『続・ある愛の詩』:1978、アメリカ
墓地でジェニファーの葬儀が執り行われ、多くの関係者が参列した。オリヴァーが棺を見つめていると、両親は「しばらく仕事を忘れて、家に来なさい」と誘う。しかしオリヴァーは、仕事があると言って断る。ジェニファーの父であるフィルが「もういない。遠くへ去った」と告げると、彼は「そうは思えない」と言う。皆が帰るまで棺を下ろさないと聞き、オリヴァーは待つことにした。フィルが同席しようとすると、彼は「僕だけで見送らせてほしい」と頼んだ。オリヴァーは1人で墓地に残り、棺が埋葬される様子を見守った。
それから1年半が経過し、オリヴァーは弁護士事務所で働くようになっていた。マンハッタンのアパートで暮らす彼は、まだジェニファーを失った悲しみから抜け出せずにいた。フィルは彼の元を訪れ、外出するよう促した。フィルは半ば強引に、オリヴァーを酒場へ連れ出す。彼は若い女性たちに声を掛け楽しそうに会話を交わした。レストランへ移動した彼はオリヴァーに、「ジェニファーや私のことは忘れろ。生き返るんだ。死んだのが君だとしても、ジェニーは修道院には行かないぞ」と告げた。
サウナへ出掛けたオリヴァーは、大学時代のルームメイトであるスティーヴン・シンプソンと遭遇する。シンプソンはグウェンと結婚したことを話し、昼食に誘う。オリヴァーが「今から仕事だ」と断ると、彼は妻が夕食に呼びたがっていることを語った。シンプソンは金曜の8時に来るよう告げ、オリヴァーが遠慮しようとしても「ノーとは言わせないぞ」と去った。オリヴァーが仕方なく金曜の夜に訪ねると、夫婦はジョアナという家具デザイナーを呼んでいた。オリヴァーは困惑するが、4人で会食をする。スティーヴンとグウェンはオリヴァーとジョアナを交際させようと考えており、積極的に双方の良さをアピールした。
オリヴァーはジョアナを家まで送り届け、コーヒーに誘われる。彼はジョアナの家に上がり、彼女が作った家具を見せてもらう。「またお会いしたいわ。ゆっくりと」と言われたオリヴァーは、「電話するよ」と告げて去った。オリヴァーは精神科医のディーンハートを訪ね、「1人の自分は、彼女が好意を持ってるからチャンスだと言う。だが、もう1人の自分が、波風を立てるなと反対する」と話した。彼は「そういう関係はトラブルだろうか」と問われ、「全ての人間関係は何らかの点でトラブルです」と答える。
オリヴァーが「女に欲求を感じない。時々、ジェニーが恋しくて寂しさを感じる」と語ると、ディーンハートは「そういう孤独感に、どう対処する?」と質問する。オリヴァーは彼に、「家で横になり、全てを忘れたいと願う。時には仕事が終わると食事も取らずベッドに入るが、空腹で眠れない。オリヴァーが起きるとヘトヘトになっている。その繰り返しだ」と説明した。するとディーンハートは、「まずは肉体的に立ち直ることだ」と運動を勧めた。
オリヴァーは久々にスケートをやってみようとするが、セントラル・パークのスケートリンクは既に氷が無くなっていた。立ち去ろうとしたオリヴァーは、ジョギングしながら彼を見て笑うマーシーという女性に気付いた。後を追った彼は、「何がおかしい?」と問い掛ける。マーシーはジョギングを続けながら、「そのスケート靴よ」と言う。テニスのウォーミングアップで走っていることを聞いたオリヴァーは、「ちょうどテニスの相手を探していたところだ」と口にする。彼は翌日に対戦する約束を取り付け、ミッドタウン・クラブで朝6時に会うことになった。
翌朝、オリヴァーはコートへ出向き、何か賭けようと提案する。マーシーは夕食を賭けようと提案し、店は勝者が選ぶことになった。最初はマーシーが圧倒していたが、続けている内にオリヴァーも調子が出て来た。その夜、2人はレストランで夕食を取りながら会話を交わす。マーシーは高級デパートのボンウィットで勤務していること、オリヴァーは弁護士として人権問題に取り組んでいることを話した。妻がいるか問われたオリヴァーは、「いない」と答える。結婚の経験を訊かれた彼は、「2年ほど」と答えた。するとマーシーはオリヴァーが離婚経験者だと誤解し、「実は私も離婚したのよ」と述べた。
オリヴァーはディーンハートの元へ行き、「彼女に真実を打ち明けたかったが、時期じゃないと思った。相手に悪いし、ジェニーにも」と話す。「ジェニーは死んだ」と言われた彼は、「彼女は私の半身だった。それが欠けた」と告げる。借家人の代理として不在地主を訴える件で署名を集めたオリヴァーは、市の住宅委員を務めるジェンティラーノに協力を要請した。翌週もオリヴァーはマーシーとテニスに興じ、今度は彼女が選んだホテルの店で夕食を取ることになった。オリヴァーは車で迎えに行き、マーシーとホテルへ赴いた。
食事が終わってデザートを注文する際、オリヴァーは妻が白血病で25歳の時に亡くなっていることをマーシーに打ち明けた。マーシーがホテルに泊まることを知ったオリヴァーは困惑し、「町外れだぞ。車も無いのに」と責めるように告げる。オリヴァーが去る時、マーシーは「電話して。待ってるわ」と口にした。オリヴァーはマーシーのことが気になるが、電話番号を知らなかった。会社の名簿を調べても名前は出ておらず、テニスコートにも姿を見せなくなった。
オリヴァーはディーンハートにマーシーの件を話し、「彼女を失って惨めな気持ちだ」と吐露する。するとディーンハートは、「進歩したとは思わないか」と問い掛けた。そんな中、マーシーから電話が掛かって来たので、オリヴァーは「なぜ名簿に名前が出ていない?」と尋ねる。すると彼女は、「本店へ来て。重役室と言えば分かるわ」と告げた。本店に出向いたオリヴァーは、マーシーがボンウィット姓であることを知った。
マーシーはオリヴァーを外に誘い出し、「父が死んで会社は乗っ取られ、私はお義理で重役」と語った。オリヴァーは自分の両親も金持ちだと明かし、モーテルでマーシーとセックスした。「少しは罪悪感もある?」と問われたオリヴァーは、「かもね」と答える。「ジェニーを思い出して?」という質問に、彼は「思い出さなかったから」と告げた。オリヴァーは父からの電話で、週末に家へ来ないかと誘われる。一度は仕事が多忙だと理由を付けて断ろうとしたオリヴァーだが、「母さんが寂しがるぞ」と言われて承諾した。
土曜日、オリヴァーは久々に実家へ戻り、両親と会う。彼は自分が担当している案件について父に話す。彼が「都市住宅の問題は政府ではなく住人に任せるべきです。貧民に足りないのは経済能力よりも資産です。不在地主は法人名義で彼らから搾取している」と熱く訴えると、父は「善意の努力は立派だが、物事には順序がある」と釘を刺す。父は引退を考えていることを明かし、事業を引き継ぐようオリヴァーに告げる。しかしオリヴァーは「僕には自分の仕事があります」と言い、その話を断った。
オリヴァーはイーストサイドの借家人たちが住宅の改装を進める現場にジェンティラーノを連れて行き、視察してもらう。借家人から話を聞いたジェンティラーノは、計画の成否は対外関係によって左右されると告げた。そこへテレビ局のクルーが現れ、オリヴァーたちに取材する。ジェンティラーノは市の認可を取り付けると約束し、借家人たちから拍手を浴びた。オリヴァーはマーシーを家に招き、一緒に夜を過ごす。凝った食器を見たマーシーが「私も貧乏に憧れた時があった。だけど自分を誤魔化しても結局、私たちは上流階級の人間なのよ。幾ら罪悪感を抱いてもね」と語ると、オリヴァーは激しく反論した。
次の日、オリヴァーはボンウィットに電話を掛け、マーシーに昨夜の態度を謝罪しようとする。しかしマーシーは重役会に出席中で、他人行儀な口調で早々に電話を切った。仕事を終えてからオリヴァーと会ったマーシーは、「会議中の電話は厳禁よ。変に邪推される」と言う。オリヴァーが苛立ちを示すと、彼女は冷静な態度で「私は家庭の女じゃないのよ。仕事が生き甲斐なの。もっと互いを尊重しましょう」と告げる。彼女は工場視察と広告撮影で香港へ出張することを語り、オリヴァーを誘った…。監督はジョン・コーティー、原作はエリック・シーガル、脚本はジョン・コーティー&エリック・シーガル、製作はデヴィッド・V・ピッカー、撮影はアーサー・オーニッツ、美術はロバート・ガンドラッチ、編集はスチュアート・H・パッペ、衣装はペギー・ファレル、音楽はリー・ホルドリッジ、テーマ曲はフランシス・レイ。
出演はライアン・オニール、キャンディス・バーゲン、レイ・ミランド、ニコラ・パジェット、エドワード・ビンズ、ベンソン・フォン、チャールズ・ヘイド、ケネス・マクミラン、ジョセフ・ソマー、サリー・ボイアー、スウージー・カーツ、メグ・マンディー、ベアトリス・ウィンド、ソル・シュウェイド、ファザー・フランク・トスト、シンシア・マクファーソン、グロリア・イリザリー、ルイ・テュレンヌ、ヴィクトル・ジル・デ・ラマドリッド、デボラ・ラッシュ、アン・ライズリー、ホセ・L・トーレス、ミゲル・ロペレーニャ、サラ・ビーチ、ウィルフリード・エルナンデス、ドーラ・コラッツォ=レヴィー他。
1970年の映画『ある愛の詩』の続編。
監督は『愛のファミリー』のジョン・コーティー。
脚本はジョン・コーティー監督と、前作から続投となるエリック・シーガル。
オリヴァー役のライアン・オニール、父親役のレイ・ミランドは、前作からの続投。
マーシーをキャンディス・バーゲン、ジョアナをニコラ・パジェット、フィルをエドワード・ビンズ、ジョンをベンソン・フォン、スティーヴンをチャールズ・ヘイド、ジェイミーをケネス・マクミラン、ディーンハートをジョセフ・ソマーが演じている。前作から8年も経過してからの続編だし、「製作会社やプロデューサーが金儲けのために強引に作ったのか」と思いきや、なんと原作からして続編が存在する。そして、原作者であるエリック・シーガルが今回も脚本を手掛けている。
原作は前年に発表されているようなので、や「あれから7年後の物語」なのかと思ったら、1年半後が舞台だった。
それを8年後に公開するってのは、タイミング的に厳しいだろう。
しかも、それでライアン・オニールとレイ・ミランドが前作から続投しているので、年齢的にも難しいモノがあるよな。まだライアン・オニールはともかく、レイ・ミランドの変化は明らかに「1年半後」じゃないだろ。冒頭にジェニファーの葬儀のシーンを配置し、そこでオリヴァーが愛する妻の死を受け止めきれずにいる様子を描く。そこから1年半後に飛ぶのだが、そういう構成にしたのは失敗だろう。
最初に埋葬シーンを見せることによって、その後の展開が「もう1年半も経った」ではなく「まだ1年半しか経っていない」という印象になる。
それに、実際の「1年半」より、その時間経過は短く感じられる。
体感としては、ジェニファーが死んでから、ほとんど時間は進んでいないのだ。そのため、「まだジェニファーが死んでから1年半しか経っていないんだから、オリヴァーが彼女を失った悲しみを引きずっているのは当たり前じゃないか」と言いたくなる。
その時期に、もう「ジェニファーのことは忘れて、新しい恋に踏み出せよ」と持ち掛けるのは、ものすごくデリカシーに欠けた行為にしか思えない。そんなの、余計なお節介じゃないかと。
っていうかさ、体感が云々ってことを抜きにしても、前作であれだけ深くて強い愛に結ばれた相手を病気で亡くしたんだから、1年半ぐらい引きずっても放っておいてやれよ。
これが5年も6年も経って、「まだ悲しみから抜け出せずに時間が止まったまま」ってことなら対処も必要だろうけどさ。とは言っても、「愛する妻の死を引きずって陰気に暮らしている男」の姿を延々と描かれても、そんな映画を楽しめる可能性は低いだろう。
なので、そういう設定で話を始めた以上は、「喪失感から抜け出し、一歩前に踏み出そうとする」というゴールが確定事項だ。
そういう結末が用意されていることは見え見えだけど、それ以外の選択肢は有り得ない。
ただ、そういう話にするのなら、1年半後じゃなくても良かったんじゃないかと。8年はともかく、3年後とか5年後でも良かったんじゃないかと。オリヴァーはジェニファーのことを引きずって心を閉ざしており、だからこそフィルから外出を促されても消極的な態度を取ったはずだ。
スティーヴンから夕食に誘われても遠慮したり、ジョアナを呼んだと知って困惑したりしたのも、他の女性と付き合う気が無いってことのはずだ。
ところが彼はジョアナからコーヒーに誘われると、簡単に家へ上がり込む。
そんなに長居はしないけど、最初から付き合う気が無いのなら、ジェニファーのことを引きずっているのなら、コーヒーに誘われた時点でキッパリと断るはず。そこでOKする神経が、全く分からない。オリヴァーは精神科医を訪ねた時、「1人の自分はチャンスだと言うが、もう1人が仕事に集中してトラブルを避けろと反対する」と説明している。
でも、オリヴァーが女性との交際に後ろ向きなのは、仕事の邪魔になるからではないでしょ。実際、その後に彼は「ジェニーが恋しくて寂しくなる」と言ってるけど、そういうことが理由でしょ。
いや、オリヴァーが本当の理由から目を背けている設定なら、最初の説明があって、医師なり友人なりが「そうじゃない」ってことを指摘する手順を入れるのも別にいいよ。
でもオリヴァーは「ジェニファーが恋しい」ってのを自覚しているわけで、だったら見当違いの説明は邪魔なだけだ。ただ、そんな風に「ジェニファーが恋しくて生活にも支障が出ている」と明かした直後のシーンで、オリヴァーはマーシーに自分から声を掛けているんだよね。
しかも「テニスの相手を探していた」などと言っており、ナンパに近い行動を取っている。
それが「本当は他の女と付き合う気なんて全く無いけど、何らかの理由で無理している」ってことなら、まだ分からんでもない(なぜ無理しなきゃいけないのかという理由は必要だけどね)。
でも、本人が心から楽しそうにしているようにしか見えないのよね。ただ、そんな風にオリヴァーはマーシーとのデートを重ねるくせに、精神科医と会った時には「ジェニーを忘れることが出来ないか」と問われると「簡単だと思うでしょう。死んだ者は忘れて他の女を見つけろと」と反発するように語っている。
それぐらいジェニーのことを今でも引きずっているのなら、なぜ自分から他の女を誘うのかと。彼の言動は、明らかに矛盾している。
「マーシーがオリヴァーの心を開くほど特別な女性だった」ってことなら、まだ分からんでもないよ。
でも、「たまたまジョギングして通り掛かった」というだけの相手だからね。ジョアナとの大きな違いなんて、どこにも見当たらないからね。これって、オリヴァーが自分から通り掛かりの女を口説いてデートを重ねるよりも、周囲から勧められるとか、何らかの事情で知り合いになるとか、そういう形にしておいた方が良かったんじゃないか。
そして、最初はジェニファーのことがあるから積極的に交際する気は全く無かったけど、次第に相手への感情が強くなっていくという展開にした方が良かったんじゃないか。で、「ジェニーと相手の間で心が揺れ動く」というオリヴァーの葛藤を掘り下げて、ドラマを構築すれば良かったんじゃないか。
でも実際には、自分からナンパした相手とのデートを重ね、すぐ好意を抱くようになり、簡単にセックスしているのよね。
なので、ジェニファーへの愛なんて、その程度だったのかと思ってしまう。
私は前作を全く評価しちゃいないけど、この映画は1作目を台無しにする負の力まで持っているぞ。「喪失感を抱えていたオリヴァーが一歩踏み出すまでの物語」に集中すればいいものを、オリヴァーとマーシーの関係を描く中で「親が金持ちであることへのコンプレックス」という要素を持ち込み、焦点をボンヤリさせてしまう。
そもそも「出自へのコンプレックス」という問題は、もう前作で解決したんじゃなかったのかよ。
それを消化した上で、ジェニファーと結婚したんじゃなかったのかよ。
そういう要素を再び持ち出して、そのせいで「オリヴァーがジェニファーの死を引きずっている」という一番の問題から目を離してしまい、何をどうしたいのかと。マーシーはオリヴァーと口論になって「ジェニーが私たちの問題なのよ。死んだ女には勝てないもの」と言うけど、そうじゃないのよね。
オリヴァーが苛立つのは、マーシーに「幾ら抵抗しようと我々は上流階級の人間」と指摘されたり、彼女が仕事で多忙だったりすることが理由なのよ。
マーシーと喧嘩別れしたオリヴァーは「ジェニーと彼女と比べてしまった」と語るけど、それは「ジェニーが死んだ」ってことに関係ないし。例えジェニーが病死していなくても、単純に「元カノと今カノを比べてしまう」ということはあるわけで。
最終的に「オリヴァーが父を理解する」という形で着地しているけど、これも「はあっ?」と言いたくなるし。(観賞日:2019年7月14日)