『ザ・リング/リバース』:2017、アメリカ

シアトルへの到着が近付いた旅客機の中で、乗客のフェイスは不安そうな表情をしたカーターという隣の青年に「どうしたの?」と話し掛ける。するとカーターは、「変な話だけど、見ると死ぬビデオを知ってる?」と言う。彼はいい雰囲気になった女性からビデオテープが送られて来たこと、デッキを見つけて再生したこと、見終わると電話があって「7日後に死ぬ」と言われたことを語る。彼は「1週間前の出来事だ。あと5分で1週間だ」と言い、鼻血が出たのでトイレへ向かった。
フェイスは隣に座っている友人のケリーに、カーターから聞いたことを話した。するとケリーは血相を変えてトイレへと走り、カーターに「ビデオのコピーは?」と質問する。同行したフェイスが困惑していると、ケリーは「私も見たの」と告げる。飛行機は激しく揺れ始め、電波状態が急に悪化した。操縦席のモニターと客席のモニターは一斉に切り替わり、全てが井戸の映像になった。トイレからは大量の血が溢れ出し、カーターとケリーは慌てて逃げ出す。操縦室の扉が開き、そこから大量のコバエがカーターたちに群がった。その直後、2人は画面から這い出すサマラの姿を目撃した。
2年後、大学院生のスカイは、骨董品店で古いビデオデッキを見つけた。彼女の恋人で大学教授のガブリエル・ブラウンは、「2年前に飛行機事故で死んだ青年の遺品だそうだ」と言う。彼はデッキを購入し、家へ持ち帰って修理した。するとデッキにはテープが入っており、「見て、スカイ」と書かれていた。スカイが家を出た後、ガブリエルはテープを再生して映像を見た。すると携帯電話が鳴り、女性の声で「7日よ」とガブリエルに通告した。ガブリエルが吸っていた煙草の中からは、1匹のコバエが出現した。
ホルトはスポケーンの大学に入るため、恋人のジュリアに別れを告げて故郷の町を出た。ジュリアは病気の母がいるため、町に残ることを選んだのだ。ホルトはジュリアに、スカイプで話そうと言う。6週間が経ち、その夜もジュリアはホルトとスカイプで話していた。すると寮の仲間であるブルーとジャマールがホルトの部屋に現れ、「今夜、ガブリエル先生がセブンに来いと言ってる」と告げる。ホルトは通信を切り、翌日からジュリアが連絡しても全く返事が来なくなってしまった。
ある日、ホルトからスカイプの着信が入るが、ジュリアが話そうとすると画面に出たのはスカイだった。スカイが焦ったように「ホルトはどこ?」と尋ねるので、ジュリアは「知らない」と答える。スカイは「隠れても助からない。彼女が来る。逃げられないわ」と言い、通信は切れた。ジュリアは車で大学へ行き、ホルトの部屋を調べて床に落ちている携帯電話を発見した。ガブリエルの講義が行われている部屋へ行くとブルーとジャマールがいたが、彼らはジュリアに疎ましそうな態度を見せて去った。
ジュリアはガブリエルにホルトのことを尋ねるが、「覚えてない」と言われる。嘘だと確信したジュリアは彼を尾行し、7階にある研究室へ辿り着いた。ガブリエルは『サマラの謎』という本を執筆しており、研究室には何人もの学生がいた。スカイはガブリエルから「君のテールは?」と訊かれ、「ホルトに電話したけど出ない。早く助けて」と口にする。彼女が「貴方が始めたことよ。学生に見せて実験するなんて。彼女が怒ってる」と言うと、ガブリエルは「コピーを作って待ってろ。テールを差し向ける」と告げた。研究室の奥には、スカイとホルトの残り時間を示すタイマーが設置されていた。
スカイが研究室を去ったので、ジュリアは後を追って話し掛けた。するとスカイは「力になるから、ある物を見て」と言い、ジュリアを自分の家に連れて行く。スカイが携帯から目を離している時、ホルトから「テールは来たか?」とメッセージが届いた。気付いたジュリアが「ジュリアよ」と送ると、ホルトは「見るな」と警告した。スカイに「短いビデオを見て」と頼まれたジュリアは拒否してバスルームに逃げ込み、ドアをロックした。
スカイはタイムリミットが訪れると、テレビのコードを引き抜いた。しかしテレビの画面が付いてサマラが現れ、スカイに襲い掛かった。ジュリアはバスルームにサマラが近付くのを目にするが、ドアが開くと誰もいなかった。ジュリアがスカイに歩み寄ると、彼女はミイラ化して死んでいた。ジュリアが部屋から逃げ出そうとすると、ホルトが駆け付けた。ジュリアは彼に、スカイの死を告げる。ホルトは彼女を連れて、モーテルへ移動した。
ホルトはガブリエルに電話を掛け、「スカイの写真がネットに出て、みんな逃げた」と聞かされる。彼はジュリアに、「ガブリエルの実験に数名が選ばれた。死後の生の存在を証明できるかもしれない。死ぬまでに7日ある。ビデオのコピーを作って、誰かに見せれば助かる。その誰かがテールだ」と語る。ジュリアはホルトが眠った後、彼のパソコンを開いて勝手に動画をコピーした。ジュリアが動画を見ると、電話が掛かって来て「7日よ」と宣告された。ジュリアの掌は熱くなり、奇妙な形の痣が残った。
ホルトはジュリアから、コピーを見たことを聞く。彼はガブリエルからの電話で「テールが見つかった」と言われ、「もう要らない」と返した。ジュリアはホルトの車で移動する途中、鳥の死骸を目撃した。ホルトはジュリアを連れてガブリエルの元へ出向き、「彼女の痣は1日目に出来た。形も違うし、僕は5日目だった」と告げる。ガブリエルは「変化してるのかも」と言い、ジュリアの痣をスキャンして調べることにした。
ガブリエルはジュリアに、動画のコピーを作って誰かに見せるよう促した。ジュリアは「人殺しは嫌よ」と反発するが、ホルトが「コピーを作ってから考えよう」と説得した。ジュリアは動画のコピーを作成しようとするが、「コピー不能」と出た。ガブリエルがファイルを調べると重さが変化しており、鳥の画像と圧縮された動画データが追加されていた。ホルトがジュリアと一緒に動画データを見ようとすると、ガブリエルが「見るのはジュリアだけだ」と告げる。
ジュリアは「私が呪われたことを無駄にしないで」とホルトを説得し、動画を見た。そこには時計や洪水の中の十字架、妊娠している少女、燃える死体などが写っていた。ガブリエルの解説を聞いたジュリアは、サマラが埋葬されているサクラメントバレーに呪いを解く鍵があるのではないかと考える。ガブリエルは警察が殺人容疑で事情聴取に来ると知り、逃亡することにした。彼はサクラメントバレーへ行くジュリアとホルトに、研究結果のファイルを渡した。
サクラメントバレーへ向かう車中でファイルを見たジュリアは、ビデオがサマラの過去を示していると気付いた。サマラは産まれた場所も両親も不明だった。その邪悪さに気付いた養父母は、サマラを殺そうとした。井戸に捨てられたサマラは、そこで7日も生きた。町に到着したジュリアは、ビデオの少女を目撃した。しかし少し視線を外すと、少女は消えてしまった。宿に入ったジュリアは、その少女が女将の姪と並んでいる写真を見つけた。ジュリアの質問を受けた女将は、それがエベリンという少女であること、30年前に姿を消したことを語る。しかし消えた理由について、彼女は何も話そうとしなかった。
ジュリアとホルトが教会へ行くと、現在は禁酒会の場として使用されていた。ホルトは参加者の男性に質問し、教会が13年前の洪水後に閉鎖されたことを知った。ガブリエルはジュリアの痣が点字だと気付き、そのことをホルトの留守電に吹き込んで「僕も合流する」と言う。ジュリアはホルトと共に墓地へ行き、十字架の外れている場所がサマラの埋葬地だと確信する。ホルトが扉を壊すと中は空で、ジュリアは遺体が移されたのだと理解した。
ジュリアは壁面に文字が書かれているのを見つけ、中に入って調べる。「彼女がきっとお前を見つける、ジュリア」という文字を確認した直後、ジュリアは扉が閉まって中に閉じ込められた。サマラによって井戸に連れ込まれそうになる幻覚に襲われたジュリアだが、ホルトが墓地から引っ張り出した。猛犬を連れた男はジュリアとホルトを注意し、墓の監視人を務めるゲイレンの元へ連れて行く。盲目のゲイレンは、「警察に追放しますか」と尋ねる男に「私に任せろ」と告げた。
ゲイレンはジュリアとホルトを家に招き入れ、「サマラ・モーガンのことを知りたいのか」と問い掛けた。彼は当時の司祭がサマラを埋葬したこと、しかし大洪水が起きたので北の共同墓地へ移して町を去ったことを語る。サマラの遺体に固執するジュリアに対し、ゲイレンは「捜す価値は無い」と言う。ジュリアの手に痣があることを知った彼は、「用心しろ」と告げた。ジュリアとホルトが共同墓地へ向かおうとすると、事故で通行止めになっていた。
エベリンを見たジュリアは車を降りて後を追うが、姿を見失った。事故現場に近付いたジュリアは、ガブリエルの車が横転しているのを目にする。まだガブリエルは生きており、急いで駆け寄ったジュリアの手を掴んで何か伝えようとする。しかし彼は事故で喉が潰れてしまい、言葉を発することが出来なかった。危険に気付いたホルトは、慌ててジュリアを引き離した。その直後、電柱が車に倒れ、ガブリエルは感電して命を落とした…。

監督はF・ハビエル・グティエレス、原作は鈴木光司、原案はデヴィッド・ルーカ&ジェイコブ・エステス、脚本はデヴィッド・ルーカ&ジェイコブ・エステス&アキヴァ・ゴールズマン、製作はウォルター・F・パークス&ローリー・マクドナルド、製作総指揮はエイミー・セイアーズ&アーレン・クルーガー&マイク・マキャリ&ニール・エデルスタイン&クリストファー・ベンダー&J・C・スピンク&ロイ・リー、共同製作はリヨコ・タナカ&マーク・レスティジーニ、撮影はシャロン・メール、美術はケヴィン・カヴァナー、編集はスティーヴン・ミルコヴィッチ&ジェレマイア・オドリスコル、衣装はクリストファー・ピーターソン、音楽はマシュー・マージェソン、音楽製作総指揮はハンス・ジマー。
出演はマチルダ・ルッツ、アレックス・ロー、ジョニー・ガレッキ、ヴィンセント・ドノフリオ、エイミー・ティーガーデン、ボニー・モーガン、チャック・ウィリス、パトリック・ウォーカー、ザック・ローリグ、ローラ・スレイド・ウィギンス、リジー・ブロシュレ、カレン・シーセイ、デイヴ・ブラミー、マイケル・E・サンダース、ランドール・テイラー、ドリュー・グレイ、カイリ・カーター、ジル・ジェーン・クレメンツ、リッキー・ミューズ、ジェレミー・ハリソン、ジェイ・ピアソン他。


鈴木光司のホラー小説を基にした『ザ・リング』シリーズの第3作。
監督は『アルマゲドン・パニック』のF・ハビエル・グティエレス。
脚本は『ドリームハウス』『ボディ・ハント』のデヴィッド・ルーカ、『さよなら、僕らの夏』『7ミニッツ』のジェイコブ・エステス、『ダイバージェントNEO』『フィフス・ウェイブ』のアキヴァ・ゴールズマンによる共同。
ジュリアをマチルダ・ルッツ、ホルトをアレックス・ロー、ガブリエルをジョニー・ガレッキ、バークをヴィンセント・ドノフリオ、スカイをエイミー・ティーガーデン、サマラをボニー・モーガンが演じている。

原点回帰と言えば聞こえはいいが、ザックリ言うと『リング』と『らせん』の焼き直しだ。
アメリカだと『リング』や『らせん』を見ていない人も多いだろうけど、日本人で本作品を観賞しようとする場合、両作品を既に知っているケースが大半ではないだろうか。そういう人からすると、この映画に既視感を覚えてしまうかもしれない。
っていうか、今さら『リング』をなぞられても困るよね。
そんな段階はとっくの昔に過ぎ去って、それどころじゃないトコまで呪いは到達しているはずなんだから。

冒頭シーンでカーターがフェイスに語る内容には、かなりの無理がある。
いい雰囲気になった女性からビデオテープが送られてきた時に、わざわざデッキを探してまで再生するかね。
明らかに不可解な届け物なんだし、「これは何のテープなのか」ってのを女性に連絡して質問するんじゃないかと。そして、その返事を聞いたら「いかにも怪しい」と感じる可能性が濃厚じゃないかと。
なので、デッキを見つけてまで再生しようとするのは、どういう感覚なのかと言いたくなる。

っていうかさ、まだビデオテープという媒体を使って呪いを拡散させようとしているのかよ。
前作の『ザ・リング2』でもビデオテープだったけど、あれは2005年の映画だからね。もう2017年なんだし、そこは別の媒体に変更してもいいんじゃないかと。
ビデオテープという設定にこだわっても、何の意味も無いぞ。
それどころか、「テープを送られた人間が、わざわざデッキを見つけて再生するのは変だろ」というツッコミのポイントを生む羽目になっているし。

飛行機でトイレから大量の血(だと思うけど実際は不明)が流れ出すのは呪われたカーターとケリーだけで見ている幻覚なのかと思ったら、どうやらフェイスにも見えているようだ。
その後には全てのモニターに井戸の映像が映り、飛行機事故が起きるという展開がある。ってことは、他の乗客乗員も巻き添えを食らって死んでいるわけだ。
もはや呪いのルールは完全に破綻していると言っていいだろう。
しかも、冒頭でルールを無視してでも大量殺人を実行しておきながら、それ以降は「テープで呪った相手を1人ずつ殺していく」という地味な手法に戻るのだ。
冒頭でスケールをデカくしておいて、その後は一気にパワーダウンするって、竜頭蛇尾にも程があるだろ。どんな計算式を採用したら、そんな構成になるんだよ。

飛行機のエピソードから切り替わると、ジュリアとホルトがイチャイチャしている様子をカメラが捉える。そしてカーターがジュリアに別れを告げて、父のトラックで故郷を後にするという展開になる。
そこからシーンが切り替わると、もう6週間後になっている。
だったら、もう最初から「大学に入って6週間後のホルトがスカイプでジュリアと話している」というシーンを配置すればいいでしょ。そこまでの手順は、全くの無駄でしょ。
スカイプで話すシーンを描けば、2人のキャラ紹介も関係性の説明も消化できるんだし。

ジュリアはホルトと連絡が取れなくなった後、彼が何かに襲われる悪夢を見る。
だけど、まだジュリアは呪われていないんだから、そんな描写は違うんじゃないかと。
ヒロインを怖がらせることで、観客の不安を煽りたいのは分かるよ。だけど、変なコケ脅しのためにルールを無視するのが得策とは思えないのよ。
登場人物が怪奇現象を体験するのは、呪われた後に限定すべきだよ。悪夢は実際に起きる怪奇現象ではないけど、でも観客サイドから見れば似たようなモンだからね。

ホルトが助けるに値しない男ってのは、大きなマイナスだ。
こいつがガブリエルに騙されたとか、都合良く利用されたとか、そういう設定なら「何とか助かってほしい」と思えたかもしれない。しかし彼は実験の内容を知った上で、自ら望んで参加しているのだ。
つまり、彼は「自分が助かるためには誰かを生贄にする必要がある」という「死のネズミ講」を理解した上で、その醜悪な実験に参加しているわけだ。
しかも彼は、死者が出た後も「凄い実験なんだ」と興奮した口調で話している。
まるで反省の色が無いのだ。

そんな愚かしくて恥ずかしい男を救うために、ジュリアは生贄になることを選ぶ。そのせいで死の危険を迎えているので、「アンタはバカじゃねえのか」と言いたくなってしまう。
そりゃあ、恋人を救うために必死になるってのは、ヒロインの動かし方として間違っているわけではないよ。ただ、ヒロインが助けようとする恋人のキャラ設定を、大きく間違えているのよ。
「連絡しなかったのは君を守るため」とジュリアに言っているけど、それで印象が良くなることなんて皆無だし。
だってさ、連絡しようがしまいが、何の関係も無いでしょ。仮にジュリアに連絡したとして、そのせいで彼女が危険な目に遭うことなんて何も無いでしょ。

まだ冒頭シーンを除けばスカイしか犠牲者が出ておらず、サマラの呪いによる恐怖を充分にアピールできているとは言えない状態の中で、早くも「ジュリアが呪いを解こうとする」という謎解きパートに突入する。
そりゃあ、トータルの上映時間を考えると、謎解きを開始するタイミングが決して早すぎるとは言えないよ。
ただ、謎解きに取り組む中で、呪いの恐怖がエスカレートしていくのかというと、それが全く見えないわけでね。
たまにジュリアが幻覚を見るという程度なのだ。

そんな風になってしまうのも当然で、何しろジュリアにはタイムリミットが訪れていない。
そして彼女の周囲にも、タイムリミットが来ている人物はいない。
そもそもジュリアが死んじゃったら話が終わるので、彼女の動きだけを追い掛けると、おのずと観客を怖がらせることが難しくなるのだ。
おまけに、彼女には「7日後に死ぬ」という死の期限が設定されているのに、「あと何日」ってのをアピールして観客をハラハラさせようという意識も皆無なのだ。

ジュリアとホルトがサクラメントバレーに到着した後、緊迫感が全く無いわけではない。不安な空気を醸し出そうとはしている。
ただし、サスペンス的な不安を煽ることは出来ても、怨霊ホラーとしての恐怖感はオープニングがピークであり、そこからどんどん減退していく一方なのだ。
ガブリエルが死ぬのも、もはや「サマラの呪い」から完全に外れちゃってるんだよね。
彼が感電死するのはサマラの仕業かもしれないけど、その手口が『オーメン』みたいになっちゃってんのよ。

完全ネタバレだが、終盤に入って「実はバークがサマラの実父だった」ってことが判明する。 かつて司祭だった彼はエベリンを地下室に監禁し、強姦していた。サマラの呪いから逃れるため、彼は自らの意志で両目を潰したのだ。
で、そんなバークが狂人としての本性を現し、ジュリアに襲い掛かる展開が用意されている。
だけど、サマラの呪いとは別の場所で恐怖の対象を作って、何がしたいのかと。
ヒロインがバークに襲われ、サマラに救われる形になっているんだけど、なぜ終盤に来てサマラの恐怖を中途半端に和らげているのかと。

(観賞日:2019年9月18日)

 

*ポンコツ映画愛護協会