『ザ・エージェント』：1996、アメリカ
ジェリー・マグワイアは、一流スポーツ・エージェンシーＳＭＩの有能なエージェントとして、多くのクライアントと契約を結んでいる。だが、ある時、選手を食い物にして金の亡者となっている自分に気付き、嫌気が差してしまう。そこで彼はエージェントのあり方についての意見書を会社に提出した。しかし１週間後、彼は会社をクビになる。
理想を現実にするため、新しい会社を作ろうとするジェリー。だが、クライアントを全て同僚のボブ・シュガーに奪われる。残ったクライアントは、アリゾナ・カージナルスを解雇されかけている落ち目のアメフト選手ロッド・ティドウェルだけ。大学フットボールのスター選手であるフランクをボブに奪われ、フィアンセのエヴリーにも去られてしまう。
それでも、彼の理想に感動した会計係のドロシー・ボイドはジェリーに付いてきてくれた。ドロシーは５歳の息子レイを抱えて姉の家に厄介になっているシングル・マザー。懸命にサポートしてくれるドロシーに、次第に惹かれていくジェリーだったが…。原作＆監督はキャメロン・クロウ、製作はジェームズ・Ｌ・ブルックス＆ローレンス・マーク＆リチャード・サカイ＆キャメロン・クロウ、共同製作はブルース・Ｓ・パスティン＆ジョン・Ｄ・スコフィールド、撮影はヤヌス・カミンスキー、編集はジョー・ハッシング、美術はスティーブン・ラインウィーヴァー、衣装はベッツィ・ハイマン、音楽監督はダニー・ブラムソン。
主演はトム・クルーズ、共演はキューバ・グッディングＪｒ．、レニー・ゼルウィガー、ケリー・プレストン、ジェリー・オコネル、ジェイ・モーア、ボニー・ハント、レジーナ・キング、ジョナサン・リップニッキー、トッド・ルイッソ、マーク・ペリントン、ジェレミー・スアレス、ジャレッド・ジャシム、ベンジャミン・キンボール・スミス、イングリッド・ビーア、ジャン・ウェナー他。
トム・クルーズがゴールデン・グローブ賞のミュージカル＆コメディー部門で主演男優賞を受賞した作品。ジェリーをトム・クルーズ、ドロシーをレニー・ゼルウィガー、エヴリーをケリー・プレストン、フランクをジェリー・オコネル、ボブをジェイ・モーアが演じている。また、フランクの父マット役でボー・ブリッジスが出演している。
先に書いておくと、脇役には光るものがある。
キューバ・グッディングＪｒ．演じるロッドやジョナサン・リップニッキー演じるレイ、トッド・ルイッソ演じるベビーシッターのチャドといったキャラクターの存在は、この作品のわずかな救いになっている。さて、本来ならば、これは「ドン底まで落ちたスポーツエージェントが復活していくサクセス・ストーリー」として描かれなければならなかったはずである。しかし実際には、ほぼ全編に渡って、恋愛ドラマが中心となってストーリーが展開されていく。
「前半で打ちのめされた主人公が、苦労しながらもやがて成功を収めていく」という流れを隅に追いやった時点で、この作品は傑作となる可能性を捨ててしまった。
また、その部分を捨ててまで描いているにも関わらず、恋愛ドラマも弱いのだ。ジェリーとドロシーは、惹かれ合って結婚したにも関わらずギクシャクしていく。
だが、２人の心の動きがちゃんと描かれていないため、流れがスムーズではない。２人の心ではなく、恋愛ドラマ自体がギクシャクしてしまっているのである。
肝心な仕事面を犠牲にしてまで描いたのに、それではねえ。