『スコア』:2001、アメリカ&ドイツ

泥棒のニック・ウエルズはバルーン業者に成り済ましてボストンのパーティー会場に潜入し、金庫から宝石を盗み出した。翌日、彼は地元のモントリオールへ戻り、経営するジャズクラブに顔を出した。そこへ盗品ブローカーをしている親友のマックスが現れた。彼はバイヤーと会うため、バミューダ諸島へ出掛けていた。マックスはニックに、バイヤーが死んで取引が無しになったことを告げる。「俺の報酬はどうなる?新しいバイヤーを探そう」とニックが言うと、マックスは「もちろん探すが、時間が掛かる。その間に別の仕事をやらないか。400万ドルの仕事だ」と持ち掛けた。
マックスはニックに、価値を知らない所有者からヨーロッパの財宝を入手したこと、しかしモントリオールの税関で足止めを食らっていることを語った。ニックが難色を示すと、マックスは「税関には仲間を送り込んである。図面も警備の詳細も提供してくれる」と説得する。しかしニックは「盗みは国外でやれとアンタが言ったんだ」と断った。ニックには客室乗務員のダイアンという恋人がいる。ダイアンはニックが泥棒であることを知っている。ニックは彼女に、クラブ経営に専念することを匂わせた。「私のために足を洗うなんて、やめてよ。そんなことは望んでないわ」とダイアンが軽く言うと、ニックは「真剣に考えてくれ」と告げた。
出勤するダイアンを乗せたタクシーを見送った直後、帰宅しようとしたニックは知的障害者の男に道を尋ねられた。だが、それは障害者を装ったジャック・テラーという男であり、彼は「税関に入り込んでいる仲間だ。話したい」と告げる。ニックはジャックを無視して立ち去り、マックスの家へ乗り込んだ。「何を吹き込んだ」とニックが激怒すると、マックスは「お前を見つけ出しただけでも大したもんじゃないか」と言う。そこへジャックが来ると、ニックは「その仕事に興味は無い。やらんぞ」と声を荒らげて立ち去った。
ニックはチンピラのバートに連絡し、ジャックの家へ差し向けた。ニックはバートを襲撃し、「ニックに関わるな」と脅す。ジャックは彼を叩きのめしてニックの家へ押し掛け、「せこい真似をするな」と激怒した。「あの警備システムならコントロールできるが、金庫破りのプロが必要だ。現場の下見だけでもしてくれ。こんな大きいヤマを逃すのは勿体無い」と告げ、彼は立ち去った。ニックはマックスと会い、600万ドルの報酬なら引き受ける。店のローンを返し、抵当権を抹消して完全に自分の物にしたい。この仕事が終わったら足を洗う」と告げた。マックスは600万ドルの報酬を約束した。
ジャックが店に来ると、ニックは「指揮官は俺だ。俺のやり方で進める。怪しいと思ったら降りる」と釘を刺した。マックスはニックに、標的が1661年にフランスで作られた物であること、王女の戴冠式で使われた錫であることを明かす。ジャックは福祉の一環として税関に雇われ、ブライアンという偽名で清掃員として潜り込んでいた。彼はニックに、警備員が少ないこと、システムはコントロール・ルームで全て制御されていること、清掃主任のダニーが自分を息子のように可愛がっていることを語った。
ニックたちが狙う錫は、核シェルターを利用した地下保管室の金庫に入れられている。ニックは地下道に入って小型カメラを使い、中の様子を撮影した。ダイアンはニックの店を訪ね、「この前の返事だけど、今までの生活を捨てて引っ越してくるわ」と告げた。「だから、もう二度と盗みはしないと約束して」と求められたニックは、「最後に1つだけ仕事をやりたい」と口にした。「今すぐ足を洗って。お金なんて欲しいと思わない」とダイアンは言うが、ニックが承諾しなかったので腹を立てて店を去った。
ニックはジャックから、警備システムのパスワードが必要だと言われる。ニックはハッカーのスティーヴンと連絡を取り、協力を要請した。彼はジャックに、小型カメラで撮影した写真を見せ、赤外線装置が設置されていることを教える。それはシステムとは別に設置された物だった。金庫はガラスパックが付いた最新型で、ドリルで穴を開けることは不可能だった。しかしニックは街で偶然に見掛けた事故から物理学を使った方法を思い付き、ジャックに「最長でも15分で金庫を開けられる」と約束した。
ニックはバートから、マックスがギャングのテディー・サリダと揉めており、今回の仕事が手切れ金代わりになっているという噂を聞く。彼がマックスの家に赴くと、玄関前にはテディーの子分が立っていた。ニックが裏口から侵入すると、怯えた様子のマックスがいた。彼はニックの追及を受け、テディーに400万ドルの借りがあること、錫を3千万ドルで売ろうとしていることを明かす。ニックは危険の多さを考えて仕事から降りようとするが、マックスに懇願されて折れた。
税関の依頼による調査で錫がフランスの国宝だと判明したため、地下保管室には複数の監視カメラが取り付けられた。そのことをジャックから知らされたニックは、自分の移動に合わせてカメラのスイッチを切ったり戻したりするよう指示した。結構当日、ジャックはゴミ箱を外に運び出し、業者に化けたバートが事前に用意しておいた別のゴミ箱と摩り替えた。そのゴミ箱を建物に運び込んだ彼は、隠してあったパソコンを取り出した。ジャックはシステムをハックし、地下道で待機していたニックを地下保管室に侵入させた…。

監督はフランク・オズ、原案はダニエル・E・テイラー&カリオ・セイラム、脚本はカリオ・セイラム&レム・ドブス&スコット・マーシャル・スミス、製作はゲイリー・フォスター&リー・リッチ、製作総指揮はアダム・プラトニック&バーニー・ウィリアムズ、撮影はロブ・ハーン、編集はリチャード・ピアソン、美術はジャクソン・デゴヴィア、衣装はオード・ブロンソン=ハワード、音楽はハワード・ショア、音楽製作総指揮はバド・カー。
出演はロバート・デ・ニーロ、エドワード・ノートン、アンジェラ・バセット、マーロン・ブランド、ゲイリー・ファーマー、ジェイミー・ハロルド、ポール・ソールズ、マーティン・ドレインヴィル、サージ・フード、ジャン・ルネ・ウエレ、リチャード・ワウ、マーク・カマチョ、マリー=ジョジー・ダムール、ギャヴィン・スヴェンソン、シン・トルオング・ニューエン、カルロ・エサジアン、クリスチャン・テシエ、レニー・スコフィー、ボビー・ブラウン、モーリス・デマーズ他。


『ハウスシッター/結婚願望』『イン&アウト』のフランク・オズが監督を務めた作品。
ニックをロバート・デ・ニーロ、ジャックをエドワード・ノートン、ダイアンをアンジェラ・バセット、マックスをマーロン・ブランド、バートをゲイリー・ファーマー、スティーヴンをジェイミー・ハロルド、ダニーをポール・ソールズ、ジャン=クロードをマーティン・ドレインヴィルが演じている。
ジャズ歌手のカサンドラ・ウィルソンとモーズ・アリソンが、本人役で特別出演している。

ニックは「危ない橋を渡らず、なるべくリスクを避ける」という泥棒のはずなのに、いきなり冒頭シーンからピンチに見舞われている。
金庫を開けた直後、パーティー客のカップルが部屋に入って来るのだ。ニックがミスをやらかしたわけではないが、注意が足りないということは言える。
どういうパーティーなのかを考えれば、セックスを目論む男女が部屋に入って来ることも予想できるはずなのだ。
だから、あらかじめ予測して、絶対に見つからないような対策を取っておくべきだろう。

カップルがソファーに座ったので、ニックはその後ろに隠れることを強いられる。女がヤク中だったので男は部屋を出て行くが、ニックは慌てて隠れたために泥棒で使っていた工具を置きっ放しにしており、それを女に見つかってしまう。そのため、背後から羽交い絞めにして脅しを掛け、その間に逃げるという行動を取っている。
なぜオープニングから、ニックが失敗しそうになるシーンを描くのか。
それはキャラクターの見せ方として「危ない橋を渡らない泥棒」という設定とズレているように感じるし、何のメリットも無いでしょ。
例えば、「危うく見つかりそうになったことで衰えを感じ、足を洗おうと決意する」というところに繋げているのなら、まだ分からないでもない。しかし、ニックが足を洗おうと決意するのは、そんなことと全く無関係なのだ。

ニックだけでなく、ジャックも登場シーンからボンクラぶりを見せ付ける。ニックの自宅の近くで、彼に声を掛けるのだ。
後でニックに詫びているけど、あまりにも軽率な行為である。
そもそも、そんな形で無理にニックと接触する必要性も無いのだ。そのため、そこに「焦り」が感じられてしまう。
だから、登場シーンからしてジャックは、「あまり有能ではない奴」という印象を与えてしまう。

ニックはジャックが接触してきた後、バートを差し向けて脅しを掛けるのだが、これまた愚かすぎる行動だ。
とりあえず仕事は断ったんだから、それで終わっておけばいいでしょ。わざわざチンピラに暴力を振るわせてまで、町を出ろと脅す必要性など全く無い。
一方のジャックは知的障害者として働いているのに、昼間は健常者として街に出ている。これまた軽率な行動だ。
ニックが健常者として振る舞うジャックと自分の店で会うのも、やはり軽率だ。

ニックが自分の決めたルールに反してまで仕事を受けると決めたのは、「店を自分の物にして、足を洗ってダイアンと暮らそう」と決めたからだが、その心情が今一つ伝わって来ない。
一応、セリフやシーンを使っての描写はあるんだけど、「ダイアンは今のままでいいと言っているのに、なぜニックが足を洗おうとするのか」ってトコロが見えにくいのだ。
しかも、ニックはダイアンから「もう二度と盗みはしないで」と言われても、今回の仕事から降りようとしない。
恋人より仕事を選択する動機は何なのか。

ジャックがニックに、「無謀なチャレンジはしないと言うが、これだけの店を持ちながら俺と組んで、これまでより遥かに難しい仕事をやろうとしている。俺から言わせれば充分に博打だ」と告げるシーンがある。
ジャックの指摘する通りなのに、なぜニックはヤバい仕事を引き受けたのか。
「実は無謀な仕事に挑みたい野心が以前からあって、そこを刺激された」ということなのかもしれないが、だとしたら全く伝わって来ない。それはニックの心情が伝わって来ないという問題だけじゃなくて、盗もうとしている錫杖にニックを刺激するためのインパクトが不足しているという問題もある。
っていうか、そもそも製作サイドが「ニックには無謀な仕事に挑みたい野心が隠れていた」という設定で話を考えているのかどうか分からんし、どうも違うような気がするし。段取りとしてニックを動かしているだけで、動機については深く考えていなかったんじゃないかという印象を受けるんだよな。

マックスが途中でどうでもいい存在に成り下がるのは、キャラの動かし方としていただけない。
テディーに命を狙われているという設定も含めて、別にいてもいなくても支障の無い存在になってしまうのだ。
テディーに莫大な借金をしていることや、命を狙われていることが明らかになったところで、錫杖を盗み出そうとするニックたちの計画には何の影響も無いのだ。
それによって計画の変更を余儀なくされるとか、テディーに妨害されるとか、そういうことは無いのだ。

ニックが計画への参加を決めるきっかけにする意味でも、マックスがテディーに借りがある設定は上手く機能していない。
その前にニックは異なる理由で参加を拒絶し、しかし結局は承諾するという手順を踏んでいる。そしてマックスの抱える事情を知った時は、降りると言った直後に懇願されて「やっぱり続ける」と決めている。
つまり、ドラマ展開としても、あまり意味が無いのである。
そこをドラマとして機能させたいのなら、マックスの事情を知るまでは、ニックが計画への参加を拒んでいる形にすべきだ。そして「窮地に陥っている親友を救うため、今までのルールを破る」という風に、ニックが計画に参加する動機として使うべきだ。

序盤でのニックとジャックの関係描写を見た段階で、一枚岩じゃないことは明らかだ。
どこかのタイミングで亀裂が入ったり、ジャックが裏切ったりするような雰囲気はプンプンと漂っている(特に後者)。
とは言え、「最初は対立していた2人が、共に行動する中で次第に仲良くなっていく」ってのも良くあるパターンだから、そのまま最後まで裏切り行為が無かったとしても、意外性のある展開とは呼べない。
そしてジャックが裏切ったとしたら、それは「予想通りのベタな展開」ってことになる。

だから序盤でジャックがウギる雰囲気を出しておくのは、どっちに転んでも得が無い。
どちらを選んだ方がベターなのかと考えると、まだ「次第に仲良くなっていく」というパターンの方がマシだろう。
なぜなら、そっちの道を選んでニックとジャックの関係性を充実した描写にすれば、バディー・ムービーとしての面白さが出る可能性があるからだ。
「裏切りそうな奴が、やっぱり裏切りました」ってことだと、単に「凡庸な犯罪サスペンス」ってことになってしまう。

いっそのこと、互いに信用できないワルたちの腹の探り合い、化かし合いという部分に重点を置いて物語を構築すれば、それはそれで面白くなったんじゃないかという気がする。
だけど実際のところは、終盤に入るまでは「仕事の準備を進め、いざ決行するが、果たして成功するでしょうか」という形の犯罪サスペンスに作り上げている。で、そこが面白いのかというと、計画の中身が雑。
例えば、ニックが通過する間だけ当該ポイントのカメラを切り、通過したら元に戻すというのは、明らかに警備員から怪しまれるだろう。
また、ジャックはダニーを脅して閉じ込めているが、ってことは逃げても犯人として証言されことは濃厚であり、つまり顔がバレているってとことになる。彼はニックの顔を監視カメラに写して全ての罪を被せようとしているが、ダニーを脅して自分が悪党であることをバラした時点で、もう裏切りの計画にボロが出ているのだ。

ジャックはニックを拳銃で脅して錫杖を渡されるより前に、「これから裏切りますよ」ということがハッキリと分かる行動を取る。
ニックが天井に吊り下がって耐えている状態の時、早くカメラを切るよう指示されているのに、「誰か来たから見て来る」と嘘の理由を語り、しばらく時間を稼いでから電源を切るのだ。
ニックが拳銃を向けたときに、「実は裏切ることを目論んでいた」というのが初めて明らかになる形の方がインパクトはあるだろうに、なんで中途半端なタイミングで、中途半端な形で、これから裏切ることを観客に知らせるような行動を取らせたんだろうか。
何のメリットも見えないぞ。

結局、ジャックは錫杖を奪い、ニックに覆面を外させ、カメラの電源が復活するタイミングまで拳銃で脅す。そうやってニックの顔がカメラに写るように仕向けて(実際には間一髪でニックが顔を隠す)、それから逃亡する。
一方のニックも何とか脱出すると、ジャックから余裕の電話が入る。勝ち誇るジャックだが、余裕を示すニックの言葉で袋の中身を確認すると、それが錫杖じゃないことが分かる。
ようするに、最後の部分だけは知能戦になっているわけで。
しかし前述したように、ニックにしろジャックにしろ、あまりにも行動が浅はかであり、利口さに欠ける。
そんな2人なので、「キレ者同士の騙し合い」という雰囲気は盛り上がらないのよね。

(観賞日:2015年1月10日)

 

*ポンコツ映画愛護協会