『ジャッカル』:1997、アメリカ

テレク率いるチェチェン・マフィアはソビエト連邦崩壊後のモスクワに進出し、世界に脅威を与える存在となっていた。ロシア情報局(MVD)とアメリカ連邦捜査局(FBI)は手を結び、チェチェン・マフィアの壊滅作戦を開始することになった。
MVDのコスロヴァ少佐とFBIのプレストン副長官は、部下を引き連れてテレクの弟ガッツィーの逮捕に向かった。しかしガッツィーが激しく抵抗したため、コスロヴァ少佐がガッツィーを射殺。それを知ったテレクは報復のため、暗殺者ジャッカルを雇う。
MVDとFBIは、ジャッカルが動き始めたことを知る。ジャッカルはこれまでも多くの暗殺事件に関わっているとされているが、その正体は不明。しかし、現在アメリカに住んでいる元バスク解放運動の女闘士イザベラ・ザンコーナが、彼の素顔を知っているという。
アメリカで投獄されている元IRAの暗殺者デクラン・マルクィーンは、イザベラと親しい関係にあった。MVDとFBIがデクランに接触すると、彼はジャッカルに会ったことがあるという。デクランはジャッカルの捜索を開始するが、ジャッカルは着々と計画の準備を進めていた…。

監督はマイケル・ケイトン=ジョーンズ、原案&脚本はチャック・ファーラー、製作はジェームズ・ジャックス&ショーン・ダニエル&マイケル・ケイトン=ジョーンズ&ケヴィン・ジャール、製作総指揮はテレンス・クレッグ&ハル・リーバーマン&ゲーリー・レヴィンソン&マーク・ゴードン、撮影はカール・ウォルター・リンデンロウブ、編集はジム・クラーク、美術はマイケル・ホワイト、衣装はアルバート・ウォルスキー、音楽はカーター・バーウェル。
出演はブルース・ウィリス、リチャード・ギア、シドニー・ポワチエ、ダイアン・ヴェノーラ、テス・ハーパー、マチルダ・メイ、J・K・シモンズ、スティーヴン・スピネラ、リチャード・ラインバック、ジャック・ブラック、ジョン・カニングハム、デヴィッド・ハイマン、セルジュ・ホーデ、レスリー・フィリップス、ソフィー・オコネド、スティーヴ・バセット、ユーリ・ステファノフ、ウォルト・マクファーソン、ラヴィル・イスヤノフ他。


1973年の作品『ジャッカルの日』のリメイク作品のように見せ掛けておいて、実は全く異なる作品。何が異なるかというと、脚本だけでなく、映画の持つ雰囲気や演出のタッチなど、あらゆることが異なっている。
共通点は、ジャッカルが主役ということぐらいか。

この映画は、既にクランク・インの段階から大きな失敗を犯していると思う。
それはキャスティングのミス。
ブルース・ウィリスがジャッカルを、リチャード・ギアがデクレンを演じているのだが、どう考えても配役は逆の方がいいと思うぞ。

まずジャッカル。
いや、ジャッカルというか、まんまブルース・ウィリスである。
満ち足りている雰囲気が見えてしまっている。
ジャッカルというのは、もっと見た目からして何かに飢えたような、乾いたようなキャラクターの方が良かったんじゃないだろうか。

続いてデクラン。
どう見ても元IRAの暗殺者には見えない。
冷酷さや非情さが無く、優しすぎる。
デクランが「いい人」にしか見えないので、ジャッカルとの対決がワルとワルの戦いに見えない。本来ならば、「毒を持って毒を制す」という構図が成立すべきだと思うのだが、そうは見えない。

ジャッカルは恐るべき暗殺者のはずなのだが、ちっとも凄そうに見えない。
孤高の男にも見えない。
デクランはキャラクター造形が薄い上に、わざわざ牢獄から出した割りにはそれほど捜査に貢献していない。
2人の戦いの中に、緊張感は生まれてこない。
そして退屈が襲い掛かってくる。

この映画、実はブルース・ウィリスもリチャード・ギアもいない方が良かったんじゃないだろうか。ジャッカル役を、それほど有名ではない地味な役者に演じさせて、シドニー・ポワチエ演じるプレストンが彼を追うという話にした方が、派手さは無くなるが締まりのある作品になった気がする。

クール、シリアス、ハード。
この作品には、そういった要素が決定的に欠けている。
だから、二大スター共演をセールスポイントにしただけの、ありがちなサスペンス・アクションに終わっている。「腰砕けのゴルゴ13」とでも呼びたくなる作品。

ちなみに、ジャッカルは様々なカツラを取り替えて変装するのだが、演じているのが頭の禿げ上がったブルース・ウィリスだけに、ほとんど自虐的ギャグに見えてしまった。
ブルース・ウィリスの変装だけは、別の意味で面白かったかな。


第20回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最も苛立たしいインチキな言葉づかい】部門[リチャード・ギア]

 

*ポンコツ映画愛護協会