『ジオストーム』:2017、アメリカ

2019年、世界各地で異常気象が発生し、人類は滅亡の危機に陥った。どの国も自力では問題を解決することが出来ず、17ヶ国の研究者が協力し、アメリカと中国をリーダーとして台湾で研究が進められた。そして嵐の制圧に成功し、数千基の衛星によるネットワークで天候の様々な基本的変動に対応した。天候の制御を統括するのは国際宇宙ステーションで、、衛星ネットワークは「ダッチボーイ」と呼ばれた。世界を救ったシステムの開発チームを率いたのは、アメリカ人のジェイク・ローソンだった。
ジェイクはワシントンの上院委員会に召喚され、チーフオペレーションコーディネーターとしての資質を問う聴聞に掛けられた。国連決議により、アメリカは3年後にダッチボーイの管理を国際監視委員会に委ねることが決定している。委員長のトーマス・クロス上院議員が「作ったのは我々だが」と口にすると、ジェイクは「我々のチームにはアメリカ人以外も大勢いましたが、貴方はいませんでした」と指摘した。傍聴していた弟のマックスは、ジェイクに「ストップ」と注意のメールを送った。
クロスはジェイクの生意気な態度に対して静かに怒りを示し、「君は我々の監視下にあるが、上層部を侮辱しているという報告が何度も寄せられている。何度も命令に従わず、調査官を殴ったこともある。許可を得ず、ダッチボーイをオンライン接続したこともある」と指摘した。ジェイクは正当性を説明するが、クロスは反抗的な態度としか捉えなかった。クロスが数名のスタッフを交代するよう要求すると、ジェイクは「私の部下たちに非は無い」と告げた。
ジェイクが委員会を激しく批判すると、クロスは腹を立てて聴聞会を打ち切った。ジェイクは全く悪びれた様子を見せず、マックスに助けを求めた。マックスは「今回は無理なんだ」と済まなそうに言い、先週付でダッチボーイの新しい責任者に就任したことを明かした。その告白にジェイクがショックを受けていると、マックスは「仕方ないだろ。自重しろと言ったのに、あんな態度を取るからだ。残念だけど、兄貴はクビだ」と告げた。
3年後、アフガニスタンのレギスタン砂漠へ赴いた国連の調査団は、1つの村が凍り付いている様子を確認した。大統領次官補のマックスはシークレット・サービスとして勤務中のサラ・ウィルソンに軽い調子で話し掛けるが、事務的な言葉を返される。サラはマックスと交際しているが、「仕事中に私的な会話は許されていない。仕事は妨害しないで」と告げる。ジェイクはアンドリュー・パルマ大統領から緊急招集の連絡を受け、すぐに閣議へ向かった。
パルマはアフガニスタンの出来事について報告を受け、レナード・デッコム国務長官はダッチボーイの故障だと説明する。アドバイザーとして呼ばれたカサンドラ・ジェニングス博士は、中央アジアの全衛星の活動を止めて原因を究明すべきだと主張する。パルマとデッコムは「やっと稼働させたシステムだ」「しかも今年は選挙がある」と言い、ダッチボーイを停止させることに反対する。マックスは多数の犠牲が出たことに触れ、今は原因を究明して再発を防ぐことを最優先すべきだと進言した。
バルマから方法を問われたマックスは「我々には解決できません」と述べ、「国際スタッフのチームを宇宙ステーションに送り、各分野の技師にシステムをチェックさせる」という案を語った。欠陥品を国連に渡すことを避けたいパルマは、アメリカ政府の指示に従う忠実なスタッフを1人だけ送る条件でマックスの案を受け入れた。適任者を見つけるよう指示されたマックスに、デッコムはジェイクを選ぶよう持ち掛けた。マックスは難色を示すが、デッコムはジェイクを信じるよう説いた。
宇宙ステーションのダッチボーイ整備センターでは司令官のウーテ・ファスベンダーの指示の下、衛星の交換が定期的に実施されていた。回収した古い衛星は、すぐに解体されることになっている。作業員のマクムードは回収したパネルを隠すが、歩いていた通路のエアロックドアが勝手に開き、宇宙空間へ放り出されて死亡した。マックスはジェイクと会うため、フロリダ州ココア・ビーチへ赴いた。ジェイクは離婚し、13歳になる娘のハンナは隔週の週末だけ訪れている。ジェイクはマックスを見ると嫌味を浴びせ、すぐに立ち去るよう要求した。マックスはダッチボーイに問題が起きたことを話し、宇宙ステーションに行くよう促した。
ジェイクは「もう俺には関係の無いことだ」と言うが、マックスは未だに未練があることを指摘した。「自分が作った物が故障して、人が死んだ。平気な顔でノーとは言えないはずだ」と言うと、ジェイクは「お前が上司じゃなきゃやるよ」と述べた。香港のICC(太平洋気候評議会本部)でアフガニスタンの事件について調べたチェン・ロンは、マックスの留守電にメッセージを入れた。買い物に出掛けたチェンは、地表の温度が急激に上昇していることを知った。アスファルトが割れてマグマが噴出するのを見た彼は、慌てて車に乗り込んだ。道路のあちこちで爆発が起き、ビルが次々に倒壊する。チェンは必死で車を走らせ、温度の低い海辺の道路まで辿り着いた。
出発準備を整えたジェイクは涙で別れを寂しがるハンナを抱き締め、戻って来ると約束した。ケープカナベラルのケネディー宇宙センターへ赴いた彼は、スペースシャトルで宇宙へと飛び立った。宇宙ステーションに到着したジェイクは、責任者のウーテに迎えられた。ウーテにスタッフのエニ・アディサ、ダンカン・テイラーアル・ヘルナンデス、レイ・デュセットを紹介されたジェイクは、3つの事態を詳しく分析すると告げる。彼はガス爆発として報じられている香港の出来事についても、ダッチボーイの関連を確信していた。
マックスはチェンからの電話を受け、香港の出来事はガス管が原因ではないと告げる。彼はダッチボーイの衛星にアクセスできなくなっていることを知らせ、職員の誰かがシステムの欠陥を隠蔽するためブロックしているのではないかと告げる。チェンはマックスに、世界中で同時発生する壊滅的な異常気象の「ジオストーム」の可能性を指摘する。複数の嵐が結合するのだと彼が言うと、マックスは「大げさだ。調べて連絡する」と告げて電話を切った。チェンのオフィスは停電になり、武装した集団が突入して来た。チェンがロッカーに隠れていると、一味はパソコンを持ち去った。
翌日、マックスは国務省職員のデイナに会い、自分のホロフレームで香港の衛星にアクセスできなくなっていることを話す。デイナが調査すると、誰かが意図的にブロックしていることが判明した。マックスはデッコムに報告し、宇宙ステーションに通信してもらう。マックスはジェイクを呼び出し、発生した問題について話す。ジェイクが「香港の衛星にアクセスしても、必要なデータは得られないだろう。情報は衛星本体から直接取り出さないと駄目だ」と言うと、彼は「その許可を出す」と告げた。
ジェイクが「お前の許可なんか要らない。黙って俺がやることを信じて、感謝の言葉を言ったらどうだ」と語ると、マックスは「兄貴の最初の警察沙汰は、両親が離婚して1週間後だった。喧嘩して逮捕されたよな。あの時、死ぬまで兄貴の尻拭いをさせられると分かった。俺の許可無しに勝手なことをやったら、すぐに連れ戻すぞ」と述べた。ジェイクは香港の衛星を回収し、解体して調べようとする。しかし衛星は制御不能となり、暴走して壊れた。
ハードドライブが焼けてデータは焼失するが、レイは「全滅じゃない」と言う。彼は監視カメラの映像を再生し、マクムードが持っていたパネルが事故で吹き飛んで通信棟に引っ掛かっていることをジェイクに教えた。密閉ロックは無事であり、ジェイクはパネルにドライブが残っている可能性を信じて回収することにした。チェンはワシントンに到着してマックスに電話を掛け、「謎が解けた」と告げて会う約束を取り付けた。
ジェイクはウーテと共に通信棟へ行き、パネルを回収した。ジェイクは推進器の故障で吹き飛ばされるが、何とか宇宙ステーションに戻る。彼は飛ばされたパネルから密かにドライブを抜き取り、ウーテ以外には内緒にする。彼は誰かが自分を殺そうとしたことをウーテに告げ、ドライブを調べる。するとドライブに異常は無く、扉が爆発するようプログラムされていたことが明らかとなる。犯人はログインデータを消去していたが、ジェイクはダッチボーイに消去不能なライブラリーがあることを知っていた。メインシステムはロックされており、ジェイクはバーチャル会議室に参加できる数十名の中に犯人がいると確信した。
マックスはサラと共に指定の場所へ行き、チェンを待った。しかし交差点を渡ろうとしたチェンは男に突き飛ばされ、車にひかれた。サラは車に乗り込む犯人を見つけるが、逃げられてしまった。チェンは駆け寄ったマックスに「ゼウス」と言い残し、息を引き取る。ジェイクはマックスと通信し、「兄弟のコード」について言及する。彼は父と釣りをした出来事について語るが、それは暗号だった。マックスはデイナの元へ行き、解読したメッセージを打ち込んでもらう。改めてジェイクの通信映像を再生すると、「これは妨害工作政府のスパイの仕業だ。誰も信じるな」という言葉になった。
マックスはデイナにゼウス計画のファイルを見つけてほしいと要請した。検索するとファイルは簡単に見つかるが、政府の保護ファイルなので厳重に暗号化されており、マックスはデイナを伴い、サラと同棲中の自宅へ戻った。彼はサラに事情を説明し、ホワイトハウスのサーバーに侵入してファイルを入手してほしいと頼んだ。ジェイクはマクムードが死んだ時の監視映像を確認し、秘密に気付いて衛星から何かを引き抜いたせいで口封じに殺されたのだと悟った。
ジェイクとウーテがマクムードのロッカールームを調べようとすると、レイが現れた。彼はマクムードの動きを突き止め、調査を開始していたのだ。レイはジェイクとウーテに、マクムードがパネルを入れたロッカーの場所を教えた。パネルを調べたジェイクたちは、衛星のコンピュータに最初からウイルスが仕込まれていたことを知った。ゼウス計画のファイルを入手したマックスたちは、世界各地で発生する何万もの嵐のシミュレーションだと知る。アフガニスタンを起点として2番目に香港が来るシミュレーションを出したマックスは、何者かがダッチボーイの故障に見せ掛けて街を破壊しようと目論んでいることを確信した。
ジェイクに報告したマックスは、ダッチボーイがウイルスで操作されていることを聞かされる。ダッチボーイを一時的に停止させて再起動すれば安全な状態に戻せるが、大統領しか知らないコードが必要だった。彼はパルマが黒幕だと推察しており、2週間後に管理権を失うことを妨害するため、一連の災害をアメリカ人以外のクルーの仕業に見せ掛けたのだとマックスに語る。マックスはジェイクに衛星を監視するよう頼み、パルマから停止コードを入手しようと考える。彼はサラに事情を話し、協力を要請した。一方、宇宙ステーションでは衛星通信が全て不能になり、制御不能に陥った。東京では大粒の雹が降り注ぎ、リオデジャネイロでは巨大な津波が凍結した。世界各地で異常気象による大惨事が続発する中、ジェイクは1時間半後にジオストームが起きることを知る…。

監督はディーン・デヴリン、脚本はディーン・デヴリン&ポール・ギヨ、製作はデヴィッド・エリソン&ディーン・デヴリン&デイナ・ゴールドバーグ、製作総指揮はハーバート・W・ゲインズ&マーク・ロスキン&ドン・グレンジャー、共同製作はクリフ・ラニング&レイチェル・オルスチャン=ウィルソン、撮影はロベルト・シェイファー、美術はカーク・M・ペトルッチェリ、編集はロン・ローゼン&クリス・レベンゾン&ジョン・ルフーア、視覚効果監修はジェフリー・A・オークン&クリス・ワッツ、衣装はスーザン・マシスン、音楽はローン・バルフェ。
出演はジェラルド・バトラー、ジム・スタージェス、アビー・コーニッシュ、アンディー・ガルシア、エド・ハリス、アレクサンドラ・マリア・ララ、ダニエル・ウー、エウヘニオ・デルベス、アムール・ワケド、アデペロ・オデュイエ、ロバート・シーハン、リチャード・シフ、メア・ウィニンガム、ザジー・ビーツ、タリサ・ベイトマン、ダニエラ・ガルシア、リッチー・モンゴメリー、デヴィッド・S・リー、ビリー・スローター、グレガラン・ウィリアムズ、リチャード・リーガン・ポール、デヴィッド・ジェンセン、デレク・ロバーツ他。


ローランド・エメリッヒ監督とコンビを組んで『ユニバーサル・ソルジャー』『スターゲイト』『インデペンデンス・デイ』『GODZILLA』『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』の脚本を手掛けてきたディーン・デヴリンが、初めてメガホンを執った作品。
デブリンと共同で脚本を担当したのはTVドラマ『レバレッジ 〜詐欺師たちの流儀』『ライブラリアンズ 失われた秘宝』のポール・ギヨで、映画は本作品が初めて。
ジェイクをジェラルド・バトラー、マックスをジム・スタージェス、サラをアビー・コーニッシュ、パルマをアンディー・ガルシア、デッコムをエド・ハリス、ウーテをアレクサンドラ・マリア・ララ、チェンをダニエル・ウー、アルをエウヘニオ・デルベス、レイをアムール・ワケド、エニをアデペロ・オデュイエが演じている。

冒頭、ハンナのナレーションによって、2019年に起きた出来事が説明される。「失われたのは沿岸部だけでなく大都市も壊滅した」という語りに続き、イーストリバーの大洪水がマンハッタンを飲み込む様子やマドリッドで熱波による多数の死者が出ている様子を描いている。ハリケーンや竜巻や干ばつの様子も、最初に描いている。
つまり、「のっけから異常気象が世界各地で発生した」ってのを、ナレーションベースでサラッと見せているのだ。
だけど、これって「ダッチボーイのトラブルで世界各地に異常気象が起きる」ってのを描くパニック映画のはずだよね。まだダッチボーイも出来ていない内から同じような現象を淡白に見せて、どういうつもりなのかと。
「そんな問題が起きたからダッチボーイを作った」という流れにしてあるのは分かるけど、そんな筋書きを成立させるために冒頭から背負ったデメリットがあまりにもデカすぎるでしょ。
その筋書きしか思い付かなかったとして、せめて「ナレーションだけで映像によるフォローは入れない」ってことにでもしておけば良かったんじゃないかと思うぞ。

ハンナのナレーションでは、「アメリカと中国がリーダーで、台湾で研究が進められた」ってことが説明される。
リーダーの片方が中国で研究場所が台湾という設定に、「おやおや、もしかして、例のアレですか」と匂いを嗅ぎ付けた人も、たぶん少なくないだろう。
でも意外なことに、中国資本は入っていない様子だ。製作したスカイダンス・メディアは2018年に中国のテンセントが株式を取得しているが、この映画はそれより前に作られている。
ってことは、単純に「中国市場を狙った設定」ってことかな。
実際、この映画ってアメリカでは酷評を浴びて大コケしたけど、中国ではヒットしているからね。

システム開発と運用のリーダーがジェラルド・バトラーってのはミスキャストじゃないかと思ってしまうが、実は役者になる前に弁護士として働いていたインテリなのだ。なので決してミスキャストとは言えないのだが、でも役者としてのイメージからすると、やっぱり違和感は拭えない。
一方、「上層部に対して反抗的で、すぐ熱くなってしまう性格」という設定は、それ自体がありがちなキャラ造形という問題は置いておくとして、イメージには合っている。
ただ、弟の忠告があっても平気で反抗するぐらいだから、総責任者をクビになってもいいという考えなのかと思ったら、それはショックを受けるのね。どうやら「どうせクビにならないだろうと高を括っていた」ってことらしい。
そうなると、幾ら上層部に問題があっても、ジェイクがバカすぎて擁護できなくなるわ。

「全世界の天気をコントロールするシステムを作ったらトラブルが起きてさあ大変」という仕掛けは、B級パニック映画の匂いをプンプンと感じさせる。
「ポーチライト・エンターテインメントとかシネテル・フィルムズが2000年代に作っていたテレビ映画かよ」と、正解かどうか良く分からないツッコミを入れたくなってしまう。
ただ、そもそもディーン・デブリンはローランド・エメリッヒ監督と組んでいた頃から、B級映画っぽさに満ち溢れたシナリオを書いていたのだ。そこに多額の製作費を投入して「派手さ」「大きさ」を強調することで、いかにも大作映画らしく見せ掛けていただけだ。
タイプは全く異なるが、ディーン・デブリンはジョー・エスターハスと同じく、良くも悪くもB級センスの塊なのである。

ジェイクが冒頭で短気なだけでなくチャラ付いた態度を見せ、それをマックスがメールで制御しようとしている。だったらマックスの方は、ジェイクと対照的なキャラ設定にした方がいいはずだ。
ところが彼は仕事中のサラに対し、軽薄さ丸出しの態度で話し掛けるのだ。
それはキャラの見せ方として、絶対に間違っていると断言できる。
「ジェイクの弟だから対照的にした方がいい」ってことだけでなく、彼はジェイクの後任に指名されている。そういう観点からも、「前任者と違って上層部からも信頼されるような、軽薄さの無い生真面目な男」にしておいた方が得策なはずで。

冒頭シーンの様子を見る限り、ジェイクとマックスは特に問題がある兄弟関係には全く見えなかった。しかし再会シーンでは、ジェイクがマックスに対して攻撃的な姿勢を示す。それはジェイクが解任されてマックスが後釜に座ったことで生じた対立なのかと思ったら、そうではなく長きに渡る確執があったという設定だ。
だったら最初のシーンで、それを分かりやすく観客に示すべきだろう。そこを曖昧にしたまま再会シーンに至っても、何のメリットも無い。
ただ、そもそも再会シーンまで意図的に隠していたわけじゃなくて、単純に説明のやり方が下手なだけだろう。
っていうか、実は「長年の因縁」という要素自体、上手く使いこなせているとは到底言い難い。なので、そこをバッサリと排除して、単純に「3年前のことで確執が生じた」というだけでいいんじゃないかと思うぞ。

「兄弟の対立と和解」という要素だけでも手に負えていないのに、それを軸に据えるだけでは足りないだろうと思ったのか、「ジェイクハンナの親子関係」と「マックスとサラの恋愛関係」を盛り込んでいる。
しかし、何しろディーン・デブリンなので、そこを上手く捌いて人間ドラマの厚みを感じさせることなど全く出来ていない。いずれの要素も、「無くても大して困らないでしょ」という程度の印象だ。
特に前者に関しては、呆れるぐらい「取って付けた感」しか無い。
後者に関しても、「シークレット・サービスがいた方が何かと便利」というだけであって、恋愛要素の必要性は皆無に等しい。

表面的にはSFなのだが、何しろディーン・デブリンなので、そこに科学的考証の正確さなども止めてはいけない。たぶん専門家も参加しているとは思うが、サイエンス・フィクションとしての面白さは無い。
藤子・F・不二雄先生が提唱したような、「すこし、ふしぎ」があるわけでもない。VFXを用いて派手なアクションシーンやスケール感のあるパニックシーンを描写するために、非現実的な設定が必要だっただけに過ぎない。
おっと、こんな書き方をしてしまうと「それが悪いこと」のように思うかもしれないけど、そこは違うからね。
「意匠としてのSF」を全否定するつもりは無くて、単純にこの映画がポンコツなだけだからね。

映画の途中で「ダッチボーイのトラブルは何者かの策謀」ってことが判明し、「じゃあ犯人と目的は何なのか」というミステリーが生じる。
それが物語を牽引する力になるべきなのだが、ビックリするぐらい興味をそそらない。
ミステリーなので一応はミスリードも用意されているが、これまたビックリするぐらい興味をそそられない。
そもそも「パルマが犯人」というミスリードが下手すぎて真犯人の推測が付くという問題があるし、そのミスリードに引っ掛かろうが引っ掛かるまいが、どうでもいいという印象しか湧かない。

そんな風に感じてしまう大きな理由は、「誰が犯人であろうと、目的が何であろうと、結局はジェイクたちが協力してジオストームを阻止する展開を描くしかないと分かっているから」ってことだ。
それを考えると、果たしてフーダニットのミステリーが本当に必要だったのかというトコからして疑問が湧くのだ。
そんな要素は排除して、単純に「トラブルの発生したシステムを修復して世界の危機を救う」というパニック映画でも良かったんじゃないかと。
とは言え、「仮に削除してみたら」ってのをザックリと想像してみた時に、それだけで何とかなる気はしないけどね。

そうそう、最後に完全ネタバレを書いておくと、犯人はデッコムだ。彼は次期大統領になることを狙っており、民主党大会が開かれているオーランドにダッチボーイで雷を落としてパルマや大統領候補を一掃を企んでいる。
目的に対する計画の規模が、無駄にデカすぎるでしょ。
世界各地を攻撃するのは「アメリカが輝いていた時代に戻す」ってのが目的なので、そういう意味ではダッチボーイを使う辻褄は合っている(まあ強引さは否めないけどね)。
だけど犯人の目的が明らかになると、凡庸でバカバカしいという印象しか湧かないので、余計に「犯人の策略という要素、やっぱり要らない」という感情が強くなるわ。

(観賞日:2019年4月4日)

 

*ポンコツ映画愛護協会