『幸せのルールはママが教えてくれた』:2007、アメリカ
夏休み。道路を歩く娘のレイチェルを、母親のリリーは車を運転しながら、「乗りなさい。お婆ちゃんの家まで歩いていけるわけがない でしょ」と説得している。サンフランシスコに住む2人は、リリーの母ジョージアの住むアイダホへ向かう途中だ。レイチェルが言うこと を聞かないので、リリーは「アンタが決めたことでしょ」と言う。レイチェルは「好きで決めたわけじゃないわ。ろくに知らない婆さんと 住みたいなんて思わない。ママが邪魔だから家を出て行ってやるのよ。もう私の人生に関わらないで」と怒鳴った。
レイチェルはリリーを先に行かせた後、アイダホの看板の下で転寝を始めた。そこへ車に乗ったハーランという青年が通り掛かった。彼は レイチェルが死んだのかと心配になり、体に触れる。気付いたレイチェルが悲鳴を上げたので、彼は慌てた。そこへ獣医サイモンの車が 通り掛かると、レイチェルは「乗せてよ」と言い、答えを待たずに乗り込んだ。サイモンは顔をしかめるが、仕方なく車を出発させる。 彼が「ハルの町へ行く」と告げると、レイチェルは「私も一緒よ」と口にした。
リリーはハルに到着しし、ジョージアの家を訪れた。リリーは13年前に一度、来ただけだった。ジョージアは近所に住む少年サムと イーサンの兄弟とトランプで遊んでいた。母親のポーラが帰るまで、面倒を見ているのだ。リリーは母に、レイチェルが途中で車を降りた ことを話した。サイモンの車はハルに到着した。彼はレイチェルの生意気な態度や失礼な発言に苛立ち、車から降ろした。リリーは娘の 到着を待たず、ジョージアの家を去った。
夜10時を過ぎて、ようやくレイチェルはジョージアの家に現れた。「お腹空いた、何か甘い物ある?」と言うレイチェルに、ジョージアは 「ディナーは午後6時。例外は無し」と告げる。レイチェルは「ここに来た理由を言っていい?ママと義理の父親は私のことが嫌いなの。 7月に高校を卒業したけど、秋に大学が始まるまで暇だし、何かとトラブって。ようするに厄介払い。夏はアイダホへ行ってろって」と 語る。「どうする?私を操縦するんでしょ」と挑戦的な彼女に、ジョージアはは厳しい顔で「大人を舐めるな」と告げた。
翌朝。目を覚ましたジョージアは、ソファーで寝ているレイチェルを眺めた。レイチェルが朝食を見て「オーマイガッド、何よこれ」と 思わず口にすると、ジョージアは「神様の名前をみだりに唱えるのは許しません。汚い言葉は許しません。それと、今後は2階で寝なさい 。ジョージアルールよ」と述べた。レイチェルが文句を言うと、彼女は「次は石鹸で口を洗うわよ」と告げる。「ママが嫌うわけだ」と 不快そうなレイチェルに、ジョージアは「来てくれて良かったわ」と言う。
レイチェルが「この辺りにハーランよりイケてる男の子はいる?」と質問すると、ジョージアは「仕事を見つけておいた。月曜の朝7時 から。これもルールよ。ここで暮らすなら守って」と語る。レイチェルは「ママはルールが嫌で逃げ出したんでしょ。でも私は違う。命令 は聞かない」と口にする。彼女が去ろうとすると、ジョージアは「食べ終わったらお皿を洗って。それがルールよ」と指示した。
レイチェルが町に出掛けると、住人たちはが明るく「おはよう」と声を掛けて来た。彼女は飼料店で買い物を終えたハーランを見つけ、声 を掛けた。「年は幾つ?」と尋ねる彼に、レイチェルは「大人よ。アンタと遊べるぐらい」と答える。「危険な娘ってわけだ。落馬の方が 安全そうだな」とハーランが言うと、レイチェルは「乗った後の手入れは馬より楽よ」とモーションを掛ける。ハーランは微笑して「彼女 はいる」と言い、車で去った。
レイチェルはサイモンの動物病院を訪れ、受付係のファーンに「働くのを断りに来たんですけど」と言う。しかし老女のヴァイオレット から声を掛けられたファーンは、レイチェルに「ごめんなさい、ちょっと電話番してもらえる?」と告げる。ファーンがヴァイオレットを トイレへ連れて行ったので、レイチェルは受付の席に腰を下ろした。サイモンの病院では、動物だけでなく人間の診察もしていた。彼は イジーという患者の診察を終え、重い物を持たないよう注意しながら部屋を出て来た。
サイモンはリリーの娘がレイチェルだと知って驚いた。レイチェルはイジーがハーランの雇い主だと知り、「暴れ馬に乗りたかったら声を 掛けて」という伝言を頼んだ。ファーンは「8月最初の火曜日に帰るわ」と言い、病院を後にした。レイチェルが帰宅すると、ジョージア は庭の手入れをサムとイーサンに手伝わせていた。レイチェルとサムは、くだらないことで揉み合いになった。サムが勃起しているので レイチェルが「オーマイガッド」と言うと、ジョージアは石鹸を食わせようとする。レイチェルは「お断り」と去った。
夕食の時間になってレイチェルが帰宅すると、ポーラも来て夕食が始まっていた。レイチェルは石鹸をくわえると、ジョージアに「これで いい?」と言う。ジョージアは「いいわよ。座りなさい」と告げる。サムは照れて食卓を離れ、イーサンも一緒に去る。ポーラはサイモン の妹だった。サイモンのことをポーラに尋ねたレイチェルは、彼が3年前に交通事故で妻と息子を亡くしていることを知った。
独立記念日、ハルではフェスティバルが開催された。バーベキューの会場でサイモンに声を掛けたレイチェルは、ハーランのことを話題に する。サイモンは「あいつはもうすぐモルモン教の伝道師になる」と教える。「貴方はモルモン教徒?」とレイチェルが訊くと、彼は「妹 はそうだが、俺は違う」と答える。「ジョージアは?」という問い掛けには、「違うが、厳格な家族観を持っている」と答えた。
レイチェルが「人はしたいことをするものなのに」と口にすると、サイモンは「したくないこともな。君にハーランの相手は無理だ」と 言う。レイチェルが「私は好きにするわ。誰が何をするのも自由よ。そして、何が起きても生きるしかない」と反発すると、サイモンは 「まだ17歳だろう。少し町が退屈なぐらいで、何が起きても生きるしかないなんて言うなよ」と諭した。するとレイチェルは「自分ほど 辛くないだろうって?貴方は苦悩をまき散らしてるけど、私なんて12歳の時から義理の父親に犯されている。それでも生きられるんだよ。 これみよがしに暗い顔をしなくてもね」と吐き捨てた。
レイチェルはハーランとボートで池に出掛けた。ハーランは「恋人はジューンって言うんだ。幼い頃からの付き合いで、6年生の時に結婚 の約束をした」と語る。レイチェルが「モルモン教の伝道に行くんでしょ。期間は?」と尋ねると、彼は「2年間」と答える。「その間、 セックスできんの?」という問いに、彼は笑って「結婚までダメだよ」と言う。レイチェルは彼が童貞だと知り、小さく笑った。
レイチェルは「見るのはいいの?」と言い、パンティーを脱いだ。狼狽するハーランに、彼女は「触ってもいいよ」と股を開いて誘いを 掛ける。ハーランが恐る恐る手を伸ばすと、レイチェルは「今度は私の番」と彼のペニスをくわえた。レイチェルはサイモンのアパートを 訪れ、「さっきのことは謝らないから」と言う。サイモンが「分かった」とドアを閉めようとするので、彼女は「入れてくれないの?明日 、仕事には?」と訊く。「来ないのか」というサイモンの質問に、レイチェル「奥さんのこととか言ったし」と告げる。
サイモンが「君の言った通り、落ち込んでるよ」と口にすると、レイチェルは「一つだけ言っておくと、義理の父親のことは嘘だよ。 信じないで」と言う。サイモンは唖然として、「君のお婆さんに全て話したぞ。あんな深刻な話が嘘とは思えなくて」と語る。レイチェル が「見た目で分からないの。私のことを信じる奴なんていないよ」と言うと、彼は「俺は信じる」と口にする。「お婆ちゃんに言うとか、 有り得ない」とレイチェルは呆れた。彼女が帰宅すると、ジョージアは「貴方が嘘をついているかどうかは分かるわ。一度だけ尋ねる。 アーノルドは貴方に触った?」と質問する。レイチェルは「触ったら殺してるわ」と返答し、寝室へ行く。
翌朝、ジョージアはリリーに電話を掛け、レイチェルがアーノルドから性的虐待を受けていたことを教えた。ハーランはジョージアの家を 訪れ、レイチェルに「ジューンの大学へ行くから付いて来てくれ。俺が救われるには君と結婚するしかない」と語る。レイチェルが呆れて 「フェラしただけだよ」と言うので、ジョージアは目を丸くする。車で大学へ向かう途中、彼は泣きそうになって「断るべきだった。でも 今は罪を償わないと」と口にした。
リリーがジョージアの家に到着し、「あの子は嘘つきよ。中学3年の時から麻薬をやってるのよ。貴方はプロの嘘つきなのよ。アーノルド に訊いたのよ。そしたら、そんなことは一度も無いって」と興奮した口調で告げた。大学に到着したハーランは、レイチェルと「ただキス をしたって言おう」ということで意見を統一した。ジューンが来ると、レイチェルは「私が勝手にキスしたの。ハーランは彼女がいるのに って困ってたから、ここに来たの」と説明した。しかしジューンに見つめられたハーランは、フェラしてもらったことを馬鹿正直に告白 してしまう。ジューンはショックで走り去った。
深夜になってレイチェルが帰宅すると、リリーが待ち構えていた。「アーノルドは貴方を愛してるのよ。本当のことを言って。私は彼を 信じる」と言うリリーに、レイチェルは「何て言ってほしい?」と訊く。「アーノルドは貴方に触ってない」とリリーが言うと、「じゃあ 触ってないわ。ママが向こうを向いている時に足を触って来たことも無いし、体を舐められたこともね。これでいい?」とレイチェルは 述べ、部屋に入ってドアを閉める。リリーは家を出て、車に入って丸くなった。
翌朝、レイチェルが家を出ると、車からリリーが顔を出した。「いつから?」と問われ、レイチェルは「12の時よ」と答える。「いつ 終わった?」という質問に、「14歳の時、友達が殺すって脅した。マスタングくれて、またヤラせろって言ったから、ぶつけてやった」と 返答して病院へ向かう。レイチェルはサイモンからリリーと付き合っていたことを聞かされ、「知ってるわ」と言う。「私の本当のパパを 知ってる?」と彼女が質問すると、サイモンは「みんな反対してたけど、リリーはムキになって駆け落ちした」と語った。
リリーが悪酔いしているのを見たジョージアは、酒を取り上げた。「私の人生に踏み込んで来ないで。私は救われないの」と荒れるリリー に、ジョージアは「誰でも救われます。それがルールよ」と告げる。「何がルールよ。私が助けてほしい時には1セントもくれなかった」 とリリーは喚く。帰宅したレイチェルは、庭で2人の言い合いを聞いていた。
リリーが弾みで「ママに死んでほしかった」と口にすると、ジョージアは無言で部屋を去る。レイチェルが家に飛び込み、「なんであんな こと言うの」と母を責める。リリーが「アンタが私の夫と寝たからでしょ」と言うので、レイチェルは腹を立てて寝室へ向かう。慌てて 追い掛けようとしたリリーは、倒れて軽い怪我を負う。吐きそうなリリーを、ジョージアとレイチェルは洗面台へ連れて行く。
翌朝、リリーが酔いの残るまま酒を買いに行こうとするので、ジョージアは制止する。「昨日の夜、電話して離婚してくれって言った」と 明かすリリーに、ジョージアは「お酒は買って来るから、家にいて」と告げ、車で出掛ける。彼女はレイチェルをサイモンのアパートに 泊まらせることにした。ジョージアは何本もの酒瓶を買い込んだ。リリーは酒を飲み、「飲む時に口に入るから」と髪を切った。
リリーが父の写真を見ながら「どうしてパパと私の邪魔をしたの?」と尋ねると、ジョージアは「私が?」と怪訝そうな顔をする。「2人 でテレビを見ていたら消したりとか」とリリーが言うと、ジョージアは「テレビばかり見て成績が下がったからでしょ」と微笑して答える 。「パパと私が似ているから、取られると思って怖かった?」というリリーの問いに、彼女は「怖かったのは、アンタがあの男と結婚して 可能性を全て捨てることだった。私みたいに」と告げた。「パパをお酒に追い込んだ」とリリーが口にすると、ジョージアは「そうね、 アンタもかしら」と告げた。
リリーが「私が何より分からないのは、ママが私を愛したか」と言うと、ジョージアは「何のためのルールだと思うの。どうでもいい子の ために、どうして私が怒ると思うの」と告げる。「でも私は愛しているって言われた覚えは無いわ」とリリーが言うと、ジョージアは「私 の親も言わなかった」と口にする。「じゃあ愛されてたか分かる?」というリリーの質問に、ジョージアは短く「いいえ」と答えた。彼女 は残っていた酒瓶を全て窓から投げ捨て、「アンタを愛していないと思う?」と娘に問い掛けた…。監督はゲイリー・マーシャル、脚本はマーク・アンドラス、製作はジェームズ・G・ロビンソン&デヴィッド・ロビンソン、共同製作は ボニー・ティマーマン、製作総指揮はガイ・マッケルウェイン&マイケル・ベスマン&ケヴィン・レイディー、撮影はカール・ウォルター ・リンデンローブ、編集はブルース・グリーン&タラ・ティンポーン、美術はアルバート・ブレナー、衣装はゲイリー・ジョーンズ、音楽 はジョン・デブニー、音楽監修はドーン・ソーラー。
出演はジェーン・フォンダ、リンジー・ローハン、フェリシティー・ハフマン、ダーモット・マローニー、ケイリー・エルウィズ、 ギャレット・ヘドランド、 ヘクター・エリゾンド、ディラン・マクラフリン、ザッカリー・ゴードン、ローリー・メトカーフ、クリスティーン・レイキン、 チェルシー・スワイン、マンディー・メドリン、ローレン・マクラフリン、ミシェル・マシューズ、ランス・ハワード、ホープ・ アレクサンダー、シェイ・カリー、テレサ・スタニスラフ、フレッド・アップルゲイト、シンシア・ファーラー他。
『恋愛小説家』『海辺の家』のマーク・アンドラスが脚本を執筆し、『プリティ・ブライド』『プリティ・プリンセス』のゲイリー・ マーシャルが監督を務めた作品。
ジョージアをジェーン・フォンダ、レイチェルをリンジー・ローハン、リリーをフェリシティー・ ハフマン、サイモンをダーモット・マローニー、アーノルドをケイリー・エルウィズ、ハーランをギャレット・ヘドランド、イジーを ヘクター・エリゾンド、ポーラをローリー・メトカーフが演じている。レイチェルってドラッグもやっていたぐらいの不良娘という設定なんだけど、そんなに「手が付けられないほどの問題児」って感じじゃ なくて、可愛いもんだよな。
せいぜい「じゃじゃ馬娘」という感じに留まっている。
ジョージアのことを拒否するわけでもなく、普通に最初からフランクに接しているし、文句は言うけどお皿は洗うし、家の中で勝手なこと をやるわけでもない。
動物病院の電話番も、まるで反抗的な態度を見せず、すぐに引き受けている。
それ以降、普通に動物病院の仕事を手伝っている。レイチェルって、最初から「芯の部分は素直でいい子」ってのが、ものすごく見えすぎるんだよな。
そりゃあ、あまりにも荒れまくっている反逆児だと、観客が不愉快に思ってしまう可能性はあるけど、正直、不愉快に思わせるぐらいでも 良かったんじゃないかと。
で、そこからレイチェルが変化していく様子を描いたり、秘密が明らかになる展開にした方が、効果的だったんじゃないかと思うん だけど。原題は「Georgia Rule」だけど、ジョージア・ルールってのが、あまり重要な扱われ方をしていない。
序盤に「簡単に神の名を口にしてはいけない」「夕食は必ず午後6時」というルールが提示されるけど、それ以外はレイチェルに対して 「何をするな」とか「何をしろ」とか、そういうルールが次々に示されるわけでもない。
そこは5つか6つぐらいルールをハッキリと提示してくれた方が分かりやすい。それと、最初の提示以降、そういう「ルールに従って暮らすことを要求する」というのが、ほとんど使われなくなっている。
なんせ「簡単に神の名を口にしてはいけない」「時間はキッチリと守る」という以外のルールが明確に示されることは無いから、そこさえ 守っていれば、展開の中でルールに言及することが全く無いんだよね。
新たなルールをジョージアが言い出すことも無いし。
そうじゃなくて、タイトルにしているぐらいなんだから、「ルールの中での生活を余儀なくされたレイチェルが、最初は反発するが、渋々 ながらも従っている内にルールの意味を理解していき、ジョージアとの心の距離が近づいて行く」という形にでもした方が良かったのでは ないか。レイチェルが性的虐待を打ち明けるタイミングが早すぎる。
まだサイモンと、そんなに仲良くなったわけでもないでしょ。働き始めてから、そんなに日も経っていない。
そんな相手に、なぜ重大な秘密であるはずの性的虐待を、そんなに簡単に、まるで「勢いで言っちゃった」みたいな感じで明かして しまうのか。
例えば、それまでにレイチェルがサイモンに色々と嘘をついていて、その流れで、それも冗談っぽく口にするとか、そういう形にでも なっていれば、まだ分かるよ。だけど、「嘘ばかりついている」という流れが無いから、その告白は「確実に真実」として明かされている ことになる。
そういう形で告白するにしては、タイミングが早すぎる。
マジな告白として打ち明けるのであれば、もっと親しくなってからにすべき。っていうかさ、なんで告白の相手がジョージアじゃなくてサイモンなんだよ。
そこはキャラの役割からすると、ジョージアに直接明かすべきじゃないのか。
で、レイチェルは冗談めかして言うけど、ジョージアは孫娘が真実だと確信する、という形の方がいいんじゃないか。
まあ、どっちにしても、やはりタイミングは早すぎると思うけど。
まだ始まって30分ぐらいしか経過していないんだよな。ハーランは敬虔なモルモン教徒で真面目な男っていうキャラなんだけど、登場した時の印象だと、そういう風にはまるで見えないんだよな 。
明るくて活発だし、ロンゲだし。
見た目で判断するのは良くないだろうけど、でも見た目での印象って大事だと思うのよ。
もっと分かりやすく「生真面目で性的経験が無い」という部分をステレオタイプに描いてしまった方が良かったんじゃないかと。っていうか、ハーランやジューンを巡るエピソードって、要るかなあ。
ジューンの親友のグレイスたちがハーランとレイチェルを監視するってのも、どうでもいいし。
そこをバッサリと削ぎ落として、もっと「レイチェルがジョージアとの触れ合いの中で心を開いて素直になっていく」とか「性的虐待の トラウマから解放される」とか、そういうレイチェルの成長や変化のドラマを充実させた方がいいのでは。
レイチェルとジョージアの交流って、実は序盤以降、ほとんど描かれないんだよね。レイチェルが性的虐待を打ち明けた後、そこから2人 の関係は、ほとんど使われていない。性的虐待の要素を持ち込んだことで、「反抗的なレイチェルが素直になる」というだけでは問題の解決にならなくなる。
彼女が荒れ始めたのはアーノルドの性的虐待が原因だから、そんな男を信じ、娘を嘘つきよばわりしていたリリーの方が、むしろ レイチェルよりも反省・変化・成長を見せる必要がある。
だからホントは、レイチェルとジョージアの関係ではなく、レイチェルとリリーの関係を軸に据えるべきじゃないのか。
なかなかマトモに向き合おうとしないのであれば、その2人を繋ぐ役目を、ジョージアに担わせるべきだ。ところが、そこの配置や使い方が上手く行っていない。
何しろ、ジョージアはレイチェルをサイモンの家に宿泊させ、リリーから遠ざけてしまうぐらいだ。
そりゃダメでしょ。
しかも、遠ざけている間に、リリーと深く話し合って解決法を探ったり、レイチェルに詫びるよう諭したり、そういうことをするのかと いうと、そうじゃないし。
遠ざけている間に、リリーとレイチェルの関係が修復するための行動を、ジョージアは何も取っていない。そこに来て、ジョージアと リリーの関係についての会話を用意するのよね。時間配分も上手くない。
前半でレイチェルが性的虐待を告白するのなら、その後は「レイチェルとリリーの関係修復」に多くの時間を割くべきだと思うのよね。
でも、リリーがレイチェルのことを考える時間って、あまり無いのよね。自分のことで精一杯になっている。
それどころか、終盤に来てアーノルドに説得され、「自分に必要なものを信じる方が簡単ね。アーノルドが必要だから、彼を信じる」とか 言い出す始末。
そこまで来ると、あまりに心が弱すぎてフラフラしている彼女に、さすがにイラっとしてしまう。最終的にリリーはアーノルドと別れることは選んでいるけど、それも「じっくり考えて」という結論じゃなくて、衝動的な行動だ。
リリーってダメな母親のままなんだよね。
実はレイチェルって最初から気のいい娘で、むしろリリーの方こそ変わらなきゃいけない、どうしようもない女だったのよね。
なのに、肝心の彼女がダメ人間のままってのは、物語としてマズいんじゃないかと思うんだけど。(観賞日:2012年6月28日)