『最‘新’絶叫計画』:2001、アメリカ&カナダ

ヘルハウスと呼ばれる屋敷には、悪魔に憑依されたメーガンという少女が住んでいた。マクフィーリー神父はメーガンの母親から依頼を受けて屋敷を訪れ、先に来ていたハリス神父と合流した。2人はメーガンの寝室へ赴き、両手を縛られて固定されている彼女の悪魔祓いを開始する。メーガンにゲロを浴びせられたハリスは、すぐにゲロを浴びせ返す。笑っていたマクフィーリーもハリスの吐いたゲロを浴び、嘲笑ったメーガンにゲロを浴びせる。ゲロ吐き合戦が終わった後、マクフィーリーは馬鹿にするメーガンを拳銃で射殺した。
1年後。大学生になったレイ、ショーティー、シンディー、ブレンダは、キャンパス・ライフを満喫していた。レイにはバディーとトミー、シンディーとブレンダにはアレックスという新しい友人も出来ていた。大学教授のオールドマンは、助手のドワイトと共に、ヘルハウスを調査する計画を立てていた。彼らはヘルハウスで怪奇現象を引き起こすために、大量殺人事件の生存者であるレイやシンディーを利用しようと目論んだ。さらに彼は、ショーティー、ブレンダ、バディー、アレックス、セオにも狙いを付けた。
オールドマンはレイたちを集め、不眠症の研究と称して「週末に泊まり掛けで施設へ行く。今夜の内に現地入りしてほしい」と告げた。初日の夜、シンディーは「貴方を助けたい。音楽室へ行って」という女性の声を耳にする。声の指示に従わずにバディーと話していた彼女は、血に染まった足跡が本棚まで続いているのを目にした。シンディーとバディーは、本棚の後ろにあった隠し部屋を発見した。
シンディーとバディーが隠し部屋に入ると、そこには当主であるヒュー・ケインと愛人が屋敷で殺害された事件を報じる新聞が置かれていた。壁にはヒューの妻であるキャロラインの肖像画が飾られており、それはシンディーに良く似ていた。シンディーはテーブルの上に箱があるのをを発見し、それを開けようとする。しかし黒猫が現れたので、シンディーはバディーに箱を持たせて隠し部屋を去った。
アレックスはヒューの幽霊に犯されるが、淫乱な彼女はセックスに満足した。シンディーは寝室で箱を開けようとするが、そこへ黒猫が入って来た。黒猫に襲われたシンディーは、すぐに反撃する。激しい殴り合いの末、シンディーはノックアウトされた。彼女は「あの猫は普通じゃない」とオールドマンに話すが、信じてもらえなかった。レイは道化の人形に襲われるが、反撃してアナルをレイプした。
部屋に戻ったシンディーが箱を開けると、キャロラインの日記が入っていた。そこには、彼女がケインとベビーシッターの浮気を確信したことが綴られていた。その時、部屋の扉が開き、まばゆい光と共に「シンディー、真実を知ってほしいの」という女性の声が聞こえて来た。キャロラインの幽霊に憑依されたシンディーは、厨房へ行ってオールドマンを誘惑する。しかしシンディーの顔がレイに変化し、慌てたオールドマンは激しく突き飛ばした。その衝撃で我に返ったシンディーは、「彼女はここで浮気を知ったのよ」と述べた。
ショーティーは寝室で大麻を育てていたが、それに霊が乗り移った。巨大化した大麻に襲われた彼は、シーツに巻かれて吸われてしまう。悲鳴を聞き付けて、レイ、ブレンダ、バディーが駆け付けた。バディーがスナック菓子との交換を大麻に持ち掛け、ショーティーを解放してもらった。翌朝、シンディーは仲間たちに隠し部屋で見つけた新聞記事のことを話し、キャロラインの写真を見せる。「ケインは怖い男よ。奥さんの次に私を狙ってる」と話すと、アレックスが「思い上がりよ」と見下すように笑った。
バディーはオールドマンの不審な行動が気になり、後を追った。地下の研究室へ赴いたオールドマンは、ドワイトから実験を中止するよう求められる。「怪奇現象は予想以上です」と危険を訴えるバディーだが、オールドマンは「盛り上がって来たところだ。月曜日まで奴らを一歩も外に出すな」と告げて門の鍵を渡した。バディーは仲間たちの元へ戻り、「これは教授の策略だ。ドワイトが、怪奇現象による危険が迫っていると話してた」と知らせた。
セオはドワイトの元へ行き、殴り倒して鍵を奪った。オールドマンはキャロラインの幽霊に誘われて付いて行くが、襲われて悲鳴を上げる。シンディーたちは屋敷から逃げ出そうとするが、全ての扉と窓が閉じられてしまう。ドワイトは一行を研究室に移動させ、幽霊と戦おうと呼び掛ける。彼はシンディーたちに、幽霊を破壊する特殊な光線銃と追跡用のサーモ・ゴーグルを配布した。シンディーたちはチームに分かれ、幽霊退治に乗り出した…。

監督はキーネン・アイヴォリー・ウェイアンズ、キャラクター創作はショーン・ウェイアンズ&マーロン・ウェイアンズ&バディー・ジョンソン&フィル・ボーマン&ジェイソン・フリードバーグ&アーロン・セルツァー、脚本はショーン・ウェイアンズ&マーロン・ウェイアンズ&アリソン・フォウス&グレッグ・グラビアンスキー&デイヴ・ポルスキー&マイケル・アンソニー・スノウデン&クレイグ・ウェイアンズ、製作はエリック・L・ゴールド、製作協力はスー・ジェット&バリー・ローゼンブッシュ、製作総指揮はボブ・ワインスタイン&ハーヴェイ・ワインスタイン&ブラッド・ウェストン&ピーター・シュウェリン、共同製作総指揮はショーン・ウェイアンズ&マーロン・ウェイアンズ&リー・R・メイズ&リサ・スザンヌ・ブルム&リック・アルヴァレス、撮影はスティーヴン・バーンスタイン、編集はピーター・テシュナー&トム・ノードバーグ&リチャード・ピアソン、美術はシンシア・シャレット、衣装はメアリー・ジェーン・フォート&ヴァラリー・アダムス、音楽はジョージ・S・クリントン。
出演はショーン・ウェイアンズ、マーロン・ウェイアンズ、アンナ・ファリス、クリス・エリオット、トーリ・スペリング、ティム・カリー、ジェームズ・ウッズ、レジーナ・ホール、クリス・マスターソン、キャスリーン・ロバートソン、デヴィッド・クロス、アンディー・リクター、リチャード・モール、ヴェロニカ・カートライト、ジェームズ・デベロ、ナターシャ・リオン、リチャード・モル、ジェニファー・カーラン、リー・R・メイズ、コーデリア・ラインハルト、ロバート・シメル他。


2000年の映画『最終絶叫計画』に続く“Scary Movie”シリーズの第2作。
監督は前作に続いてキーネン・アイヴォリー・ウェイアンズ。
レイ役のショーン・ウェイアンズ、ショーティー役のマーロン・ウェイアンズ、シンディー役のアンナ・ファリス、ブレンダ役のレジーナ・ホールは、前作からの続投。他に、アレックスをトーリ・スペリング、オールドマンをティム・カリー、マクフィーリーをジェームズ・ウッズ、バディーをクリス・マスターソン、セオをキャスリーン・ロバートソン、ドワイトをデヴィッド・クロスが演じている。

『最終絶叫計画』では、ベースとなっている映画が『スクリーム』だった。
そもそも『スクリーム』がホラー映画のパロディー的な要素を持った作品であり、それをパロディー化しようってのは、いかがなものかと感じた。
今回は『ホーンティング』がベースなので、そこでの違和感は抱かなかった。
ただし、「なぜポンコツ扱いされている『ホーンティング』を土台にするのか」という疑問は感じるが。

『ホーンティング』の他に、冒頭シーンでは『エクソシスト』と『ヘルハウス』がネタに使われている。
メーガンがパーティー客の前に現れて、馬のように大量の小便を放出する。そんなメーガンを、母親がボコボコに叩きのめす。
「悪魔を解放したまえ」と神に祈っていたマクフィーリーは、実は便器に座って排便しており、ウンコが出て感謝する。恐ろしく寒いメーガンの部屋に入ったハリスが十字架にキスしたら、それが唇にくっ付いてしまう。
メーガンから「母親に言いたいことはあるか」と問われたハリスが「ママ、そこから出て」と言うと、ベッドに隠れていた彼の母親が出て来る。メーガンから「ファック・ミー」と挑発されたマクフィーリーは、彼女の上に乗ってファックしようとする。
前作もそうだったんだけど、オープニングだけは、それなりに面白いんだよなあ。
だけど、そこがピークで、それ以降はずっと低調だ。
ちなみに前作と同様、ホラー映画だけをパロディーに使っているわけではない。

前作では、同性愛、黒人、ドラッグといった要素が喜劇のネタとして多く含まれており、子供やホームレス、老人といった社会的弱者が暴力の標的になるネタもあった。
今回も当然のことながら、そういう「差別的なネタを使う」という方向性は変わっていない。
日本に比べると、北米の場合、ヤバそうなネタであっても、レーティングさえ高くすれば、そのまま公開できるケースが多い。
しかし日本の場合、同じようにはいかないようで、そこで本作品には厄介な問題が起きた。

この映画、日本では2001年9月に公開される予定だったが、急に延期された。
2002年10月になってようやく公開されたものの、その規模は当初の予定より小さくなり、しかも83分のはずの上映時間が75分に短縮された。
突然の公開延期と上映時間の短縮は、劇中に差別的な描写があったからだ。
上記した出演者の中にクリス・エリオットの名前があるが、彼の演じたヘルハウスの執事、ハンソンというキャラクターの関わる喜劇シーンが引っ掛かったのだ。

そこで日本では、クリス・エリオットの出演シーンをバッサリと全て削除して公開されることになった。
ハンソンというキャラクターがチョイ役だったり、クリス・エリオットが1シーンだけ登場する特別ゲストだったりすれば、それほど問題は無かっただろう。
しかし、ハンソンは物語において重要な役割を演じる、出番の多いキャラクターだ。クライマックスではドワイトと戦うシーンに、シンディーたちと戦うシーンという、彼が絡む2つの見せ場もある。さらに、ラストのオチにも彼が絡んでいる。
そんなキャラクターの登場シーンを全て削除したせいで、日本版では物語の進行に不自然な箇所があり、辻褄が合わなくなっている。

ハンソンは左手に障害があって、ミイラのように萎んだ状態となっている。
それを使ったネタが障害者差別に当たるってことで、自主規制の対象になったようだ。
ちなみに、ハンソンの登場シーンについて具体的に書いておくと、例えばヘルハウスに到着したシンディーが彼の左手で顔や髪の毛を触られて困惑するシーンや(っていうかシンディーとハンソンのやり取りが全てカットされているのだが)、食事を運んでくる夕食シーン(ハンソンが左手でマッシュポテトを混ぜたり、ターキーに左手を突っ込んだりする)、シンディーとブレンダとセオの3人が『チャーリーズ・エンジェル』のパロディーで彼と戦うシーンなどだ。

「たぶん、ここが特にアウトだったんだろうなあ」と感じるのは、ハンソンと車椅子に乗っているドワイトが互いに皮肉を言い合うシーン。
ハンソンがローラーブレードを装着しているドワイトに「転んだら怪我しますよ」と言うと、ドワイトが「面白いジョークだ。拍手を送るよ」と拍手する。
それに対して、ハンソンが「立ち上がっての喝采は?」と嫌味を言う。
ドワイトが「だったら持ち上げたらどうだ?」と告げると、ハンソンは「貴方は『ストンプ』のメンバーでしたっけ?」と言い、「歩いて退散しますよ」と立ち去る。

ただ、そこがダメなら、その部分だけをカットすればいいわけで。
ってことは、たぶん左手が収縮しているハンソンのキャラクター自体が、アウトという判断だったのだろう。
車椅子のドワイトは残しているし、大学にはトーマス・ジェファーソン大統領の「黒人妻は最高」という文字が刻まれた銅像があったりもするので、人種差別や障害者差別ネタを全て削除しているわけではないのに、ハンソンだけは削除しているわけだ。

ぶっちゃけ、パロディーをやっている箇所よりも、障害者ネタをやっている箇所の方が遥かに面白いんだけどね。
っていうか、障害者ネタとか人種差別ネタ以外は、ちっとも面白くないのよね。
ハンソンの部分を全てを削らなきゃ公開できないってのは、どこの誰が決めたのか、どういう圧力があったのかは知らんが、バカバカしいことだなあと感じる。
ただし、じゃあハンソンのシーンを削らなかったら作品の印象がガラリと変わっていたのかというと、そんなに変わらないと思う。
どっちにしろ、ポンコツであることには違いない。

(観賞日:2013年11月2日)


第24回スティンカーズ最悪映画賞(2001年)

受賞:【最悪の助演女優】部門[トリ・スペリング]

ノミネート:【最も痛々しくて笑えないコメディー】部門
ノミネート:【最悪の続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会