『ジャスティス・リーグ』:2017、アメリカ&カナダ&イギリス

ある夜、泥棒を捕まえたバットマンは、怪物のパラデーモンに襲われた。パラデーモンはバットマンに拘束されると、その場で自爆した。偵察だと理解したバットマンはアルフレッドに連絡し、他の場所にもルーサーのメモと同じく3つの箱の図柄が残されていることを知った。スーパーマンの死後、ロイス・レインやマーサ・ケントは悲しみに暮れる日々を過ごしていた。イギリスではテロリスト集団が銀行を襲撃し、人質を取って立て籠もった。ワンダーウーマンは見張りの男を捕まえ、自爆テロ計画を聞き出した。彼女は一味を退治し、テロを阻止した。
ブルース・ウェインはアイスランドの漁村へ行き、伝説の大潮の日に海から来た男がいるはずだと村人たちに問い掛ける。彼は遠くから飛来する敵と戦う同盟を作るため、その戦士との接触を望んでいた。集会場の壁に目をやったブルースは、3つの箱が描かれているのを知った。アーサー・カリーという男が荒っぽく追い払おうとするが、ブルースは彼こそが戦士のアクアマンだと気付いた。ブルースが協力を求めると、アーサーは「指図されるのは御免だ」と拒絶して海に姿を消した。
アルフレッドの元へ戻ったブルースは、バリー・アレンという神出鬼没の男をチームのメンバー候補に挙げる。住所は不明だが、妻殺しで服役している父親の面会には来ているとアルフレッドは説明した。バリーは少年時代に父の無罪を訴えたが、周囲は誰も耳を貸さなかった。もう1人の候補として、アルフレッドはヴィクター・ストーンという男を挙げる。天才的IQを持つ大学アメフト部のエースだが、既に死亡していた。バリーは父であるヘンリーの面会に赴き、「もう諦めてくれ。面会には来なくていい。お前の人生を妨げてしまった。自分の道を行け」と告げられた。
S.T.A.R.ラボの科学者であるサイラス・ストーンは帰宅し、息子のヴィクターに「こんな場所で思い悩んでも、仕方が無い」と話し掛ける。ヴィクターは「俺は機械人間だ。全てにアクセス可能だが、統合できない」と言い、協力すれば解決できると説く父に「他の奴でも人体実験を繰り返すつもりなのか。ボックスは隠しておくべきだ」と告げる。サイラスは彼に「クリプトンの宇宙船のデータにアクセスし、チェンジエンジンとエネルギーを融合し、パワーアップすれば」と語るが、同意は得られなかった。
ヴィクターが「ラボの人間は俺が生きていることを知っているのか」と尋ねると、サイラスは少し言葉に迷いながら「いや、まだ早いと思って」と答える。ヴィクターが「俺が化け物だからか」と告げると、サイラスは「お前は化け物じゃない。あの事故で母さんを死なせてしまった。お前まで失うなんて耐えられない」と話す。するとヴィクターは「頭の中に俺の知らないデータがある。目覚める度に俺は修正されてる」と言い、宙に浮かぶ能力が備わったことを明かした。
ラボの清掃員として働くハワードは深夜に作業をしている最中、不審な人物を目撃した。セミッシラのヒッポリタ女王は、マザーボックスへの警戒心を強めていた。遠い昔から何千年も眠り続けていたが、今になって目覚めたことに彼女は不安を抱いていた。副官のメナリッペが何の変化も起きていないことを報告した直後、箱の中から光が放たれた。そこへステッペンウルフという怪人が現れ、「ついにボックスが私を呼び戻してくれた」と口にする。「誰も歓迎していない」とヒッポリタが言うと、ステッペンウルフはパラデーモンの群れを呼んでアマゾン族を攻撃させた。ヒッポリタはステッペンウルフにボックスを奪われ、ダイアナに危機を知らせるため火矢を放った。
ハワードの失踪を受けて記者の取材を受けた妻は、エイリアンに拉致されたのだとカメラの前で主張した。ロイスは仕事に復帰していたが、まだ軽い記事しか書くことが出来ずにいた。マーサはロイスと会い、クラークが「また彼女はピューリッツァー賞を獲る」と言っていたことを語った。ダイアナはブルースの元を訪れ、破滅の使者であるステッペンウルフが来たことを話す。彼女はマザーボックスについて、「問題は中身じゃない。あのボックスが力なの」と言う。3つのボックスが1つになると、その惑星をステッペンウルフが生まれた暗黒の闇に変えることが出来るのだ。
かつてアマゾンは同盟を作って戦い、ステッペンウルフを撤退に追い込んだ。ボックスはアマゾンとアトランティス、人間が1つずつ保管していた。そんなことをブルースとダイアナが話している様子を、密かにヴィクターが見ていた。ブルースはダイアナにヴィクターへの接触を任せ、自身はバリーの元へ赴いた。バリーの部屋には、フラッシュとしてのスーツが飾られていた。ブルースはバリーに、敵と戦うためのチームを編成することを話してスカウトする。相手がバットマンだと知ったバリーは、喜んで快諾した。
ダイアナがウェイン邸のコンピュータでヴィクターについて調べていると、向こうからメッセージが送られてきた。ダイアナが会って話すことを求めると、ヴィクターは場所を指定した。しかしダイアナが出向くと、ヴィクターは協力を拒んで去った。アーサーはアクアマンとなり、沈没しそうな漁船から漁師を救助した。彼が海に潜ってアトランティスに向かうとステッペンウルフがボックスを奪いに来ており、女兵士のメラたちが必死に戦っていた。
アクアマンはステッペンウルフに立ち向かうが全く歯が立たず、ボックスは奪い去られた。メラが「あの怪物を追い掛けて阻止するのが女王の使命。それを貴方は継ぐの」と言うと、アクアマンは「それにはお前の助けが必要だ」と告げた。ステッペンウルフは廃炉となった原発をアジトに定め、パラデーモンにサイラスを含むS.T.A.R.ラボの関係者9名を誘拐させた。目撃証言からバットマンが容疑者として浮上するが、警察本部長のゴードンは全面的に否定した。
ダイアナにバリーを紹介していたブルースは、空に浮かぶバットシグナルを目にした。バットマンはワンダーウーマンとフラッシュを伴い、ゴードンの元へ赴いた。するとヴィクターもサイボーグとして現れ、ゴードンの提供した情報を見て敵のアジトを分析する。4人は地下トンネルを進み、ステッペンウルフがボックスの隠し場所を吐くよう誘拐した面々を脅している現場を目撃した。バットマンたちは戦いを挑み、誘拐された面々を救助する。サイボーグはアルフレッドが差し向けたナイトクローラーに乗り込み、ミサイルを発射した。しかしステッペンウルフは簡単に掴み、ミサイルをトンネルの壁に撃ち込んだ。
大量の水がトンネルに注ぎ込んだため、ステッペンウルフは地上へ脱出した。バットマンが急いで避難しようとしていると、アクアマンが駆け付けて水の流れを食い止めた。バットマンたちはナイトクローラーに捕まって脱出し、アクアマンと合流した。サイボーグはサイラスがチェンジエンジンと呼んでいたボックスを回収し、チームと共にバットケイブへ赴いた。ブルースはボックスを使えばスーパーマンを復活させられるのではないかと考えるが、ダイアナは「リスクが大きすぎる」と反対した。
「スーパーマンは、この世界の希望の光だ。我々だけでは不充分だ」とブルースが語ると、ヴィクターは「計算したが、高い確率で彼を蘇らせることが出来る」と述べた。アーサーが「スーパーマンでも死ねば魂を失う」と告げると、ブルースは「対策は考えてある」と口にした。ダイアナは全面的に納得した様子は見せなかったものの、スーパーマンの復活計画を承諾した。ブルースはアルフレッドに、問題が起きた時のための準備を頼んだ。
バットマンたちはクラークの遺体を掘り起こし、クリプトンの宇宙船とボックスを繋いで復活させた。しかしバットマンを除く4人が姿を見せると、クラークは全員をスキャンする。ヴィクターのシステムはクラークを敵と判断し、攻撃を仕掛けた。クラークは取り押さえようとする4人に襲い掛かり、圧倒的な力を見せ付ける。バットマンが駆け付けて戦うが、まるで歯が立たない。そこへアルフレッドがロイスを連れて現れると、ようやくクラークは落ち着きを取り戻した。彼はロイスと抱き合い、空を飛んで実家へ舞い戻った…。

監督はザック・スナイダー、キャラクター原案はDC、「スーパーマン」創作はジェリー・シーゲル&ジョー・シャスター、原案はクリス・テリオ&ザック・スナイダー、脚本はクリス・テリオ&ジョス・ウェドン、製作はチャールズ・ローヴェン&デボラ・スナイダー&ジョン・バーグ&ジェフ・ジョンズ、製作総指揮はクリストファー・ノーラン&エマ・トーマス&ジム・ロウ&ベン・アフレック&ウェスリー・カラー&カーティス・カネモト&ダニエル・S・カミンスキー&クリス・テリオ、製作協力はマディソン・ウィアーター&マディソン・アインレー、撮影はファビアン・ワグナー、美術はパトリック・タトポロス、編集はデヴィッド・ブレナー&リチャード・ピアソン&マーティン・ウォルシュ、衣装はマイケル・ウィルキンソン、視覚効果監修はジョン・“DJ”・デジャルダン、音楽はダニー・エルフマン。
出演はベン・アフレック、ヘンリー・カヴィル、エイミー・アダムス、ガル・ガドット、エズラ・ミラー、ジェイソン・モモア、レイ・フィッシャー、ジェレミー・アイアンズ、ダイアン・レイン、コニー・ニールセン、J・K・シモンズ、アンバー・ハード、ジョー・モートン、リサ・ローヴェン・コングスリ、イングヴァール・シグルドソン、デヴィッド・シューリス、セルゲイ・コンスタンツェ、ジュリアン・ルイス・ジョーンズ、サローム・グンナルズドーティル、オーグスタ・エヴァ・アーレンドスドーティル、ビョート・シグフィンスドーティル他。 声の出演はキアラン・ハインズ他。


『マン・オブ・スティール』からスタートした“DCエクステンデッド・ユニバース”のシリーズ第5作。
物語の時系列としては、第2作『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』の次が本作品。
監督は『マン・オブ・スティール』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』のザック・スナイダー。
脚本は『アルゴ』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』のクリス・テリオと『アベンジャーズ』『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のジョス・ウェドン。
娘の急逝という不幸があったため、ザック・スナイダーは追加撮影中に監督を降板し、ジョス・ウェドンが後を引き継いで完成させた。

ブルース役のベン・アフレック、クラーク役のヘンリー・カヴィル、ロイス役のエイミー・アダムス、ダイアナ役のガル・ガドット、バリー役のエズラ・ミラー、アーサー役のジェイソン・モモア、ヴィクター役のレイ・フィッシャー、アルフレッド役のジェレミー・アイアンズ、マーサ役のダイアン・レイン、サイラス役のジョー・モートンは、前作に続いての登場。
ヒッポリタをコニー・ニールセン、ジェームズをJ・K・シモンズ、メラをアンバー・ハードが演じており、ステッペンウルフの声をキアラン・ハインズが担当している。
アンクレジットだが、ヘンリー役でビリー・クラダップ、アンティオペ役でロビン・ライト、泥棒役でホルト・マッキャラニーが出演している。
エンドロール後のラストシーンでは、レックス・ルーサー役でジェシー・アイゼンバーグ、スレイド・ウィルソン役でジョー・マンガニエロが登場する。

マーベル・スタジオの「マーベル・シネマティック・ユニバース」に対抗して始まった「DCエクステンディッド・ユニバース」ではあるが、いきなり1作目の『マン・オブ・スティール』が酷評を浴びてつまずいた。
2作目の『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』で何とか取り戻そうと目論んだものの、これまた酷評を浴びて興行的にも失敗に終わった。
もはや実質的に「詰んでいる」と言えるぐらいの状況にまで追い込まれたが、そう簡単に撤退は出来ないってことなのか、そのままシリーズは続行された。

背水の陣で挑まざるを得なくなった3作目の『ワンダーウーマン』だが、これが大ヒットして評論家からも高い評価を受けた。
見事なV字回復を見せた勢いに乗っていきたかった本作品だが、またもや酷評を浴びる羽目になった。
「ザック・スナイダーが途中降板したから」とか、「後任のジョス・ウェドンに許された時間が足りなかった」とか、そういうことを言い訳に出来なくはない。
でも、もっと根本的な部分で、この映画には失敗する原因があると言わざるを得ない。

この映画が失敗に終わった大きな要因の1つは、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』と全く同じだ。そして、それは『ワンダーウーマン』が大ヒットしたことにも関連している。
どういうことかと言うと、『ワンダーウーマン』はワンダーウーマンの単独主演作だったということだ。
『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』では、まだシリーズで単独主演作が無いバットマンとワンダーウーマンを主要キャラとして登場させ、スーパーマンと共演させたことが失敗だった。
先に単独主演作を公開して紹介を済ませ、それから共演作に繋げるべきだったのだ。

それなのに製作サイドは、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』の失敗からも、『ワンダーウーマン』の成功からも、何も学習せずに本作品を作ってしまった。
今回は、まだ単独主演作の存在しないフラッシュ、アクアマン、サイボーグを一気に主要キャラとして登場させ、ジャスティス・リーグの結成を描いている。
マーベル・シネマティック・ユニバースか遥か先へ行っているので、一刻も早く追い付きたいという焦りがあるのかもしれない。
でも製作サイドには、「急いては事を仕損じる」という言葉を肝に銘じるべきだと言いたい。言い含めたい。言いくるめたい。

フラッシュ、アクアマン、サイボーグは前作でチョロッと顔を出していたものの、ちゃんとした形で登場するのは今回が初めてだ。だから初登場シーンってのは、ものすごく重要なはずだ。
ところがアーサーの初登場シーンでは、彼が海から来た戦士であることをブルースの台詞で軽く説明してしまう。
最初にアクアマンとしての特殊能力を見せてインパクトを与えようという意識は低く、海に消えて行く様子も淡々と見せてしまう。
スーパーヒーローとしての印象は、ものすごく弱い初登場シーンだ。

フラッシュとサイボーグにしても、まずアルフレッドの台詞で軽く紹介してしまう。
フラッシュの初登場シーンでは、文句を言う男がいて、カットが切り替わると顔に落書きをしているという描写になっている。「目にも止まらぬ早業で落書きした」ってことなんだけど、最初に披露される特殊能力としては、インパクトが弱い。
サイボーグにしても、まず少しだけ宙に浮かぶ能力を見せるが、やはり弱い。
これが「普通の人間が変貌し、少しずつ自身の能力を理解して」ってな感じで進めて行く話なら、それでもいいだろう。でも本作品は、既に特殊な能力を持ったスーパーヒーローになっている連中が結集する話なのだ。
それを考えると、初登場の段階で、「スーパーヒーローとしての特殊能力」ってのが強くアピールされた方がいいはずで。

「フラッシュ&アクアマン&サイボーグは、今回は脇役だから、あくまでもジャスティス・リーグのメンバーという扱いに留めておこう」ってことで割り切るのも1つの方法だが、それぞれに人間ドラマを持ち込もうとしている。
しかし、そこに充分な時間を使い、丁寧に描写する時間の余裕など無いことは言うまでもないだろう。なので当然のことながら、全員のドラマが薄っぺらくなっている。
本来なら、個々のドラマは先に単独主演作で消化しておいて、この映画では「ジャスティス・リーグとしての話」に集中した方がいいのだ。それなのに、
まるで「今後の単独主演作に向けての序章」みたいな要素を持ち込んでしまい、そっちは薄っぺらくなるわ、肝心のジャスティス・リーグとしての話にも皺寄せが来るわで、ウィンウィンの真逆になっている。

っていうか、そもそも序盤から「ブルースがチームを作るためにメンバーを集める」という動きを見せていること自体、乗れない展開だと感じるのよね。
そりゃあブルースは「遠くから敵が来る」と感じたからこそメンバー集めに動き出すんだけど、こっちは「強大な敵が来て地球の危機が迫っている」という印象を全く受けていないのよね。何しろ、冒頭で怪物が現れたのと、箱の絵が描かれているのを見ているだけなのでね。
もっとハッキリと「強大な敵」の存在をアピールし、「地球の危機が目の前に」という部分で説得力を持たせてくれないと、メンバー集めに動き出す展開には乗りにくいのよ。
1人で敵と戦って全く歯が立たず、「これじゃマズいからチームが必要」ってことでメンバー集めに奔走する流れにでもした方がいいんじゃないかと。まだ「目の前の危機」という切迫感が無い状況でメンバー集めを開始した場合、そこに時間の余裕が感じられちゃうし。

ダイアナが過去に起きたステッペンウルフとの戦いについて語るシーンで、アマゾンとアトランティスが担当するボックスは封印されて厳重に守られたことに触れている。ところが人間が担当したボックスは、森に穴を掘って埋めるだけなのだ。
ものすごく慎重に扱わないとダメな物なのに、ただ埋めるだけでいいのかよ。
っていうかさ、宇宙からの助っ人や神々も、前回の戦いでは協力したんでしょ。それなら、そいつらにボックスを任せた方がいいでしょ。異星人や神々に預ければ、ステッペンウルフが帰還しても、地球だけで全てを集めることは不可能になるし。
少なくとも、脆弱な人間に1つを委ねるよりは遥かにマシだろ。

ブルースはダイアナから「もう1人の候補者はどうなの?」と問われた時、「ヴィクター・ストーン。それは君に任せる」と言う。
だけど、ブルースはアルフレッドから「ヴィクターは既に死んでいる」と聞かされたはずだよね。それなのに、なぜ「もう死んでいる」ってことを伝えないのか。
死んだ奴のことを任せても、どうにもならないでしょ。
もちろん実際は生きているんだけど、でもヴィクターの生存をブルースが知るような手順は無かったわけで。なので、そこは違和感のあるシーンになっている。

アーサーはダイアナから協力するよう説得された時、それに応じず去っている。でもバットシグナルを見ると、すぐに駆け付けて仲間になっている。拒否してから協力するまでに、気持ちの変化をもたらすような出来事は何も無い。
たぶん、「ダイアナに説得された時点で、既に心は揺らいでいた」ってことなんだろうは思う。ただ、そんなに簡単に仲間に加わるぐらいなら、ダイアナが説得するシーンの段階で「最初は拒否したが、説得を受けて応じる」という形にでもすりゃいいんじゃねえかと思ってしまう。こいつがバットマンたちの元に姿を見せても、まるで高揚感は無いしね。
それはアクアマンにしても同様で、こいつが拒絶から協力へ変化するドラマなんて皆無に等しい。
もちろん、アトランティスのボックスが奪われる出来事はあるけど、それがドラマとしてはものすごく弱いのだ。

スーパーマンの復活は前作の段階でバレバレだったが、それでも大きなイベントであることは確かだ。だから彼の復活シーンは、本来なら一気に気持ちが高揚するように出来ていなきゃダメなはずだ。
ところが実際には、まず「スーパーマンとしての復活」じゃなくて上半身裸のクラークとしての復活という時点で冴えない。おまけに、クラークの記憶は混乱していて、最初はワンダウーマンたちに襲い掛かる。
でも、もうステッペンウルフの危機が迫っているので、そんな内輪揉めなんて要らないわ。
復活したばかりのスーパーマンが本調子じゃないにしても、それは「まだ能力がフルに発揮できない状態」とかでいいのよ。
もう物語も佳境に入った中で内輪揉めを始められても、時間の浪費にしか思えない。しかも、ロイスが来たら簡単に落ち着きを取り戻すし。

で、だったら「正気に戻ったクラークがチームに加わり、いよいよ最終決戦へ」という流れになるのかというと、そうじゃないのよね。
クラークはバットマンたちの元を去り、マーサの所へ行って穏やかな時間を過ごすのだ。
いや、そんなにノンビリしている場合じゃないだろうに。
あとさ、そんなことをやっている隙に最後のボックスが奪われているんだけど、それはバットマンたちがマヌケすぎるだろ。なんで厳重に守っておかないのかと。

クラークがバットマンたちの元から飛び去るのは、「チームが危機に陥った時にスーパーマンが駆け付ける」という展開にしたかったからだろう。
でも、それなら「スーパーマンを復活させようとするが、なかなか上手く事が運ばない」とか、もしくは「復活までに少し時間が掛かる」という設定にでもしておけばいい。
で、バットマンたちが敵と戦っていると、ようやく復活したスーパーマンが駆け付けるという形にでもしておけばいいでしょ。
そっちの方が、間違いなく盛り上がる展開になったはずだよ。

あとさ、これって結局、ゴドーならぬスーパーマンを他のメンバーが待つための話になっちゃってんのよね。「スーパーヒーローが結集して強敵と戦う」という話のはずなのに、実質的には「スーパーヒーローが集まってスーパーマンを復活させる」という話みたいになっているのよね。
そして困ったことに、「実はスーパーマンさえいれば全て解決なんじゃないか」と思わせる内容になっちゃってんのよね。
実際、スーパーヒーローが5人がかりで戦ってもステッペンウルフに苦戦していたのに、スーパーマンが駆け付けると一瞬で形勢が逆転してしまうんだからね。
これはマーベル・シネマティック・ユニバースにも言えることなんだけど、スーパーヒーローのパワーバランスを上手く調整することが出来ていないんだよね。

(観賞日:2019年5月9日)


2017年度 HIHOはくさいアワード:第5位

 

*ポンコツ映画愛護協会