『ジェイソンX 13日の金曜日』:2001、アメリカ

クリスタルレイク研究所では、連続殺人鬼のジェイソンを拘束していた。数名の兵士を引き連れたウィマー博士が現れたので、主任研究員のローワンは「まだ冷凍の準備が出来てません」と告げた。ウィマーが「ジェイソンを生のままスクラントンへ移す」と言うので、何も聞かされていなかったローワンは驚いた。移送の危険性を訴えるローワンだが、ウィマーは「既に決定したことだ。上の許可も取ってある。彼の特殊能力、なぜ失われた組織を再生できるのか、それを研究する」と述べた。
ウィマーやローワン軍曹たちが部屋へ行くと、ジェイソンは警護の兵士を殺して拘束を抜け出していた。ジェイソンはウィマーたちを全て始末し、逃げるローワンを追い掛けた。ローワンは地下の施設へジェイソンを誘い込み、冷凍保存ポッドに閉じ込めた。しかしジェイソンはナタでポッドを突き破り、ローワンに負傷を負わせる。冷気が漏れて部屋の扉が施錠され、ローワンも冷凍保存されてしまった。
時が過ぎ、廃墟と化した地下の施設に調査チームのロウ教授と学生のアザレル、ジャネッサ、ツナロン、彼の恋人であるアンドロイドのKM、軍人のキッカーが入って来た。一行は好奇心からポッドを開けてジェイソンを発見し、近くに倒れているローワンも見つけた。KMはローワンの蘇生が可能だと判断した。アザレルは倒れて来たジェイソンのナタで右腕を切断された。6名はローワンとジェイソンを、荒廃した地上で待機していた宇宙船に運び込んだ。
操縦士のファット・ルーと副操縦士のキッカーが、宇宙船を発進させた。キッカーは輸送船のグレンデル号に連絡を入れ、生命体を発見したことをブロッドスキー軍曹に報告した。ブロッドスキーはエンジニアのクラッチに、ドッキングとラボの準備を命じた。グレンドル号に帰還したロウは、学生のキンサにウェイランダーの居場所を訊く。ラボ1で蘇生の準備中だと聞いたロウは、ストーニーとエイドリアンをラボ2に呼ぶよう指示した。アザレルは医療装置を使い、切断された右腕を元通りに戻した。
エイドリアンは作業そっちのけでイチャイチャしているキンサとストーニーに呆れ、やる気になるまで外へ出ているよう要求した。ロウやウェイランダーたちがローワンの蘇生に取り組んでいる間に、エイドリアンはジェイソンの体を調べた。蘇生したローワンは、今が2455年だと知らされた。ロウは激しく戸惑うローワンを落ち着かせ、「ここなら安全だ。これからグレンデル号で宇宙ステーションのソラリスに戻る」と告げた。
ロウはリサーチ・ステーションのペレスに通信を入れ、「凄い物を見つけた。金脈を掘り当てた。なんと455年前の人間だ。みんな見たがる。金儲けになる」と興奮気味に述べた。しかしペレスは淡々とした口調で、「お前は今まで何千人も蘇生させてきた。何年前の人間を蘇生させたところで、100年前なら大ニュースだったかもしれないが、今は何でもない」と告げた。「くそっ、金が要るんだ」とロウが苛立つと、生命体のデータを確認したペレスは「ジェイソンか。有名な殺人鬼だ。こいつなら買い手が付くぞ」と口にした。
ジャネッサはロウの部屋を訪れ、マゾの性癖がある彼の体を甚振ることで、テストの採点を合格にしてもらう。ツナロンは乳首を欲しがるKMに、「こんなことしても意味が無いよ。僕は今の君が好きなんだから」と告げた。キンサとストーニーは、部屋でセックスしていた。復活したジェイソンは、分析を続けていたエイドリアンを惨殺した。ローワンは食事を運んで来たロウから、汚染が酷くて地球が滅びたこと、自分たちは第二地球へ帰還することを聞かされた。
ジェイソンが船に運び込まれたことを知ったローワンは、廃棄すべきだとロウに訴える。しかしロウは金儲けが目的であることを隠し、「彼は貴重なサンプルだ。保管するのが当然だよ」と告げた。ロウが「スキャンしたが、彼は確実に死んでいる」と言うので、ローワンは実際に見せるよう求めた。ローワンたちはエイドリアンの死体を発見し、ブロッドスキーは部下のブリッグスたちに「警戒態勢を取れ。船内に敵がいる」と知らせた。
ストーニーはキンサを残して部屋を出ようとするが、ジェイソンに殺された。キンサはロウやブロッドスキーたちの元へ行き、ストーニーが犠牲になったことを知らせる。ヴァーチャル・ゲームで遊んでいたアザレルと軍人のダラスは、ジェイソンに襲われて死んだ。ロウはブロッドスキーがフル装備でジェイソン抹殺に動き出したので、慌てて「もうすぐソラリスに到着する。彼のことはソラリスで軍隊に任せた方がいい」と説得する。「生け捕りにしてくれ。報酬を出す」とロウは持ち掛けるが、ブロッドスキーは断った。しかし50万ドルの報酬を提示され、彼は生け捕りにすることを約束した。
ブロッドスキーは部下のキッカー、ブリッグス、コンドー、スヴェン、ゲッコーが集合している場所へ行き、「生け捕りにするよう教授と約束した。だから殺した後、足を一発撃っておけ。それで言い訳できる」と語った。キッカーとブリッグスはダラスたちの死体を発見し、ブロッドスキーに報告した。スヴェンとゲッコーは、血痕が貨物室へ続いていることを知らせた。ブロッドスキーは2人に左舷へ回るよう命じ、コンドーとキッカーを連れて貨物室へ行くことにした。
ジェイソンはクラッチが作業をしている場所に現れ、彼を殺そうとする。そこへブロッドスキーたちが駆け付け、ジェイソンに向かって一斉に銃弾を浴びせた。ジェイソンが姿を消し、ブロッドスキーは部下に手分けして捜索するよう指示する。しかしスヴェン、コンドー、ゲッコー、キッカー、ブリッグスが、次々にジェイソンの犠牲となった。最後に残ったブロッドスキーも、あっさりと殺された。
ソラリスが近付き、ルーはドッキングの準備に入る。しかしジェイソンによってルーが殺害されたため、グレンデル号はドッキングに失敗してソラリスを突き抜けた。グレンデル号は激しく損傷し、ソラリスは衝突した衝撃で爆発した。学生たちが動揺する中、指令室のドアが激しくノックされた。しばらく沈黙が続いた後、ジェイソンは別の場所からガラスを突き破って飛び込んで来た。ローワンたちが逃げ出す中、取り残されたロウはジェイソンに殺された。学生たちはシャトルがあることを思い出し、それを使って脱出しようと考える…。

監督はジム・アイザック、脚本はトッド・ファーマー、製作はノエル・カニンガム、製作協力はマリリン・ストーンハウス、製作総指揮はショーン・S・カニンガム&ジム・アイザック、 撮影はデリック・アンダーシュルツ、編集はデヴィッド・ハンドマン、美術はジョン・ドンダートマン、衣装はマキシン・ベイカー、視覚効果監修はケリー・レプコウスキー、音楽はハリー・マンフレディーニ。
出演はレクサ・ドイグ、リサ・ライダー、チャック・キャンベル、ジョナサン・ポッツ、ケイン・ホッダー、ピーター・メンサー、メリッサ・エイド、メロディー・ジョンソン、フィリップ・ウィリアムズ、ダーウィン・ジョーダン、ダヴ・ティフェンバック、ボイド・バンクス、クリステイー・アンガス、ヤニ・ゲルマン、バルナ・モリクス、ディラン・ビーグ、トッド・ファーマー、スティーヴ・ルチェスク、ロバート・A・シルヴァーマン、デヴィッド・クローネンバーグ、ローマン・ポドーラ、マーカス・パリロ、ジェフ・ゲディス他。


前作から約9年ぶりとなるシリーズ第10作。
監督は『デビルジャンク』のジム・アイザック。
これがデビューとなるトッド・ファーマーが脚本を担当している。
ローワンをレクサ・ドイグ、KMをリサ・ライダー、ツナロンをチャック・キャンベル、ロウをジョナサン・ポッツ、ジェイソンをケイン・ホッダー、ブロッドスキーをピーター・メンサー、ジャネッサをメリッサ・エイド、キンサをメロディー・ジョンソン、クラッチをフィリップ・ウィリアムズ、ウェイランダーをダーウィン・ジョーダン、アザレルをダヴ・ティフェンバックが演じている。
他に、映画監督のデヴィッド・クローネンバーグが、ウィマーの役で出演している。

冒頭、研究所で厳重に拘束されているジェイソンが写る。研究所は分析対象として拘束しているのに、なぜかホッケーマスクを外さずに拘束している。
そもそも、何のためにジェイソンを拘束しているのかも良く分からない。ローワンの「まだ冷凍の準備が出来ていない」というコメントがあるが、その冷凍は何のために行うはずだったのかも良く分からない。
っていうか、危険なのは分かっているんだから、コールドスリープ状態にしてから移送すれば良かっただろ。
なんでウィマーたちが生のままの移送に固執するのか良く分からん。

前作でパラマウントからニューライン・シネマに版権が移動しているが、製作サイドは以前のシリーズと辻褄を合わせようという意識など全く無いらしく、勝手なストーリーを用意した。
既に「ジェイソンはクリスタル・レイクに現れる」というルールは崩壊しており、8作目ではニューヨークまで出張しているのだが、もう地球規模ではダメだろうってことで、宇宙が舞台になっている。
しかも現代じゃなくて400年後である。
「未来」で「宇宙」と来たもんだ。

そうやって出来上がった作品は、もはやホラーからは完全に逸脱しており、おバカSFになっている。
どうせジェイソンは観客に怖がってもらえるキャラクターではなくなってしまったので、別のジャンルとしてのアプローチってのは、ちょっと理解できる部分もある。
特殊効果を本業とするジム・アイザックを監督に据えたことからしても、ニューライン・シネマは今回の映画において、VFXを売りにするという方向性で考えていたんだろう。
だからSFってのは、なるほど、自然な流れである。

『13日の金曜日』なのにSFなんて、どう考えたって違うんじゃないかと、そう思う人もいるだろう。このシリーズを真っ当なホラー映画として捉えた場合、その意見は正しい。
でも、もうジェイソンというキャラクターを使って普通に観客を怖がらせることなど無理な状態になってしまった以上、このシリーズはホラー映画としての本質を失ったと言わざるを得ないのだ。
だから、この映画は最初から、観客を怖がらせようという意識は薄い。
それよりもVFXのアピールに重点が置かれており、アザレルやローワンの蘇生シーンなんかを丁寧に描いている。
ホラーとして捉えた場合、そんなトコロを丁寧に描く必要は無いからね。

このシリーズにおける登場人物は、主人公を含む数名を除けば、ほぼジェイソンに殺されるためだけに登場していると言っても過言ではない。
そして殺される奴らは大抵の場合、とてもボンクラな行動を取っており、まるで同情心を誘わない。
ジェイソンが次々に惨殺していく様子を見ても、顔を背けたくなるような不快感や嫌悪感を抱かせないような、スカッとする連続殺人ショーになっているのだ。

そういう基本的な部分は今回も踏襲されており、作業そっちのけでイチャイチャしているバカップルとか、金儲けのことしか考えていない腐った教授とか、その教授をSMプレーで楽しませてテストを合格にしてもらう女子生徒とか、前半の内に「ジェイソンが復活したら間違いなく殺される」と観客が容易に分かるようなキャラクターがアピールされている。
しかし最初の犠牲者は、真面目にジェイソンの分析をしていた女子生徒だ。
これは賛同しかねる展開だ。ちゃんとした人物は、出来ることなら助かって欲しいよ。
他の連中がボンクラなことをしている最中に、なんで真面目に働いている奴が真っ先に殺されなきゃならんのかと。

開始から30分程度は、登場人物の紹介や、状況設定の説明のために使われる。
そしてジェイソンが復活するのだが、そこからのストーリー展開は単純明快だ。ジェイソンが次々に宇宙船の乗組員を惨殺していく様子を、何も考えずに見ていればいい。
今回の相手はアーパーな学生たちだけでなく、フル装備の軍人たちもいるが、もちろんジェイソンに勝てるはずも無く、やっぱり殺されるために出て来る連中だ。
ちなみに大まかなプロットは、完全に『エイリアン』シリーズの模倣である。
他の連中が激しく動揺したり怖がったりする中で、武器を使って勇敢に戦おうとするローワンのキャラクター造形も、明らかにリプリーの模倣だ。

これまでのシリーズとの大きな違いは、繰り返しになるが、未来の宇宙が舞台であるということだ。そのため、これまでに無かったような設備や装置が登場する。
例えばジェイソンに立ち向かう軍人チームは、フル装備で銃を所持している。
でも、そのことが映画の面白さに繋がっているのかというと、答えはノーだ。どうせ何で攻撃しようとジェイソンは死なないし、そういった未来の武器に対してジェイソンが防御や回避のために知恵を見せるわけでもない。
あと、455年後の未来にしては、それほど未来チックではない銃なのね。
455年が経過しても、相変わらず弾丸を装填するタイプの銃が主流ってことなのね。

ジェイソンは今までと大して変わらず、ナタという古典的な道具や自分の怪力を使って、次々に人を殺していく。
未来の武器や特殊な設備を利用して、殺人ショーにケレン味を加えるようなことは無い。
むしろ、かなり地味な殺人ショーだ。
この映画で何よりも考えるべきは、「いかにケレン味たっぷりに殺人ショーを飾り付けるか」ということじゃないかと思うのだが、そこに対する意識は著しく乏しい。

なぜかジム・アイザック監督は、緊張感の溢れる中で物語をシリアスに進めようとしている。
これがどういう映画なのか、どんな風にアプローチしていくべきなのか、は全て理解した上で演出を引き受けたのかと思っていたが、どうやら何も分かっちゃいなかったようだ。
もしくは製作サイドが何も分かっておらず、雰囲気作りの部分まで『エイリアン』シリーズの真似を要求したのかもしれないが。

ただ、しばらくはシリアスなテイストで進めているのだが、軍人が全滅した辺りから、少し様相が変わって来る。
大勢が殺されて自分たちも危機的状況なのにツナロンとKMが場違いなラブシーンをやったり、ジェイソンが目の前に来ているのにジャネッサが軽口を叩いたり、余裕の態度で現れたツナロンがパワーアップさせたKMを登場させたり、そのKMが呆気なくジェイソンの攻撃を食らったと見せ掛けて反撃したり、お気楽なテイストが急激に強くなる。
いや、それはそれで違うぞ。

無敵の戦闘マシーンと化したKMは余裕たっぷりでジェイソンを追い詰め、銃弾を浴びせて左脚部をもぎ取り、顔面をクラッシュさせる。
これでジェイソンを倒し、「遭難信号をキャッチした船から通信が来るが、パワーダウンで中心部の爆発が迫っている。そこでブリッジに移動して通路を切り離すことを試みる」という展開に移る。
しかし、もちろん「後は爆発を回避して救援を待つだけ」とはならない。
何しろ不死身のジェイソンなので、そんなことで死ぬはずも無い。

それどころか、ジェイソンは蘇生装置を使ってパワーアップし、姿も変形する。
もはやジェイソンではなく、「強殖装甲ジェイソン」みたいな奴になっちゃうのである。
いや、確かに未来を舞台にするなら、特殊な道具や装置は利用した方がいいと思うけど、そういうのは違うんじゃないかな。
あと、もはや「13日の金曜日」とか関係なくなってるよな。劇中の出来事って、13日の金曜日に起きている設定でもなさそうだし。

(観賞日:2013年10月2日)

 

*ポンコツ映画愛護協会