『シャドウハンター』:2013、アメリカ&カナダ&ドイツ

ニューヨーク。15歳のクラリー・フレイは幼馴染のサイモンと電話で話しながら、無意識の内に謎の記号を書いていた。母のジョスリンが記号を目撃し、顔を強張らせて友人のルークに知らせた。クラリーが詩の朗読会で出掛けた後、ルークはジョスリンに「あの子に話せ」と促す。「まだ早いわ」とジョスリンは反対するが、ルークは「彼女は知るべきだ」と告げる。サイモンと一緒に朗読を聴いたクラリーは、カプチーノの模様が記号になっていることに気付いた。
帰り道、クラリーはナイトクラブの看板にも記号があるのを見て、中に入りたいと考えた。クラリーが警備係に「あの記号は?」と訊くと、いつの間にか記号は消えていた。店に入ろうとしていた男は、彼女の言葉を耳にすると警備係に耳打ちした。サイモンと共に店へ入ったクラリーは、男の存在が気になった。その男が女に誘われて近付く様子を、クラリーは観察した。すると女は武器を取り出し、男に襲い掛かった。そこへ仲間らしき2人の男性も現れ、剣で男を殺害した。
クラリーが悲鳴を上げると、他の客は驚いた表情を見せた。どうやら他の客たちには、その殺人劇が全く見えていない様子だった。殺人を遂行した3人はクラリーに視線を向けるが、サイモンが彼女に声を掛けたので店から立ち去った。クラリーが「殺人を見た」と言っても、サイモンは「幻覚でも見たんだろう」と信じなかった。翌朝、目を覚ましたクラリーは、寝ている間に書いたと思われる無数の記号が壁に貼り付けてあるのを見て驚愕した。
クラリーはサイモンとカフェへ出掛け、記号を描いた何枚もの紙を見せる。昨晩の殺人劇を実行した男の1人を目撃したクラリーは、店を出て後を追った。クラリーから「人を殺したでしょ」と訊かれた男は、「正義のためだ」と答えた。彼の腕に記号の刺青があったため、クラリーは意味を尋ねる。「君はマンデインじゃないな」と男が言うので、クラリーは「マンデインって?」と質問する。「この世界の人間だ」と男は答えた。
同じ頃、ジョスリンはパングボーンとブラックウェルという男たちに襲われ、「聖杯はどこだ?」と問い詰められていた。ジョスリンは反撃して部屋に閉じ篭もり、入り口を封鎖した。彼女はクラリーに電話を掛け、「帰って来ないで。ルークにヴァレンタインは生きてると伝えて」と告げた。激しい物音がして電話が切れたので、クラリーは急いで家へ向かう。男たちがドアを破壊すると、ジョスリンは「聖杯は渡さないわ」と言う。彼女は小瓶に入っていた薬を飲み、その場に倒れ込んだ。
クラリーが帰宅すると室内は荒らされ、ジョスリンの姿は消えていた。室内にいた犬が怪物へと変貌し、クラリーに襲い掛かった。そこへ先程の男が駆け付け、怪物を消滅させてクラリーを救った。男はクラリーに、「あれは妖魔だ。クラブで殺したのも妖魔だ。妖魔は姿を変える。誰も信用するな。親しい人間でも」と語った。クラリーは「貴方もね」と拒絶姿勢を見せ、大家であるドロシアの元へ赴いた。「ママに何があったの?」とクラリーは尋ね、ドロシアが男に視線を向けたので驚いた。「見えてるの?」と彼女が言うと、男が「魔女だからな」と告げた。
ドロシアは関わり合いになることを嫌がっている様子だったが、ジョスリンから貰ったというカードを広げて「選んで」とクラリーに言う。聖杯のエースがクラリーの手に吸い付き、男は「天賜の杯だ。どうしてそこに?」と疑問を口にする。ドロシアは「彼女もシャドウハンターだった」と言い、男はカードを手に取った。ドロシアはクラリーの顔に触れると、「記憶が封印されてる。貴方を守るため、母親が魔法使いを雇ったのね」と口にした。
物音がしたのでクラリーが部屋に戻ると、サイモンが来ていた。クラリーが男を紹介しようとすると、「デーモンハンターのジェイスだ」と彼は言う。サイモンにもジェイスが見えていると知り、クラリーは困惑した。ジェイスは聖杯を見つけ、3人はルークの元へ向かった。ジェイスとクラリーはサイモンを外で待機させ、ルークの店に入った。ルークは地下室でパングボーンたちに捕まり、暴力的な尋問を受けていた。クラリーが「彼を助けて」と頼むと、ジェイスは「無理だ。奴らは反乱軍の残党だ。勝ち目は無い」と言う。
パングボーンたちはルークを殴り付け、「変身してみろ」と挑発する。「女を返してほしければ、聖杯のありかを吐け」と脅されたルークは、「女がどうなろうと関係ない。聖杯のために、あの親子に近付いただけだ」と吐き捨てる。それはルークの嘘だったが、クラリーは本音だと信じてしまった。クラリーが物音を立てて気付かれたため、ジェイスはパングボーンたちに戦いを挑んだ。ジェイスはクラリーを外へ逃がして後に続き、警官の姿をした妖魔を始末した。
ジェイスはクラリーに、「まずは安全な場所へ行こう。俺の使命だ。命懸けで君を守る」と告げた。大きな屋敷に到着した途端、妖魔に噛まれていたクラリーは倒れた。ジェイスの手当てを受けたクラリーは、翌朝になって目を覚ました。左腕に記号があるのを見た彼女が「タトゥーを入れたの?」と尋ねると、ジェイスは「違う」と否定した。サイモンが「ルーン文字だ。ルーンは傷を癒やし、力を与える」と語ると、ジェイスは「違う。ルーンが効くのはマンデインじゃないからだ。君はシャドウハンターだ」と述べた。
そこはジェイスの他、クラブにいた仲間のアレクとイザベル兄妹、そして3人の先生に当たるホッジが暮らすハンターの避難所兼宿泊所だった。ジェイスはクラリーに、聖杯を失ってハンターの数が激減したこと、ハンターを増やすには天賜の杯が必要なことを話す。アレクはクラリーを敵視し、「君は余所者だ。ジェイスに近付くな」と告げた。ジェイスはクラリーをホッジの元へ連れて行き、2人きりにした。一方、サイモンはイザベルから、地下世界には吸血鬼や人狼が住んでいることを聞かされた。
ホッジはクラリーに、「その昔、十字軍兵士が大天使ラジエルを召喚した。ラジエルは聖杯に血を注ぎ、それを飲んだ者は特別な力を得た。シャドウハンターの血は親から子へ継承される。世界の秩序を保ち、この世を妖魔から守っている」と語る。クラリーが「ハンターの数を増やせば?」と言うと、彼は「ヴァレンタインもそう言ったが、聖杯を管理するクレイヴが反対した。人によっては儀式で命を失う。ヴァレンタインは仲間に呼び掛けて反乱を起こし、クレイヴから聖杯を奪った。だが、彼はシャドウハンターの進化を実現すべく、強大な力を求めて自分の体で実験を始めた妖魔を召喚し、汚れた血を取り込んで妖魔を制御する力を手に入れた。ショスリンは聖杯を奪い去り、姿を消した」と語った。
ジェイスはホッジが呪いのせいで外に出られないことをクラリーに話し、霊廟の地下にある骨の街へ連れて行く。ジェイスはクラリーに記憶を取り戻させるため、霊廟を根城とするサイレント・ブラザーズに協力を要請した。クラリーは幼少期の記憶の断片を見たものの、すぐに倒れ込んだ。ジェイスはクラリーに、掛けた者にしか解けない強力な魔法だと語る。彼はクラリーが無意識に書いた文字を解読し、その魔法使いがマグナス・ベインだと知った。
ジェイスたちはクラリーを連れて、マグナスの元へ赴いた。ベインはクラリーだけを奥の部屋へ通し、「魔法が弱まる度、ジョスリンは君を連れて来た。シャドウワールドを見ても恐れるようにだ。しかし年々、魔法の効力も弱まった。いずれ話すつもりだったか、まだ早いと彼女は思っていた」と話す。画家である母の絵を見つけたクラリーに、マグナスは購入して生活費を援助していたことを語る。クラリーは死んだ父の肖像画を見つけるが、マグナスは「赤の他人だ。嘘をついたのは君を守るためだ」と述べた。
サイモンが吸血鬼に拉致され、クラリーは救出に向かおうとする。ジェイスたちは教会に侵入し、床下に隠されている武器を調達した。彼はクラリーに特殊な銃を渡し、使い方を教えた。クラリーたちが廃墟のホテルに入る様子を、ルークが密かに観察していた。クラリーが吊るされているサイモンを助けると、彼は「奴らの狙いは君と聖杯だ」と告げた。クラリーたちは吸血鬼の群れに襲われて必死で戦うが、多勢に無勢で窮地に追い込まれる。だが、そこに人狼の群れが突入し、2つの集団が戦っている間にクラリーたちは脱出した。
避難所に戻ったクラリーは、アレクから「出て行け、チームの邪魔をするな」と告げられる。クラリーはアレクがジェイスに好意を寄せていると見抜いており、そのことを指摘して「嫉妬しないで」と言う。アレクはクラリーの首を締め上げ、「もう一度言ったら殺す」と威嚇した。ベッドで目を覚ましたサイモンは、眼鏡が無くても見えることに戸惑った。彼とクラリーが良い雰囲気になっている様子を目撃したジェイスは、部屋に入らずに立ち去った。クラリーはサイモンの肩に噛み跡を見つけるが、彼には話さなかった。
サイモンから「君が僕を思うより、僕の方が君を思ってる」と愛を告白されたクラリーは、「ママもルークも貴方も、いなくなると困る」と受け流した。ジェイスはクラリーに、ポータルと呼ばれる扉を見せる。彼が「同じ次元なら、どこへでも行ける」と説明してポータルを開けると、クラリーは「ママの所へ行く」と入ろうとする。ジェイスは彼女を制し、「訓練を積まないと無理だ。場所の特定には集中力が必要だ。不用意に飛び込んだら、自分の心を永遠に彷徨うことになる」と述べた。
ジェイスはクラリーの誕生日だと知っており、「お祝いしよう」と告げて屋上の植物園へ連れて行く。12時の鐘が鳴ると次々に花が開き、ジェイスは魔法の明かりをクラリーにプレゼントした。クラリーはジェイスと唇を重ね、強く抱き締め合った。しかし避難所に戻った彼女はサイモンにジェイスとのキスを見られると、慌てて釈明する。その態度にジェイスは機嫌を損ね、「キスするなら考えてからにしろ。あれに意味なんて無い」と告げて立ち去った。
サイモンはクラリーに、「もう帰るよ」と言う。「どうして?彼が嫌い?」とクラリーが告げると、彼は「いつも傍にいたのは僕だ。君を愛してる」と言う。クラリーが言葉に詰まっていると、サイモンは「いいよ、何も言えないだろ。奴は君を利用してるだけだ」と述べて避難所を後にした。文献を調べていたクラリーは、物体を絵に変えたり戻したりする能力に覚醒した。「ジョスリンしか持たない力だ。記憶が戻る度に能力が開花している」とホッジに言われた彼女は、ドロシアのカードに聖杯があったことを思い出した…。

監督はハラルド・ズワルト、原作はカサンドラ・クレア、脚本はジェシカ・ポスティゴ・パケット、製作はロバート・クルツァー&ドン・カーモディー、製作総指揮はボブ・シェイ&マイケル・リン&マーティン・モスコウィック、共同製作総指揮はヴェスレメイ・ラッド・ズワルト&ジョエル・ネグロン、撮影はガイア・ハルトリ・アンドレセン、美術はフランソワ・セギュアン、編集はジャクリーヌ・カーモディー、衣装はガーシャ・フィリップス、音楽はアトリ・オーヴァーソン。
出演はリリー・コリンズ、ジェイミー・キャンベル・バウアー、ロバート・シーアン、ジョナサン・リス・マイヤーズ、ジャレッド・ハリス、CCH・パウンダー、ケヴィン・ゼガーズ、レナ・ヘディー、ケヴィン・デュランド、エイダン・ターナー、ジェマイマ・ウェスト、ゴッドフリー・ガオ、ロバート・メイレット、ハリー・ヴァン・ゴーカム、スティーヴン・ハート、チャド・コンネル、クリス・ラッツ、エリアス・ムバレク、ペドロ・ミゲル・アルセ、マシュー・チェン、カルロス・ゴンザレス=ヴィオ他。


カサンドラ・クレアのベストセラー小説“シャドウハンター”シリーズの第1作『シャドウハンター 骨の街』を基にした作品。
監督はリメイク版の『ピンクパンサー2』や『ベスト・キッド』を手掛けたハラルド・ズワルト。
脚本のジェシカ・ポスティゴ・パケットは、これがデビュー作。
クラリーをリリー・コリンズ、ジェイスをジェイミー・キャンベル・バウアー、サイモンをロバート・シーアン、ヴァレンタインをジョナサン・リス・マイヤーズ、ホッジをジャレッド・ハリス、ドロシアをCCH・パウンダー、アレクをケヴィン・ゼガーズ、 ジョスリンをレナ・ヘディー、パングボーンをケヴィン・デュランド、ルークをエイダン・ターナー、イザベルをジェマイマ・ウェスト、マグナスをゴッドフリー・ガオが演じている。

2008年の『トワイライト〜初恋〜』から始まった“トワイライト”シリーズは、ティーンズに大人気のヤングアダルト小説の映画化だった。
そんな“トワイライト”シリーズの大ヒットを受けて、アメリカではヤングアダルト小説が次々に映画化された。
そんな「二匹目のどじょう」を狙った作品群の1つが、この映画である。
原作と同じく映画もシリーズ化を想定して企画されたが、この1作目が興行的に失敗したため、続編の製作は中止された。

他にもヤングアダルト小説の映画化作品はあるのだが、その中でも本作品は、“トワイライト”シリーズのヒットに乗っかろうという意識が非常に分かりやすく表れている。
ヒロインは2人の男から好意を抱かれるし、その片方は幼馴染だし、吸血鬼や人狼が登場するし、モロに“トワイライト”シリーズの模倣なのだ。
ここまで露骨に“トワイライト”シリーズを意識した要素を盛り込むってのは、ある意味では潔くて気持ちがいい。
こちらとしても遠慮せず、“トワイライト”シリーズの亜流作品として観賞することが出来る。

吸血鬼や人狼が登場すると前述したが、その2つの種族を中心に据えてストーリーが構築されているわけではない。
タイトルにもなっているシャドウハンターと、その標的となる妖魔の対立する構図がメインとなっている。
そこは単なる“トワイライト”シリーズの物真似ではない、大きく異なる点だ。
しかし皮肉なことに、“トワイライト”シリーズと大きな違いを示す設定の部分が、この映画における重大なネックとなっているのだ。

吸血鬼や人狼ってのはホラー・モンスターとして馴染みのある存在なので、ザックリとした説明で済んでしまう部分もあった。
しかし、この作品が持ち込んだ「マンデインが云々」「シャドウハンター」という世界観は、まるで馴染みの無いモノだ。
そのため、ほぼゼロの状態から詳しく説明して理解してもらわないと、観客を入り込ませ、その世界観に浸らせることが難しい。
そして、その説明を律儀に遂行した結果として、「説明のための台詞が多く、それでも説明不足」という仕上がりになってしまった。

考えてみれば、前述した吸血鬼や人狼ってのは、「シャドウハンターと妖魔の戦い」には何の関係も無いはずだ。それなのに持ち込んでいるのは、ただの余計なモノじゃないのか。
しかも吸血鬼や人狼だけじゃなくて、魔女と魔法使いも登場させる。どうやら魔女と魔法使いは性別だけじゃなくて仕事としても大きく異なるようだが、その辺りは良く分からない。
で、そういう要素を持ち込んでも上手く捌くことが出来ていれば、もちろん何の問題も無い。
しかし実際は明らかに処理能力を超過しており、ただ無駄に散らかしているだけだ。

クラリーは記号が気になってナイトクラブに入り、殺人を目撃する。だが、そもそも「クラリーが記号を気にして店に入る」という行動の説得力が不足している。
まず冒頭シーンで、彼女は窓やメモ用紙に記号を書いている。だが、その時点では、クラリーが記号を認識しているのかどうかがハッキリしない。
そうなると、カプチーノの記号が最初の認識ってことになる。
そうであるならば、同じ記号が看板にあったからと言って、それだけで「ナイトクラブに入る」という行動に至るのは、ちと無理があるように思える。その段階だと、まだ「ちょっと気になる」という程度ではないかと。

細かいことを言うと、ナイトクラブでの殺人劇は、ちょっと見えにくい。
そりゃあクラリーから離れた場所で実行されているし、周囲には大勢の客がいる状況ではあるのだが、それにしても映像として無駄にゴチャゴチャしている。
その理由は簡単で、カメラを素早く動かしてブレさせるからだ。だから、イザベルが男に襲い掛かり、そこへアレクが来て男を取り押さえ、ジェイスが刀で斬り付けるという一連の動きが、映像として分かりにくくなっているのだ。
動きの速さを表現したかったのかもしれないけど、むしろ逆効果だ。

ジョスリンは「聖杯は渡さない」と言い、小瓶に入っている薬を飲んで意識を失うのだが、どういう意味がある行動なのか全く分からない。薬を飲まれた刺客が悔しがっているのも、どういうことなのか分からない。
どうやら「薬で眠りに就いたから聖杯のありかを聞き出せない」ってことみたいだけど、それって眠っているジョスリンが後半に入って再登場するまでは理解できないんだよね。
っていうか、ジョスリンが眠りに就いたら敵がクラリーを標的にするのは目に見えているわけで。
娘を守るために色々と策を講じてきたはずなのに、それはいいのか。

クラリーは犬が怪物に変貌して襲い掛かると、キッチンの棚から油を取り出し、ガスレンジのコックを捻り、多目的ライターを握り、火を放って爆発を起こすという対処を見せる。
すぐに怪物は復活するものの、かなり頭のキレる娘である。
普通に「室内にいた猛犬が急に襲い掛かってくる」という状況だったとしても、冷静に対処するのは難しいだろう。ところがクラリーは、「猛犬が怪物に変貌する」という、すぐには理解できないような現象を目の当たりにして驚きつつも、そんな冷静な判断が出来るのだから。
ただし、どうせ怪物は復活して襲い掛かって来るのだし、結局はジョイスに救われるので、「その手順、要らなくねえか?」と思ってしまうのよね。
「不意に怪物が襲って来たのに、クラリーが異様に冷静で利口な対応を見せる」という部分で無駄に引っ掛かりを持たせておいて、そのくせ怪物は退治できずにジョイスが助けてくれるなら、最初から「クラリーが怪物に襲われて危機に陥るが、ジョイスが来て助けてくれる」という形で良かったんじゃないのかと。

ルークの元へ向かう際、サイモンが同行するのは、まだ理解できる。しかし、シャドウハンターの隠れ家までサイモンが同行するのを普通にジェイスが容認しているのは、まるで解せない。
「シャドウハンターを見ることの出来る男だから」ってだけでは、説明が付かない。
しかも、ジェイスだけじゃなくて仲間たちも普通に受け入れ、秘密を詳しく説明する。
アレクなんて、嫉妬心が理由とは言え同胞であるクラリーを冷淡に拒絶しておきながら、部外者であるサイモンは受け入れるんだから、どういうつもりなのかと。

サイモンは普通の人間のはずなのに、なぜかジェイスたちの姿が見えている。なぜなのか、そこは説明されないまま終わる。
たぶん続編で明らかにしようという狙いだったんだろう。だから、そこが説明されないのは、まあ良しとしよう。
ただし、それとは別の問題がある。
それは、ナイトクラブのシーンで、サイモンはジェイスたちが見えなかったんじゃないかってことだ。
だとすれば、クラリーの部屋で遭遇した時から、つまり途中から見えるようになったってことになる。それは不可解だ。

たぶんナイトクラブのシーンでも、サイモンはジェイスたちが見えなかったんだろう。クラリーの話を信じなかったのは、「たまたま席を外しており、ジェイスたちが立ち去るまでは店内に視線を向けていなかった」ということなんだろう。
そう解釈しておかないと、整合性が取れない。
ただし、そういうことであれば、ナイトクラブのシーンは「サイモンはジェイスたちが見えなかったわけではなく、見える場所にいなかった」ってことを、もっと分かりやすく示しておくべきだ。
席を外す手順はあるけど、それだけでは不足だ。

っていうか、そのように解釈するとしても、やっぱり違和感はあるんだよね。
クラリーの場合、映画が始まった頃からシャドウハンターや妖魔が見えるようになったのは、「無意識にルーン文字を描くようになり、血筋の持つ力が漏れ始めた」と解釈できる。しかしサイモンの場合、そういう「能力の開花」のきっかけなんて無かったわけで。
それなのに、今までは全く見えなかったシャドウハンターや妖魔が、クラリーと同じぐらいのタイミングで見えるようになるのは、どういうことなのかと。
あと、ジェイスたちは見えるのに避難所の真の姿は見えないってのも、整合性が取れないぞ。

「シャドウハンターと妖魔の対立の構図」で話を進めるのかと思いきや、前半の段階で「反乱軍が聖杯を探している」「吸血鬼も探している」という設定が披露される。つまり、シャドウハンターは妖魔と戦って世界の秩序を守る存在なのに、この話は聖杯を巡って反乱軍や吸血鬼と戦う話がメインってことなのだ。
あのね、これが例えばシリーズ3作目ぐらいなら、そういう話へ発展させてもいいと思うのよ。
だけど、1作目でいきなり「シャドウハンターの内輪揉め」から始めるって、どういうつもりなのよ。
だったら、もはやシャドウハンターの「妖魔と戦う」という使命なんて邪魔なだけでしょ。どう考えたって、それは最初から手を広げすぎて脱線しちゃってるぞ。

クラリーは怪物に襲われた時に冷静な判断力&行動力を披露するだけでなく、ホッジのシャドウハンターに関するゴチャゴチャした説明を、あっさりと理解している。
まず、「急にそんな突拍子も無いとこを言われても」と言いたくなるような出来事なのに、まるで疑わずに全てを受け入れるってのが、見事な適応力だ。
そして、かなり長々とした講釈を受けているのに、たった一度の説明だけで全てをキッチリと把握するってのは、見事な理解力だ。

ジェイスがクラリーの前でバッハのピアノ曲を演奏し、「妖魔は彼の曲が苦手だ。バッハもシャドウハンターだった」と言うシーンがある。
聖杯のカードを取りに行く際、ドロシアの正体を怪しんだジェイスはバッハの曲を弾き、妖魔の姿に変貌させる。
だが、それ以外ではバッハの曲が全く活用されない。
妖魔退治がシャドウハンターの仕事なら、もっとバッハの曲を積極的に利用した方がいいんじゃないのか。ドロシアのシーンで使うためだけに持ち込んだネタとしては、バッハの存在はデカすぎやしないか。

ジェイスはドロシアが妖魔だと疑ったからバッハの曲を弾き始めたはずなのに、その近くでノホホンとカードから聖杯を取り出すクラリーがボンクラにしか見えない。
そもそも、その場で聖杯を取り出さなくても、カードを避難所へ持ち帰った方がいいし。
っていうかジェイスにしても、クラリーに少し行動を待つよう言えよ。
このシーンは、クラリーもジェイスもボンクラだったせいで一時的に聖杯を奪われたり、アレクが深手を負ったりしているように見えるぞ。

それまではクラリーを受け入れて仲良くしていたイザベルは、アレクが深手を負った途端に冷たく拒絶し、ジェイスに「アレクの忠告を無視して、その結果がこれよ」と言い出す。
兄貴のピンチで荒れているってのは分かるけど、その場に合わせてキャラの立ち位置が急に変化しているように感じるぞ。
しかも、そこからクラリーと和解に至るドラマがあるわけでもなく、戦いが繰り広げられる中、なし崩し的に関係が修復されちゃうし。
「だったら要らなくねえか、その不和」と思ってしまうぞ。

後半に入ると、聖杯を手に入れたホッジがヴァレンタインを呼び寄せて渡してしまう。
まだ「こういう世界観ですよ」とか「こういう相関関係ですよ」ってのを説明して、これから色々と複雑化していく初期段階なのに、早くも「仲間だと思っていた人物の裏切り」というカードを切っちゃうのは、どう考えてもマイナスだ。
そういうのは、観客が初期設定として用意された世界観や相関関係をキッチリと把握し、それに順応してから切るべきカードなのよ。
最初の設定をようやく飲み込んだばかりなのに、すぐに「意外な展開」を用意されてもさ。
そもそも意外性の基盤となる「当然のこと」がキッチリと馴染んでいない状態なので、そのドンデン返しの効果を感じるよりも、「そういうの要らないわ」という拒否反応が強くなってしまう。

しかも、ホッジがクラリーたちを裏切ってヴァレンタインに聖杯を渡す理由って、「クライヴのせいで外に出られなくなったから、呪いを解いてもらうため」ってのことなのよ。
それって、しょっぱいなあと。そんなチンケな理由で裏切るのかと。
しかも、もっと情けないことに、「外に出られない呪い」ってのは思い込みで、実際は出ようと思えば簡単に出られる状態だったわけで。
もうね、アホの極致だわ。シャドウハンターの先生が、そんなボンクラ野郎でいいのかよ。

ヴァレンタインはホッジに招かれて登場すると、その直後にはクラリーに向かって「お前は俺の娘」と言い出す。
それは、ものすごく拙速だなあと感じる。
そういうのって、もっと「クラリーの戦うべき敵」「恐ろしい力を持つ強大な敵」としての存在感をアピールした上で「実は〜」と明かすべきネタでしょ。
回想シーンを除けば初登場なのに、出てきた途端にそういうことを打ち明けると、ドンデン返しとしての面白味がゼロなのよ。

ヴァレンタインは「聖杯が本物かどうか確かめる。これで我らの血統を浄化できる」と言って聖杯に自分の血を注ぎ、クラリーに飲むよう強要する。
だが、それを飲ませることで何を確かめようとしているのか、それは説明されない。クラリーが飲むことを拒否してポータルに飛び込むので、ヴァレンタインの考えが正解で聖杯が本物なら何が起きていたのかは分からないままだ。
そうなると、聖杯の持つ力も良く分からないってことになる。
ひょっとすると、それは続編で明かすつもりだったんだろうか。だとしても前述したように続編の製作は中止されたため、分からないまま終わってしまうわけだが。

ポータルで瞬間移動したクラリーはルークと再会し、彼が人狼だと知る。ジョスリンが避難所の地下にいると判明し、ルークは仲間たちを結集させて乗り込む。
しかし「ルールに反する」ってことで人狼に変身しないもんだから、あっさりとルーク以外の全員が始末される。
「乗り込みました」→「反乱軍と遭遇しました」→「全滅しました」という具合なので、ホントにルークの仲間たちって何のために登場したのかサッパリ分からんぞ。「ルールに反する」とか言ってる場合じゃねえだろ。
大体さ、ルールに反して変身したら何があるのかも説明されないから、その程度で変身を拒んで全面させられるのが単なるバカにしか見えんよ。

ヴァレンタインから「お前は私の息子だ」と告げられたジェイスが、一時的ではあるが彼の言いなりになり、クラリーを邪魔するってのは、ちっとも乗れない展開だわ。
もうストーリーも佳境に入っているのに、善玉サイドが勝手に弱体化して悪玉サイドを優位に立たせるとか、そんなのは誰も期待しない展開でしょ。
そりゃあ、「まだジェイスは青二才だから簡単に心を操られる」ってことなのかもしれんよ。
だけど、そこで一度的にヴァレンタインの軍門に下るのは、ただダラダラしているとしか感じないのよ。

サイモンは吸血鬼に噛まれるが、本人が吸血鬼に変身することは無いし、視力が良くなる以外に特殊能力が発揮されることも無い。
これに関しては、まず間違いなく続編で描くつもりだったんだろう。しかし前述したように続編の製作は中止されたため、分からないままで終わってしまう。
なぜクラリーがルーン文字を描くのか、そのルーン文字に何の意味があるのかは明かされないままだが、こちらも続編で明かす予定だったんだろうか。しかし、こちらも続編が無くなったので、分からないままだ。
ちなみにクラリーは終盤に入り、ルーン文字を手に刻んで敵を撃退するが、その文字を選んだ理由も、それで敵を撃退できると思った理由も全く分からない。

(観賞日:2015年10月1日)

 

*ポンコツ映画愛護協会