『ソウ6』:2009、アメリカ&カナダ&イギリス&オーストラリア

シモーネとエディーが目を覚ますと、それぞれが別のゲージに監禁されていた。2人は頭部に装置を取り付けられ、目の前のテーブルには複数の刃物が置いてある。モニターに登場したビリー人形は闇金融における2人の悪行を指摘し、秤に自分の肉を乗せて相手より重い方が助かることを説明した。タイマーが60秒から動き出し、ヘッドギアのボルトが回転して頭部を抉る。エディーは腹の肉を削いで秤に乗せるが、シモーネは左腕を切断してゲームに勝利した。
アンブレラ保険会社の保険金サービス部統括責任者を務めるウィリアム・イーストンは、裁判の宣誓証言を控えている。法務責任者のデビーはリハーサルを要求し、原告の弁護士からハロルド・アボットについて訊かれた時の返答について質問する。ハロルドは10年以上前から保険料を支払っていたが、病歴の告知義務違反を理由にウィリアムは保険の適用を却下した。ハロルドは「心臓病の顎の手術は関係ない」と主張するが、ウィリアムは認めなかった。激しい言葉で非難されたウィリアムは、「例外は認められない」と告げた。ウィリアムには6人の部下がいて、彼らが加入者の病歴を調査していた。
ホフマンは連絡を受け、何食わぬ顔でエディーの死体発見現場へ赴いた。そこにはFBI捜査官のエリクソンが来ており、ホフマンの狙い通りに死体からストラムの指紋を検出していた。エリクソンはストラムがジグソウの共犯者だと断定し、ホフマンを死んだはずのペレーズに会わせる。驚くホフマンに、エリクソンは共犯者が判明するまでペレーズの身柄を守っていたことを説明した。ストラムの死を知らないエリクソンとペレーズは、合同での捜査をホフマンに要請した。
ジャーナリストのパメラ・ジェンキンスはホフマンと接触し、ジョンが遺産として妻に箱を残した情報を掴んでいることを話す。彼女が報道は控えるのでジルの居場所を教えてほしいと要求すると、ホフマンは「考えておく」と受け流した。ジルは自宅で妊娠した頃の映像を見ながら、箱に入っていた6つの封筒を並べる。「2」という番号の封筒には、パメラの写真が入っている。6つの封筒は、ジョンがジルに委ねたゲームの被験者たちに関する資料だった。
ホフマンはエリソクンとペレーズの3人で、エディーを解剖した検死医から説明を受ける。検死医はホフマンたちに、遺体の皮膚を切り取る際に使った道具が今までと異なることを告げた。今回と同じ傷痕だったのは、セスのケースだけに限られていた。エリソクンたちはホフマンに、セスの時に使われたテープを探していること、その声を照合するつもりであることを話した。ホフマンはジルを訪ね、遺品の引き渡しを要求した。ジルは5枚の封筒を差し出し、それで全てだと嘘をついた。
ホフマンはウィリアムを騙して会社の警備員に発砲させ、薬で眠らせて拉致した。ウィリアムが目を覚ますと、地下室で拘束されていた。モニターにはジョンが現れ、ウィリアムが独自の計算方式を編み出して、病気になりそうな人間を切り捨てて来た行為を批判した。4つの枷を装着されたウィリアムに対し、ジョンは4つのテストを通過できなければ装置が爆発することを説明した。タイマーは60分から作動し、ジョンは他にも参加者がいることを告げた。
別の部屋ではタラと息子のブレントが目を覚まし、モニターに写るウィリアムの様子を確認した。ウィリアムの部屋には、拘束されている用務員のハンクが登場した。ジョンは2人に装置の仕掛けを説明し、「逃れる方法は相手が脱落すること」と告げた。呼吸をする度に万力が体を締め上げ、やがてハンクの絶命と共にウィリアムは装置から解放された。ウィリアムは鍵を見つけて右手の枷を外し、壁の矢印に従って移動した。
タラとブレントはゲージに監禁されており、壁際にはフッ化水素のタンクが置いてあった。タイマーやレバーの意味が分からず、2人は思い切った行動を取れなかった。「何故こんなことに?」とブレントが漏らすと、タラは「お父さんのことが原因よ」と言う。ホフマンは母子の様子を観察しながら、封筒に入っていた2人の写真を確認する。パメラはションの死体発見現場で発見した紙をジルに渡して追い払われた後、ホフマンに襲われた。パメラは薬で眠らされ、地下室で横たわっていた。
ウィリアムは右手首に刻まれた「THE PARTY」の文字を見て、パーティー会場でジョンと会った時のことを回想した。ジョンはウィリアムの計算式について、「生きようとする者の意思を考慮していない」と指摘した。回想を終えて先へ進んだウィリアムは、秘書のアディーと文書整理員のアレンが拘束されている現場に辿り着いた。ビリー人形はウィリアムに装置の仕掛けを説明し、「生き残るのは1人だけ。決めるのはお前だ」と告げた。ウィリアムは苦悩するが、最終的にはアディーを生かすことを選んだ。ウィリアムはアディーに逃げるよう指示し、手に入れた鍵で左手の枷を外した。
タラとブレントは、壁の鏡がマジックミラーになっていると気付いた。パメラは目を覚まし、フッ化水素タンクの前にレコーダーが置いてあるのを発見した。彼女がレコーダーを再生すると、ジョンの声が録音されていた。ウィリアムは左手首の文字を見て、ジョンが会社を訪れて「効果が期待できそうな癌の治療方法を見つけた」と告げた日のことを思い出す。彼は保険の給付申請を却下されていたが、再考を求める。ウィリアムが「保険の適用外です。我が社の方針です」と説明すると、ジョンは厳しい言葉で非難した。
ボイラー室に入ったウィリアムは、デビーが拘束されているのを目にした。レコーダーから聞こえるジョンの声は、仕掛けについて説明した。ウィリアムはデビーに指示を出し、高温スチームの罠が仕掛けられた通路から脱出させる。ウィリアムの体内に鍵が埋めてあると気付いたデビーは、電動カッターを握って襲い掛かる。しかしウィリウムが必死で逃げたため、時間切れで死亡した。ボイラー室から脱出したウィリアムは、鍵を発見した。ホフマンはペレーズから、セスの現場で発見されたテープの音声を分析中だと知らされる。エリクソンが分析官から連絡を受け、ホフマンとペレーズも一緒にラボへ向かった…。

監督はケヴィン・グルタート、脚本はマーカス・ダンスタン&パトリック・メルトン、製作はグレッグ・ホフマン&オーレン・クールズ&マーク・バーグ、共同製作はトロイ・ベグナウド、製作総指揮はダニエル・ジェイソン・ヘフナー&ピーター・ブロック&ジェイソン・コンスタンティン&ジェームズ・ワン&リー・ワネル&ステイシー・テストロ、撮影はデヴィッド・A・アームストロング、美術はトニー・イアーニ、編集はアンドリュー・クーツ、衣装はアレックス・カヴァナー、音楽はチャーリー・クロウザー。
出演はトビン・ベル、コスタス・マンディロア、ショウニー・スミス、ベッツィー・ラッセル、マーク・ロルストン、ピーター・アウターブリッジ、アシーナ・カーカニス、サマンサ・レモール、キャロライン・ケイヴ、ジョージ・ニューバーン、ダリウス・マクラリー、ショーナ・マクドナルド、デヴォン・ボスティック、タネドラ・ハワード、ショーン・マシソン、メラニー・スクロファーノ、カレン・クリシェ、ジェームズ・ギルバート他。


シリーズ第6作。
1作目から編集を担当してきたケヴィン・グルタートが、長編初監督を務めている。脚本は3作連続でマーカス・ダンスタン&パトリック・メルトンが担当。
ジョン役のトビン・ベルは1作目から、ホフマン役のコスタス・マンディロアは3作目から、ジル役のベッツィー・ラッセルは4作目から、エリクソン役のマーク・ロルストン、パメラ役のサマンサ・レモールは前作からの続投。
アマンダ役のショウニー・スミスは3作目以来の復帰。ペレーズ役のアシーナ・カーカニスは4作目に続く出演。
他に、ウィリアムをピーター・アウターブリッジ、デビーをキャロライン・ケイヴ、ハロルドをジョージ・ニューバーン、デイヴをダリウス・マクラリー、タラをショーナ・マクドナルド、ブレントをデヴォン・ボスティックが演じている。

今回もオープニングから、グロテスクな殺人ショーを見せようという意識が強くなっている。
回想シーンが多く盛り込まれ、これまでの展開の説明をするってのも前作と同じ。そして前作に引き続いて、今回もシリーズの定番だったドンデン返しは用意されていない。
つまり、2作目の段階で生じた著しい劣化に加え、前作でさらに進んだ劣化が受け継がれているってことだ。
まあシリーズ作品ってのは大抵の場合、6作目や7作目で急激に盛り返すなんてことは無いしね。

ウィリアムのゲームでは、ビリー人形ではなくジョン本人がモニターに登場する。さらに、仕掛けが爆発することを証明する実験映像まで写し出している。
まるで開き直ったかのように、今までとは全く異なるパターンをやっている。
だが、今回だけジョン本人が登場したり実験映像を見せたりすることに何か特別な意味があるのか、そこに何らかの仕掛けが用意されているのかというと、そんなモノは全く無い。
だから、単に統一感が無くなっているだけだ。

これまでの伏線を回収する作業が大きく扱われているので、シリーズを見ていない人、見ていても内容を覚えていない人は付いて行くのが困難ってのは、前作までと同じだ。
つまり、この映画を観賞する前に、前作までの復習をしておく必要があるわけだ。
まあ熱烈なファンなら、わざわざ復習しなくても覚えているから問題は無いだろう。
ようするに、それぐらい熱心なファンじゃないと充分に堪能するのは難しいわけで、どんだけ観客層を絞り込んじゃってるのかと。

前作の批評で「回想シーンを入れれば入れるほどジョン・クレイマーが矮小化される」と書いたが、それは回想シーンに限らず、彼の企画したゲームが増えていくことも大きな影響を及ぼしている。
1作目の彼は「被験者を死と向かい合わせて生きることの意味を見出させる」「自らの業を真摯に受け止めさせて生させる」という目的を掲げていたが、ゲームが繰り返されたり過去の真相が説明されたりする中で、「それは被験者に選ぶべき相手なのか」「それは単に逆恨みを晴らしたいだけじゃないのか」などと言いたくなってくるのだ。
まあ、実は2作目の段階で、既にジョンのボロは剥がれていたんだけどね。偉そうな御託を並べているけど、殺人ジジイに過ぎないという底の浅さが露呈していたんだけどね。前作ではホフマンに「殺人は不愉快極まりない」と怒っていたけど、「お前が言うな」とツッコミを入れたくなったし。
本人は「殺人じゃなくて更生」「チャンスを与えている」と説明していたけど、結果的にゲームに失敗して被験者が死んだら、それは殺人でしかないしね。「どちらか片方しか助からない」というゲームなら、その時点で殺人だし。

つまり今回のゲームも、例えばウィリアムがハンクのどちらか片方は必ず死ぬわけだから、「更生のチャンスを与える」というルールが成立していない。デビーのゲーム以外は、やはり全員が生き残る道は残されていない。
アディー&アレンやチーム6人のゲームに関しては、もはや拘束された本人に選択権が与えられていない。被験者はウィリアムの選択によって生死が決定されるだけであり、「何かを犠牲にすれば助かる」というルールに反している。
それはホフマンが勝手にルールを変えたわけではなく、ジョンの残したゲームだ。
つまり、今さら言うまでもないことだが、ボンクラな後継者だけでなくジョンも、自ら制定したはずのルールを平気で破っているのである。

そもそもジョンがウィリアムに選択を迫る被験者の面々は、殺されるほど酷いことをしているだろうか。
ハンクは「52歳で高血圧と心臓病を患っているが、煙草を吸い続けている。与えられた命に対する感謝の心が欠けている」という理由で被験者にされているのだが、どう考えてもメチャクチャだ。
アディーやアレンに関しては、そういう説明さえ用意されていない。
ただ単に「ウィリアムの部下だった」というだけで生贄にされているとしか思えないし、それはジョンのルールから完全に逸脱しているでしょ。

「それは彼らのゲームじゃないから」ってのは、何の言い訳にもならない。本人のゲームじゃないのに、他人のゲームのために勝手に生贄にされるのなら、ますますルール違反だろ。
パメラに対する「お前は私のことを報道で煽り、都合良く事実を捻じ曲げ、メッセージを利用した」というジョンの批判も、「攻撃対象を広げ過ぎだろ」と言いたくなる。
そうやって手を広げることが、ジョン・クレイマーという殺人鬼のカリスマ性をどんどん削ぎ落としていく。
タラとブレントに至っては、ただの被害者じゃねえか。そりゃあ最初からタラたちが死ぬ可能性はゼロだったわけだが、でも拉致して「殺すかどうか選択しろ」と迫るんだから、メチャクチャだよ。

今回も続編が決定した状態で製作されているので物語は完結せず、何も解決していないので、見終わってもスッキリしない。
ホラー映画の場合、「死んだはずの殺人鬼が最後に起き上がる」とか、「ヒロインが襲われてエンドロール」とか、そういう終わり方をすることはある。
だけど、それは「ホラー映画のパターン」としてやっているだけなので、そのせいでモヤモヤするようなことは無い。
本作品の「ホフマンがゲームをクリアして生き残る」という終わり方は、まるで意味が違う。

っていうかさ、ジルがホフマンに生き残ることの出来るゲームを仕掛けている時点で、バカじゃねえのかと言いたくなるんだよな。
もしもホフマンが生き残ったら復讐されることは確実なわけで、それを考えれば確実に始末すべきでしょ。ホフマンにゲームを仕掛けるのは、ジョンの遺志を引き継がず勝手な行動を繰り返していたことに対する処罰なんだし。
そんなトコだけ律儀にジョンのルールを踏襲する必要なんて無いでしょ。
ホフマンが生き残っても自分が復讐されずに助かる保険を用意しているならともかく、そうじゃないんだし。

(観賞日:2015年8月22日)

 

*ポンコツ映画愛護協会