『ジャイアント・ベビー』:1992、アメリカ

発明家ウェイン・サリンスキーの一家は、ネヴァダ州のヴィスタ・デル・マーに引っ越してきた。妻ダイアン、長女エイミー、長男ニック に加え、一家には2歳になる次男のアダムが増えている。エイミーは大学の寮に入るため、出掛ける準備をしている。心配性のダイアンは 、寮まで付いて行くことにしている。ニックは恋をして、そのことをダイアンに相談する。やんちゃで好奇心旺盛なアダムは、ウェインが 作ったベビー・サークルから簡単に抜け出してしまう。
ダイアンは頼りないウェインに不安を抱きつつ、ニックとアダムの世話を任せて、エイミーと共にタクシーで空港へ向かった。ウェインは ニックをアルバイト先のプールまで送り届けた後、スターリング研究所へ赴いた。2年前に物質縮小化装置を開発したウェインは、その 功績をクリフォード・スターリング所長から高く評価された。現在、彼は研究所と技術提携し、共同責任者として物質拡大化装置の開発を 進めていた。研究所側の責任者であるチャールズ・ヘンドリクソンはウェインを見下し、まるで相手にしていなかった。実験は失敗の連続 で、ヘンドリクソンは苛立っていた。ウェインは新たに計算した数値を提案するが、ヘンドリクソンは冷たく無視した。
プールで売り子のアルバイトをしているニックは、仲間たちと遊びに来ているマンディーに片思いしていた。しかしマンディーからは全く 相手にされておらず、名前さえ覚えてもらっていなかった。帰宅したウェインはアダムを寝かし付けている時に新たなアイデアを思い付く 。彼はヘンドリクソンに電話を掛けてアイデアを語るが、またも無視された。ヘンドリクソンはスターリングの方針に批判的な理事の ウィーラーと手を組み、ウェインを追い出そうと目論んでいた。
翌日、ウェインはニックとアダムを連れて、休みで所員がいない研究所を訪れた。守衛のスミッティーは、ヘンドリクソンに連絡を入れた 。ウェインはニックに手伝ってもらい、昨晩に思い付いた方法で物質拡大化装置のレーザー照射実験を行おうとする。彼は標的として、 アダムが持っていたウサギのヌイグルミを台にセットした。ウェインとニックが操作に集中している間に、アダムはヌイグルミを取ろうと 台に近付いた。その時、システムがショートしてレーザーが照射され、アダムに命中した。アダムは弾き飛ばされ、ウェインたちは何とか システムを停止させる。ウェインとニックは実験が失敗したと思い込み、アダムを連れて研究所を去った。
帰宅したウェインは、ニックと映画を見に行こうと考え、ベビーシッターに電話を掛ける。ウェインが依頼した相手はマンディーだったが 、それが息子の片思いの相手だとは全く知らなかった。そしてニックも、ウェインがマンディーを雇ったことを知らなかった。ウェインと ニックが話しいる間に、キッチンで電子レンジの電磁波を浴びたアダムが大きくなった。アダムを見たウェインとニックは仰天し、そして 実験が成功していたことを知った。
ウェインとニックは、研究所に戻ったアダムを元に戻そうと考えた。2人はアダムを変装させ、研究所に戻った。しかしヘンドリクソンと 所員2名が実験室にいたので、ニックが慌ててアダムを外へ連れ出した。ウェインが「データベースの計算をしようと思いまして」と 誤魔化すと、ヘンドリクソンは「システムがショートしてデータは全て飛んだ。君はクビだ」と告げた。ヘンドリクソンはウェインを 追い払った後、所員たちに「実験室の監視映像を回復させろ。あいつが何をしていたのか調べるんだ」と命じた。
ウェインたちが帰宅すると、ダイアンが戻っていた。巨大化したアダムを見たダイアンは、卒倒してしまう。ダイアンは意識を取り戻し、 ウェインに怒りをぶつけた。アダムが自由奔放に暴れ回り、ウェインたちは何とか落ち着かせようとする。その騒がしさに近所の人々が 不審を抱き、サリンスキー家に近付いた。隣人たちがチャイムを鳴らしたので、応対に出たダイアンは「エアロビをしているだけです」と 下手な言い訳をして帰ってもらった。
所員2名は不鮮明な監視映像を見て、新種の生命体が誕生したと勘違いする。ウェインは巨大なベビー・サークルでアダムを落ち着かせた 後、物質縮小化装置が研究所の倉庫にあることを思い出す。彼はウサギのヌイグルミやキラキラ星の歌を使い、何とかアダムを眠らせた。 ウェインはニックにアダムのことを任せ、ダイアンと共に研究所へ向かう。所員の連絡で実験室へやって来たヘンドリクソンは、あっさり と映像を解析し、写っているのがウサギのヌイグルミと赤ん坊だと知る。彼はサリンスキー家へ行くことにした。
マンディーがサリンスキー家のチャイムを鳴らしたため、その音でアダムが目を覚ました。マンディーは巨大なアダムを見て気を失った。 ニックはマンディーを椅子に縛り付け、意識を取り戻した彼女に事情を説明する。ウェインは倉庫で装置の入った箱を見つけ、ダイアンの 運転する車に乗り込んだ。ニックがマンディーに話している間に、テレビを見ていたアダムはさらに巨大化し、壁を突き破って外へ出た。 ニックはマンディーに「特別手当を支払うから手伝って」と言い、アダムの捜索に出た。
巨大化したアダムは近所の人々に目撃され、大騒ぎになった。そこへやって来たヘンドリクソンは、連邦保安官の出動を要請し、コンテナ を用意するよう所員たちに命じた。ウェインとダイアンが戻ると、付近は封鎖されていた。2人が我が家へ走ると、ブルックス保安官と ヘンドリクソンの姿があった。アダムはヘンドリクソンが用意したトラックで移送されており、同行の車にニックとマンディーが乗って いた。スターリングがサリンスキー家へ来たので、ヘンドリクソンは専門家を招集して対処に当たるよう進言した。しかしスターリングは ヘンドリクソンにクビを宣告し、ウェインに説明を求めた。
ウェインがアダムを元に戻す方法をスターリングに話していると、ブルックスが「連絡が入った。赤ん坊がさらに大きくなってトラック から逃げ出した」と告げる。ウェインたちが車で現場へ向かっていると、アダムがニックとマンディーをポケットに入れて連れ去ったと いう知らせが届いた。ウェインとヘンドリクソンは、アダムが電磁波を浴びて巨大化しているのだと悟った。アダムがネオンサインの多い ラスベガスへ向かっていると知り、2人は愕然とした。
ヘンドリクソンはウィーラーと会い、状況を説明する。ウィーラーは「理事会を緊急招集するから、問題を解決してくれ」と指示する。 軍隊の出動が必要だと考えたヘンドリクソンは、ウィーラーに協力を要請した。ウェインたちはラスベガスへ通じる道路でアダムを 待ち受け、そこにはTVキャスターのコンスタンス・ウィンタースも取材にやって来た。物質縮小化装置のレーザー照射でアダムを元の サイズに戻すには、約12秒間の静止が必要だ。ウェインはヌイグルミと歌でアダムを眠らせようとするが、失敗に終わった。
ヘンドリクソンの元には、マイアーソン大尉の率いる市民軍が到着した。マイアーソンは「最終許可が無ければ、軍規で動けません」と 言い、その場で待機する。アダムはラスベガスの街に足を踏み入れ、人々は騒然とする。ウェインたちはアイスクリームの販売車でアダム を誘おうと考え、ブルックスが運転手を買って出た。ブルックスたちが準備をしている間にアダムが転倒し、その隙にニックとマンディー はポケットから抜け出した。2人は車に乗り込み、そこから逃走しようとする。しかし起き上がったアダムは車を掴んで激しく振り回し、 看板の上に置いてしまった…。

監督はランダル・クレイザー、キャラクター創作はスチュアート・ゴードン&ブライアン・ユズナ&エド・ナーハ、原案はゲリー・グッドロウ、脚本はトム・エバーハード&ピーター・エルブリング&ゲリー・グッドロウ、製作はドーン・スティール&エドワード・S・フェルドマン、共同製作はデニス・E・ジョーンズ、製作総指揮はアルバート・バンド&スチュアート・ゴードン、共同製作総指揮はデボラ・ブロック、撮影はジョン・ホラ、編集はマイケル・A・スティーヴンソン、美術はレスリー・ディリー、衣装はトム・ブロンソン、視覚効果プロデューサーはトーマス・G・スミス、音楽はブルース・ブロートン。
出演はリック・モラニス、マーシャ・ストラスマン、ロイド・ブリッジス、ロバート・オリヴェリ、ジョン・シーア、ケリー・ラッセル、ロン・カナダ、エイミー・オニール、ダニエル・シャリカー、ジョシュア・シャリカー、リンダ・カールソン、レスリー・ニール、グレゴリー・シエラ、ジュリア・スウィーニー、マイケル・ミルホーン、リサ・メンデ、ジョン・パラゴン、ケネス・トビー、ビル・モズレー、エド・フェルドマン、スザンヌ・ケント、アレックス・ダニエルズ他。


1990年に公開された映画『ミクロキッズ』の続編。
ビデオ発売時には『ミクロキッズ2/ジャイアント・ベビー』という邦題になった。
監督は『青い珊瑚礁』『ホワイトファング』のランダル・クレイザー。
ウェイン役のリック・モラニス、ダイアン役のマーシャ・ストラスマン、ニック役のロバート・オリヴェリ、エイミー役のエイミー・オニールは、前作に引き続いての出演。
スターリングをロイド・ブリッジス、ヘンドリクソンをジョン・シーア、マンディーをケリー・ラッセル、ブルックスをロン・カナダ、アダムをダニエル&ジョシュア・シャリカーが演じている。

前作では大きな扱いだったエイミーが、今回は序盤にチラッと出て来ただけで物語から退場してしまうのは、ファミリー映画、子供向け映画のメインとしては、年齢的に成長しすぎてしまったという判断ではないかと推測される。
だから今回はニックの扱いを大きくしていると思うんだけど、彼よりもウェイン&ダイアンやヘンドリクソンといった大人たちの方が、存在感が大きい。
それなら、エイミーも騒動に絡ませてあげた方がいいんじゃないか。
サリンスキー家の一員なのに、1人だけカヤの外ってのは可哀想だ。

「前作は子供たちを小さくしたので、今回は大きくしよう」というのは、とても分かりやすいアイデアだ。
それは言い方を変えれば、かなり安易なアイデアである。
しかし続編としては、「また子供が小さくなってしまう」というプランだって考えられるわけだから、少しは捻っていると言えるのかもしれない。
でも『ミクロキッズ』の続編としては、むしろ「また小さくなる」ということにして、ストーリー展開や新キャラクターで前作との変化を付けるというやり方の方が、良かったんじゃないかという気がしないでもない。

前作は「小さくなった子供たちが裏庭から家へ戻ろうと奮闘する」というアドベンチャー映画としての一面があった。そして、その冒険によって、精神的に成長するというドラマも含まれていた。
しかし今回は、2歳の子供が巨大化するのだから、みんなから注目を集めることになり、冒険もへったくれもない。
それを追い掛けるニックとマンディーも、冒険活劇を繰り広げることは無い。
前作と違って、サイズを変えられてしまったキャラクター視点の物語も無いし、もはや前作とは全く別物になっている。

今回は「自由奔放に暴れ回る巨大な子供に、大人たちが翻弄され、振り回される」という単純なドタバタ喜劇に終始しており、とてもシンプルな、言い方を変えれば薄っぺらい仕上がりになっている。
また、「画像解析をした研究所員たちが、アダムとヌイグルミを見て新種の生命体だと勘違いする」とか、「ウェインの車のボタンをダイアンが押したら、猛スピードで走り出してしまう」とか、「装置を組み立てたウェインが、間違えて白バイ警官を縮小化してしまう」とか、巨大化したアダムとは全く関係の無いところで喜劇を作っている箇所も多い。
それは、焦点が定まっていないのではないかという気がする。

上述したように、前作では「体を小さくされてしまったニックたちが冒険を繰り広げる」という展開があった。つまり、縮小化された側の視点で描かれるシーンが用意されていたわけだ。
しかし今回は、何しろ巨大化するのが2歳のアダムなので、彼視点のドラマというのは存在しない。
そうなると、もはや巨大化する対象が2歳の幼児である必要性って、まるで見当たらない。そこが例えば、サリンスキー家の飼い犬であるクォークであっても、別に構わないんじゃないかと思ってしまう。
もちろん、アダムだからこそ「親の子供に対する愛」というところを使って話を動かしているわけだが、その「親の愛」という要素も、ヌルいドタバタ喜劇の中で、そんなに効果的に作用しているわけじゃないし。

終盤、ダイアンはウェインに頼んで自分を巨大化してもらい、アダムをあやして落ち着かせる。
この展開は、アダムに呼び掛けて無視されたダイアンにスターリングが「自分より小さいから、母親として見ていない」と言うシーンがあった時点で、何となく予想できる。
で、その予定調和は別にいいけど、ダイアンを大きくするのが物質縮小化装置ってのは、都合が良すぎるだろ。
それはウェインも言っているように、本来は物質を小さくするための装置なんだから。

ウェインがダイアンに物質縮小化装置のレーザーを照射すると、場面が切り替わり、ヘンドリクソンがヘリでアダムを攻撃している様子が写し出される。
で、ヘリを掴む巨大な手が画面に伸びて来て、それが巨大化したダイアン、という見せ方をしているんだけど、まるで効果的じゃない。
だって、ダイアンが「自分を巨大化させて」とウェインに頼み、レーザーが照射された時点で、もう彼女が巨大化することは分かり切っているんだから。
で、そこをハッキリ見せているなら、もう「ダイアンがレーザーで巨大化し、アダムの元へ向かう」というところまでを、一気に見せちゃってもいいんじゃないかと。

(観賞日:2013年6月7日)

 

*ポンコツ映画愛護協会