『G.I.ジョー バック2リベンジ』:2013、アメリカ

北朝鮮。G.I.ジョーのリーダーであるデュークは、仲間のロードブロック、レディ・ジェイ、フリント、スネーク・アイズ、マウスを率いて脱北者の救出作戦を実行した。マウスが陽動作戦を展開している間にデュークたちが監視所へ突入し、G.I.ジョーは脱北者を無事に保護した。一方、悪の組織“コブラ”のコブラ・コマンダーとデストロは捕まって厳重に幽閉されていたが、まだストーム・シャドウとザルタンが残っていた。
パキスタンの大統領が暗殺され、ペンタゴンでは核兵器問題に関する対策会議が開かれる。アメリカ大統領は暴動が起きているパキスタンから核弾頭を回収して無効化するため、G.I.ジョーを派遣するよう命じた。デュークはスネーク・アイズを除くメンバーを率いて出動し、任務を遂行した。一方、マイクロ・テクノロジーで大統領に化けているザルタンは、本物を監禁している場所へ赴く。彼はG.I.ジョーを始末する目的で出動させており、大統領を拷問に掛けてコブラコマンダーとデストロの幽閉場所を吐かせようとする。
G.I.ジョーは撤収しようとするが、本部と連絡が取れなくなっていた。そこへ空爆が行われ、井戸に飛び込んだロードブロック、ジェイ、フリント以外のメンバーは全滅した。ザルタンはアメリカ大統領として「スネーク・アイズがパキスタンの大統領を暗殺し、G.I.ジョーが核弾頭を奪ったためにコブラを派遣して壊滅させた」と発表し、核兵器廃絶のための会合を各国首脳に提案した。一方、井戸から抜け出したロードブロックは、アメリカ大統領への疑念を抱いていた。フリントは本部へ連絡して自分たちの生存を知らせるべきだと主張するが、ロードブロックは死んだように見せ掛けておくことにした。
スネーク・アイズは身柄を拘束され、コブラ・コマンダーとデストロが幽閉されているザルツブルグの刑務所へ連行されていた。しかしナイジェル・ジェームズ刑務所長がマスクを脱がせると、それはスネーク・アイズに変装したストーム・シャドウだった。彼は看守たちを全滅させ、コブラ・コマンダーを救出した。コブラ・コマンダーは用済みのデストロを置き去りにして、ストーム・シャドウと共に脱出した。コブラのファイヤーフライは、ジェームズや看守たちを攻撃した。
瀕死の状態に陥ったジェームズはタンクを爆破させ、ストーム・シャドウに重傷を負わせた。コブラ・コマンダーたちがヘリで逃亡する様子を、スネーク・アイズが監視していた。コブラ・コマンダーは秘密基地へ移動し、世界を恐怖に陥れる最終兵器「ゼウス」の開発状況を確認する。ザルタンはコブラ・コマンダーに、ロードブロック、ジェイ、フリントの生存が確認されたことを報告した。すぐに対処するよう促すコブラ・コマンダーに、ファイヤーフライは自分が追跡することを名乗り出た。
スネーク・アイズは東京を訪れ、ストーム・シャドウの従妹であるジンクスと合流した。師匠のブラインド・マスターは2人に、ストーム・シャドウを捕まえるよう命じた。ロードブロックはジェイとフリントを連れて故郷の街を訪れ、旧友のストゥープと再会した。彼の助けを受けた3人は臨時基地を確保し、そこからG.I.ジョー専用の特殊信号を出すことにした。ストーム・シャドウを捜索中のスネーク・アイズは、その信号をキャッチした。
ジェイは大統領の映像を分析し、ある時期から別人と摩り替わっている可能性が高いと睨む。ロードブロックは大統領の他に信頼できる相手として、G.I.ジョーの初代司令官であるジョー・コルトンの名を挙げた。3人はジョーの元を訪ねて事情を説明し、助けを求めた。。ジョーは大統領が別人だという確証が無いことを理由に協力を拒むが、大統領補佐官がポーカーに通っている場所を教えた。ジェイが囮になって補佐官を誘惑し、車に連れ込んだ。ロードブロックは補佐官に薬を投与し、大統領への連絡を命じた。
スネーク・アイズとジンクスはヒマラヤの寺院で治療を終えたストーム・シャドウを薬で眠らせて拉致し、襲って来る敵を一掃して逃亡した。ジェイは補佐官の知人としてパーティーに参加し、大統領の髪の毛を採取した。ロードブロックは髪の毛をDNA照合し、ザルタンが大統領化けていることを知った。ジェイは警備の連中に正体を知られ、会場から逃亡した。ロードブロックはファイアーフライに襲撃されるが、ジェイを車で拾ったフリントが助けに駆け付けた。ファイアーフライはバイクで逃走した。
ブラインド・マスターの元へ連行されたストーム・シャドウは、師匠を殺したのは自分ではなく、濡れ衣を着せた者がいるのだと主張した。師匠の暗殺に使われたはずの剣が折れたため、それが偽物であることが判明した。ブラインド・マスターに問い掛けられたストーム・シャドウは、少年時代の自分が頼った老人のことを思い出す。そして彼は、その正体がザルタンであり、彼が師匠を殺して自分に濡れ衣を着せた犯人だと悟った。彼は憎きザルタンを討つため、スネーク・アイズに協力してコブラと戦うことにした…。

監督はジョン・M・チュウ、脚本はレット・リース&ポール・ワーニック、製作はロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ&ブライアン・ゴールドナー、製作総指揮はスティーヴン・ソマーズ&ハーバート・W・ゲインズ&エリク・ハウサム&ゲイリー・バーバー&ロジャー・バーンバウム&デヴィッド・エリソン&デイナ・ゴールドバーグ&ポール・シュウェイク、撮影はスティーヴン・ウィンドン、編集はロジャー・バートン&ジム・メイ、美術はアンドリュー・メンジース、衣装はルイーズ・ミンゲンバック、視覚効果監修はジェームズ・マディガン、音楽はヘンリー・ジャックマン。
出演はドウェイン・ジョンソン、ブルース・ウィリス、チャニング・テイタム、エイドリアンヌ・パリッキ、イ・ビョンホン、レイ・パーク、ジョナサン・プライス、RZA、レイ・スティーヴンソン、D・J・コトローナ、エロディー・ユン、ウォルトン・ゴギンズ、ルーク・ブレイシー、ロバート・ベイカー、デレイ・デイヴィス、ジョー・マッゼロ、アーノルド・ヴォスルー、ニック・エリクソン、ナイーム・アルハリミ、ラヴィ・ナイドゥー、マット・ジェラルド、ダグラス・M・グリフィン、ジェームズ・カーヴィル、ライアン・ハンセン、ネイサン・タカシゲ、ジョアンナ・リーズ、エラナ・ジャスティン他。


アメリカのハズブロー社の玩具をモチーフにしたTVアニメ『地上最強のエキスパートチーム G.I.ジョー』を基にした実写映画のシリーズ第2作。
監督は前作のスティーヴン・ソマーズから、『ステップ・アップ2:ザ・ストリート』『ステップ・アップ3』のジョン・M・チュウに交代。
脚本は『ゾンビランド』のレット・リース&ポール・ワーニック。
前作からの続投キャストは、デューク役のチャニング・テイタム、ストーム・シャドウ役のイ・ビョンホン、スネーク・アイズ役のレイ・パーク、大統領役のジョナサン・プライス、ザルタン役のアーノルド・ヴォスルー。
他に、ロードブロックをドウェイン・ジョンソン、ジョーをブルース・ウィリス、ジェイをエイドリアンヌ・パリッキ、ブラインド・マスターをRZA、ファイヤーフライをレイ・スティーヴンソン、フリントをD・J・コトローナ、ジンクスをエロディー・ユンが演じている。

話や設定が繋がっている部分があるので、前作を見ていないと分かりにくい。
その一方で、前作の設定や続編に向けての伏線が無視されていたり、前作の主要キャストの大半が登場しなかったりするので、前作を見ていると腹が立つかもしれない。
私は「1作目が大好き」というわけではないし、むしろポンコツだと感じたので、腹は立たなかったが、かなり呆れた。
ぶっちゃけ、あれだけポンコツに思えた前作も、これを見てしまうと「少なくとも“G.I.ジョー”に対する愛はあったな」と感じてしまうわ。

この映画には、前作に対する愛も、G.I.ジョーという玩具に対する愛も感じられない。
まず前作を好きだった人が見て最初に激しい怒りを覚えるか、あるいは唖然とするか、私のように呆れるかという反応を見せるであろう箇所は、「前作の主人公だったデュークが序盤で簡単に死んでしまう」ってことだ。
これが「チャニング・テイタムのスケジュールの都合で多くの撮影時間を確保できなかった」という理由だとしても、それなら出番を減らすことで対応できる。
しかも、それが理由ではないのだ。

デュークが前半で退場してしまう理由は、ジョン・M・チュウの考えにある。
彼は本作品の監督を引き受けた際、前作には登場しなかった新しいキャラクターを描きたいという意向を示したのだ。それどころか最初は、前作を無かったことにしてリブートしようとさえ考えていたらしい。
いやいや、アホかと。
デュークを外して他のキャラを描きたいなら、それはスピン・オフとしてやれよ。シリーズとしては「デュークが主役」ってのは絶対に遵守すべき事項でしょ。
そんな意識を持っているのなら、続編の監督なんて引き受けるなよ。そしてパラマウント映画も、そんな奴を監督に据えるんじゃねえよ。

デュークがお払い箱になっているだけでなく、前作の主要メンバーからはバロネスやリップコード、ホーク将軍、スカーレットなど多くの面々が登場しない。
コブラ・コマンダーがルーク・ブレイシーに交代しているのは前作のジョゼフ・ゴードン=レヴィットが売れっ子になってしまったからだろうけど、ここも最初は「今回のコブラ・コマンダーは前作のコブラ・コマンダーとは別人」という設定で行こうとしていたらしい。
それをやるなら、いっそのことコブラ・コマンダーなんて登場させなきゃいいのに。
一緒に捕まったデストロは、ほぼ存在を消されちゃってるぐらいなんだし。

G.I.ジョーのメンバーがデュークを覗いて総入れ替えという状態になっているのも「前作で掴んだファンを手放すつもりなのか」と言いたくなるが、それよりも引っ掛かるのがアナ(バロネス)の不在。
前作で「洗脳から解けたアナがデュークを助けて命を落とす」というベタな展開を用意せず、改心した彼女を生かしたままにしておいたのに登場しないってのは、どんだけ前作を無視するのかと。
しかも登場しないだけでなく、もはや存在そのものが無かったことにされちゃってるんだよな。

そうやって存在を抹消されている大勢のキャラクターがいる一方で、前作で死んだはずのストーム・シャドウは何事も無かったかのように再登場する。「実はこうやって生き延びていた」という説明さえ用意されていない。
そこを受け入れるにしても、ストーム・シャドウが簡単にベビーフェイスへ転向するのは受け入れ難いわ。
しかも転向させるために「師匠を殺したのはザルタンだった」という設定を用意しているけど、すんげえ強引だし、雑だわ。
今さらザルタンが犯人と気付くけど、もっと早く気付けよ。

ストーム・シャドウとスネーク・アイズとの因縁も、ちゃんと処理しないまま雑に終わらせる。そもそも前作でもそうだったんだけど、忍者ってG.I.ジョーとしては異端の存在だし、話から浮いているんだよな。
あと、ストーム・シャドウをフィーチャーしているはずなんだけど、タンク爆発で重傷を負ったり、スネーク・アイズたちに薬を投与されて簡単に拉致されたり、ザルタンが倒した木箱の下敷きになったりと、あまりカッコ良くないシーンも多いんだよな。
こいつをカッコ良く活躍させたいのなら、すんげえ中途半端だぞ。
一方で、ザルタンが一撃でストーム・シャドウに殺されるのも、「あっさりしすぎだろ」と言いたくなるし。

登場キャラクターだけでなく、世界観の方でも前作を軽んじて変更している部分がある。前作では「世界中から精鋭を集めた史上最強の国際機密部隊」という設定だったG.I.ジョーが、今回はアメリカ政府直属の組織に変更されている。
それはハッキリ言って、アメリカ政府の軍隊に「成り下がった」という印象だぞ。アメリカ万歳映画にしようというチンケな企みでもあったのかと邪推したくなる。
しかも、そこの変更だけでなく、前作では近未来的なガジェットを駆使していたG.I.ジョーが、今回は普通に軍の装備を使うだけという体たらく。なんでミリタリー・アクションに衣替えしているんだよ。
前作を気に入った多くの客の気持ちを掴んだのは、「玩具のG.I.ジョーがそのまま実写化したみたい」と感じさせるガジェットやギミックだったはず。続編における変更点の数々は、ことごとく前作を好きだった観客の心を離れさせる描写になっていると感じるぞ。
前作をポンコツだと思っているワシでさえ、この続編の改悪ぶりは酷いとと感じるんだから、前作を好きな観客からすると、もっと強い違和感を覚えるのではないかと。

話もデタラメ。
序盤、コブラの急襲を受けたG.I.ジョーがロードブロック、ジェイ、フリント、スネーク・アイズの4名を除いて全滅したということになっているんだけど、そんなはずはないんだよね。
だって、パキスタンで核弾頭を回収する任務を指示されたからって、G.I.ジョーの全員が出動するわけじゃないでしょ。
少なくとも、本部に通信担当やバックアップ担当は残っているはずで。
そいつらがどうなったかを描いていない以上、「全滅」ってのは有り得ないでしょ。

パキスタンで生き残ったロードブロック、ジェイ、フリントの3人の処理もテキトーすぎる。
彼らは本部に連絡を取ることを避けて行動しようと決めるので、つまり誰のサポートも受けられない状態に陥っているわけだが、シーンが切り替わると、元気一杯でロードブロックの故郷にいる。つまり、アメリカに戻っているわけだ。
いやいや、いつの間に、どうやって戻ったんだよ。お前らは瞬間移動の超能力でも備わっているのかよ。
メチャクチャだな。

刑務所に連行されるスネーク・アイズは顔を隠した状態のまま。
普通、連行する段階で正体を確認するだろうに。
だから「刑務所に入ってから所長が覆面を剥いだらストーム・シャドウだった」なんてことは有り得ない。
ストーム・シャドウが普通に武器を持ちこめていることも含めて、どんだけ警備体制が杜撰なのかと。
コブラ・コマンダーとデストロを幽閉している場所だから警備は厳重なはずだし、かなり高度な設備も設置されているけど、それを扱う人間の方はボンクラ揃いってことなのか。

あと、コブラ・コマンダーは前作で正体を明かした途端に捕まっていたのに、なぜ解放された直後から組織を掌握できているんだよ。
ストーム・シャドウだってコブラ・コマンダーの正体を知らなかったはずなのに、最初から服従しているし。
それと、コブラ・コマンダーって前作と配役は違うけど同一人物の設定だから、つまり「死んだはずのアナ(バロネス)の弟」なんだよね。
だから本来ならデュークやバロネスとの関係を使ったドラマがあるべきなんだけど、バロネスは登場しないし、デュークも序盤で死んでしまうので、「アナの弟」という設定が今回は完全に無視されているんだよな。

大統領が「G.I.ジョーが裏切ったのでコブラで壊滅させた」と発表すると、誰も疑念を抱かずにスンナリと受け入れられる。
襲撃の黒幕が誰なのか調べたり推理したりする手順を全く入れない内に、ロードブロックは「大統領に違いない」と確信する。
ジェイは大統領の映像を分析して口調や仕草が以前と違っていることを見抜くが、ザルタンは前作で大統領の声や動きを勉強しまくっていたのに全く会得できていなかったのね。

ザルタンはアメリカ大統領として核軍縮会議を開くのだが、ここでの彼と各国首脳の行動がメチャクチャ。
まずザルタンが「みんなが説得に応じないのなら、こうだぞ」と核ミサイルを発射し、各国首脳も慌てて自国の核ミサイルを発射する。ザルタンが自国の核ミサイルを自爆させると、他の国も後に続く。
ザルタンもアホだが、各国首脳もどんだけボンクラなのかと。
それはザルタンが他の核ミサイルを消滅させてからゼウスを使うための策略なんだけど、ちっとも利口や狡猾には見えんぞ。アホ丸出しに見えるぞ。

最後は「ゼウスを破壊し、コブラを壊滅させ、ストーム・シャドウは仇討ちを果たし、大統領を救出し、G.I.ジョーの名誉は回復され、全ての問題が解決しました」というハッピーエンドみたいな着地になっているけど、それは大いに違和感があるなあ。
まずコブラ・コマンダーに逃げられているし、それより何よりロンドンが壊滅しているわけで。
それでハッピーエンドは違うだろ。
アメリカさえ無事なら、それはハッピーエンドってことなのか。

(観賞日:2014年10月6日)

 

*ポンコツ映画愛護協会