『ジェリー・スプリンガー ザ・ムービー/人の不幸はクセになる』:1998、アメリカ

エンジェルにはウィリーという恋人がいるが、ハウスキーパーとして働くモーテルで、客にフェラチオをすることも平気だ。おまけに、継父ラスティーとも肉体関係を持っている。ラスティは無職で仕事を探す気も無く、家計はエンジェルの母コニーが支えている。
ある日、コニーはエンジェルとラスティーのセックス現場に遭遇し、怒りを爆発させる。だが、エンジェルは「ママに魅力が無いからだ」と逆ギレする始末。家を飛び出したコニーはウィリーの家に行き、彼にフェラチオをして、それをエンジェルに報告する。
コニーは『ジェリー・スプリンガー・ショー』に出ようと考え、スタッフに電話を掛ける。番組に出演することが決まり、エンジェルとコニーは抱き合って喜ぶ。エンジェル、コニー、ラスティー、ウィリーの4人は、テレビ局のあるロサンゼルスへと向かった。
テレビ局での打ち合わせに参加したエンジェルとコニーは、それぞれ適当に理由を付けて部屋を抜け出し、番組司会者のジェリー・スプリンガーにサインをねだりに行く。エンジェルは出演者の1人ディモンドに色目を使い、物陰で熱烈なキスを交わす。
収録前日の夜、ラスティーが番組に出ないと言い出し、ホテルから立ち去ってしまった。エンジェルはディモンドを部屋に連れ込み、激しいセックスをしている所をウィリーに見つかる。コニーは酔っ払って、エンジェルとのセックスを終えたディモンドに迫る…。

監督はニール・エイブラムスン、脚本はジョン・バーンスタイン、製作はスティーヴ・ステイブラー&ゲイリー・W・ゴールドスタイン&ジェリー・スプリンガー&ジーナ・ルゴロ=ジャッド&ブラッド・ジェンケル、共同製作はジェイド・ラムゼイ&デヴィッド・ベイルズ、製作総指揮はピーター・ロック&ドナルド・カシュナー&ブレント・バウム&ドン・コルシーニ&リチャード・ドミニク&アーウィン・モア&ブライアン・メダヴォイ、撮影はラッセル・リスター、編集はスザンヌ・ハインズ、美術はドリアン・ヴェルナッチオ&デボラ・レイモンド、衣装はゲイル・マクマレン、音楽はケナード・ラムゼイ、音楽監修はマーカス・バローン。
主演はジェリー・スプリンガー、ジェイミー・プレスリー、マイケル・J・ホワイト、マイケル・ダディコフ、ウィリアム・マクナマラ、モリー・ヘイガン、ジョン・カポダイス、ウェンディー・ラクウェル・ロビンソン、アシュリー・ホルブロック、タンジー・アムブローズ、ニッキー・ミショー、クリスタ・テスロー、ドーン・マキシー、マキシミリアナ、ジェリー・ギルズ、ジェイソン・ルイス他。


市長経験もあるジェリー・スプリンガーが司会を務めるアメリカのTV番組『ジェリー・スプリンガー・ショー』は、視聴者参加型の、かなり過激な身の上相談番組で、出演者がスタジオでケンカを始めたりすることも少なくない。
アメリカでは大人気の長寿番組で、世界各国でも放送されている。
そんなTVショーを題材にした作品。

ハッキリ言って、この題材を、どうして映画にしようと思ったのか、理解しかねる。
脚本を書いたジョン・バーンスタインは、これが映画デヴューなのだが、シナリオはヘナヘナだ。おそらくコメディーなのだろうが、どこでどうやって笑わせようとしているのやら。

ジェリー・スプリンガーは、自作のカントリー・ソングを披露したり、ベッドシーンまで見せているが、彼の周辺からは笑いは漂ってこない。エンジェル達のドラマにしても、ちっとも笑わせようとしてくれない。どこで笑わせようとしているんだろう。

下ネタが満載なのだが、普通にフェラチオシーンを見せたり、普通にベッドシーンを見せたりと、何の捻りも無いから、笑いにならない。例えば、ものすごく動きをデフォルメするとか、別の物に置き換えて表現するとか、そういう工夫は無い。
エンジェル達のバカな家族ドラマを中心に据えて、それを描く上での1つのエピソードとしてTVショーが出てくるという形なら、まあ分かる。しかし、あくまでもTVショーがメインであるという形であり、ジェリー・スプリンガーを主役に据えている。しかしながら、同時にエンジェル達もメインとして扱っていて、焦点が一向に定まらない。

様々なカップルのゴタゴタを描いたり、TVショーの内幕を描いたり、スタッフの様子を描いたり、ジェリーの私生活を描いたり、話が散らばっていて、まるで芯が無い。エンジェル達の話を描いていたかと思うと、1組のカップルの話が入ったりする。でも、そのカップルは、そのシーンだけで消えて、しばらくすると、また別のカップルの話が入る。
しかし、TVショーでの出演者の様子が途中で何度か挿入されるが、それは、普通に、実際のTVショーの1シーンを切り取っているだけだ。それなら、この映画ではなく、実際のTVショーを見た方が遥かに面白いだろうし、映画に挿入されても面白さはゼロだ。

これって、TVショーと同じような人間関係のゴタゴタやケンカを、何の調理もせずに、そのまま見せているだけなのよね。
だけどね、TVショーは、「素人の事実を暴露している」というのをショー形式で見せているから人気があるわけで、最初から作り物として同じ内容を提示されても、ちっとも面白くないのよ。
というか、TVショーで充分でしょ。

この作品を何とか面白くするためのポイントとしては、エンジェルとコニーがテレビ出演に浮かれて急に仲良くなるとか、出演を渋るラスティーを何とか出演させようとするとか、そういう部分を広げていべきではないだろうか。
「テレビ出演」をキーポイントにして、情けなくてバカで可笑しい人間模様を描くのがベターだと思うのだ。
「テレビ出演」という部分を抜いてしまうと、スタジオの外で、TVショーと同じようなことをやっているだけに過ぎなくなる。基本的に、単なるアバズレで何の魅力も無いような女達が、ただエロエロしてるかケンカしてるかの、どっちかだしね。
色んな人物を描いて、群像劇にしたいのかというと、そういうわけでもなさそうだ。単純に、まとまっていないだけ。
で、まとまりのないまま終盤になって、唐突にお涙頂戴っぽくなって、ケンカしてた奴らが何となく仲良くなって終わり。
いやいや、まとまってないよ。


第19回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低新人賞[ジェリー・スプリンガー]

 

*ポンコツ映画愛護協会