『ザ・クリミナル 合衆国の陰謀』:2008、アメリカ
アメリカ大統領が狙撃され、怪我で済んだが犯人は逃亡した。CIAから調査報告を受けた大統領はベネズエラの関与を断定し報復装置として軍用基地を空爆した。レイチェル・アームストロングは息子であるティミーの小学校でクラス委員を務めており、スクールバスに同乗した。サン・タイムズ紙でコラムを担当している彼女は編集長のボニー・ベンジャミンに呼ばれ、「明日、朝刊に貴方の記事を載せる」と告げられた。大スクープだと言われたレイチェルは興奮し、初めての大役を喜んだ。
法務担当のアヴリル・アーロンソンは情報源を教えるよう求めるが、レイチェルは明かさなかった。ボニーは「情報を裏付けた2人の名前は聞いてる。ヴァン・ドーレンがCIAに送った文書もある」と話すが、アヴリルは「判断は任せるが、法律は曖昧だ。政府の者がやれば、暴露は違法行為だ」と忠告した。レイチェルはボニーから「ヴァン・ドーレンの居場所は?」と訊かれ、子供の通う学校が一緒だから取材は難しくないと告げた。
エリカ・ヴァン・ドーレンは娘のアリソンを応援するため、彼女が出場するサッカーの試合会場に来ていた。そこへレイチェルが来て身分を明かし、会場から連れ出した。レイチェルは翌日の朝刊で記事が出ることを明かし、「貴方はCIAのスパイで、ベネズエラの調査を担当した。暗殺計画に関与無しと報告したが、ホワイトハウスは無視して報復措置を強行した」と語る。エリカは「最低ね。これは私じゃなく夫の問題よ」と腹を立て、「痛い目に遭うわよ」と鋭く告げて立ち去った。
新聞社に戻って記事を書き始たレイチェルは、ボニーから冒頭にエリカの経歴を書くよう指示された。エリカはイェール大からCIAに入り、20歳年上の大使であるオスカーと結婚した。不倫の末の結婚で、関係はドロドロだった。エリカはCIA幹部のオハラに呼ばれ、「これは君の責任だ」非難された。そこへ別のCIA局員が来て、「情報源の特定のため、特別検察官が来る」と説明した。エリカはオハラに「報告を無視され、腹を立ててリークしたんだろ」と言われ、「馬鹿じゃないの」と吐き捨てた。
パットンはエリカに、「アームストロングは大陪審で情報源を言う義務がある」と話す。オハラが安全のために移住するよう指示すると、エリカは「アリソンはしばらくどこかへ移すけど、あの女と新聞社に怯えて逃げるなんて有り得ない」と述べた。10月1日の朝刊に記事が掲載され、レイチェルは夫で小説家のレイから「ピューリッツァー賞が取れるぞ」と言われた。ティミーを小学校へ送り届けたレイチェルの前にFBI捜査官が現れ、同行を要求した。
レイチェルはホテルの一室に連行され、そこにはパットンが待ち受けていた。パットンは「手続きが済み次第、私は特別検察官に任命され、今回のリークについて捜査を開始する。まず非公式で会っておきたかった」と話し、レイチェルに情報源を守る権利は無いと告げる。彼は「それは諜報員身分保護法で規定されている。君は大陪審で情報源を明かすよう求められる。法廷での尋問は私の担当だ。言わなければ法廷侮辱罪で、拘置所に入ることもある」と説明し、情報源に公表の許可を求めるよう促した。
エリカは子供たちへの朗読会に参加するため小学校へ行き、多くのマスコミに取り囲まれた。矢継ぎ早に質問を受けた彼女は、「私はただの母親よ」とかわして校舎に入った。新聞社に戻ったレイチェルは、ボニーに「情報源を明かすつもりは無い」と断言した。アヴリルは相手がパットンと聞いて顔色を変え、「彼はFBIより強い権限を持つ」と言う。「でも情報源を守る権利はあるはずよ」とレイチェルが口にすると、彼は「連邦政府にシールド法は無い。記者を保護する法律は州だけの物だ」と述べた。
10月10日、エリカはオスカーの車で家を出て行くアリソンを送り出し、レイチェルを訪ねた。彼女は「たぶん夫との関係は終わりになる」と語り、「私と親しい人から情報を聞いたの?」と尋ねる。レイチェルが「何も答えられないわ」と答えると、エリカは罵って立ち去った。10月11日、エリカは自宅から連行され、翌日に大陪審で尋問を受けた。パットンは情報源を明かかすよう求めるが、エリカは拒否した。朗読会に赴いたエリカは校長からクビを通告され、アリソンを学校へ戻さないよう求められた。
エリカの元には2時間後に地方裁判所へ来ることを要求する召喚状が届き、予想外のスピートに焦る。弁護士のアルバート・バーンサイドはホール判事に裁判の延期を求めるが、申し立ては棄却された。レイチェルは情報源の開示を拒否し、法廷侮辱罪で拘置所へ送られた。エリカはリークしていないことを証明するため嘘発見器に掛けられるが、パットンは疑いを捨てなかった。レイチェルの拘置から15日目、アルバートは控訴裁判所が判決を下すまでの釈放を要求するが却下された。パットンが「情報源が明かされるまで、アームストロングを積極的に支援するサン・タイムズ紙に1日1万ドルの罰金を科すべき」と要求すると、ホールは認めた。
エリカはウソ発見器で潔白が証明されたれたはずだったが、CIA局長と上層部のボイドに呼び出されて疑いの目を向けられる。腹を立てたエリカが「私を犯人に仕立て上げるんでしょ。警護も給料も要らないわ。辞めてやる」と告げる。ボイドが「許されないわ」と脅すように言うと、彼女は「信用できない?だったら望み通り、裏切ってやるわ」と声を荒らげる。局長とボイどはアリソンの親権争いをしているエリカに対し、辛辣な言葉を浴びせた。
レイチェルはピューリッツァー賞にノミネートされ、電話でティミーと話した。彼女は持ち物検査で看守にノートを没収され、面会に来たボニーに「社説に書いて懲らしめて」と頼んだ。ボニーはジャーナリストのモリー・マイヤーズがテレビ番組での取材を申し込んで来たことを伝え、「貴方に対する世間の注目度は下がってる。彼女なら表舞台に出す手助けが出来る」と話す。生放送を条件に取材を承諾したレイチェルだが、モリーの質問に対しても情報源は明かさなかった。
アルバートは浮気相手と一緒にいるオスカーに見つかり、「妻の選択だった。その結果だ」と話す。言い訳がましい彼に対し、アルバートは「選ぶ権利があったと思うなら、別れた方が正解だ」と語る。エリカが右翼過激派のアラン・マーフィーに殺され、ボニーはレイチェルに知らせて「貴方は悪くない」と述べた。レイチェルはパットンとホールに呼び出され、「態度を変える気は無い」と告げた。パットンは権利放棄の証書を見せ、「ホワイトハウスの議員とCIA上級職員が署名してる。情報源だった場合、名前の開示に同意すると記されてる」と説明する。それでもレイチェルは「署名は強制でしょ」と反発し、証書の閲覧を拒絶した…。脚本&監督はロッド・ルーリー、製作はマーク・フライドマン&ロッド・ルーリー&ボブ・ヤーリ、製作総指揮はジェームズ・スパイス&デニス・ブラウン&デヴィッド・C・グラッサー&ウィリアム・J・イマーマン、撮影はアリク・サカロフ、美術はエロイーズ・スタマージョン、編集はセーラ・ボイド、衣装はリン・ファルコナー、音楽はラリー・グループ、音楽監修はケヴィン・エデルマン。
出演はケイト・ベッキンセイル、マット・ディロン、アンジェラ・バセット、アラン・アルダ、ノア・ワイリー、ヴェラ・ファーミガ、デヴィッド・シュワイマー、コートニー・B・ヴァンス、フロイド・エイブラムス、プレストン・ベイリー、クリステン・バウ、ジュリー・アン・エメリー、ロバート・ハーヴェイ、マイケル・オニール、クリステン・ショウ、アンジェリカ・トーン、ジェイミー・シェリダン、パメラ・ジョーンズ、ジェニファー・マッコイ、デヴィッド・ブリッジウォーター、ジェニー・オドル・マッデン、ロッド・ルーリー、ジェニー・パリス、ジム・パーマー、クレイ・チェンバーリン、ジョセフ・マーフィー、アシュリー・ルコント・キャンベル他。
『ザ・コンテンダー』『ラスト・キャッスル』のロッド・ルーリーが脚本&監督を務めた作品。
2003年に起きたプレイム事件をモチーフにしている。
レイチェルをケイト・ベッキンセイル、パットンをマット・ディロン、ボニーをアンジェラ・バセット、アルバートをアラン・アルダ、アヴリルをノア・ワイリー、エリカをヴェラ・ファーミガ、レイをデヴィッド・シュワイマー、オハラをコートニー・B・ヴァンス、ホールをフロイド・エイブラムス、ティミーをプレストン・ベイリー、アリソンをクリステン・バウ、ボイドをジュリー・アン・エメリー、モリーをアンジェリカ・トーンが演じている。この映画を製作したのは、2002年に設立されたヤーリ・フィルム・グループ。
ニール・バーガー監督の『幻影師アイゼンハイム』やヘザー・グラハム&ブリジット・モイナハンが出演した『マンハッタン恋愛セラピー』などを手掛けて来た独立系プロダクションだ。
しかし業績が思うように伸びなかったため、2008年に破産した。
これを受け、本作品はアメリカでの劇場公開が中止され、DVDスルーとなった。
なお、ヤーリ・フィルム・グループは会社更生法を申請し、その後も活動を続けている。プレイム事件について、簡単に説明しておこう。
2003年、ジョージ・W・ブッシュ大統領はイラクに大量破壊兵器があると主張し、侵攻に踏み切った。しかし、その根拠となった「ニジェール疑惑」の契約書は偽物であり、調査を依頼されたジョゼフ・チャールズ・ウィルソンも大量破壊兵器は無いと結論付けた。
にも関わらず、ブッシュ政権はウィルソンの報告書を握り潰して開戦に踏み切った。
イラク戦争が始まった後、ウィルソンはニューヨーク・タイムズで政府を批判した。これに腹を立てた政府は報復として、保守系コラムニストに情報を漏らしてウィルソン夫人のヴァレリー・プレイムがCIAエージェントだと暴露させたのだ。この映画ではプレイム事件とは設定を変えて、「報道の自由を守ろうとするヒロインが、情報源を聞き出そうとするアメリカ政府と戦う」という図式になっている。
レイチェルが情報源を明かさずに戦う姿を、「立派で正しいことをやっている記者」として描いている。どんな手を使っても情報源を聞き出そうとする政府側のやり方は、「報道の自由を奪おうとする卑劣な弾圧」という形で批判的に描かれる。
だが、それは完全に論点のすり替えであり、重大な問題から観客の目を逸らしているのだ。
そんな手口の方が、情報源を聞き出そうとする政府よりも遥かに卑劣で醜悪だろう。この話で何よりも責められるべきなのは、スクープ欲しさでエリカがCIA局員だと暴露したレイチェルなのだ。
正体を知られることにより、エリカが様々な意味で追い込まれることなんて、ワシみたいなバカでも簡単に分かる。下手をすると、報復や攻撃の対象になる恐れも充分に考えられる。
そんな罪深い行為をやらかしておいて、レイチェルは何一つとして悪いと思っちゃいない。
そんな奴が「報道の自由が云々」と権利を主張するなんて、片腹痛いわ。
醜悪極まりないマスゴミに、都合の良い自由など与える必要は無い。なので、この映画は序盤の段階でレイチェルが応援も同情も出来ない腐り切ったマスゴミになっている。
それ以降、その印象が大きく変化することは無い。レイチェルが反省したり改心したりすることは無いからだ。
「レイチェルは情報源を守るために自信を犠牲にした」ってことで擁護させようと目論んでいるけど、「そういうことじゃねえんだよ」と言いたくなる。
「情報源を守るか否か」ってのは、ポイントとして完全にズレているのよ。情報源が誰であろうと、エリカの正体を暴露したこと自体がアウトなのよ。エリカが殺されると、レイチェルは「こうなると分かっていたら、あんな記事は書かなかった」と言う。
でも、そうなる恐れが完全にゼロだと思っていたのなら、それはジャーナリストとしてあまりにも浅はかで思慮深さが無さすぎる。どれだけ後悔し、どれだけ反省しても、全く足りないぐらいだ。
しかも、レイチェルは「私の情報源はエリカの死を一身に背負うことになる。それは破滅を意味する」と情報源を隠す理由について語るけど、情報源がエリカの死を一身に背負うような状況を作ったのはアンタだろうに。
それなのに、なんで「情報源を追い詰めるようなことを要求するパットンたちが悪い」みたいな言い草なのかと。レイチェルは情報源を明かすよう政府から要求されること、拒否したら法廷侮辱罪に問われることを、これっぽっちも想定していない。
その感覚がボンクラにしか感じられず、なので実際に拘置されても「ざまあみろ」としか思えない。
オスカーに浮気されたり、刑務所の中で殴られたり、息子の親権を失ったり、一度は解放されたのにパットンが卑劣な方法で再び捕まえたりと、この映画はレイチェルを色んな方法で追い込むことによって「ヒロインは理不尽に酷い目に遭う可哀想な被害者」みたいに描いている。
だけど、まるで同情しないからね。この映画でダントツに可哀想なのは、間違いなくエリカだ。そしてエリカを追い詰めるのはレイチェルなので、彼女が酷い目に遭っても因果応報にしか思えない。
最後に完全ネタバレを書くと、情報源はアリソンだ。彼女が事の重大さを知らずに漏らした言葉で、レイチェルはエリカがスパイだと気付くのだ。
でも、アリソンはレイチェルが「ティミーのママ」ってことで、気を許して母親のことを話しているわけで。そんな無邪気な幼女を利用して、レイチェルは罪悪感ゼロで自分が成り上がるために記事を書くのだ。
ドイヒーな奴じゃねえか。
なので、そんな奴が「アリソンを守るために頑張った」というオチを付けられても、「それで株を上げようとしても、全く足りていないからね」と言いたくなる。(観賞日:2024年5月9日)