『ジュラシック・ワールド』:2015、アメリカ

16歳のザックと11歳のグレイのミッチェル兄弟は、母のカレンと父のスコットに車で空港まで送ってもらった。兄弟は飛行機で移動し、船に乗り換えてイスラ・ヌブラル島へ向かう。イスラ・ヌブラル島は、かつてインジェン社の所有するジュラシック・パークが建設されていた場所だ。現在はサイモン・マスラニが経営するマスラニ・グローバル社に買収され、「ジュラシック・ワールド」を開設している。島には世界中から毎日2万人が訪れ、人気のテーマパークとなっている。
ザックとグレイはカレンの妹であるクレアを捜すが、迎えに来ているはずの彼女は見当たらない。そこへクレアの個人秘書を務めるザラが現れ、VIP扱いなので乗り物は全て待たずに乗れることを兄弟に告げる。クレアは投資家たちが待つイノベーション・センターへ赴き、プレゼンを行う。クレアはDNA操作でインドミナス・レックスという最強の恐竜を作ったことを発表し、遺伝子学者のヘンリー・ウー博士が補足した。
VIPパスの付いたリストバンドを装着したミッチェル兄弟はイノベーション・センターへ到着し、7年ぶりにクレアと会う。クレアは多忙を理由に、「仕事が終わるまで、ザラが面倒を見てくれるから」と告げて立ち去った。コントロール・ルームへ移動したクレアは、オペレーターのロウリーがジュラシック・パークのTシャツを着ているのに気付いた。彼女は脱ぐよう指示し、オペレーターのヴィヴィから恐竜が区画外に出たので西の草原が閉鎖されたことを聞かされた。
クレアはマスラニと合流し、彼の操縦するヘリコプターでインドミナス・レックスの飼育エリア「11番パドック」へ行く。クレアは過去に飼育員が腕を噛まれたこと、窓を破ろうとしてヒビ割れが生じたことを話す。2匹のインドミナスが作り出されたが、共食いによって1匹に減っていた。3週間後のお披露目に向けて、クレアは問題が起きないよう壁を頑丈に作っていた。マスラニは元海軍のオーウェンという男がいることを話し、壁をチェックさせるようクレアに指示した。
オーウェン・グレイディーは恐竜監視員として、同僚のバリーと共にヴェロキラプトルを担当していた。彼はブルー、デルタ、エコー、チャーリーというラプトルの4姉妹を訓練し、手懐けようとしていた。インジェン社でセキュリティー部門幹部として勤務するヴィック・ホスキンスは、野外でのテストを持ち掛ける。彼はラプトルの軍事利用を目論んでいたが、オーウェンは賛同しなかった。餌の豚が逃走し、捕まえようとした新人の飼育員が誤ってラプトルの飼育エリアに落下した。警備員がラプトルに発砲しようとすると、オーウェンが制止した。彼は檻に入ってラプトル4姉妹の動きを制し、飼育員を逃がした。
ザックとグレイはザラが携帯での話している間に、隙を見て逃げ出した。2人だけでワールドを満喫しようと考えた兄弟は、「Tレックス・キングダム」の9番パドックへ赴いた。2人はモササウルスのショーを見物し、大いに楽しんだ。オーウェンはクレアの要請を受け、11番パドックへ向かう。かつて1度だけデートしたことがある2人だが、性格の不一致で破局していた。オーウェンからインドミナスの作り方について質問されたクレアは、「基本的なゲノムはTレックス。後は企業秘密」と答えた。
11番パドックへ戻ったクレアは、インドミナスが見当たらないことに気付く。オーウェンから壁に残された大きな爪痕を指摘された彼女は、慌てて車に乗り込んだ。彼女はロウリーに連絡を入れ、インドミナスの居場所を突き止めるよう指示した。オーウェンは壁に近付き、インドミナスが12メートルの壁を越えて逃亡したと推測する。クレアはロウリーから、インドミナスが11番パドックにいることを聞いた。警備員の1人がインドミナスに捕獲され、モニターでトラブルを知ったマスラニは扉の閉鎖を指示した。
オーウェンは11番パドックから脱出し、車の下に滑り込んで隠れた、インドミナスは11番パドックを抜け出し、もう1人の警備員も捕獲した。オーウェンは車の燃料オイルを浴びて匂いを偽装し、インドミナスは彼に気付かず立ち去った。クレアはコントロール・ルームへ戻り、外周フェンスに近付けばセンサーが電流が流れることを職員に告げる。ヴィヴィが園内全域に警報を出そうとすると、マスラニが来て制止した。彼は捕獲チームを派遣し、静かに行動することを求めた。
ミッチェル兄弟は、そんなトラブルを何も知らずにワールドを移動していた。ザックが両親の離婚危機を心配すると、気付いていなかったグレイは驚いた様子を見せつつも「どうってことない」と告げた。オーウェンはコントロール・ルームへ到着し、捕獲チームが殺傷能力のある武器を所持していないと知る。驚く彼に、マスラニは「2600万ドルも投資したんだ。簡単には殺せない」と告げる。「人間が死ぬ。避難させろ」とオーウェンが言うと、クレアが「ここの責任者は貴方じゃない」と一蹴した。
密林エリアを捜索した捕獲チームは、GPSの埋められた肉片を発見する。インドミナスは追跡を逃れるため、GPSを切除したのだ。そこへインドミナスが出現し、捕獲チームのハマダたちを次々に殺害する。オーウェンは「客を避難させろ。あいつは動く物全てを殺す」と告げるが、クレアは「再開できなくなる」と反対する。オーウェンがインドミナスを殺すべきだと主張すると、クレアは「島は家族連れで一杯なのよ。ここを戦場に変える気?貴方は邪魔なだけ」と追い払い、北部の閉鎖をオペレーターに指示した。
ミッチェル兄弟がジャイロスフィアに乗って出発した直後、連絡を受けた係員が残りの客に終了を説明する。マスラニはウーの元へ行き、インドミナスに関する説明を求めた。ウーは想定外の能力を聞かされ、「貴方が作れと言ったんです」と話す。マスラニは「当局はパークの閉鎖を命じるだろう。今すぐに研究開発を中止しろ。怪物を作れとは言ってない」と告げた。ミッチェル兄弟はジャイロスフィアのモニターを通じ、「技術的な問題が起きたので、アトラクションは中止します。リゾート内に引き返して下さい」と指示される。しかしザックは「俺たちはVIPだ。楽しもう」とグレイに言い、指示を無視してジャイロソフィアを操縦した。
クレアはザラに電話を掛け、ミッチェル兄弟が姿を消したことを聞かされる。クレアは慌ててザックに連絡するが、電波状態が悪くて何を言っているのか聞き取れない。ロウリーはジャイロスフィアが残っていることに気付き、クレアはレンジャーを派遣するよう指示する。しかし「迷子が山ほどいる。今すぐは無理だ」と断られ、自ら出向くことにした。ザックは立入禁止区域のフェンスが開いているのを見て、無断で中に入った。クレアはオーウェンを見つけ出し、甥たちの捜索に協力してほしいと頼んだ。
グレイとザックが森でアンキロサウルスの群れを見物していると、インドミナスが出現した。兄弟は逃げようとするが、恐竜の戦いに巻き込まれてジャイロスフィアが故障してしまう。インドミナスに襲われた兄弟は、慌てて外へ脱出した、崖に追い詰められた2人は、滝壺へ飛び込んだ。川を流された、兄弟は、何とか岸へ辿り着いた。銃を持って捜索に出たオーウェンは、多くのアパトサウルスが殺されている現場にやって来た、彼はインドミナスが食べるためではなく、楽しむために殺しているのだと確信した。
ホスキンスは武装チームを上陸させ、密かに行動を開始していた。その様子を密かに観察していたバリーはオーウェンと連絡を取ろうとするが、無線は通じなかった。オーウェンとクレアは森林エリアに入り、壊れたジャイロスフィアとグレイの携帯を発見した。オーウェンは兄弟の足跡を見つけるが、同時にインドミナスの足跡も発見していた。兄弟は旧ジュラシック・パークのビジターセンターに侵入し、放置されている古いジープを見つけた。
ホスキンスはマスラニの元へ行き、ラプトルにインドミナスを始末させる作戦を提案した。一度は却下したマスラニだが、ホスキンスから「逃げ場を失った2万人の観客をどうするつもりだ?」と問われると「あらゆる手を尽くした後で決めよう」と告げてヘリに乗り込んだ。兄弟はジープを修理し、ビジターセンターを出発した。エンジン音を聞いたオーウェンとクレアが駆け付けるが、既に兄弟は去っていた。インドミナスがビジターセンターに現れたので、2人は慌てて逃げ出した。
マスラニと部下たちはヘリで到着し、インドミナスを銃撃する。しかしインドミナスは翼竜園のドームを破壊して突進し、プテラノドンやディモルフォドンなど何匹もの翼竜が外へ出てしまう。ヘリコプターは翼竜の攻撃を受け、マスラニと部下たちが命を落とした。グレイとザックは翼竜が迫っているのに気付き、ジープのスピードを上げた。クレアはザラからの連絡で兄弟が西ゲートにいると知り、オーウェンのバギーに乗り込む。観客に避難命令が出される中、ザラはプテラノドンに捕まってモササウルスの湖に落とされる。ザラはプテラノドンと一緒に、モササウルスの餌となった…。

監督はコリン・トレヴォロウ、キャラクター創作はマイケル・クライトン、原案はリック・ジャッファ&アマンダ・シルヴァー、脚本はリック・ジャッファ&アマンダ・シルヴァー&デレク・コノリー&コリン・トレヴォロウ、製作はフランク・マーシャル&パトリック・クローリー、製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ&トーマス・タル、共同製作はトレヴァー・ウォーターソン、製作協力はクリストファー・ライモ、撮影はジョン・シュワルツマン、美術はエドワード・ヴァリュー、編集はケヴィン・スティット、衣装はダニエル・オーランディー、視覚効果監修はティム・アレクサンダー、視覚効果アニメーション監修はグレン・マッキントッシュ、音楽はマイケル・ジアッキノ、テーマ曲はジョン・ウィリアムズ。
出演はクリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ヴィンセント・ドノフリオ、イルファン・カーン、タイ・シンプキンス、ニック・ロビンソン、ジェイク・ジョンソン、オマール・シー、B・D・ウォン、ジュディー・グリア、ブライアン・ティー、ケイティー・マクグラス、ローレン・ラプカス、アンディー・バックリー、エリック・エデルスタイン、コートニー・クラーク、コルビー・ブースマン、ジミー・ファロン、ジェームズ・デュモント、マシュー・バーク他。


「ジュラシック・パーク」シリーズの第4作。
監督は『彼女はパートタイムトラベラー』のコリン・トレヴォロウ。脚本は『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』『猿の惑星:新世紀(ライジング)』のリック・ジャッファ&アマンダ・シルヴァーと、『彼女はパートタイムトラベラー』のデレク・コノリー&コリン・トレヴォロウ。
オーウェンをクリス・プラット、クレアをブライス・ダラス・ハワード、ホスキンスをヴィンセント・ドノフリオ、マスラニをイルファン・カーン、グレイをタイ・シンプキンス、ザックをニック・ロビンソン、ロウリーをジェイク・ジョンソン、バリーをオマール・シー、カレンをジュディー・グリアが演じている。
1作目でウーを演じていたB・D・ウォンが、同じ役で出演している。

一応はシリーズ4作目という形になっているが、実質的には1作目のリメイクと言ってもいいだろう。
登場人物の設定や配置、大まかなストーリーの流れなどは、ほぼ1作目をなぞっている。
シリーズは1作目がダントツで高い評価を受けているので、原点回帰するってのは悪くない考えだ。
しかし1作目との大きな違いは、「ファースト・インパクトに頼れない」ってことだ。

1作目が公開された時は、CGで表現された恐竜の見事なクオリティーに多くの観客が心を掴まれた。ぶっちゃけ、「脚本が云々」「演出が云々」ってのは二の次で、その映像の素晴らしさが大ヒットに繋がったと言っても過言ではない。
しかし今回は4作目なので、「初めての興奮」が使えない。もう3作も続いて来た映画なので、CGで恐竜を描いても「見慣れた光景」でしかないのだ。
1作目と比較して質が上がっていたとしても、それほど大きな違いがあるわけではない。なので、それ以外の部分で1作目との差異を用意しなければ、「ただの焼き直し」、もしくは「1作目の劣化版」になってしまう恐れがある。
その辺りを製作サイドがどう解決したのかと思っていたのだが、何も解決できていなかった。
相変わらず、「恐竜が暴れる映像」しか武器が無い。

映画が始まると、まずはミッチェル兄弟がジュラシック・ワールドを訪れる様子が描かれる。正面ゲートから中に入ると、テーマパークの光景が広がる。兄弟は興奮した表情を浮かべ、「これから存分に楽しむぞ」といった様子が感じられる。
ところが、そこから展示されている恐竜が登場するまでには、幾つもの手順を経なければならない。それによって、せっかくの高揚感が萎んでしまう。
そこで変に勿体ぶっても、何のメリットも無いでしょ。
そりゃあ、もう4作目だから、「初めての驚き」が無い観客も多いだろう。でも、だからこそ、さっさと登場させた方がいいんじゃないかと。
登場まで引っ張ることのメリットよりも、「オープニングで高まった期待感に応える」というメリットの方が圧倒的にデカいはずでしょ。

前の3作もそうだったが、このシリーズはザックリ言っちゃうならば「アトラクション」だ。
前3作なら「ジュラシック・パーク」、今回なら「ジュラシック・ワールド」というテーマパークが舞台だが、映画そのものが「恐竜のテーマパークを楽しんでね」という内容なのだ。
その方針は久々に復活した4作目で、さらに強くなっているように思える。
ようするに、「誰でも単純に楽しめるように、頭を空っぽにしても全く問題の無い中身にしよう」という映画になっているのだ。

映画の知的レベルを下げるのは、一向に構わない。娯楽映画なんだから、「何も考えず、単純に楽しめる」ってのは良いことだ。
ただし問題は、登場人物の知的レベルが著しく低いってことだ。
観客が頭を空っぽにして楽しめるのは歓迎できるが、登場人物の頭が空っぽでは困る。
もちろん、何かトラブルが発生しなければ、「恐竜が逃げて暴れ出す」という事態は訪れない。
しかし、そういうピンチを用意するために、「担当者がボンクラ揃いだから」という状況を用意するってのは、必要不可欠な要素とは言えないでしょ。

この映画、実は「恐竜映画のようで、恐竜映画ではないベンベン」という内容になっている。
その理由は、DNA操作によって誕生したインドミナス・レックスがメインの恐竜だからだ。
それは遺伝子学者が科学によって生み出した生物であって、古代に存在していた実在の恐竜ではない。そして普通の恐竜ではないので、赤外線を探知したり、GPSを抉り取ったり、擬態したり、体温を調節したりという特殊能力を発揮する。
つまり、もはや恐竜ではなく、ただのモンスターなのである。

インドミナス・レックスを誕生させた理由としては、「観客動員を増やすためには新しい目玉が必要だから」という設定になっている。
かつてはティラノサウルス・レックスが目玉だったが、もう古いので、新しい恐竜を登場させようってことだ。
でも待ってほしい。まだ今までの3作に登場していない恐竜は、多くの種類が存在するはずだ。
そりゃあTレックスは恐竜の花形だから、それに勝る種類を出すことは難しいだろう。でも、じゃあ存在しないインドミナス・レックスという怪獣が目玉として適任なのかというと、それは絶対に違うぞ。
それは映画としても同様で、実在しない怪物なんかよりも、他の恐竜を登場させた方が遥かに歓迎できるはず。

しかも、実在しない怪物を作っちゃったのなら、それはそれで「モンスター映画」と割り切って作っているのかと思いきや、なぜか途中からインドミナス・レックスは特殊能力を活用しなくなってしまうのだ。
そうなると、「恐竜映画」としての位置付けに変化してしまう。
そのくせ、そこにいるのは実在しないモンスターなので、アンバランスにしか思えない。
普通の恐竜として暴れるのなら、遺伝子操作で誕生した怪物である必要性なんて無いわけで。

前述したようにアトラクション映画だから、ストーリーをシンプルに仕上げるのは構わない。
しかし、それならそれで、中途半端にドラマを厚くしようという意識を持ち込まなきゃ良かったのだ。伏線を回収しないまま放置されたり、雑に片付けられたりすることばかりだ。
例えばザックとグレイの兄弟は、両親の離婚危機という問題を抱えている。
しかし、それが恐竜から逃げ惑う中で、解決に至るわけではない。そもそも両親はテーマパークにいないし、兄弟が危機にあることさえ知らない。
兄弟が両親の離婚問題を巡って不仲になっているわけでもないので、「2人で危機から脱出することによって関係が修復される」というドラマも成立しないし。

オーウェンとクレアの恋愛劇は、ものすごく大雑把に処理されている。
そもそも「過去にデートしたけど性格の不一致で別れた」という設定が用意されているから、「ヨリを戻す」という答えに至るのは容易に予測できるし、それは何の問題も無い。
ただし、そこに至る道筋が全く無いのに、なぜかサッパリ分からないけど急に関係が接近しちゃうので、まるで付いて行けない。
翼竜に襲われたオーウェンがクレアに助けられるとキスをする終盤のシーンも、恋愛劇を描きたいのは分からんでもないが、「TPOを考えろよ」と言いたくなる。まだ恐竜も翼竜も暴れ回っている状況の中で、呑気にイチャイチャしている場合じゃないでしょ。

ラプトルを軍事用に使うことに反対していたオーウェンだが、インドミナスと戦わせることは承諾する。
「他に方法が無いから仕方なく」という形で逃げ道は塞いでいるけど、結果的にはホスキンスに協力することになっているので、何となくスッキリしない。オーウェンはラプトルに名前を付けて可愛がっていたのに、それを武器として利用する形になっているし。
っていうかさ、ラプトルってオーウェンに対しても、ちょっと隙を見せたら襲い掛かろうとする態度を序盤で見せているのよね。なので、共闘するほど強い絆で結ばれているとは思えないのよ。
それなのに、終盤に入るとオーウェンの指示でインドミナスと戦うので、ちょっと違和感があるわ。

インドミナスや翼竜が暴れ出す中で、テーマパークの観客には避難命令が出される。今回は「既に大勢の観客が押し寄せている施設」が舞台なので、「恐竜に襲われて人々が逃げ惑ったり、犠牲になったりする」という様子が描かれるのは当然の流れだろうと思っていた。
ところが、実際には後半に逃げ惑う様子が描かれるだけだし、犠牲になるのもザラだけだ。
その後、どうやって避難したのか、誰が誘導したのかサッパリ分からないけど、いつの間にか観客は姿を消しているのだ。インドミナスが大勢の観客が要る中で暴れ回る様子も、全く描かれない。
わざわざ遺伝子操作の怪物を用意しておいて、大勢の観客と接触させないって、どういう計算なのかと。

今回のトラブルは、完全に人災だ。そして最も罪が重いのは、間違いなくクレアである。
彼女は赤外線でインドミナスが探知できない状況になった時、なぜか慌てて車に乗り込み、運転しながらコントロール・センターへ連絡する。そしてロウリーにインドミナスの居場所を調べるよう指示するのである。
しかし、インドミナスにはGPSが埋め込まれており、それを彼女も知っているのだ。つまり、飼育エリアで姿が見えなかったのであれば、まずは「その場でロウリーに連絡を入れ、GPSで居場所を突き止めるよう指示する」という行動が正しい。
わざわざ車を運転して移動する意味が、どこにあるのか。

クレアに比べれば遥かにマシだが、オーウェンの行動もボンクラだ。
彼はインドミナスが見当たらない状況の中、ノコノコと檻に入っている。そこにインドミナスが隠れている可能性だって充分に考えられるのに、そんな行動を取るのは愚かの一言だ。
これが「恐竜について何も知らないド素人」なら、仕方が無いかもしれない。しかし彼は、恐竜監視員としてテーマパークで働いているのだ。
それなのに全く警戒することなく、警備員と檻に入って会話を交わすって、どんだけ危機感が欠如しているのかと。

またクレアに戻るが、彼女はインドミナスが暴れ回っている中で、コントロール・センターを抜け出してグレイとザックの捜索に向かう。
「レンジャーの派遣を断られたから」ってのが言い訳として用意されているが、クレアはパークの責任者なのだ。
それなのに、自分のやるべき仕事を平気で放り出し、個人的な目的を優先してしまう。
インドミナスが脱走してパークにいる大勢の観客が犠牲になるかもしれないという状況なのに、司令塔である彼女が仕事を放棄しちゃダメだろ。

クレアはオーウェンが「観客を避難させるべきだ」「インドミナスを殺すべきだ」と真っ当な忠告をした時、冷徹な態度で拒絶している。
それどころか、彼を批判するような態度を取る。ヒロインだと思っていたのに、腐り切った悪玉にしか思えないような言動を繰り返す。
それでも彼女が「過ちを認めて心を入れ替える」というドラマが用意されていれば、リカバリーも出来ないわけじゃない。
しかし彼女は、反省も謝罪もしないのである。
それなのに、いつの間にか善玉のポジションに堂々と座っている。
まるで受け入れられないわ。

(観賞日:2017年2月20日)


2015年度 HIHOはくさいアワード:第10位

 

*ポンコツ映画愛護協会