『ジーパーズ・クリーパーズ』:2001、アメリカ&ドイツ

大学生のトリッシュと弟のダリーは、春休みに帰省するため、田舎道を車で走っていた。その途中、後ろからトラックが急接近し、激しくクラクションを鳴らしてきた。運転するダリーが追い越すよう促しても、トラックは後ろから煽り続ける。必死で合図を送っていると、ようやくトラックは前に出て走り去った。ナンバープレートの「BEATINGU」の文字を見て、ダリーは「殴る」の意味だと解釈した。
落ち着きを取り戻したトリッシュはダリーと会話を交わす内、ケニーとダーラの事件を思い出した。20年以上前、この近くで行方不明になったカップルがケニーとダーラだ。
しばらく行くと、古い教会の近くに先程のトラックが停まっていた。大男が血の染み付いた布に何かを包み、それを廃水用パイプに捨てるのが見えた。トリッシュとダリーは教会を通り過ぎるが、再びトラックが追い掛けて来た。後ろから追突された2人の車が道を外れると、トラックは猛スピードで走り去っていった。
ダリーは大男が何をやっていたのか調べるべきだと言い出し、反対するトリッシュを説き伏せて教会へ戻った。パイプを覗き込んだダリーは、足を滑らせて転落する。そこは、教会の地下室だった。奥に進んだダリーは、大男が投げ入れた包みを発見する。ダリーが近付くと、布の中には生きた少年が包まれていた。
少年は腹を切り裂かれており、間もなく息を引き取った。さらに奥を調べたダリーは、無数の死体が壁一面に縫い付けられているのを発見した。その中には、ケニーとダーラの死体もあった。ダリーはパイプから抜け出し、トリッシュと共に教会を後にした。再びトラックを目にした2人は、慌ててダイナーに駆け込んだ。
トリッシュとダリーは、ダイナーのウェイトレスに警察を呼ぶよう頼んだ。その時、ダイナーの電話が鳴った。トリッシュとダリーが電話を取ると、婦人の声が聞こえた。なぜか彼女はダリーの名前を知っており、「あいつは、ずっと追い続ける。『ジーパーズ・クリーパーズ』の歌が聞こえたら注意して」と告げた。
トリッシュとダリーは警察に事情を話すが、全く信じてもらえない。聴取を受けている間に、2人の車が荒らされた。ウェイトレスによれば、何者かがダリーの洗濯物の匂いを嗅いでいたらしい。2人はパトカーの先導で、あの教会へ向かった。その途中、あの大男がパトカーを襲撃し、警官を殺害する。
慌てて逃げ出したトリッシュとダリーは、警察に通報するため、たくさんの猫を飼っている婦人の家で電話を借りようとする。しかし、そこにも男が現れ、婦人は殺害されてしまう。トリッシュとダリーは逃走し、警察署で保護を求めた。そこに、超能力者を自称するジェゼラという婦人がやって来た。彼女は、ダイナーで電話を掛けてきた女性だった。ジェゼラはトリッシュとダリーに、追ってくる相手が23年ごとに出現して人を食い殺す怪物だと告げた…。

監督&脚本はヴィクター・サルヴァ、製作はバリー・オッパー&トム・ルーズ、共同製作はJ・トッド・ハリス、製作総指揮はフランシス・フォード・コッポラ&リンダ・レイズマン&ウィリ・バール&マリオ・オホーヴェン&エバーハード・ケイサー、撮影はドン・E・ファンルロイ、編集はエド・マークス、美術はスティーヴン・レグラー、衣装はエミー・ヴィラロボス、音楽はベネット・サルヴェイ。
出演はジーナ・フィリップス、ジャスティン・ロング、ジョナサン・ブレック、パトリシア・ベルチャー、アイリーン・ブレナン、ブランドン・スミス、ペギー・シェフィールド、ジェフリー・ウィリアム・エヴァンス、パトリック・チェリー、ジョン・ベシャラ、エイヴィス=マリー・バーンズ、スティーヴン・ラウラーソン他。


フランシス・フォード・コッポラの映画会社アメリカン・ゾエトロープが製作したB級ホラー映画。『フランシス・フォード・コッポラPRESENTS ジーパーズ・クリーパーズ 暗黒の都市伝説』『ジーパーズ・クリーパーズ 暗黒の都市伝説』といった別タイトルで紹介されることもある。
トリッシュをジーナ・フィリップス、ダリーをジャスティン・ロング、怪物をジョナサン・ブレック、ジェゼルをパトリシア・ベルチャー、猫屋敷の婦人をアイリーン・ブレナンが演じている。

この映画、「フランシス・フォード・コッポラが製作総指揮」ということを最大のセールス・ポイントにしている。まあスタッフやキャストにビッグ・ネームがいないので、それを強調したい気持ちも分からないではない。
ただ、ホラーというジャンルにおいて、コッポラの名前が売りになるのかどうかという疑問はある。コッポラの名前で食い付いた客が、その作品に果たして何を求めるのかと考えた時に、たぶんホラーではないと思うのだ。

でも良く考えれば、フランシス・フォード・コッポラってロジャー・コーマンの門下生なんだよね。コーマンと言えば、新人監督を起用してジャンルを問わずB級映画を製作した人物で、もちろんホラー映画も多く手掛けている。
ひょっとすると、コッポラはコーマンのようなポジションに移行してくことを意識しているのかもしれない。

ヴィクター・サルヴァは、自身が子供の頃に見た古いホラー映画のエッセンスを持ち込もうとしたらしい。
だからなのか、展開が随分とゆったりしている。
「警察に事情を話すが信じてもらえない」という段階で、もう半分ほど経過しているのだ。
それは、レトロな恐怖映画を意識してのことだろう。
決して、単純に中身が薄いわけではない、と思う。

ホラーと言っても、ただのホラーではない。最初はスティーヴン・スピルバーグの『激突!』から始まり、次に殺人鬼が命を狙ってくるという展開になり、最終的にはモンスター映画になる。
1つの作品で3種類のホラーを詰め込むんだから、随分と欲張りだ。それが上手く調和して贅沢な料理になっていれば何の文句も無いが、まあ見事に分離したままだ。

で、3種類のホラーを詰め込んだ結果、「最初は執拗に車で襲ってきた怪物が、途中から全く車を使わない」という状態になっている。
ホラー映画に深い意味や理由など要らないかもしれないが(だから怪物が人間の全身ではなく一部しか食べない理由とか、死体を縫い合わせる意味については、あえて不問に付す)、そこでの統一感の無さはマズいだろう。

たくさんの猫を飼っている婦人が、いかにも意味ありげに登場する。
しかし、特に何も無いまま、あっさりと殺される。
自称・超能力者のジェゼラは、「助けるために来た」と言って絡んでくる。
しかし彼女の超能力は、トリッシュとダリーを助けるためには何の役にも立たない。
彼女は単なる怪物の説明係に留まっている。

「危険な匂いがプンプンしているトコロへ好奇心で首を突っ込む奴」ってのは、ホラー映画においては命を落とすのがセオリーだ。
だから(完全ネタバレだが)メイン・キャラクターであるダリーが最後に無残な死を迎えるのをショッキングだ、サプライズだと感じる人もいるかもしれないが、ある意味ではセオリー通りってことだ。
トリッシュとダリーの前に現れたジェゼラが「相手は殺しても絶対に死なない」と言ってしまうので、その時点で完全に「お手上げ」の状態になる。
対抗策が何も無いのだから、残っているのは延命措置だけだ。
で、「投げやりになったのか、最初から続編を作る気満々だったのか、どっちだ」と言いたくなるような放り出し方で映画は終了する。

 

*ポンコツ映画愛護協会