『センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島』:2012、アメリカ

17歳のショーンは人工衛星施設に忍び込み、警官に追われてバイクで逃走した。民家のプールに突っ込んだショーンは、警察に捕まった。彼の母の再婚相手であるハンクは連絡を受け、身柄の引き取りに駆け付けた。警官はハンクに、住人を説得して告訴を見合わせてもらったことを語った。ショーンはハンクに反発し、不愉快そうに立ち去る。母のリズに注意されると、彼は「友達と引き離して、こんな田舎に連れて来て」と非難した。
ハンクはショーンの部屋へ行き、話がしたいと持ち掛けた。ショーンがモールス信号の解読に没頭していることを知ったハンクは、海軍時代に学んだ知識を軽く披露する。「だったら解読してよ」とショーンが言うと、ハンクは事情を明かすよう求めた。ショーンは彼に、数日前に匿名の無線が同じフレーズを繰り返し流していたことを話した。ショーンが解読した言葉は、全てジュール・ヴェルヌの作品の登場人物だった。しかしパワー不足で全て聞き取れなかったため、彼は人工衛星施設に侵入したのだった。
ハンクが「島は本物」というフレーズを解読すると、ショーンは「ヴェルヌ信者がずっと探していた神秘の島だ」と驚いた。さらにハンクが解読を進めると、スティーヴンソンの『宝島』とスウィフトの『ガリヴァー旅行記』を示していることが判明した。そこでショーンは、ヴェルヌの『神秘の島』を含めた3作に記された島が全て同じなのではないかと推理する。ハンクは3つの小説に付いていた地図を重ね、神秘の島の場所を割り出した。
パラオ沖100マイル地点に神秘の島があると知ったショーンは、すぐに出かける準備を始めようとする。ハンクが「お前は外出禁止だし、学校もある。第一、そんな遠くまで見ず知らずの人物に会いに行こうというのか」と言うと、ショーンは「見ず知らずの人じゃない。僕のお爺ちゃんからのメッセージだ。きっとトラブルに違いない。助けに行く」と話す。ショーンの祖父であるアレキサンダーはヴェルヌ信者の冒険家で、2年前から行方知れずになっていた。
ハンクはリズを説得し、ショーンと一緒にパラオへ行くことにした。パラオに到着した2人はツアーガイドに接触するが、「そんな場所に島は無い。あるのは船の墓場だけだ」と案内を断られる。ショーンは千ドルの支払いを持ち掛けるが、ガイドは「命は金に換えられない」と拒否した。だが、その話を聞いていたヘリコプター操縦士のガバチョが、自分が案内すると名乗り出た。彼のヘリコプターがオンボロだったので、ハンクたちは呆れた。しかしガバチョの娘で助手のカイラニに一目惚れしたショーンは、そのヘリを使うことにした。
案内する場所が死の海域だったため、カイラニは断ろうとする。しかしガバチョが「千ドルも貰える。学費の足しになるだろ」と言うと、今度二千ドルを請求した。ハンクは仕方なく承諾し、一行はヘリコプターで出発した。死の海域に近付くと嵐になり、カイラニはガバトに回避するよう求めた。しかしショーンは『神秘の島』の一節を思い出し、「島へ行くには嵐の目に入らなきゃ。そこが入り口だ」と告げる。ハンクはショーンの主張を退け、ガバチョに回避を指示する。しかしスロットルが故障し、ヘリコプターは嵐に飲み込まれた。
一行が意識を取り戻すと、そこは島の砂浜だった。ヘリコプターは跡形もなく破壊され、砂浜には荷物が散らばっていた。そこは本に書かれているような楽園とは大違いで、寒々しい場所だった。一行は洞窟を見つけ、中に入った。洞窟を抜けると、その向こうには美しい大自然が広がっていた。そこに子犬サイズの象が現れ、ショーンは3人に「動物の大きさは、大小が逆になるんだ」と説明した。
煙が立ち昇るのを見つけたショーンは祖父に違いないと考え、すぐに向かおうとする。しかしカイラニとガバチョは、砂浜へ戻ってSOSを書こうと考えた。ショーンは「ずっと嵐が渦巻いて、船も飛行機もバラバラにされるのに、誰が見るのさ」と言い、ハンクは「一緒にいるべきだ。お爺さんの無線を借りて助けを呼ぼう」と提案した。歩みを進めた4人は、巨大な卵が無数にある場所へ入り込んだ。そこに巨大トカゲが現れ、追われた4人はジャングルへ逃げ込む。そこへアレキサンダーが現れ、トカゲを退治した。
アレキサンダーは立派なツリーハウスに4人を案内し、手作りの無線でメッセージを送ったことを明かす。ただし通信衛星が適切な場所に来ないと使えないので、2週間後まで救助要請は無理だと彼は説明した。翌朝、彼は4人をアトランティスの遺跡に連れて行く。彼はショーンに「30年、探し続けた。お前の父親と一緒に探す約束だった。それが出来なくなった分、お前に見せたかったんだ。だから暗号でメッセージを送ったんだ」と述べた。
アレキサンダーはショーンに、「この島に我々の名前を残そう。2週間後にはパラオ政府に救助を要請し、3週間後にはタイムの表紙を飾るんだ」と言う。しかしハンクは遺跡に海水が流れ込んでいることに気付き、「この島は沈み掛けてる」と口にする。アレキサンダーは「土壌を分析したが、あと14年は沈まないはずだ」と告げるが、ハンクは「それは計算間違いだ。これは液状化現象だ」と述べる。彼は遺跡に入った亀裂を証拠として示し、「数日中に島は沈む。脱出しないと」と訴えた。
ショーンが「潜水艦ノーチラス号を使って脱出すればいい。潜水艦なら嵐に遭わず、パラオまで帰れる」と言うと、アレキサンダーは一行をネモ船長の墓へ案内した。彼は「日記にノーチラスのありかが書かれているはずだ」と言うが、通路が狭くて入れないことを語った。体の小さいカイラニが墓に入り、ネモの骸骨が持っている日記を見つけた。日記を読むと、島の反対側にあるポセイドン・クリフの真下の洞窟にノーチラス号が隠されていることが書かれていた。
一行が島の反対側を目指して歩いていると、大量の金粉が降って来た。火山から金粉が死んでいることを知ったショーンとガバチョは、すぐに向かおうとする。しかしハンクは「そんな暇は無い。潜水艦を見つけるのが先決だ」と言い、それを認めなかった。行く手に険しい崖が現れると、アレキサンダーは巨大な蜂の背中に乗った。他の面々も彼に続き、一行は空を飛んで崖を超えた。数匹のツバメが襲撃して来るが、一行は何とか撃退する。だが、その中でショーンが左脚を脱臼してしまった。
ハンクはショーンの脱臼を手当てし、自分の父親が8歳の時に家出したことを語った。翌朝、液状化が加速していることを知ったハンクは、「あと数時間で沈む」と言う。ガバチョが姿を消していることに気付いたハンクたちに、カイラニは「私の学費を工面するために金山へ行ったんだわ」と言う。カイラニが「私が捜しに行く。構わないで行って」と告げると、ショーンは「僕も行く」と口にする。ハンクは「その脚では無理だ」と言い、アレキサンダーも「彼の言う通りだ」と同意した。アレキサンダーは「ワシが行く。海岸で合流しよう」と提案し、カイラニと共に山へ向かう。ハンクとショーンはポセイドン・クリフへ向かうが、洞窟は海に沈んでいた…。

監督はブラッド・ペイトン、原案はリチャード・アウテン&ブライアン・ガン&マーク・ガン、脚本はブライアン・ガン&マーク・ガン、製作はボー・フリン&トリップ・ヴィンソン&シャーロット・ハギンズ、共同製作はドウェイン・ジョンソン、製作総指揮はリチャード・ブレナー&マイケル・ディスコ&サミュエル・J・ブラウン&マーカス・ヴィシディー&マイケル・ボスティック&エヴァン・ターナー、製作協力はアダム・エリソン&ヒラム・ガルシア、撮影はデヴィッド・タッターサル、編集はデヴィッド・レニー、美術はビル・ボーズ、衣装はデニス・ウィンゲイト、視覚効果監修はボイド・シャーミス、音楽はアンドリュー・ロッキングトン。
出演はドウェイン・ジョンソン、マイケル・ケイン、クリスティン・デイヴィス、ジョシュ・ハッチャーソン、ヴァネッサ・ハジェンズ、ルイス・ガスマン、アンナ・コルウェル、スティーヴン・コーディル、ブランスコム・リッチモンド、ウォルター・バンクソン他。


ジュール・ヴェルヌの小説『地底旅行』を基にした2008年の映画『センター・オブ・ジ・アース』の続編。今回は『神秘の島』がモチーフになっている。
原題は前作が『Journey to the Center of the Earth』で今回は『Journey 2: The Mysterious Island』だから何の問題も無いのだが、邦題だと今作は『センター・オブ・ジ・アース2』になっており、内容と全く合致しないことになっている。今回は地下の別世界になんて行かないからね。
前作から続投しているキャストはショーン役のジョシュ・ハッチャーソンだけで、主演だったブレンダン・フレイザーも降板している。
ハンクをドウェイン・ジョンソン、アレキサンダーをマイケル・ケイン、リズをクリスティン・デイヴィス、カイラニをヴァネッサ・ハジェンズ、ガバチョをルイス・ガスマンが演じている。
監督は、前作のエリック・ブレヴィグから『キャッツ&ドッグス 地球最大の肉球大戦争』のブラッド・ペイトンに交代している。

ショーン役は前作と同じくジョシュ・ハッチャーソンなのだが、彼の行動を注意するシーンで初登場する母親のリズ(前作では愛称のリズではなく「エリザベス」という呼称になっていた)が前作のジェーン・ウィーラーからクリスティン・デイヴィスに交代している。
なので、ちょっと引っ掛かる部分が無いわけではない。
「それなら、前作の主役であるトレヴァーをブレンダン・フレイザーから配役を変えて登場させても別にいいんじゃないか」と思ったりもする。
まあ一番いいのは、ブレンダン・フレイザーの続投だけどね。

ザ・ロック様は、今まで『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』『Be Cool/ビー・クール』『ワイルド・スピード MEGA MAX』という3つの続編映画に出演しているが、もちろん全て脇役だった。
しかし今回は、とうとう主役の座を奪い取っている。
ちなみに、前作は製作費が4500万ドルで、アメリカでの興行収益が約1億170万ドルだった。
今回は予算が7900万ドルと大幅にアップされたが、アメリカでの興行収益は約1億380万ドルで、ほとんど変わらなかった。

冒頭、ショーンはプールから上がろうとして警官たちに気付くと、「一緒に泳ぎません?」と冗談めかして話し掛ける。
だが、ハンクが来ると強い不快感を示し、反抗的な態度を取る。
彼が人工衛星施設に入り込んだのは「義父に反抗して荒れている行動」ってことではなく目的があってのことだから、警官に追われても荒っぽい態度を取らないのは、筋としては通っている。
しかし、「ハンクに反発している」ということを描こうとしているのに、その直前に警官に対して軽い調子で話し掛けると、何となく統一感を欠くことになる。

ショーンはハンクに対して激しい嫌悪感を示し、「話すのも嫌だ」みたいな態度を示していたのに、ハンクがモールス信号の知識を披露すると「じゃあ解読してみてよ」と持ち掛け、「事情を話せ」と求められると素直にベラベラと説明する。
それは簡単に心を開き過ぎだろ。冒頭の様子からすると、「メッセージは解読したいけど、こいつには頼りたくない」と考えるぐらいの反発心がある様子だったのに。
メッセージ解読で簡単に受け入れる程度の反発なら、そんな設定は最初から要らないわ。もっと激しい反発心をショーンに持たせておかないと、「最初はハンクを嫌悪し、激しく反発していたが、冒険の中で彼を見直し、打ち解けるようになっていく」というドラマも構築できないでしょうに。
それと、ハンクが解読したモールス信号って、そんなに難しいとも思えないんだよな。ショーンが自力で解読できそうな気がするので、それなのに彼が簡単に頼っているのも解せないモノがあるわ。

メッセージ解読で簡単に心を開いたショーンは、ハンクが「君は未成年だ。独りで行かせるわけにはいかない」と言うと、「アンタの立場は分かるよ。ママを喜ばそうとしてくれるのは感謝してる。でも自分の建設会社の経営と、住宅ローンの支払いと、ママのケアに集中して。僕は心配いらないから」とまで口にする。
そこで素直に感謝の言葉を口にするってことは、もう普通にハンクを受け入れてるじゃねえか。
その後でハンクが一緒に行くと知って不愉快そうな態度を示し、「冒険に慣れてるのは僕だ。僕が仕切る」と反発心を示しているけど、もう取り戻せない。
ショーンの反発が、せいぜい「ちょっと拗ねてる」という程度でしかないことが露呈しちゃってるんだから。

ショーンが前回の冒険に全く言及しないのは、ちょっと違和感がある。
ショーンは嵐の中に突っ込もうとするが、普通に考えれば死ぬかもしれないんだから回避しようとするはずだ。それなのに突っ込もうとするのは、あまりにも無謀だ。
「ヴェルヌの本を信じているから」ってのは、説得力としては弱い。しかし、「前回の冒険の経験があるから、ヴェルヌの本の内容を全面的に信じている」ということなら、少しは彼の考えを理解いする手助けになるだろう。
そういう意味も含めて、前回の冒険に少しは触れた方がいいと思うんだけど。
まるで無かったことのようにされているのは、どういうつもりなのかと。

島で意識を取り戻した直後、カイラニもガバチョも「危うく死ぬところだった」とか「ヘリコプターが壊れて帰れない」などとショーンを非難することはない。ショーンが洞窟を見つけ、素直に付いて行き、美しい光景に見とれて笑顔になる。
そんなことより、どうやって島を脱出するのかってことを真っ先に考えた方がいいんじゃないかと。
それはハンクにしても同じことが言えるぞ。そういう手順を踏んだ上で、「アレクサンダーの元へ行けば何とかなるかも」という流れにすべきじゃないかと。
美しい光景を見た後で「戻ってSOSを書く」とカイラニたちが言い出し、アレキサンダーの元へ向かうことになってから「一言言っておく。もし死んだらアンタのせいよ」とカイラニがショーンを睨み付けるんだけど、そのタイミングが遅いし、抗議の気持ちも弱い。

金を吹く火山へショーンが行きたがると、ハンクが「そんな暇は無い、潜水艦を探すのが先決だ」と鋭く告げる。ショーンは不貞腐れて、カイラニに「構い過ぎる親なんて最低だ」と愚痴る。
だけど、一刻も早く脱出する必要がある状況なのに、「金山へ行く」とか、何を悠長なことを言っているのかと。
そこは誰が考えたってハンクが正しいし、「子供に干渉しすぎている」という問題ではない。
それに、そこに来て思い出したように「ショーンのハンクに対する反抗心」という要素を持ち出すのも、取って付けた感じがするし。
とにかく、「義父への反発から仲良くなるまでのドラマ」ってのは、まるで上手く描写できていない。

前作と同様、基本的には「飛び出す映像をお楽しみ下さい」という3D映画であり、クソつまらないダジャレで表現するならば「内容は無いよう」ってことでいいんだろう。
虫や鳥が画面に向かって飛んで行くとか、カイラニが日記でムカデを画面に向かって弾き飛ばすとか、折れた小枝が画面に向かって飛ぶとか、「飛び出す映像」を意識した絵作りが多く用意されている。
カイラニをデートに誘って断られたショーンに、ハンクが「口説き方を教える」と言い、胸筋を使って木の実を次々に飛ばすシーンなんかは、特に「飛び出す映像」への意識が顕著だ。
そんなシーン、ストーリー展開としては全く必要性が無いし、ただの余計な道草だからね。

(観賞日:2015年3月6日)

 

*ポンコツ映画愛護協会