『13日の金曜日 PART7 新しい恐怖』:1988、アメリカ

幼いティナ・シェパードは、クリスタル・レイクの別荘で父のジョンが母のアマンダと喧嘩をして殴る現場を目撃した。ティナが別荘を飛び出してボートに乗ったので、慌てて追い掛けたジョンは戻って来るよう諭した。しかしティナは「ママを殴った。パパなんて大嫌い。死んでしまえ」と叫ぶ。すると彼女の念が湖面を伝わり、ジョンのいる桟橋を破壊した。ジョンは湖に落下し、命を落とした。
成長したティナはアマンダの車に乗せられ、クリスタル・レイクへ向かっていた。彼女の治療を担当している精神科医のクルーズが指示したからだ。ティナは「あの医者は楽しんでるのよ」と嫌がるが、アマンダはクルーズを全面的に信頼していた。クルーズはアマンダに「病院の治療では効果が無い」と言い、全てが始まった別荘へ来ることで症状の回復が期待できるのだと説明した。隣の別荘には、複数の若者たちが遊びに来ていた。ティナが鞄を落とすと、ニックという若者が拾うのを手伝った。
クルーズはカメラを回し、ティナの念動力を記録しようとする。クルーズは「サイコキネシスは罪の意識の表れだ」と説明するが、ティナは彼が治療ではなく超能力にしか興味が無いと確信して激しく反発する。深夜、ティナは湖を眺めながらジョンに謝罪し、「生き返って」と強く願った。すると、その念によって、湖底に眠っていた殺人鬼のジェイソンが目を覚ました。湖面に飛び出したジェイソンを目にして、驚いたティナは意識を失った。
意識を取り戻したティナは、ティナは異様な男が湖から出現したことをアマンダとクルーズに話すが、信じてもらえなかった。その頃、ニックたちと合流するために別荘へ向かっていたマイケルとジェーンは、車が故障して歩く羽目になっていた。ジェーンはマイケルに、彼の誕生日のためにニックも来ていることを明かした。ニックは隣の別荘を訪れ、ティナをパーティーに誘った。アマンダが了承したので、ティナは嬉しそうな表情でニックに付いて行った。ジェイソンはジェーンを殺害し、続けてマイケルも始末した。
ティナが隣へ行くと、ニックの仲間であるメリッサ、サンドラ、ロビン、デヴィッド、エディー、サンドラ、マディー、ラッセルが既に盛り上がっていた。ティナはジェイソンがマイケルを殺害するヴィジョンが脳裏をよぎったので、急いで自分の別荘へ戻った。すると、ポーチには鉄の杭が突き刺さっていた。彼女は母に「湖から出て来た男を見たのよ。男の子を殺した」と告げるが、クルーズは「それは妄想だ」と断言する。ティナはポーチを確認するよう言うが、鉄の杭は無くなっていた。ジェイソンはテントに薪を運ぼうとしていたダンを殺害し、彼を待っていた恋人のジュディーを始末した。
翌朝、ティナはニックと2人きりで会い、幼少時代に父の死を見てから精神を患って治療を受けていることを話す。ニックは彼女を励まし、2人はキスを交わす。ニックに好意を寄せるメリッサは、その様子を密かに見ていた。ティナが若者グループの別荘に戻ると、メリッサは彼女に嫌味っぽい態度を取った。腹を立てたティナの感情が高まると、メリッサの付けていたネックレスが千切れた。ティナは動揺し、別荘を飛び出した。
ティナはクルーズに、「ここにいるのは耐えられない。人を殺しそうになった」と訴える。しかしクルーズが耳を貸さないので、カッとなったティナは念力でテレビを飛ばした。別荘を出ようとすると、ニックが現れた。まだマイケルが来ていないことを知ったティナは、写真を見せてほしいとニックに頼む。ニックからマイケルの写真を見せられたティナは、「彼は死んでるわ」と告げた。アマンダがティナを呼びに来て、「荷造りして。明朝に出発するわ」と告げた。
深夜、サンドラはラッセルを連れ出し、湖で泳ぎ始めた。しかしジェイソンが近付いてラッセルを撲殺し、続いてサンドラも殺害した。クルーズはティナの資料を確認しながら、密かにポーチから抜き取って置いた鉄の杭に目をやった。森へ出掛けた彼は、マイケルの死体を見つけて慄いた。クルーズの部屋に入ったアマンダは、彼がティナを実験材料としか考えていないことを知った。戻って来たクルーズはアマンダの非難を受け流し、ティナを隔離すると言い出す。それを盗み聞きしたティナは、車で逃亡した。
ティナはアマンダがジェイソンに殺されるヴィジョンを見て運転を誤り、森に車を突っ込ませてしまった。彼女は故障した車を捨てて、別荘へ向かう。マディーは好意を寄せているデヴィッドを捜して森に入り、ラッセルの死体とジェイソンを目にして悲鳴を上げた。慌てて逃げ出したマディーは納屋に隠れるが、ジェイソンに見つかって惨殺された。ティナはニックと遭遇し、「ママか殺される。急がないと」と告げた。クルーズの車でティナの捜索に出ていたアマンダは、故障した車を見つけた。
ジェイソンはワゴン車でセックスしている若者グループのベンとケイトを発見し、2人とも始末した。それから彼は別荘の電源を切り、停電を起こす。寝室でセックス中のロビンとデヴィッドは、構わずに行為を続けた。ティナとニックはマイケルの死体を発見し、その場を急いで離れる。台所へ食料を取りに行ったデヴィッドは、ジェイソンに殺された。自分の別荘に戻ったティナは、書斎にあった父の拳銃をニックに渡す。引き出しに入っていたスクラップを見た彼女は、自分の目撃した男がジェイソンだと悟った。
ティナの感情が高まって部屋が激しく揺れたので、ニックは驚いた。ニックはティナを落ち着かせ、「ジェイソンの話が本当なら、みんなに教えて避難しないと」と告げる。ティナが「ママが森にいる」と言うので、彼は「分かった。捜しに行こう。だが、まずは友達の元へ行かないと」と述べる。メリッサに遊ばれて1人になっていたエディーは、ジェイソンに始末された。寝室から出て来たロビンも、やはりジェイソンに殺された。ティナは「ママが戻るかもしれない。ここにいる」と言い、ニックは一人で仲間たちの別荘へ向かう。ジェイソンは森へ行き、アマンダとクルーズを見つける。クルーズがアマンダを盾にしたので、彼女はジェイソンに殺される…。

監督はジョン・カール・ビュークラー、脚本はダリル・ヘイニー&マヌエル・フィデロ、製作はイアイン・パターソン、製作協力はバーバラ・サックス、撮影はポール・エリオット、編集はバリー・ゼットリン&モーリーン・オコネル&マーティン・ジェイ・サドフ、美術はリチャード・ローレンス、衣装はジャクリーン・ジョンソン、メカニカル効果コーディネートはルー・カールッチ、音楽はハリー・マンフレディーニ&フレッド・モーリン。
出演はラー・パーク・リンカーン、ケヴィン・ブレア、スーザン・ブリュ、テリー・カイザー、スーザン・ジェニファー・サリヴァン、エリザベス・カイタン、ケイン・ホッダー、ジョン・レンフィールド、ジェフ・ベネット、ハイジ・コザック、ダイアナ・バロウズ、ラリー・コックス、クレイグ・トーマス、ダイアン・アルメイダ、ウィリアム・バトラー、ステイシー・グリーソン、マイケル・シュローダー、デボラ・ケスラー、ジョン・オトリン、ジェニファー・バンコ、デラーノ・パルギ他。


シリーズ第7作。監督は『SFダンジョン・マスター/魔界からの脱出』『トロル』のジョン・カール・ビュークラー。主に特殊効果マンとして活動している人だ。
公開当時は「100人目の犠牲者が出る」と宣伝されていて、配給会社のカウントによればメリッサが100人目になるらしい。
まあ、余程のマニアでなければ、「誰が100人目だろうと、どうでもいいわ」というのが正直な感想だろうけどね。
ティナをラー・パーク・リンカーン、ニックをケヴィン・ブレア、アマンダをスーザン・ブリュ、クルーズをテリー・カイザー、メリッサをスーザン・ジェニファー・サリヴァン、ロビンをエリザベス・カイタン、デヴィッドをジョン・レンフィールド、エディーをジェフ・ベネット、サンドラをハイジ・コザック、マディーをダイアナ・バロウズ、ラッセルをラリー・コックス、ベンをクレイグ・トーマス、ケイトをダイアン・アルメイダが演じている。
これまでは1作ごとにジェイソン役が交代していたが、ここから4作連続でケイン・ホッダーが担当している。

冒頭では『13日の金曜日 PART2』『13日の金曜日 完結編』『13日の金曜日 PART6 ジェイソンは生きていた!』のフッテージが使われ、これまでのジェイソンの所業が短く提示される。それは決して、時間稼ぎのためではない(と思う)。
そのフッテージにも登場するトミー・ジャーヴィスが、第4作『完結編』から第6作『ジェイソンは生きていた!』までは連続して登場していた(演者は作品ごとに異なる)。
前作でもトミーは生き残っているのだが、今回は登場しない。
どうやら製作サイドは、もはやトミーというキャラクターの利用価値が無くなったと判断したようだ。

そして今回、トミーの代わりにジェイソンと戦うティーンズの主人公として登場するのは、ティナ・シェパードという少女だ。
単純な話、やはりメインとなるのは男より女の方がいい。ジェイソンに襲われて悲鳴を上げるスクリーミング・クイーンとして使えるしね。
ただし問題は、ティナが普通の女の子ではないということだ。
「そう、奥様は魔女だったのです」ということではないが、それに近い。ティナは超能力の持ち主だったのだ。
ってなわけで、この映画、勝手に別タイトルを付けるなら『超能力少女キャリー』じゃなかった、『超能力少女ティナ』である。

前作において、トミーはジェイソンの悪夢から解放されるために火葬しようと考え、死体を掘り起こすが、雷に打たれたジェイソンが復活するという事態を招いていた。
最終的にはジェイソンを退治するが、完全にマッチポンプだった。
しかも、倒すまでに大勢の犠牲者が出ているわけで、「余計なことをしなけりゃ誰も死なずに済んだのに」と言いたくなる内容だった。
そういう悪しき前例があるのに、その次に製作した本作品で、なぜか製作サイドは同じ過ちを繰り返してしまう。

今回、ティナは湖に向かって「父親に生き返って欲しい」と念じるが、その念によって湖の底に沈んでいたジェイソンが復活してしまう。ジェイソンが大勢の若者たちを殺害した後、ティナは彼を退治するために行動する。
つまり、トミーと同様に、ティナもマッチポンプというわけだ。
しかも、ティナは若者たちが殺された段階で「自分のせいだから責任を取らなきゃ」と考えてジェイソンに立ち向かうわけではない。
母親を殺されてようやく、復讐という動機で立ち向かうのだ。

前作でクリスタル・レイクはフォレスト・グリーンという名称に変更されていたのに、なぜか今回はクリスタル・レイクに戻っている。
クリスタル・レイクで殺人鬼のジェイソン・ヴォーヒーズが幾度にも渡って大勢の人々を殺害したってのは、有名な出来事のはずだ。
だからこそ名称を変更していたはずなんだし、元に戻したら意味がねえだろうと思ったんだが、なぜか大勢の若者が遊びにやって来る。
そりゃあ前作でも「若者たちはジェイソンの事件を伝説だと思っている」という設定だったが、そのジェイソンが復活して殺人劇を繰り広げたんだから、伝説じゃなくて実在したことは知っているはずなのに、どんだけボンクラなのかと。
まあ、だからこそジェイソンの犠牲者としてふさわしいとも言えるが。

あと、そのボンクラな若者たちだけじゃなくて、ティナ&アマンダ&クルーズも別荘に来るんだよな。お前らもボンクラなのかと。
そりゃあクルーズには企みがあって、そのために別荘へ連れて来ているんだけど、そこは展開が強引だなあ。
冒頭で「人々はジェイソンが湖底に眠っていることを忘れた」というナレーションが入るが、どんだけ忘れっぽいんだよ。
ティナから「異様な姿の男が湖から出現した」と聞かされたアマンダとクルーズが、なぜジェイソンのことを思い浮かべないのかってのも引っ掛かるし。

そもそも、クリスタル・レイクの別荘でティナが父親を死に追いやっているという設定が無理筋だと思うんだよな。
時系列を考えると、幼少期のティナが父親を死なせてしまったのは、ジェイソンがクリスタル・レイクで殺人劇を繰り広げていた頃に当たるんじゃないのか。
あと、ティナが湖に向かって「生き返って」と祈るのは不可解なんだよな。
だってさ、普通に考えると、ジョンの父親の遺体は死んだ当時に湖から引き上げられているはずでしょ。そして墓に埋葬されているはずでしょ。
なんで遺体が湖から引き上げられていないのか。「発見できなかった」とは言わさないぞ。後述するけど、どう考えても発見できるような場所に遺体は放置されているんだから。
あと、考えてみれば、ジェイソンの死体が湖の底に放置されたままってのも変だよな。どう考えても警察が適切に処理すべきでしょ。

さて、せっかく安らかに腐っていたのに、間違えて復活させられてしまったジェイソン君。
生き返ってしまったので、とりあえず何か行動を起こさなきゃ仕方が無い。そして、蘇った彼がやることは1つしか無い。
そう、殺人である。
「一緒にいたカップルが離れている間に片方を殺し、それから残った方も殺す」というパターンを5回も繰り返す。
ちなみに、若者たちのキャラクターは全く掘り下げられていないし、個性を発揮することはほとんど無いが、誰が誰なのか見分けを付けたり名前を憶えたりする必要は無い。
このシリーズに出て来る若者たちが基本的に「殺されるために出て来るだけ」の連中に過ぎないことは分かり切っているので、「ジェイソンに殺される無名の若者たち」という程度の解釈で充分だ。

終盤は怒り爆発のティナが、念力を使って大暴れする。
ジェイソンを感電させ、生首付きの植木鉢を投げ付け、家屋を破壊して押し潰し、蛍光灯のコードで首を絞めて吊り上げ、釘を飛ばして突き刺し、ガソリンを浴びせて火を放つ。
ジェイソンは何度も立ち上がってくるが、全く歯が立たない。強いぞティナ、そしてちっとも怖くないぞジェイソン。
で、家の爆発に巻き込まれて死亡したと思ったジェイソンだが、まだ死んでおらず、ティナを湖へと追い詰める。
しかしティナが強く念じた結果、なんと湖から父親が復活し、ジェイソンを湖へと引き摺り込む。
なんちゅうオチだよ。

(観賞日:2014年4月12日)

 

*ポンコツ映画愛護協会