『サンタクロース・リターンズ! クリスマス危機一髪』:2002、アメリカ

契約を結んでサンタクロースになったスコット・カルヴィンは、北極で妖精たちと共に暮らしていた。飛行機が北極の上空に飛んで来たため、スコットや妖精のチーフであるバーナードたちは作業を中止して全ての音を消す。だが、建物の中から大音量の音楽が聞こえて来る。スコットたちが慌てて現場へ行くと、妖精のカーティスが曲を聴いていた。スコットは音を止めて、バーナードが注意した。
スコットの息子であるチャーリーは、ガールフレンドのダニエルと共に深夜の学校へ忍び込んでいた。チャーリーは天井から体育館に入り、壁に落書きをするが、校長のキャロルに見つかってしまった。バーナードはカーティスに、悪い知らせをスコットに伝える役目を指示する。しかしカーティスが尻込みするので、バーナードが自ら報告しようとする。そこへ妖精のアビーが現れてスコットに良い子悪い子リストを渡し、チャーリーが悪い子リストに載っていることを教えた。
息子のことでショックを受けているスコットに、バーナードとカーティスが別の悪い知らせを説明する。契約には続きがあって、結婚する必要があるというのだ。もし結婚しなければ、スコットはサンタでなくなってしまうのだと彼らは教えた。既にスコットの体には、髭が短くなったり、体重が少し減ったりという変化が起きていた。クリスマス・イヴまでの28日間で結婚相手を見つけなければならないという説明を受け、スコットは弱気になった。
スコットは伝説の人物会議に出席し、歯の妖精、マザー・ネイチャー、キューピッド、イースター・バニー、サンドマンに2つの問題を打ち明けた。カーティスはスコットに、特製の複写機でコピーを作るよう持ち掛けた。そのコピー・サンタを北極に残して妖精たちの監督を任せて、その間にスコットがチャーリーと会ったり花嫁を探したりすればいいというのだ。バーナードは反対するが、ネズミの精巧なコピーが誕生するのを見たスコットは、カーティスのアイデアに乗った。
複写機で誕生したスコットのコピーは、かなり不自然でオモチャのような外見だった。スコットはバーナードに、「妖精たちに本物だと思わせろ。なるべく近付けず、イメチェンしたんだと説明するんだ」と指示した。彼はトナカイのコメットに乗り、アメリカへ向かうことにした。バーナードは魔法メーター付きの腕時計をスコットに渡し、「魔法メーターは10です。これが0になったら北極には戻って来られません」と告げた。
アメリカに到着したスコットは学校へ出向き、元妻のローラ、彼女の再婚相手であるニールと会った。ニールとローラは、チャーリーの悪戯がどんどんエスカレートしていることを話す。以前もスコットはチャーリーの悪戯が原因で学校から呼び出しを受け、キャロルと会っていた。スコットたちが話しているとキャロルが現れ、「息子さんと会う時間をもっと増やせば、問題は減るんじゃありませんか」と冷たい態度で述べた。
校長室に移動したスコットは、厳格な態度でチャーリーの行動を批判する。スコットが「この学校にはクリスマスの飾り付けも無いし、子供たちをワクワクさせる物が何も無い」と言うと、キャロルは「そんなことに資金を無駄遣いしていると、本当に大切な物が失われる」と告げた。スコットはチャーリーに「二度と落書きしない」と約束させると、強引に話し合いを打ち切って校長室を出て行った。
カーティスはコピー・サンタにハンドブックを渡し、サンタとして守るべき事柄を覚えるよう指示した。サンタは守られていないルールがあることを知り、「これからは厳密にルールを順守する。やり方を変える」と口にした。スコットはニールたちの家へ行き、結婚問題が起きていることを語った。ニールとローラにはルーシーという娘が産まれており、スコットにも懐いていた。ニールたちと話している間にもスコットの体の変化は続いており、とうとうヒゲが完全に無くなってしまった。
スコットはローラの紹介で、彼女の知り合いであるトレイシーとレストランでデートする。ローラは歌手志望であることを話し、いきなり立ち上がって大声で歌い始めた。スコットが困惑した表情を浮かべていると、ローラは彼を残して去ってしまった。チャーリーが学校のロッカーに落書きをしたため、スコットは呼び出しを受けてキャロルと会った。キャロルが停学処分を通達するので、スコットは「他にも手はあるでしょ」と言う。キャロルが「例えば?」と問い掛けると、スコットは咄嗟に「社会奉仕とか?」と口にした。
キャロルはスコットの案に納得し、「では落書きを消して、今週一杯は学校中のロッカーの汚れを全て消して。土曜日にレクリエーション・センターの落書きを落とす奉仕活動があるから、それにも来て」とチャーリーに命じた。さらに彼女は、スコットにも土曜日の奉仕活動に参加するよう要求した。一方、コピー・サンタは勝手に良い子悪い子リストをチェックし、子供たちの小さな悪さが大目に見られていることを知る。彼は小さな悪戯も見逃さず、悪い子リストに掲載することをバーナードたちに告げた。
土曜日、奉仕活動に参加したスコットは、すっかり普通の体型に戻っていた。パメラという少女が彼に歩み寄り、クリスマスに欲しい物をおねだりした。スコットは彼女の名前を呼び、良い子にしていれば望む物が貰えることを優しく告げた。彼女が去った後でスコットが魔法メーターを見ると、9に減っていた。夜、スコットはキャロルの家を訪れ、夕食に誘う。しかし教職員のクリスマス・パーティーに行く予定があるというので、送って行くと申し出た。するとキャロルは、一緒に参加するようスコットを誘った。
キャロルが外に出ると、スコットが馬とソリを用意していたので笑った。ソリで会場へ向かう途中、キャロルは子供の頃の思い出を語り、クリスマスに赤ちゃん人形が欲しかったことを話した。パーティーには多くの教師たちが参加したが、まるで盛り上がらなかった。そこでスコットは「プレゼント交換をしましょう」と提案し、魔法で出現させた袋を持って来た。彼は教師たちが子供の頃に好きだった商品を次々に袋から取り出し、みんなを大喜びさせた。
教師たちが笑顔になってパーティーが盛り上がる中、スコットはキャロルに赤ちゃん人形をプレゼントした。キャロルは2人きりになって彼に礼を述べ、そしてキスをした。一方、コピー・サンタは妖精たちに対し、「もうオモチャは作らない。この世は悪い子ばかりだから、代わりに石炭を作ってプレゼントする」と言い出した。彼は機械で巨大化させたオモチャの軍隊を使い、妖精たちを服従させた…。

監督はマイケル・レンベック、原案はレオ・ベンヴェヌーティー&スティーヴ・ルドニック、脚本はドン・ライマー&シンコ・ポール&ケン・ダウリオ&エド・デクター&ジョン・J・ストラウス、製作はブライアン・ライリー&ロバート・F・ニューマイヤー&ジェフリー・シルヴァー、製作総指揮はウィリアム・W・ウィルソン三世&リック・メッシーナ&リチャード・ベイカー&ジェームズ・ミラー、製作協力はブルース・フランクリン&マット・キャロル、撮影はアダム・グリーンバーグ、編集はデヴィッド・フィンファー、美術はトニー・バロウ、衣装はイングリッド・フェリン、特殊メイクアップ&アニマトロニック効果デザインはアレック・ギリス&トム・ウッドラフJr.、音楽はジョージ・S・クリントン、音楽監修はフランキー・パイン。
主演はティム・アレン、共演はジャッジ・ラインホールド、ウェンディー・クルーソン、エリザベス・ミッチェル、デヴィッド・クラムホルツ、エリック・ロイド、スペンサー・ブレスリン、リリアナ・マミー、ダニエル・ウッドマン、アート・ラフラー、アイシャ・タイラー、ケヴィン・ポラック、ジェイ・トーマス、マイケル・ドーン、クリストファー・アッタディア、カーティス・バットチャート、ジャマール・アレン、アレクサンダー・ポラック、ブライス・ホジソン、モリー・シャノン、カルメン・アキーレ、リアン・アダチ他。


1994年の映画『サンタクローズ』の続編。
監督は『あきれたあきれた大作戦』『ドリーム・チーム』のマイケル・レンベック。
スコット役のティム・アレン、ニール役のジャッジ・ラインホールド、ローラ役のウェンディー・クルーソン、バーナード役のデヴィッド・クラムホルツ、チャーリー役のエリック・ロイドは、前作からの続投。
キャロルをエリザベス・ミッチェル、カーティスをスペンサー・ブレスリン、ルーシーをリリアナ・マミーが演じている。

前作では、北極の地下に1つの建物があって、その中にサンタの工房や寝室などといった形だった。
しかし今回は、北極の地面の下に1つの町が広がっていて、そこに複数の建物が設置されているという状態だ。
そこが大きく異なるのは別にいいとしても、基地みたいな施設があるのは違和感が否めない。
飛行機が飛んで来たら作業をストップして全ての音を消しているんだけど、飛行機が飛んで来る度に、そんなことをやってるのかよ。面倒で仕方が無いだろ。

しかも、「飛行機が接近すると作業を止めて音を消す必要がある」ってのは、その冒頭シーンを描くためだけに持ち込まれた設定だからね。
もっと言っちゃうと、そこで描く必要があるのは「カーティスがドジ」という部分だけだ。
それを描くのなら、他に幾らでも方法がある。
それと、そこは本来、「サンタになったスコットの現在の様子」を何よりも提示すべきなのに、そうじゃなくて前作とは異なる北極の施設とカーティスをアピールするためのシーンになってしまっている。

アビーはチャーリーが悪い子に入っているリストをスコットの元へ持って来るが、これは不可解に思える。
というのも、前作ではスコットが良い子悪い子のリストを作成していた。
つまり彼に権限があるはずなんだから、チャーリーが悪い子リストに入っているのは変でしょ。
スコットに決定権が無いのであれば、誰が良い子悪い子リストを作っているのかという疑問が生じるけど、そこの説明は無いし。

「契約には続きがあった。カードにも書かれていたけど、今までバーナードやカーティスたちは見落としていた」という御都合主義は受け入れるにしても(しかし8年にも渡って見過ごしていたのかよ)、「サンタ契約を結んだ時点で結婚していた場合はどうなるのか」という疑問は残る。
あと、スコットは結婚が必要だと知って「プレゼントを待っている子供たちはどうなる?妖精たちは?」と焦るし、バーナードとカーティスも深刻な表情を浮かべるけど、それは変だ。
スコットがサンタでなくなったら、別の人間とサンタ契約を結べば済むでしょ。スコットだって、前任者が続けられなくなったから新たな契約者になったわけで。
今までだって、そうやって「前任者がダメになったら新たなサンタ」という風にサンタは交代してきたはずで、スコットだけが特別扱いになっているのは不可解だ。

あと、スコットがサンタじゃなくなることに対して焦りを見せるのも、ちょっと引っ掛かるんだよね。
だってさ、サンタじゃなくなれば、今までと違って自由にチャーリーと会うことも出来るんだから。そこに迷いや葛藤は発生しないのかと。
そこも全て、「契約が失効すれば、この世からサンタが消滅する」という風に描いていることがネックなのだ。
あと、「結婚しなきゃ契約が失効する」ということなら、「急いで結婚相手を見つけないと」じゃなくて、「急いで次のサンタを見つけないと」ってことになる方がスムーズじゃないのか。少なくとも、妖精たちはそういう考え方になる方が自然じゃないかと思うが。
諸々含めて、シナリオに無理があるんだよな。

スコットはカーティスの提案を受け、コピーを北極に残して妖精たちの管理を任せ、アメリカへ行くことにする。しかし、これは変だ。
前作において、スコットは契約を結んでから翌年の感謝祭まで、ずっとアメリカで普通に暮らしていた。北極で妖精たちの管理をしていたわけではない。妖精たちは誰の仕切りも無いまま、作業をやっていたのだ。
それに今回だって、別にコピー・サンタがいなくても妖精たちは普通に作業をやっている。コピー・サンタなんて、全く必要性が無い。
そのキャラを使ってコメディーを構築したいってのは分かるけど、登場のさせ方、物語への絡ませ方に無理がありすぎる。

バーナードはスコットに魔法メーター付きの時計を渡して「魔法を使う度に減って行き、ゼロになったら北極へ戻って来られなくなる」と説明するのだが、サンタって魔法が使えたのか。
前作では、そんな設定は無かったはずだけど。
煙突に入る時に浮遊したり、小さくなって吸い込まれたりという描写はあったけど、あれが魔法ってことなのか。
でもスコットが意識して使っていたわけじゃなかったぞ。

そんでパメラと話した後にメーターが減っているんだけど、それって「少女が名乗っていないのに、パメラと呼び掛けた」ってことが魔法だということらしい。
そんなのも魔法なのかよ。
あと、その程度なら、無駄に魔法を使う必要性が無いだろ。別に名前を呼ばなくても、ただ普通にお喋りして終わりにすりゃあ良かったじゃないか。
あと、スコットが普通の体型に戻っているのに、なぜパメラは彼がサンタだと分かったのか、そこも引っ掛かるぞ。

チャーリーが悪戯を何度も繰り返しているとか、そのことでスコットが呼び出しを受けて過去にもキャロルと会っているとか、そういう設定はマイナスでしかない。
キャロルと会うのは、今回が初めてということにしておいた方がいい。
あと、チャーリーが何度も落書きを繰り返していたのなら、以前から悪い子リストに入っていたはずでしょ。
なんで今になって悪い子リストに入るのか分からんぞ。

前作のチャーリーはサンタを信じており、スコットに懐いていたこともあって、スコット&チャーリーを使って親子の絆、家族の絆の物語を描くことは出来ていなかった。
しかし今回は、例えばチャーリーが反抗期に入っているとか、なかなかスコットと会えないから寂しさから荒れた行動を取るとか、そういう設定にすれば、「ギクシャクした親子関係を修復する」ということで家族の絆を描くドラマを作ることが出来る。
そこにサンタを信じないチャーリーの同級生でも絡めれば、いかにもディズニーらしい明朗で健全なクリスマス映画になるだろう(そういう健全性が邪魔になることもあるが、ファミリー向けのクリスマス映画としては、その方向性は悪くない)。

でも実際は、そういう内容になっていない。そもそも、チャーリーはスコットやニール&ローラに対して、そんなに反抗的な態度を取っているわけではない。
むしろスコットに初恋のことを相談するようなシーンもあったりする。
ただ、そんなチャーリーのガールフレンドであるダニエルは、序盤の1シーンで登場した後、後半に入らないと登場しないし、ものすごく出番は少ない。
だから、チャーリーの初恋という要素は、全く活用されていない。

スコットはキャロルを嫌っていたはずなのに、デートに誘うのは、あまりにも唐突だ。
たぶん奉仕活動の時に彼女の笑顔を見て気持ちが変わったということなんだろうけど、スムーズに納得できるものではない。
一方のキャロルも、スコットに対して自分のことを饒舌に話しており、冷淡で厳格な態度は完全に消え失せている。
これまた、かなり急激な変化だと感じる。変化するようなきっかけなんて特に見当たらなかったし。
っていうか、「最初は互いに嫌っていて反発し合っていた2人が次第に惹かれ合うように」という展開が無いのなら、キャロルを最初から柔和なキャラにして、スコットは最初から彼女に惹かれる形にしておけばいいでしょ。

スコットが「どうしても必要に迫られて」というわけでもないのに、安易に魔法を消費してしまうのはバカにしか思えない。
パーティーで教師たちにプレゼントを配ってメーターの残りが2になってしまうとか、どんだけ思慮深さに欠けた行動なのかと。
これが例えば「無意識の行動で、知らない内にメーターが減っている」ということなら仕方が無いけど、メーターが減ると分かった上での行動だからね。

そもそも続編を作るという時点で厳しいものがあるとは思うんだが、よりによって、なぜ「花嫁探し」という要素をメインに据えたのか理解に苦しむ。
「契約でサンタになった子持ちの男」という主人公の設定を、上手く活用しているとは到底思えない。
花嫁探しをする話であれば、主人公は「サンタクロースだった父親から跡目を引き継いだジュニア」ということでも構わないんじゃないかと思うし。

もっと言っちゃうと、この映画は主人公がサンタクロースという設定も活かしているとは思えない。
スコットの髭が消えて普通の体型になり、結婚相手を見つけようとする様子が描かれると、「サンタの設定、意味あんのか」と思ってしまう。
彼が生まれついてのサンタで、今までサンタ服しか着たことが無く、ずっと北極で暮らしている設定だったら、「初めて違う服を着て、初めて人間社会で生活し、初めての体験やカルチャー・ギャップに驚いたり感動したりする」ということも、「サンタの浮世離れした言動に、周囲の人々が困惑したり振り回されたりする」ということも描写できるし、そこで話を面白くすることも出来るだろう。
しかしスコットの場合、元の状態に戻っただけだ。
だから普通のサラリーマンが結婚相手を探しているのと、そんなに変わらないのだ。

で、そうであっても、嫁探しをメインに据えているのであれば、物語のクライマックスは、そこを使って作るべきだろう。
しかし実際は、スコットの嫁探しと並行して描かれていた「コピー・サンタの暴走」という要素を使っており、そんなコピー・サンタの暴走を止めるためにスコットが戦うというアクションをやっている。
アクションで派手に盛り上げたいという考えも分からんではないが、むしろコピー・サンタなんて邪魔に思えるぐらいなんだよな。余計な要素を盛り込みすぎて、バラバラになってしまっている。
スコットが結婚相手を見つけようとする話、悪戯を繰り返すチャーリーをスコットが悪い子から良い子に戻そうとする話、コピー・サンタが騒動を巻き起こす話、どれか1つに絞れば良かったのに。
まあ、その中だったら、どう考えたって3つ目を選択すべきだとは思うけど。

(観賞日:2013年11月30日)

 

*ポンコツ映画愛護協会