『ジャック』:1996、アメリカ

ブライアン・パウエルとカレン・パウエル夫妻に、息子ジャックが誕生した。しかし、妊娠2か月半での出産だった。検査の結果、大変なことが分かった。なんとジャックは、通常の4倍の早さで成長する特異体質だったのだ。
やがてジャックは10歳になった。ということは、見た目には40歳の男である。普通ならば小学校へ通う歳であったが、両親は世間の目からジャックを隠すために家から出さず、家庭教師ウッドラフを家に呼んで勉強を教えてもらっている。
だが、ウッドラフはジャックを小学校に通わせるよう両親に勧め、ジャックも小学校に行くことを望んでいた。ついに両親はジャックを小学校に通わせることにする。しかし子供達は彼を怪物として扱い、ジャックは全く馴染むことが出来ない。
しかし、バスケットの試合で身長の高さを生かして活躍したことをきっかけに、ジャックはルイや彼の仲間達と仲良くなる。友達も出来て楽しい毎日を送るジャックだが、ある日、発作を起こして倒れてしまう。両親はジャックを再び家から出さないようにするのだが…。

監督はフランシス・フォード・コッポラ、脚本はジェームズ・デモナコ&ゲイリー・ナデュー、製作はフランシス・フォード・コッポラ&リカルド・メストレス&フレッド・フックス、製作総指揮はダグ・クレイボーン、撮影はジョン・トール、編集はバリー・マルキン、美術はディーン・タヴォラリス、衣装はアギー・ゲイラード・ロジャース、音楽はマイケル・ケイメン。
出演はロビン・ウィリアムズ、ダイアン・レイン、ジェニファー・ロペス、ブライアン・カーウィン、ビル・コスビー、フラン・ドレシャー、アダム・ゾロティン、トッド・ボスレー、セス・スミス、マリオ・イェディディア、ジェレミー・レリオット、ダニ・フェイス、ヒューゴ・ヘルナンデス、リッキー・デショーン・コリンズ、マイケル・マッキーン、エドワード・リンチ他。


フランシス・フォード・コッポラ監督が、22歳で死んだ自分の息子への思いを込めて作った映画。
全体的にストーリー展開は甘いのだが、それはジャックに自分の息子の姿を投影しているからだろう。息子に対して厳しすぎるシナリオを用意することは出来なかったということか。

ジャックを演じるのはロビン・ウィリアムズ。彼はこれまでにも『トイズ』や『ジュマンジ』など多くの作品で「外見は大人で中身は子供」というキャラクターを演じているが、ハマりすぎていることが逆にミスキャストになっている感もある。
「もういいよ」という気持ちになってしまうのだ。

10歳になったジャックとしてロビン・ウィリアムズが顔を見せるまで、少し引っ張るのだが、どうせ観客は彼がジャックを演じていることは知っているのだから、むしろ早く彼の顔を見せてしまった方がいい。
無意味な引っ張りは逆効果になる。

子供達と仲良くなる場面では、もう少し劇的な効果がほしかった。それも、体の大きさを利用するのではなく、他に何か特技を設定しておいて、それを生かして活躍するという展開がほしかった。
そうしないと、本当に仲良くなったとは言えない。

子供達は、ジャックの外見が大人だということを都合良く利用しているだけに見える。「大人の体だから子供だけど出来る」ということを描く部分は、もっと“笑い”の要素として描いていくべき。
そうしないと、子供の持つ無邪気な悪意が感じられてしまう。

ハートフルが強すぎて、笑いの要素が非常に薄いのは気になる。
前半から中盤にかけてはコミカルな場面の連続で引っ張っておけば、後半になってジャックが急激に老いていく自分に悩むというシリアスな展開にさらなる効果が生まれたはず。

「ルイの母親ドロレスがジャックを校長だと信じている」という要素を、後半まで引っ張る必要は無い。むしろ前半で締めておくべき問題である。
ジャックとドロレスの恋愛劇ではなく、別の部分で自分の存在に悩むジャックの姿を表現するべきだった。

両親の恋愛模様が描かれる部分は明らかに邪魔。いっそ片親は死んでいる設定にした方が良かったかもしれない。その方が親と子の絆についてもっと上手く描けたかもしれない。
親子の関係が今一つ描けていないように感じるのだ。


第19回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の作品】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会