『スター・ファイター』:1984、アメリカ

未確認飛行物体の目撃談が立て続けに出ているが、警察は宇宙船について肯定も否定もしていなかった。カリフォルニア州のトレーラー・パークでは、青年のアレックス・ローガンが食堂で働く母のマギー、宇宙が好きな弟のルイス、祖母の4人で暮らしていた。アレックスはトレーラー・パークに置いてあるビデオ・ゲームの「スター・ファイター」で、良く遊んでいた。「スター・ファイター」は、宇宙戦士になったプレイヤーが悪の宇宙人であるズアーとコダン艦隊を撃退するシューティング・ゲームだった。
アレックスが「スター・ファイター」で遊んでいると、恋人のマギーと友人たちが車で誘いに来た。遊びに出掛けようとしたアレックスだが、母に住人であるエルヴァイラの電話線を修理する仕事を頼まれた。「時間が掛かるから先に行ってて」と告げたアレックスは修理に取り掛かり、遊びに行くのを諦めて町に留まった。夜になってアレックスが「スター・ファイター」で遊んでいると、住人のオーティスが「君には楽しみが無いのか?」と問い掛ける。「古いヒューズを直したり、トイレを掃除したり。楽しむ機会なんか無いよ」とアレックスが答えると、オーティスは「チャンスは来る。肝心なのは、それを掴んで離さないことだ」と述べた。
戻って来たマギーが見物する中で、アレックスは高得点を叩き出す。オーティスが住人に知らせて大勢が集まる中、アレックスは新記録を達成した。マギーと2人になったアレックスは、「落ち着いたら迎えに来る」と告げてキスをした。彼は田舎で一生を終える気など無く、大学で都会に出るつもりだった。しかし帰宅したジェーンから学費ローンの通知を渡されたアレックスは、地元の大学に行く道しか無いと知ってショックを受けた。
家を出たアレックスは、無人のゲーム機が勝手に動くのを目にした。すぐにゲーム機は止まり、アレックスの背後に車が現れた。運転していたセントーリという男は、アレックスに「あのゲームの記録を出した人物を探している」と告げた。アレックスが自分だと告げると、彼は自分がゲームの開発者だと言う。セントーリは「重要な話がある」と述べ、車に乗るよう促した。アレックスが同乗すると、セントーリは「提案がある。興味は?」と訊く。アレックスが「まあね」と答えると、彼は車を発進させた。
セントーリは猛スピードで車を走らせながら、ラスベガスに置くつもりだったゲーム機が田舎のトレーラー・パークに設置されたことを語る。車は変形して空を飛び、宇宙空間へ出た。巨大宇宙船に到着すると、セントーリは何も言わずに車を去った。そこへ言葉の通じない異星人が現れ、アレックスを案内する。その異星人もすぐに立ち去り、また別の異星人が現れた。セントーリが再び姿を見せ、アレックスに「ここはライロスだ」と告げた。
ライロスとは「スター・ファイター」に登場する異星人の母星であり、アレックスはライラン人の基地に来ているのだと理解した。そこへ通訳装置を使ったライラン人が現れ、アレックスに「司令部へようこそ」と声を掛けた。ライラン人は会議が始まると告げ、新兵の席に移動するようアレックスに指示した。会議の場には、様々な星の異星人が集まっていた。エンデュラン大使は新兵に向け、「先祖が築いたフロンティアが裏切り者のせいで崩壊寸前だ。だから戦ってくれるスター・ファイターと航空士を集めた」と演説した。
アレックスは航空士のグリッグと遭遇し、自分はスター・ファイターとして呼ばれたことを知る。地球から来たことを彼が話すと、「地球は同盟に参加していないはず」とグリッグは言う。セントーリを見つけたグリッグは、「同盟に参加していない星から呼ぶのは違法だ」と指摘する。セントーリは「地球も危ない。それに私が使ったのはゲーム機だ。彼には才能がある」と全く悪びれずに言うが、アレックスはスター・ファイターになるつもりなど無いと拒否した。
ズアーがホログラムで出現すると、彼の父であるエンデュランは「裏切り者として追放したはずだ」と怒りを向ける。ズアーはライロスが送り込んだスパイの処刑映像を見せ、宣戦布告して姿を消した。セントーリはアレックスに協力を拒まれ、仕方なく地球へ連れ帰ることにした。フロンティアでコダン艦隊と行動しているズアーは、クリル司令官たちから馬鹿にされていることに全く気付いていなかった。彼はスター・ファイター基地の爆破を命じ、ミサイルが発射される。基地は迎撃に出るが、スパイが司令部に爆弾を仕掛けて妨害する。ズアーは攻撃の成功を報告されるが、同時に1機のスター・ファイターが脱出したことを知らされた。
地球に戻ったセントーリは、アレックスに通信装置を渡して別れた。帰宅したアレックスはマギーから怒りをぶつけられるが、まるで理由が分からなかった。ベッドに入ろうとした彼は、自分と瓜二つの男がいたので驚いた。それはセントーリが連れて来たベータと呼ばれるシミュロイドで、アレックスに化けて留守中の代役を務めていたのだ。ベータの話を聞いたアレックスは、彼の言動が原因でマギーが腹を立てたのだと理解した。
外へ出たアレックスは、通信装置を使ってセントーリのベータの回収を要請した。そこへ異星人が現れて襲い掛かり、アレックスを追って来たベータも銃撃する。セントーリが駆け付けと異星人を退治し、アレックスに「ズアーが放った殺し屋のザンドザンだ。これからも来る。君をスター・ファイターだと思っているからだ」と話す。彼は「宇宙から反撃のチャンスがある」と言い、思い直すようアレックスに説く。生きていたザンドガンが発砲して来たのでセントーリは怪我を負うが、すぐに反撃して殺害した。
アレックスはスター・ファイターとして戦うことを承諾し、セントーリの車に乗り込んだ。セントーリは司令部に通信して基地に到着した途端、意識を失った。アレックスはグリッグを見つけ、セントーリが大変だと伝える。目を覚ましたセントーリは、アレックスとグリッグに看取られて息を引き取った。ベータが寝室で頭部を外すと、ベッドにいたルイスが目撃して驚いた。「どうなってるの?」とルイスが口にすると、ベータは「これは悪夢だ。早く寝ろ」と指示した。
アレックスはグリッグに指示され、改良した試作機に搭乗する。彼はグリッグの説明を受けて、操縦方法を学ぶ。グリッグは格納庫が爆破されたこと、自分たち以外にスター・ファイターと航空士が残っていないことを明かした。それでも彼は「敵は油断している。1機で奇襲を仕掛ける」と告げ、フロンティアへ向かう。途中でズアー派の貨物船に襲われたアレックスは、反撃して倒した。フロンティアに接近すると、グリッグは「地下で住んでいたがかぞくは ズアーの奴隷にされた」と話す。家族との思い出を語ったアレックスは、敵の艦隊が通った後で背後から通信室を襲う作戦を思い付いた…。

監督はニック・キャッスル、脚本はジョナサン・ベチュエル、製作はゲイリー・アデルソン、エドワード・O・デノールト、製作協力はジョン・H・ホイットニーJr.、撮影はキング・バゴット、美術はロン・コッブ、編集はC・ティモシー・オメーラ、衣装はロバート・フレッチャー、音楽はクレイグ・セイファン。
出演はランス・ゲスト、ダン・オハーリー、キャサリン・メアリー・スチュワート、バーバラ・ボッソン、ノーマン・スノー、ロバート・プレストン、ケイ・E・クター、ダン・メイソン、クリス・ヘバート、ジョン・オレアリー、ジョージ・マクダニエル、シャーリーン・ネルソン、ジョン・マイオ、ロバート・スター、アル・ベリー、スコット・ダンロップ、ヴァーノン・ワシントン、ピーター・ネルソン、ペギー・ポープ、メグ・ワイリー、エレン・ブレイク、ブリット・リーチ、バニー・サマーズ、オーウェン・ブッシュ他。


『ハロウィン』でマイケル・マイヤーズを演じていたニック・キャッスルが、『暗殺遊戯/キャンパスは凶弾のデスマッチ』に続いて監督を務めた作品。
脚本のジョナサン・ベチュエルは、これがデビュー作。
アレックスをランス・ゲスト、グリッグをダン・オハーリー、マギーをキャサリン・メアリー・スチュワート、ジェーンをバーバラ・ボッソン、ズアーをノーマン・スノー、セントーリをロバート・プレストン、エンデュランをケイ・E・クター、クリルをダン・メイソン、ルイスをクリス・ヘバートが演じている。

アーケードのシューティング・ゲームで住民が集まって大盛り上がりするってのは、どうにも違和感があるぞ。
「田舎で他に娯楽が無い」ってことかもしれないけど、「スター・ファイター」で遊んでいるのはアレックスだけなのよ。他の住民が、そのゲームに以前から興味を持っていた気配は全く無いのよ。
だから、アレックスが新記録を達成しても、ピンと来ない奴が大半じゃないのかと思っちゃうわ。
そこで全員が興奮しているのは、ものすごく無理のある展開に感じるわ。

そもそも、「アレックスの新記録達成に住民が興奮して祝福する」という手順って、ホントに必要なのかな。
むしろ、「アレックスは記録を出すが、住民は誰も関心を示さない。っていうか、そもそも誰も見ていない」ってぐらいの描写にした方が良くないかな。
そうすれば、「アレックスが田舎の退屈な生活にウンザリしている」ってことが、さらに強調されるでしょ。
そこで住民が祝福してくれたら、「田舎の生活も悪いことばかりじゃない」ってことになっちゃうでしょ。

粗筋を読んでも伝わらないと思うが、セントーリがアレックスを宇宙を連れ出すシーンは、無駄にモタモタしている印象を受ける。彼は車にアレックスを乗せた後、最初は猛スピードで道路を走っている。そして、しばらく喋ってから、車を変形させて空へ飛び立つのだ。
でも、そこはアレックスを車に乗せて発進したら、いきなり宇宙へ飛び立っていいと思うんだよね。だから手順としては、「アレックスに必要な情報を喋る」→「提案がある。興味はあるかと質問する」→「アレックスが前向きな態度を示すと宇宙へ飛び立つ」ってことでいいんじゃないかと。
どうせ道路を走っている間にセントーリが話す内容って、その大半は中身が無いからね。
あと、車が宇宙へ飛び出した後、宇宙基地に着いたセントーリが去るまで、アレックスが全く喋らないのはどうなのよ。途中で驚きや恐怖の表情は浮かべるけど、もう少しリアクションしてもいいんじゃないの。

集められた他の新兵は事情を理解しているのに、アレックスだけが何も知らない状態で連れて来られている。
それは「地球は同盟に参加していないから」ってことなのかもしれないけど、セントーリが事前に何も説明してけば済むことだよな。なんで説明しないんだよ。それでアレックスが承知してくれると、良く思ったな。
で、そこまで黙っていたのなら「騙して参加させる」という目論みだったのかというと、エンデュランの演説は聞かせているし、どうせ簡単にバレるのよね。そうなると、セントーリが黙っていた意味は全く無いはずで。
その辺りは、観客へのサプライズや進行を優先させたせいで、キャラの行動に不自然さが生じているとしか思えないぞ。

そもそも、わざわざ同盟に参加していない地球から、騙す形でアレックスを連れて来る理由が全く分からないのよ。
そんなことしなくても、同盟を組んでいる星でも優秀な戦士は見つけられるはずでしょ。地球人にこだわらなきゃいけない理由なんて、何も無いはずでしょ。
それと、ゲーム機を使って戦士をスカウトするという方法も「なんでやねん」と言いたくなるし。
ゲーム機と同じように遠隔操作で戦闘機を操縦するならともかく、実際に搭乗するわけで。だったら、ゲームの才能があっても即戦力とは言い難いでしょ。
ゲーム機を開発して多くの場所に配置する手間と予算、違法行為に手を出すリスクを考えると、まるで割に合わないんじゃないかと。

セントーリはスター・ファイターとして戦うようアレックスを説得する時、コロンブスやライト兄弟を例に出す。そして「歴史に名を残すチャンスだ」と言う。
だけど「戦争に参加して大勢を殺してくれ」と頼む内容なのに、それを「歴史に名を残すチャンス」と説明するのは違和感が強いぞ。
戦争の志願兵としての仕事って、「冒険心」とか「チャレンジ精神」という部分にモチベーションを求めちゃダメでしょ。
殺し合いなんだから、「夢を叶えるチャンスだぞ」「達成感や充実感が得られるぞ」ってのは違うでしょ。

地球に戻ったアレックスはザンドガンに襲われ、セントーリに「宇宙なら反撃のチャンスがある」と言われて戦うことを決意する。でも、その前にセントーリは「歴史に名を残すチャンスだ」という方向で説得を試みていたでしょうに。
だったら、そこを貫いた上でアレックスが戦う気になる展開へ入らないとダメなんじゃないのか。その上で、「そういう不純な動機が途中から使命感や正義感に変わる」というドラマを描けば良かったんじゃないの。
っていうか、「自分が殺されそうになったから戦う」というアレックスの動機にしても、「それはダメだろ」と言いたくなるし。
そこは本来なら、「マギーたちにも危害が及ぶかも」ってのを動機にした方が良くないか。

アレックスをやる気にさせた直後にセントーリは命を落とすが、なんかマヌケに見えるんだよね。
ザンドガンを始末したと思って油断していたら、生き残っていて撃たれるという形なのでね。
あと、基地へ戻った時に意識を失うので、そこで死んだのかと思ったら、グリッグが来ると目を開けるんだよね。
そんで少し喋ってから今度こそホントに死ぬんだけど、だったら「着いた途端に目を閉じて動かなくなる」という手順は要らないだろ。

アレックスが宇宙へ戻った後、地球で代役を務めているベータのパートが何度か挿入される。
だけど、アレックスと同じ顔をしていてもベータは主人公じゃないんだから、そこを並行して描くのは話が散らかっているだけだろ。
そっちで何が起きてもアレックスが助けに行くことは出来ないので、主人公不在のままで展開するパートになるわけで。だから、そっちが殺し屋に狙われるパートは邪魔なだけなのよ。
ってことは、ようするにベータがアレックスの代役として地球に留まる設定自体が邪魔なのよ。

ズアーが基地の攻撃を命じ、スパイが迎撃を妨害するシーンでは、大爆発が描かれている。
なので基地は完全に崩壊して消滅したのかと思っていたら、セントーリがアレックスを連れ帰ると存在している。
ただし内部は明らかにダメージを受けている様子で、でもアレックスは「何かあったのか」と触れることも無いので、「どういうことだよ」と言いたくなる。
しばらくすると「格納庫が爆破された」と説明が入るが、それだけで済んだのかよ。あの映像だと、完全に基地全体が消滅している感じだったぞ。

グリッグは自分たちしか残っていないことをアレックスに明かした後、1機で奇襲を仕掛けると言い出す。
敵は大艦隊で、1発だけで他のスター・ファイターを全滅させるほどの力を持っているのよ。それなのに、たった2人だけでコダン艦隊を倒そうと言うんだから、アホにしか思えない。
しかも人数が2人ってだけじゃなくて、アレックスは何の戦闘経験も無いド素人なんだぞ。
ところが、そんな2人だけで敵を撃滅してしまうんだよね。
だとしたら、むしろ相手が弱すぎるだろ。

ただし敵艦隊は撃滅したものの、ズアーには逃げられている。なので、どうするのかと思ったら、「アレックスがスター・ファイター戦隊の再編成を任される」という展開が用意されている。
とは言え、もう残り時間は少ないので、「戦隊を編成してズアーを倒す」という結末は無い。そこは食べ残したまま、アレックスが地球へ戻ってマギーに付いて来るよう誘う。
この時にアレックスは「僕らにとって大きなチャンスだ」と言うんだけど、「戦争の攻撃隊長になる」ってのをチャンスと捉えるなよ。
そんで「俺たちの戦いはこれからだ」的な結末になっているが、もちろん続編など無い。

(観賞日:2022年4月18日)

 

*ポンコツ映画愛護協会