『正午から3時まで』:1976、アメリカ

強盗のグラハム・ドーシーと4人の仲間は、グラッドストーン銀行に押し入る計画を実行しようとする。ところがグラハムの馬が使えなくなってしまい、銀行に向かう途中にあった屋敷に立ち寄った。そこには未亡人のアマンダ・スターバックが暮らしていた。
強盗達は厩舎にいる馬を貸してもらおうとするが、アマンダは馬はいないと告げる。厩舎に入ったグラハムは馬を見つけるが、いなかったと仲間に嘘をつく。馬の無いグラハムは屋敷に残り、残りの4人が銀行に向かうことになった。
最初はグラハムに嫌悪感を示していたアマンダだが、態度を急変させてベッドを共にする。2人は正午から4人が戻ってくる3時までの時間を楽しく過ごす。グラハムは強盗から足を洗い、アマンダと一緒に銀行経営を始めようと話し合う。
やがて、4人が強盗に失敗し、1人が現場で殺されて3人が縛り首にされることが分かる。グラハムは思い込みの激しいアマンダに急かされ、3人を助けに向かわされる。グラハムは途中で出会ったドクター・フィンガーを脅して服を取り替え、逃走する。
ドクター・フィンガーはグラハムと間違えられ、射殺される。ドクター・フィンガーの遺体を見たアマンダは、グラハムが死んだと思い込む。一方、ドクター・フィンガーが犯罪者だったため、グラハムは彼と間違えられて刑務所に送られてしまった。
アマンダはグラハムと関係があったことから町の人々に非難されるが、彼との愛を熱く訴えて同情を呼ぶ。作家のフォスターが2人の関係を本にしようとするが、アマンダはグラハムが背が高くてハンサムだったと嘘を語り、思い出を美化してしまう。
フォスターが書いた本はベストセラーとなり、アマンダの屋敷には大勢の観光客が訪れるようになった。出所したグラハムは本のことを知り、アマンダに会いに行く。ところが、アマンダは彼がグラハムだということを全く信じようとしない…。

監督&原作&脚本はフランク・D・ギルロイ、製作はM・J・フランコヴィッチ&ウィリアム・セルフ、撮影はルシアン・バラード、編集はモーリー・ワイントローブ、美術はロバート・クラットワーシー、衣装はモス・マブリー、音楽はエルマー・バーンスタイン。
主演はチャールズ・ブロンソン、共演はジル・アイアランド、ダグラス・V・ファウリー、スタン・ヘイズ、デイモン・ダグラス、ヘクター・モラレス、バート・ウィリアムズ、デイヴィス・ロバーツ、ベティ・コール、ウィリアム・ランチュー、ラリー・フレンチ、マイケル・レクレア、アン・ラムジー、ハワード・ブレナー、ドン・“レッド”・バリー他。


主演がチャールズ・ブロンソンだし、ワイフのジル・アイアランドと共演しているのだから、恋愛も絡めつつ、渋い男が活躍する西部劇だと思っていた。
ところが、実際は全く違っていた。
確かに枠だけは西部劇っぽいのだが、中身は恐ろしくシュールなドラマだった。

銀行に押し入った5人が、外に出てくるのを待ち構えていた町の人々に、周囲から突き出した幾つもの銃で撃たれる。
というのが夢だったという冒頭の展開から、「おやおや」と思ってしまう。
ただし、そこで駄作の予感は漂うものの、怪作の予感は全く無い。

単なる軽いタッチのラブ・ロマンスという、西部劇仕立てにした意味を感じさせないような展開ではあるが、前半はそれほど変わった感じは無い。
しかし、前半がそれなりにマトモなドラマであることが、後半のイカれた暴走ぶりを際立たせる結果になっている。

アマンダが「グラハムは仲間を助けに行きたがっている」と勝手に思いこんだ辺りから、少しずつ壊れていく匂いが漂い始める。
とはいえ、美化された思い出を綴った本がバカ売れする辺りは、軽いブラック・コメディーのような雰囲気である。

グラハムが「オレがグラハムだ」と言っても、アマンダは全く信じようとせずに、「グラハムは、もっと背が高くてハンサムだ」と語る。
イカレ女の目を覚ますためにグラハムがどうするかというと、チンポコを見せる。
で、チンポコを見て「あなたがグラハム」とようやく気付くアマンダ。
ここって笑うトコなのかもしれないが、ちょっと怖い。

で、この辺りでブラック・コメディーの域を超えてしまう。
そして次第に、サイコ・スリラーかホラーのようになっていく。
不朽の名声にこだわるアマンダはグラハムに銃を向けて事実の隠蔽を要求し、それが聞き入れられないとなると、愛の伝説を守るために自殺してしまう。

かつての仲間達も、なぜかグラハムが本人だと全く信じようとしない。
「本物のグラハムはもっと背が高くてハンサムだ」とか言ったりする。
もうこの辺りになると、完全にメチャクチャである。
「んなバカな」である。
で、グラハムは誰にも本物だと信じてもらえない。
そしてキチガイだと思われて、精神病院に入れられる。

精神病院の患者だけが、グラハムを本人として受け入れてくれた。
そこでグラハムがニッコリ笑い、ストップモーションでエンド。
なんとシュールな。
ってなわけで、この作品は、「イカレポンチな女の思い込みが原因で、主人公の男がイカレポンチだと勘違いされてしまう物語」なのであった。

 

*ポンコツ映画愛護協会