『最終絶叫計画』:2000、アメリカ

ハロウィンの夜、高校生のドリュー・デッカーが仮装した男に殺害された。同じ夜、ドリューと同じ高校に通うシンディー・キャンベルの部屋に、恋人の窓から恋人のボビー・プリンゼが入って来た。ボビーはシンディーとセックスしようとするが、それは失敗に終わった。翌朝、シンディーは登校し、友人のブレンダ・ミークスと会う。ブレンダには頭の悪いショーティーという弟がいて、彼も同じ高校に通っている。シンディーにはバフィーという親友もいるが、ブレンダは彼女のことを快く思っていない。しかしブレンダは、バフィーの間では愛想良く振る舞う。ブレンダにはレイ・ウィルキンス、バフィーにはグレッグ・フィリップという恋人がいる。
3人がキャンパスへ向かうと、ドリューの殺害事件を取材するためにマスコミが押し寄せていた。ボビーが来たところで、シンディーは仲間たちに「奇妙な偶然ね。私たちがあの男を殺してから、ちょうど1年よ」と言う。グレッグが「あれは事故だった」と指摘するが、シンディーは「そうかしら」と言い、1年前の出来事を回想する。その夜、6人はボビーの運転する車でドライブに出掛けた。後部座席で2組のカップルがイチャイチャするので、ボビーは助手席のシンディーにチンコを触るよう求めた。
興奮したボビーは脇見をしてしまい、男をはねた。シンディーは警察に連絡すべきだと主張するが、レイやグレッグは反対する。だが、男は倒れて気絶していただけであり、シンディーたちが相談している間に起き上がった。男は「大丈夫だ」と手を振るが、シンディーたちは全く気付かない。グレッグの投げた酒瓶が男の頭部に命中し、彼は気絶した。シンディー以外の面々は、死体を捨てようということで意見が一致した。シンディーは反対するが、残る面々は男が死んでいると思い込んだまま、車のトランクに運ぶ。
そこへショーティーと仲間たちが車でやって来た。彼らはドラッグでハイになっていた。ブレンダとレイがショーティーと話し、その場から去らせた。シンディーたちは車で船着き場へ行き、男を海に放り込んだ。グレッグが「このことは死ぬまで秘密だ」と言い、全員が秘密を守ると誓った。そのことを思い出したシンディーだが、仲間たちは「ただの偶然よ」と笑う。リポーターのゲイル・ヘイルストームは情報を得るため、頭が弱そうな保安官助手のドゥーフィーに声を掛けた。ドゥーフィーはバフィーの兄だった。
授業を受けていたシンディーは、不気味なマスクと死神の服で仮装した人物に気付いた。机の上に視線を戻すと紙が置いてあり、そこには「去年のハロウィンにお前たちがやったことを覚えてるぞ」と書かれていた。ボクシングで汗を流したグレッグがロッカールームへ行くと、「知ってるぞ」と書かれた写真が挟んであった。彼はグレッグの仕業だと思い込み、怒りをぶつける。写真を見たシンディーは「貴方だけじゃない。私もメモを受け取った。誰かが知ってるのよ」と告げた。シンディーは警察に通報すべきだと主張するが、グレッグは「通報したら殺す」と恫喝した。
バフィーはミスコンに参加し、特技として戯曲の朗読を披露しようとする。その時、2階にいたグレッグが仮装の人物に襲われるのを見た彼女は、慌てて「助けて、彼が殺されちゃう」などと叫ぶ。審査員や観客は素晴らしい名演技だと勘違いし、彼女に拍手喝采を送った。グレッグは殺され、バフィーは急いで彼の元へ行こうとする。だが、優勝したことを知らされると、大喜びでステージへ戻った。グレッグの死体は消失し、血痕さえ残っていなかった。
その夜、シンディーが自宅にいると、犯人から「お前を殺す。俺は家の中にいる、見つけられるかな」という電話が掛かって来た。すぐにシンディーは、ソファーの向こうに隠れている犯人を見つけた。シンディーは自分の部屋に逃げ込み、警察を呼ぶ。犯人が逃亡した後、ボビーが窓から入って来た。彼がナイフを持っていたので、シンディーは逃げ出そうとする。そこへドゥーフィーが来たので、シンディーはボビーを連行してもらった。
保安官の事情聴取を終えたシンディーは、ドゥーフィーとバフィーに付き添われて2人の家へ行く。その夜は、ドゥーフィーが「君たちが海に捨てた男は必ず見つけるから」と言うので、シンディーは驚いた。バフィーは「グレッグとの会話を聞かれたのよ」と弁明した。シンディーは犯人からの電話を受け、「ボビーは犯人じゃない」と告げられる。ボビーは釈放されるが、シンディーは彼に厳しい態度で当たってしまう。
犯人はチアリーダーのロッカールームでバフィーを殺害し、うるさい生首をゴミ箱に捨てた。その夜、シンディーたちの同級生ヘザーはゲイルの取材を受けている最中に殺された。ゲイルは慌てて逃げ出すが、カメラマンのケニーが殺された。ブレンダとレイは映画観賞に出掛けた。レイがトイレに入っている間、ブレンダは上映中にも関わらず大声で喋り続け、注意した観客たちを攻撃した。そのため彼女は、隣に座ってチャンスを狙っていた犯人ではなく、怒った観客たちに殺害された…。

監督はキーネン・アイヴォリー・ウェイアンズ、脚本はショーン・ウェイアンズ&マーロン・ウェイアンズ&バディー・ジョンソン&フィル・ボーマン&ジェイソン・フリードバーグ&アーロン・セルツァー、製作はエリック・L・ゴールド&リー・R・メイズ、共同製作はリサ・スザンヌ・ブルム、製作協力はロブ・ウィルソン・キング、製作総指揮はボブ・ワインスタイン&ハーヴェイ・ワインスタイン&ケイリー・グラナット&ピーター・シュウェリン&ブラッド・グレイ&ピーター・サフラン&ボー・ゼンガ、撮影はフランシス・ケニー、編集はマーク・ヘルフリッチ、衣装はダーライル・ジョンソン、音楽はデヴィッド・キタイ、音楽監修はマイケル・ディルベック。
出演はジョン・エイブラハムズ、リック・ダコマン、カルメン・エレクトラ、シャノン・エリザベス、アンナ・ファリス、カート・フラー、レジーナ・ホール、ロックリン・マンロー、チェリ・オテリ、デイヴ・シェリダン、マーロン・ウェイアンズ、ショーン・ウェイアンズ、ケリー・コフィールド、デヴィッド・L・ランダー、アンドレア・ネメス、ダン・ジョフレ、ジェイン・トロッカ、クレイグ・ブラーナンスキー、クリス・ワイルディング、トレヴァー・ロバーツ、ケンドール・サンダース、タニア・レイチャート、ピーター・ハンロン他。


『ゴールデン・ヒーロー/最後の聖戦』『ダーティ・シェイム』のキーネン・アイヴォリー・ウェイアンズが監督を務めた作品。
この人は俳優業もやっている人で、その2作品でも主演を務めている。他に、『グリマーマン』ではスティーヴン・セガールの相棒を務め、脚本と製作総指揮も兼任した『クロスゲージ』では主演している。
この映画では、ショーティーとブレンダが映画館で見る『アミスタッド』の予告編パロディー映像で奴隷役として、1カットだけ出演している。
キーネンの弟であるショーン・ウェイアンズとマーロン・ウェイアンズが脚本に携わっており、それぞれレイとショーティー役で出演もしている。
ボビーをジョン・エイブラハムズ、シンディーの父をリック・ダコマン、ドリューをカルメン・エレクトラ、バフィーをシャノン・エリザベス、シンディーをアンナ・ファリス、保安官をカート・フラー、ブレンダをレジーナ・ホール、グレッグをロックリン・マンロー、ゲイルをチェリ・オテリ、ドゥーフィーをデイヴ・シェリダンが演じている。

冒頭から、幾つものネタが次々に仕掛けてくる。
アヴァン・タイトルの部分だけ、細かく拾って行こう。
家にいるドリューは、犯人からの電話を受ける。相手は知らない男なのに、ドリューは質問を受けてペラペラ喋り続ける。「ホラー映画を見るの」と彼女が言うので、犯人は「好きなホラー映画は?」と質問する。
ドリューの出した答えはシャキール・オニール主演の『ミラクルアドベンチャー/カザーン』で、犯人に「あれはホラーじゃない」と指摘されると「シャキールの演技はホラーよ」と言う。

犯人は「今、君を見てる」と言うが、実際にドリューを見ているわけではなく、雑誌『PLAYBOY』を見ているだけ(カルメン・エレクトラはプレイメイトだった)。
「彼氏が来るわ、黒人で強いんだから」とドリューが脅すと、犯人は「化粧して女装した男か?ポーチを見てみろ」と言う。ドリューがポーチを見ると、椅子に縛り付けられた歌手のプリンスっぽい男がいるので、犯人に「あれは彼氏じゃない、何度か寝ただけよ」と告げる(カルメンは過去にプリンスと付き合っていた)。
インターホンが鳴るのでビビったドリューは、バットで訪問者を激しく殴打する。ところが、それはトリック・オア・トリートで訪れた近所の子供たちで、骨折してその場に倒れ込む。
ドリューが家に入ると、犯人が立っている。ちなみに犯人の格好は『スクリーム』の犯人と同じ。
近くの棚にドリューが目をやると、拳銃、包丁、ナイフ、手榴弾、バナナが並んでいる。4つは武器として使える道具だが、咄嗟にドリューが掴むのはバナナ。

ドリューが外へ逃亡すると「←安全」「死亡→」と書かれた標識が立っており、彼女は「死亡→」を選んで右へ走る。
彼女は犯人に服とスカートを剥ぎ取られて下着姿になり、スプリンクラーの水を浴びてTV番組『ベイウォッチ』のようにポーズを決める(カルメンは同番組でレギュラーを務めていた時期がある)。
犯人がナイフで右胸を突き刺すと、豊胸用のシリコンが抜き取られる。
ドリューは両親が車で戻って来たので助けを求めるが、居眠りしていたパパにひかれて吹っ飛ぶ。

犯人が倒れ込んだドリューを惨殺してタイトルが表示されるまでに、それだけのネタが盛り込まれている。
っていうか、表記しなかったネタもあるので、もっと詰まっている。
で、このアヴァン・タイトルを「楽しい」「面白い」と感じたら、それで1つ目のハードルを越えたことになる。
そういう人なら、この映画を最後まで見ても楽しめる可能性がある。
ただし、あくまでも「可能性」に過ぎない。アヴァン・タイトルだけでは、この映画の本質は、まだ見えて来ない。

本編に入っても、基本的なテイストは、そのアヴァン・タイトルと変わらない。
ただし、そこに同性愛、黒人、ドラッグといった要素が多く含まれてくる。
子供やホームレス、老人といった社会的弱者が、暴力の標的になるというネタもある。
もちろん、そういった事柄を辛辣に風刺しようとか、何か社会派のメッセージを訴えようとか、そういうことではなく、おバカなネタとして持ち込まれている。
ちなみに、同性愛ネタはホモセクシャル限定なのだが、そこはやっぱり「ホモは笑えるけど、レズだと笑いにならない」ってことなんだろうな。
その感覚は、何となく分からないではない。

色んなネタがある中で、最も多いのは下ネタだろう。
「知ってるぞ」と書かれたグレッグの股間の写真が、ロッカーに挟んである。
ティーンズ・ビューティー・ペイジメント(ミスコンみたいな大会)に、バフィーが「ミス・フェラチオ」として参加する映画館のトイレに入ったレイが、チンコで耳を貫かれる。
ボビーとセックスしていたシンディーが、大量のスペルマで天井まで吹っ飛ばされる。
などなど、かなり多くの下ネタが盛り込まれている。
映像的な表現だけでなく、セリフの中で下品なことを喋るというのも多い。

後回しになったが、もちろん色々な映画のパロディーも盛り込まれている。
タイトルだけ列挙すると、ベースとなっている『スクリーム』と『スクリーム2』の他に、『ラストサマー』『13日の金曜日』『アメリカン・パイ』『エルム街の悪夢』『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『シックス・センス』『アミスタッド』『タイタニック』『マトリックス』『ビートルジュース』『ユージュアル・サスペクツ』『ファイナル・デスティネーション』。
それにTVドラマ『ベイウォッチ』と『ドーソンズ・クリーク』といった具合だ。
アンクレジットだが、序盤のシンディーの寝室シーン、窓から覗く男は『ドーソンズ・クリーク』のジェームズ・ヴァン・ダー・ビークで、ドーソン役として登場している。
全てをチェックしたわけじゃないから、他にもあるかもしれない。

『スクリーム』と『ラストサマー』に関しては、「まるで『スクリーム』みたいだ」とショーティーが言ったり、シンディーとグレッグの「もし映画だったら私の役はジェニファー・ラヴ・ヒューイットね」「30代なのに高校生の役をやらせたりするんだぜ」という会話があったりする。
また、ヒロインのシンディー・キャンベルという名前は、『スクリーム』でシドニーを演じたネーヴ・キャンベルから取っている。ドリュー・デッカーは、ケイシー・ベッカーを演じたドリュー・バリモアからだ。
ドゥーフィーは『スクリーム』でデヴィッド・アークェットが演じた保安官補のデューイから、ブレンダ・ミークスはジェイミー・ケネディーが演じたランディー・ミークスから取っていると思われる。
ボビー・プリンゼの名前は『ラストサマー』の出演者フレディー・プリンゼJr.から、グレッグ・フィリップはライアン・フィリップから取っている。
バフィー・ギルモアは出演者のサラ・ミシェル・ゲラーが出演していたTVドラマ『バフィー 〜恋する十字架〜』から取っているんだろう。

そもそも『スクリーム』自体がホラー映画のパロディー的な要素を持った作品であり、それをパロディーにしようってのは、その感覚を疑いたくなる。
パロディーのパロディーって、そりゃ難しいでしょ。
ただ、見ている途中で気付いたんだけど、実は『スクリーム』に関しては、それをパロディー化しようってことよりも、パロディー映画の土台としてフォーマットを利用しようっていう意識の方が強いんじゃないかな。
『スクリーム』はパロディーの要素を持ったホラー映画として上手くまとまっているから、その構成や筋書きをなぞって土台を作り、その上にネタを配置していけば作るのが容易になるっていう考え方だったんじゃないかと。

(観賞日:2013年7月12日)


第23回スティンカーズ最悪映画賞(2000年)

ノミネート:【最も笑えないコメディー・リリーフ】部門[『最終絶叫計画』の90パーセント]

 

*ポンコツ映画愛護協会