『ジョン・ウィック:パラベラム』:2019、アメリカ

ジョン・ウィックは追放処分となり、賞金1400万ドルが設定された。彼が愛犬を連れてニューヨークの街を逃げ回っていると、ホームレスのチクタクマンが「時間が無いぞ」と告げた。執行が始まる18時が迫る中、ジョンはタクシーを拾ってニューヨーク公共図書館へ行こうとする。しかし渋滞に巻き込まれたため、彼は金貨を運転手に渡して「行き先変更だ。コンチネンタル・ホテルへ行き、犬を預けてくれ」と依頼した。
ジョンは図書館へ駆け込み、本に隠してあったロザリオと金貨、誓印を取り出した。亡き妻の写真を確認した直後、殺し屋のアーネストが現れた。まだ18時まで20分あったがアーネストが襲って来たため、ジョンは本を武器に使って始末した。アーネストに右肩を刺された彼は闇医者のドクを訪ね、執行まで残り5分で治療を要請した。治療の途中で18時になったため、残りはジョンが縫合した。18時になって暗殺オープン契約が発効され、多くの殺し屋が動き出した。
ドクは助けたと思われることを避けるため、ジョンに頼んで発砲してもらった。ジョンが外に出ると、男たちが襲い掛かって来た。ジョンは多くの銃が展示されている場所に逃げ込み、全員を始末した。外に出た彼は車にひかれ、別の男たちに命を狙われた。馬小屋に入った彼は、殺し屋たちを始末した。馬で街に出たジョンはバイクの2人組に襲われるが、射殺して逃亡した。この結果を受けて、ジョンの賞金は1500万ドルに増額された。同じ頃、彼の愛犬はコンチネンタルに届けられ、コンシェルジュのシャロンが預かった。
ジョンはタルコフスキー劇場へ赴き、バレエを指導する女性のディレクターにロザリオを見せて「まだチケットがある」と言う。「ルスカ・ロマは主席連合の支配下にある。私まで殺されるかもしれない」とディレクターが話すと、ジョンは「俺はアンタの一族の孤児だ。俺を助ける義務があるはずだ。アンタは俺に借りがある」と告げる。ディレクターは「貴方に借りは無い。助けたくても助けられない」と言うが、ジョンに何が望みなのかと尋ねた。ジョンが「カサブランカへの船旅」と告げてロザリオを差し出すと、彼女は協力を承諾して背中に焼印を付けた。
コンチネンタル・ホテルを訪れた裁定人はウィンストンと会い、ジョンを逃がしたことを批判した。彼女は「1週間後に後任が決まる」と通告し、身辺整理をするよう指示した。裁定人はバワリーの元へ行き、ジョンに協力したことを非難した。彼女は1週間の猶予を与えて、「ハトの家を探し、王座から降りるように」と通告した。カサブランカに着いたジョンは、殺し屋たちに襲われた。ジョンが反撃していると男が現れ、殺し屋たちを制して「支配人が恩赦を与えた」と告げた。
男はジョンをモロッコ・コンチネンタルへ案内し、支配人のソフィアに会わせた。ジョンはソフィアの発砲で怪我を負い、誓印を見せた。ソフィアが「貴方は追放された。その誓印は何の意味も無い」と言うと、彼は「これは君の誓いだ。君が助けを求めた時、俺が助けた」と告げる。ジョンが「君のボスのベラーダに会いたい。話がしたい」と頼むと、ソフィアは難色を示す。彼女はジョンに逃がしてもらった娘の安全を考慮し、主席連合に背く行為を嫌ったのだ。しかし結局、彼女はジョンへの協力を承諾した。
裁定人は寿司屋へ赴き、店主のゼロにジョンと協力者を粛正するための協力を要請した。劇場へ赴いたゼロと手下のシノビたちは、警備の連中を始末した。裁定人はディレクターを糾弾し、ゼロに彼女の両手を突き刺させた。ソフィアの案内でベラーダと面会したジョンは跪き、「贖罪の機会が欲しい。過ちの代償を払うため、主席の上にいる人に会いたい」と頼む。ベラーダは「首長を見つけることは出来ない。彼が君を見つける」と言い、「砂漠の端で星を見ろ。子犬座の一番光る星を目指し、歩き続けろ。最後の息をする前に、首長が見つけるかもしれない」と説明した。
ジョンが礼を述べて去ろうとすると、ベラーダは情報を教えた見返りにソフィアの犬を渡すよう要求した。ソフィアが拒否すると、彼は犬を撃った。激怒したソフィアはジョンの制止に耳を貸さず、ベラーダに発砲した。ソフィアがベラーダの手下たちを銃撃したので、ジョンは仕方なく加勢した。ソフィアはベラーダを射殺しようとするが、ジョンが止めると脚を撃つだけに留めた。2人は外にいた連中も始末し、その場を後にした。ジョンはソフィアの車で砂漠まで送ってもらい、彼女と別れて歩き始めた。
ゼロとシノビたちはバワリーの手下たちを襲撃し、次々に始末した。バワリーは裁定人に対し、「主席から這い下りてくたばれ」と悪態をついた。裁定人はジョンに渡した7発の銃弾の代償として、ゼロにバワリーを7回斬り付けさせた。ジョンは砂漠で意識を失い、首長の元へ運び込まれた。「なぜ生きたいと願う?」と質問されたジョンは、「妻のヘレンを忘れず、2人の日々を覚えておくためだ」と答えた。すると首長は「最後の機会を与えよう。仕事をやり遂げれば追放処分は撤回し、暗殺契約は中止する」と語り、ウィンストンの始末を要求した。ジョンは「私は仕えます」と承諾し、忠誠心を示すために左手の薬指を切断して結婚指輪を差し出した。
ジョンがニューヨークへ戻ると、駅にはゼロとシノビたちが待ち受けていた。ジョンはシノビの1人を殺害し、隙を見て逃亡する。裏出口で待っていた2人を始末したジョンは、バイクを奪ってコンチネンタルへ向かう。襲って来る追っ手を次々に倒すジョンだが、ホテルの前でバイクが転倒してゼロに迫られる。そこへシャロンが現れ、ゼロを制止した。ジョンが「支配人に会いたい」と言うと、シャロンは中へ案内した。ゼロはジョンを殺せなくなり、ロビーで待つことにした。
ウィンストンはジョンが自分を殺しに来たと知りながらも、彼との面会を承諾した。彼は主席連合を相手にしても退かない覚悟をジョンに明かし、「君が撃つなら、ここで死んでもいい。友に殺される方が、敵に殺されるよりいい。決断しろ」と言う。ジョンが「何をだ?」と問い掛けると、ウィンストンは「私を撃てば魂を売ることになる」と告げる。ジョンが「だが、生きて妻を忘れずにいられる」と話すと、彼は「その代わり、主席の下僕として死ぬ」と述べた。ウィンストンは「問題は何者として死にたいかだ」と言い、ジョンに拳銃を渡した。そこへ裁定人が現れ、ジョンに行動を促した。しかしジョンはウィンストンを撃たず、銃を返した。すると裁定人は電話で聖域指定解除を指示し、主席連合がジョンとウィンストンの始末に来ることを通告して去った…。

監督はチャド・スタエルスキ、キャラクター創作はデレク・コルスタッド、原案はデレク・コルスタッド、脚本はデレク・コルスタット&シェイ・ハッテン&クリス・コリンズ&マーク・エイブラムス、製作はベイジル・イヴァニク&エリカ・リー、製作総指揮はチャド・スタエルスキ&デヴィッド・リーチ&ジョビー・ハロルド&ジェフ・ワックスマン、共同製作はジョン・R・サウンダース、製作協力はジェニファー・マデロフ、撮影はダン・ローストセン、美術はケヴィン・カヴァナー、編集はエヴァン・シフ、衣装はルカ・モスカ、視覚効果監修はロバート・ネダーホースト、音楽はタイラー・ベイツ&ジョエル・J・リチャード、音楽監修はケヴィン・エデルマン。
主演はキアヌ・リーヴス、ハル・ベリー、ローレンス・フィッシュバーン、イアン・マクシェーン、アンジェリカ・ヒューストン、マーク・ダカスコス、エイジア・ケイト・ディロン、ランス・レディック、サイード・タグマウイ、ジェローム・フリン、ジェイソン・マンツォーカス、トビアス・シーガル、ランドール・ダク・キム、マーガレット・デイリー、ロビン・ロード・テイラー、スーザン・ブロマート、ユニティー・フェラン、アンドレア・スーチ、セルジオ・デラヴィッチ、セセプ・アリフ・ラーマン、ヤヤン・ルヒアン他。


シリーズ第3作。
監督は1作目から全てチャド・スタエルスキが担当している。
ジョン役のキアヌ・リーヴス、ウィンストン役のイアン・マクシェーン、シャロン役のランス・レディックは、1作目からのレギュラー。キング役のローレンス・フィッシュバーン、アール役のトビアス・シーガルは、前作からの続投。
ソフィアをハル・ベリー、ディレクターをアンジェリカ・ヒューストン、ゼロをマーク・ダカスコス、裁定人をエイジア・ケイト・ディロン、首長をサイード・タグマウイ、ベラーダをジェローム・フリン、チクタクマンをジェイソン・マンツォーカスが演じている。

序盤から、「まだ契約発効の20分前なのにアーネストがジョンを襲う」というシーンが用意されている。つまり、いきなり「主席連合の定めたルールを平気で破る殺し屋がいる」ってことを見せちゃっているのだ。
それはダメだろ。
「主席連合のルールは絶対」という原則を全ての殺し屋が基本的に守っていてこそ、「そんな中でルールを破る」という行為に大きな意味が生じるわけで。誰でも簡単にルールを破っていたら、ルールは無意味になるだろ。そして主席連合の脅威も弱くなるだろ。
また、いきなりルールを破っているせいで、ジョンがアーネストを殺した後で「執行10分前」とアナウンスされても、もはやタイムリミット・サスペンスが成立しなくなっているし。

ゼロが営む「平家」という寿司屋は、通りに面してカウンターが設けられており、椅子が並んでいる。寿司屋なのに「信州味噌」の看板があり、メニューは「こはだ」「ほたて」「いか」「日本酒」「えび」という並ぶ。
ゼロは裁定人に寿司を出さず、フグを出す。しかも刺身ですらない。
この辺りのヘンテコな日本描写は、たぶん意図的にやっているんだろう。
マーク・ダカスコスにカタコトの日本語を喋らせているけど、どうやら当初は真田広之にオファーしていたようだ。

ジョンが情けない奴になっている。
理不尽な理由で粛清しようとする主席連合に対し、彼は何とか許してもらおうと焦る。必死になって訴えたり、跪いて助けを求めたりする。
自分は愛犬を殺されて復讐心を燃やしたのに、ソフィアが犬を殺されて怒ると「やめろ」と諭す。それはソフィアのことを考えての制止ではなく、自分が助かりたいからだ。
また、ジョンが周囲に助けを求めたせいで、関わった面々は次々に主席連合から酷い目に遭わされている。つまりジョンは、かなり迷惑な奴になっているわけだ。
だが、それに対して彼が罪悪感を抱くようなことは全く無い。

ソフィアはベラーダを始末しようとするが、ジョンに制止されると大怪我を負わせるだけで済ませる。
だけど、もはやベラーダを攻撃した段階で主席連合に反旗を翻したことになるわけで、もう完全に粛清される対象でしょ。
だったら、今さらベラーダを怪我だけに留めても、まるで意味が無いでしょ。殺せばいいでしょ。
っていうか復讐を決意して最初に発砲した時点でベラーダを射殺できていないのは、殺し屋としての能力が低すぎるだろ。

裁定人はゼロに命じて、バワリーに7回斬り付けさせる。
だけどバワリーの死を確認せず、その場を去っているのよね。それは甘すぎるでしょ。
あと、ディレクターの時は両手を突き刺すだけで、どうやら殺していないみたいだし。もし「殺した」という設定だったら、そこは描写に甘さがあるってことになるし(明確に死を示しておくべきだからね)。
ともかく、主席連合が非情なのか、温情があるのか、その塩梅が半端に感じるぞ。

ジョンは必死になって生き延びようとする理由について、「妻を忘れずにいるため」と語る。
でも、それは「ジョンの無様な姿を許容させ、応援したくなる理由」になっていない。それも含めて、なんか情けないなあと感じてしまう。
しかも、「妻を忘れずにいるため」ってことで無闇にヘコヘコするだけでなく、指を切断して結婚指輪まで差し出しちゃうんだよね。
それは妻との大事な思い出の品じゃないのか。そんな物まで奪われて、それでも生きようとするのは、「妻への愛」という行動理由との矛盾を感じてしまうわ。

ジョンがウィンストンを始末する仕事を命じられて迷わずに快諾し、主席連合への忠誠心を示すのも、これまたカッコ悪い。自分はピンチをウィンストンに救われたのに、恩を仇で返すようなことを平気で引き受けちゃうのだ。
ウィンストンの言葉を受けて殺害を撤回するけど、それはそれで「簡単な奴だな」と言いたくなるし。
アクションシーンではカッコ良く戦うジョンだが、人間としてのカッコ悪さを感じてしまう。
それに燃えさせてくれるドラマが足りていないから、次から次へと戦闘シーンはあるけど、あんまり興奮できないし。

(観賞日:2021年5月13日)

 

*ポンコツ映画愛護協会