヒロインのシドニーはというと、ほとんど何もやっていない。標的の1人として指名されるシーンはあるが、あまり関係の無い連中も殺されているし、「次々に人が殺され、ヒロインの身にも危険が迫る」という緊迫感は乏しい。犯人捜しや事件解決のため、積極的に行動するわけでもない。
シリーズのメインである3人が、今回の話に上手く入り込めていない印象を受ける。
だったら新しく登場する面々の中に話を引っ張っていくようなキャラがいるのかというと、こちらもイマイチなのよね。

トレヴァーやジュディーなど、複数の人間を「怪しげな奴」として描写し、犯人ではないかというミスリードを図っているようだ。
しかし本作品にいて、そういうミスリードは何の意味も持たない。この「スクリーム」シリーズにおいて、犯人捜しの要素は、ほぼ無意味なのだ。
そして犯人が明らかになっても、ちっともスッキリしない。仮に意外だったとしても、騙される心地良さなんて皆無だ。
キッチリと伏線を張っておいて、真犯人が明らかにされた時、それを回収することで「そうだったのか」と感じさせるようなことは全く無い。

犯行動機にしても、「そんな理由かよ」と言いたくなるモノになっている。
完全ネタバレを書いちゃうと、動機は「有名になりたかった」というもので、それが明かされた時にバカバカしさしか感じない。
ただ、これはシリーズ1作目から続いていることなので、今さら文句を言っても始まらない。何しろ1作目で「動機なんて、どうでもいい。ホラー映画の真髄は単純さだ。難しくなったら観客が逃げる」という台詞があったぐらいなので、動機に関しては今回もテキトーなのだ。良くも悪くも、このシリーズのパターンってことだ。
いや、「良くも悪くも」って書いたけど、どう考えたって悪い伝統だわな。
シリーズ作品ってのは踏襲すべきポイントも色々とあるけど、ダメなトコまで引き継ぐ必要は無いんだから。

(観賞日:2015年8月28日)

 

*ポンコツ映画愛護協会