『選挙の勝ち方教えます』:2015、アメリカ

ジェーン・ボディーンはギャラさえ良ければ仕事を引き受ける選挙戦略家で、泡沫候補を大勝させたこともあった。しかし4回連続で担当した候補者が落選し、6年前に表舞台から姿を消した。彼女は姿を消す前に、選挙法違反で告発されたり、アルコール依存症で入院したりしていた。人里離れた先住民の土地で暮らす彼女の元を、ベン・ソーヤーとネルが訪れた。2人はボリビア大統領選の仕事を持ち掛け、自分たちがペドロ・カスティーヨの陣営だと明かした。
大統領選の最有力候補は日和見主義のリヴェラ下院議員で、現在の支持率はトップを走っている。カスティーヨは15年前に大統領に就任したが、国営企業の民営化で人気を失い、28ポイント差で負けている。全く乗り気になれないジェーンが依頼を断ろうとすると、ネルはパット・キャンディーがリヴェラの選挙戦略家になったことを教えた。ネルが「勝つチャンスを与えるわ。怒りをぶつければいい」と口にすると、ジェーンは仕事を引き受けることにした。
ジェーンはボリビアへ飛び、選挙スタッフのバックリーやカスティーヨの側近であるヒューゴたちと合流する。すぐに会議の場へ赴いたジェーンだが、高山病で吐き気がするため仕事にならなかった。バックリーの主導でカスティーヨの選挙CMが製作されるが、その評判は散々だった。合同演説会場へ出向いたジェーンは、パットから挑発された。会場を出たカスティーヨは男に卵をぶつけられ、激昂して殴り付けた。慌てて若い選挙スタッフのエディーがカスティーヨを守り、男は拘束された。
ジェーンは現場近くで不敵に笑うパットに気付き、卵攻撃が彼の差し金だと確信した。彼女はベンたちに謝罪文を出さないよう指示し、「カスティーヨに演技は無理。優しさや笑顔や謝罪は合わない」と語る。ベンが「彼は高慢で冷淡で、庶民の心に訴え掛けない。君なら、どう売るんだ?」と訊くと、彼女は「性格は変えられない。理想像を変えるのよ」と告げる。ジェーンはカスティーヨに、「嫌われても構わない」と言い、戦う男のイメージを打ち出して「危機の時代に選ぶべきは彼だけ」と訴えるよう説いた。
ジェーンはエディーを見つけると先程の行動を評価し、ステーキソースをプレゼントする。カスティーヨはジェーンたちの助言を受けて記者会見に臨み、選挙まで残り80日で支持率は10%になった。ホテルで目を覚ましたジェーンは、向かいにパットが部屋を取ったと知って威嚇だと感じる。ジェーンは今までパットと4度対決し、全て敗北していた。エディーはカスティーヨに、前回の選挙戦で会っていること、広場の演説で何も見えずに困っていたら抱き上げてくれたことを語った。
カスティーヨは支持者の集会に参加し、ジェーンの指示通りに危機との戦いを訴えた。聴衆の反応を見た彼は、ジェーンの考えが正しいと感じた。しかしバックリーは「労働者階級には危機だけでなく、農業や主要産業も訴えなくては」と言い、ラマを使ったCM撮影を用意した。しかしラマは現場から逃げ出し、車にひかれて死亡した。危機を語っててから支持率低下は食い止められているので、そこに賭けるべきだとベンは主張した。意見を求められたジェーンは、「それだけでは勝てない」とネガティヴ・キャンペーンの必要性を説く。そのために彼女は、独断で対立候補リサーチ担当のサラ・ルブランクを呼び寄せていた。
ベンはネガティヴ・キャンペーンに懸念を示すが、カスティーヨはリヴェラの調査をジェーンに指示した。ジェーンは「貴方の過去も洗い直させる」と言い、サラには「カスティーヨを先に調べて」と告げた。彼女はスタッフにネガティヴ・キャンペーンの具体的な行動を説明し、エディーには記録係としてリヴェラの演説を録画するよう指示した。サラは2年前にリヴェラが27台の公用車を購入した際、本来は1台3万5千ドルなのに4万ドルで計上しているという事実を突き止めた。
パットはジェーンの動きを嗅ぎ付け、リヴェラに記者たちの前で「ボジティヴな選挙活動をする」と語らせた。カスティーヨはヒューゴに「ネガティヴなことをやると潰される」と進言されたこともあり、ジェーンの作戦を拒否した。リヴェラ側の草の根組織からカスティーヨに愛人がいたという情報が流され、ジェーンはベンに「パットは勝つために敵を潰す」と告げる。「彼らは否定していますが、これは先制攻撃です」とジェーンが言うと、カスティーヨはネガティヴ・キャンペーンを承諾した。
ジェーンたちはリヴェラの公用車問題を指摘するコマーシャルを製作し、テレビで流した。パットはジェーンに電話を掛け、「俺が匿名で君をネルたちに推薦した。君を鍛えるためだ」と告げた。ポスター貼りを終えて帰宅しようとするエディーを見掛けたジェーンは、車で送ると持ち掛けた。同行していたネルは「マズいわ」と反対するが、ジェーンはエディーを車に乗せた。エディーが暮らすのはスラムで、友人のペペとアブラハムはアメリカ人を嫌悪していた。
エディーは両親を2年前に交通事故で無くし、自ら生計を立てていた。彼の父親はカスティーヨ支持者で、「国を導けるのは彼だけだ」と息子に話していた。ペペとアブラハムはカスティーヨを嫌っており、「彼はIMFに加盟したがっている。国に金を貸して縛り付ける。国を支配して、国の物を私有化する」と語る。ジェーンは仲間たちとの飲み会に彼らを誘い、酒を飲んで盛り上がった。彼女はエディーと友人たちをホテルに招き、パットの部屋に手作りパチンコでリヴェラ人形の頭部を撃ち込んだ。パットが警官を呼ぶと、ジェーンは抵抗して暴れた。ジェーンは警官に捕まって拘留され、新聞には「精神病治療の過去がある」という記事が掲載された。
ネルはバックリーから「ジェーンとパットに何があった?」と訊かれ、「彼女はハメられた。新人の頃、市長選挙で敵陣営にパットがいた。候補者の娘はコカイン中毒だという噂が流れ、耐え切れずに自殺した。皆はジェーンの仕業だと思い、非難を浴びて候補者は敗れた」と語った。釈放されたジェーンはカスティーヨと会い、ずっと鬱病と戦っていること、軽躁もあることを話す。彼女は迷惑なら辞めると言うものの、「その判断は間違っている。貴方に必要な物が私にはある。戦う意志と激しい怒り」と述べた。
ジェーンはリヴェラが汽車でスピーチしている場所へ赴き、パットに挑発されて「受けて立つ」と言い返した。彼女は運転士を騙し、汽車を発進させた。ジェーンとスタッフたちはバスで各地を巡り、選挙活動を繰り広げる。リヴェラのバスを発見したジェーンは、追い抜くよう運転手に指示した。ベンやネルたちもジェーンに同調し、バスは崖が続く危険な道でスピードを上げた。ジェーンはリヴェラやパットたちに尻を見せ、バスが追い抜くとカスティーヨ陣営は大いに盛り上がった。
リヴェラ側の草の根組織は、カスティーヨがカルト教団の信徒だという情報を流した。ジェーンから質問されたカスティーヨは息子が入信したので心配になって本部を訪れたことを明かした。ジェーンは彼に、トークショーに出て真実を語るよう促した。カスティーヨは彼女の指示通りに真実を語り、息子を思って目に涙を浮かべた。この様子が人々の同情心を誘い、カスティーヨの支持率は19%に上昇して3番手に付けた。しかし、まだカスティーヨはリヴェラの他にも、ヴェラスコという2番手の有力候補が残っていた…。

監督はデヴィッド・ゴードン・グリーン、着想はレイチェル・ボイントン、脚本はピーター・ストローハン、製作はグラント・ヘスロヴ&ジョージ・クルーニー、製作総指揮はサンドラ・ブロック&スチュアート・ベッサー&ジェフ・スコール&ジョナサン・キング&スティーヴン・ムニューチン、撮影はティム・オアー、美術はリチャード・A・ライト、編集はコリン・パットン、衣装はジェニー・イーガン、音楽はデヴィッド・ウィンゴ、音楽監修はゲイブ・ヒルファー&デヴォー・イェーツ。
主演はサンドラ・ブロック、共演はビリー・ボブ・ソーントン、アンソニー・マッキー、ヨアキム・デ・アルメイダ、アン・ダウド、スクート・マクネイリー、ゾーイ・カザン、ドミニク・フローレス、レイナルド・パチェコ、ルイス・アルセラ、オクタヴィオ・ゴメス・ベリオス、アズセナ・ディアス、ダミアン・デルガド、ニーナ・レオン、ルイス・ユセイ、ルイス・カルロス・ゲヴァラ、オルガ・ガンボア、エドガー・アレオラ、カーメラ・ザンバド、カシアーノ・アンカレ、ジェームズ・カスティーヨ・コランテス、マヌエル・A・ディアス・ロサーダ、エリック・スリアーノ他。


『セルフィッシュ・サマー』でベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)を受賞したデヴィッド・ゴードン・グリーンが監督を務めた作品。
脚本は『裏切りのサーカス』でアカデミー賞脚色賞にノミネートされたピーター・ストローハン。
2005年にレイチェル・ボイントンが撮ったドキュメンタリー映画『Our Brand Is Crisis』から着想を得ている。
ジェーンをサンドラ・ブロック、パットをビリー・ボブ・ソーントン、ベンをアンソニー・マッキー、カスティーヨをヨアキム・デ・アルメイダ、ネルをアン・ダウド、バックリーをスクート・マクネイリー、サラをゾーイ・カザン、ヒューゴをドミニク・フローレス、エディーをレイナルド・パチェコが演じている。
モチーフになっているのは、ゴンサロ・サンチェス・デ・ロサーダが勝利した2002年のボリビア大統領選挙。

冒頭ではジェーンがインタビューを受けている様子が写し出され、そこに彼女が付いた現職が敗れた記事や依存症病院から退院した記事、選挙法違反で告発された時のニュース映像が挿入される。
そこにベンとネルの会話を合わせれば、「かつて有能だったジェーンが失敗して没落した」ってことは伝わる。ただ、情報としては、かなりボンヤリしている。
なぜジェーンは4回連続で負けたのか、なぜアル中になったのか、どういう理由で選挙法違反で告発されたのか。色々な疑問が残ったまま、話が進むことになる。
冒頭で分からなかったことの大半は後から明らかにされるが、そこを隠したまま進めることのメリットは乏しい。後で「実は」という語り方をされても、大きな効果を感じない。さっさとジェーンの過去を明かして進めた方が、彼女のキャラを掴みやすくなるし、話に入り込みやすくなる。

ただ、もっと問題なのは、ジェーンとパットの因縁が全く分からないまま話が進んでいくことだ。
ジェーンはパットがリヴェラに付いたと聞いて、仕事を受ける気になっている。パットに挑発されて、怒りを燃やしている。卵攻撃がパットの作戦だと知り、ようやく本気で仕事に取り掛かっている。
つまりジェーンが動く時には必ずパットへの怒りがエンジンになっているわけで、だったら彼を憎む理由は説明しておくべきでしょ。
そこが分からないと、ジェーンのモチベーションにこっちが乗っていけないよ。

あと、なぜパットが執拗にジェーンを敵視してネチネチと攻撃するのか、その理由もサッパリ分からないんだよね。
「ジェーンに限らず誰に対しても陰湿で卑劣な攻撃を取る奴」という設定なのかもしれないけど、映画を見ている限り、ジェーンを目の敵にしているようにしか思えないんだよね。後から「実はこんな因縁がありまして」ということが明かされるのかと思っていたんだけど、そういう設定は何も用意されていないんだよね。
っていうか、そもそもジェーンのモチベーションを「パットへの憎しみ」という部分に置いていること自体、いかがなものかと思うのよ。
それだと「カスティーヨを当選させるための戦い」じゃなくて、「パットに勝つための戦い」ってことになる。
これがジェーンとパットのライバル対決を軸にした映画なら、それでも構わないのよ。だけど、そうじゃなくて「ジェーンを通して選挙の愚かしさを痛烈に皮肉る」という作品のはず。
だったらジェーンを突き動かす動機は、別のトコに置いた方がいい。

ジェーン以外のカスティーヨ陣営のスタッフの動機がボンヤリしているのは、手落ちだと感じる。
バックリーはキャラ的に憎まれ役なので、そこまで必要性が高いわけでない。しかしベンとネルは違うんだから、なぜカスティーヨのために動いているのかを明確にした方がいい。
2人とも報酬のためにやっているわけでもなく、野心のためにやっているわけでもない様子だ。では庶民に嫌われているカスティーヨを、2人は本気で「大統領にふさわしい」と思っているのか。だとすれば、どこに魅力を感じているのか。
ジェーンとの差別化という意味でも、そこはハッキリさせた方がいい。

カスティーヨの描き方も、かなりボンヤリしている。国営企業の民営化で人気が落ちたという設定だが、「なぜ国営企業の民営化が批判の対象になったのか」というトコが分からない。
また、彼は抗議運動を軍隊で制圧したり、庶民から企業の手先だと思われたりしているようだが、だったら支持者は彼の何を評価しているのか。
それと、彼を「嫌われて当然のクズ野郎」として描くのかと思ったら、たまに好感の持てる奴として描いたりするので、そこは徹底していないなあと。
そこは変にカスティーヨのキャラで幅を持たせず、「ジェーンが大統領には明らかに不適格な男を巧みな戦略で当選させてしまう」という形にした方が良かったんじゃないかと。その方が、風刺の強烈さは確実に出たはずだ。

オープニングのインタビュー映像で、ジェーンは当然のことながら真面目に話している。ベンとネルが訪ねて来た時も、静かな様子で対応する。パットの名前を聞いて感情は動いているものの、シリアスな様子だ。
しかしボリビアに着いて飛行機から降りる際にタラップから滑落しそうになる様子や、高山病で酸素マスクを装着する様子が描かれると、急にユーモラスなノリが入って来る。
そこに来て、初めて「これってコメディー映画なのね」と気付かされる。
それは明らかに、見せ方として失敗だ。出来ることなら冒頭から、少なくともベン&ネルとジェーンが話すシーンでは、「これはコメディーです」と分からせた方が望ましい。

パットがジェーンに電話を掛け、踊りに行こうと誘って「憎しみ合うのは明日からでいい」と告げるシーンがある。でもジェーンが明確に拒否する前にパットが「今夜、外出はよそう」と言い出すので、何がしたかったのか良く分からない。
踊りに誘った裏に、何かジェーンを陥れる策略があったような様子は見えないのだが、どういう心境だったのかは全く分からない。
彼は「匿名で君をネルたちに推薦した。君を鍛えるためだ」と言うのだが、これも良く分からない。
それは「ジェーンをライバルとして認めているので再起のチャンスを与えた」と受け取れなくもない。でもパットは、勝つためなら卑劣な手段を平気で使うような奴だからね。

パットはジェーンに電話を掛けた時、「ノミがいるような連中と長い時間、いたくないんだろ。認めるべきだ。そんな奴らには軽蔑しか感じないくせに。票の集計が済む前に、君は帰国する。どうせ俺たちと奴らは、羊飼いと羊でしかない」と語る。
これは一応、ジェーンの最後の行動に繋がる伏線ではある。ただ、何の脈絡も無く唐突に飛び出す台詞なので、違和感が強い。
それに、そこまでのジェーンは高慢な態度ではあるものの、「現地の人々を軽蔑している」ってのを殊更に強調するような描写は感じなかった。
なので、そこをわざわざ指摘するのは、だから何なのかと思ってしまう。

ジェーンはエディーの友人たちと会った時、飲み会に誘っている。
それは「反対派を取り込もう」という狙いなのかとも思ったが、たった2人の若者を味方にしたぐらいでは何の意味も無いだろう。
なので、ただの気まぐれにしか思えない。ホントに単なる気まぐれなのかもしれないけど、そんなの全く要らないでしょ。
あと、カスティーヨ陣営のアメリカ人を露骨に嫌悪していたペペとアブラハムが、飲み会であっという間にジェーンたちと仲良くなるのは拙速だし。

なぜジェーンが3年前に辞めた酒を何の迷いも無く平気で飲みまくるのか、ワケが分からない。底抜けのバカなのか。
その後にはホテルで暴れて警察沙汰になるけど、それはカスティーヨの支持率を下げること、パットに負けることに直結するような行動でしょ。彼女が何をしたいのか、サッパリ分からんよ。そんなことをしたのに反省の色はゼロなので、プロ失格だと感じるし。
それと、暴れたのは悪酔いが原因なのかと思ったら、カスティーヨに「軽躁があって」と説明するのよね。そこで初めて触れる設定なので、完全に後付けになっている。
っていうか、どういう設定であろうと、その辺りは全面的に要らないと感じるわ。何の狙いがあって盛り込んだのか全く分からないし、少なくとも映画を面白くする効果は無い。

バックリーから「ジェーンとパットに何があった?」と問われたネルが、「彼女はハメられた」と言って過去の市長選挙に触れるシーンがある。
ここで「相手候補の娘がコカイン中毒という噂に耐え切れず自殺し、ジェーンが非難されて応援した候補は負けた」と説明があるが、それが「パットにハメられた」ってことになる意味が良く分からない。
つまり「コカイン中毒の噂はパットが流した」と言いたいのか。
だけど、それがパットの応援する候補にとって優位に働くかどうかは、かなりギャンブル性が高いでしょ。なので、それを「ジェーンがハメられた」と言うのは、まるで解せない。
なので、後で「実はパットの仕業じゃなかった」という事実が明らかにされても何の驚きも無くて、「そうでしょうね」と感じるだけだ。

っていうか、パットは何も卑劣な策略など仕掛けておらず、「相手候補の娘がコカイン中毒」という噂を流したのがジェーンであるなら、その娘が自殺したことで非難を浴びるのも、そのせいで応援した候補が敗れるのも、全て本人の責任でしょ。
だから、それでジェーンがパットへの憎しみや怒りを抱き続けているとしたら、ただのメチャクチャだ。
そこに原因が無いとしたら、単純に「パットへの負けが連続したから腹を立てた」というだけだ。
どっちにしろ、ジェーンのモチベーションは全く共感を誘わない。

リヴェラ陣営のバスを見つけたジェーンは、崖が続く危険な道なのに追い抜くよう運転手に指示する。
この時、他の連中も同調するのは違うだろ。それで選挙に勝てるわけでもないのに。
あと、ジェーンがバスでも先へ行こうとする辺りで、ホントに「パットに勝つ」という気持ちだけで動いているんだなあってのが良く分かる。彼女にとって、大統領選挙は目的じゃなくて、パットに勝つための手段に過ぎないってことだ。
だから極端に言っちゃえば、パットに勝って満足できれば選挙じゃなくても別にいいってことになるのよね。

基本的には「ジェーンがカスティーヨを当選させるために、決してクリーンとは言えない策略を次々に講じる」ってのをコメディーとして描いているのだが、そこを最後まで徹底できているわけではない。
最後の最後になって、ジェーンはエディーの言葉に心を打たれ、罪悪感を抱き、「冒頭のインタビューは、南米のために真摯な気持ちで取り組む活動を始めたことを語る取材でした」ってのが明らかにされる。
だけど、それって全く綺麗に締め括られていないぞ。
むしろ、「ジェーンが手段を選ばずプロとして仕事をしてカスティーヨは当選し、彼が市民との約束を平気で破りました」ってのを見せた方が、痛烈な風刺になったんじゃないかと思うぞ。

(観賞日:2018年8月24日)

 

*ポンコツ映画愛護協会